成蘭国債を大規模購入、国家人民軍派遣も
不安定続く王国はいつ繁栄を取り戻すか
成蘭王国での治安悪化が深刻だ。
一時は安定し、堅調な経済発展が見込まれていた成蘭だが、1050年代から再び経済状況が悪化。
国民の不満が募る中、一部地域では武装した集団が破壊活動を行う状況にまで発展した。
事態に対し、成蘭政府は効果的な対策を打つことが出来ていない。また対処しようにも、再建の進んでいない治安組織や国軍では難しい現実がある。
元来、政治経済的に安定していた歴史が長く、警察組織がとりわけ優秀とされてきた成蘭は、厳しい銃規制でも有名だった。
そうした中での武装集団の発生は、再建された成蘭王国の近隣地域、東和等の旧連邦構成国からの流入も疑われる。
逼迫する財務状況と治安の悪化を受け、成蘭政府は共和国に対して資金援助を要請した。
共和国政府は、本要請に対しては国債購入形式による事を決定。成蘭側もこれを了承し、現在までに100兆Va分の購入が実施された。
既に別成経済協力覚書に基づいて数百兆規模に及ぶ事実上の無償援助を継続していた事や、「一方の一方に対する依存であってはならず、援助から協力への発展を常に模索したい」(1034年の首脳会談における成蘭・志岐首相の発言)という成蘭側の意識など、双方の意向が反映された格好だ。
共和国政府は「今後も成蘭からの援助要請には最大限応えていく方針」だとし、無償/有償を含め柔軟に対応するという。
また当面の治安回復の必要性から、武装集団に対する鎮圧協力でも合意。
国家人民軍地上軍の一個中隊(200名規模)が派遣され、成蘭国軍と共に治安維持活動にあたった。
国防省の発表によれば、既に3つの地域で武装集団を鎮圧し、その多くを拘束したという。
ある宮殿筋は国債購入方式での援助について「最大500兆Va程度まで想定している」としており、共和国が成蘭債を過剰に保有してしまう可能性を示唆した。派兵を伴う治安維持協力も、一過性で済まない事も考えうる。
「別成間の友好協力体制を次の段階に進める」とされた友好協力条約締結から30余年、現在の状況は、当時の両国が想定したものとは大きく乖離してしまっている。共和国の負担はもとより、誇りある成蘭王国にとっても不本意であろう。
共和国建国以来の絶対友好国とされる成蘭だが、この友好関係は現実の国際外交上においても重要な意味を持っている。すなわち国際におけるブロック化、勢力圏化が継続する中で、激動を経験した共和国にとって、成蘭はこれに影響されない独立した友好国であるという事実である。ここから得られる潜在的利益は計り知れない。
成蘭政府には復興の意思があり、その能力がある。しかしその認識ゆえに、共和国からの経済支援は、新興国に行われるような総合的なパッケージとしてではなく、資金資材の無計画な投げ入れになってはいないか。
成蘭支援が軍の派遣にまで拡大してしまった今、共和国政府及び議会は、友邦への支援が実のあるものになるよう、その中身を真剣に検討改善するべきであろう。
ブルースター紙 発行:38420期1067年3月中旬