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共和国議会、大統領制を廃止する改憲を発議

1130年10月20日付〈中央通信〉

 19日、共和国議会は大統領制を廃止し、国家元首機能を社会主義評議会に移管することを目的とした改憲決議案を全会一致で採択した。改憲決議案は国民投票に付された後、正式に成立すことになる。1020年にエルネ・モスアゲート大統領(当時)が「人民の基本的権利を侵害した」かどで拘束され、その地位を失ってから現在に至るまで共和国は憲法上定められた大統領選出のための手続きを実施しておらず、大統領不在のまま社会主義評議会が国家元首としての機能を代行してきた。今次の改憲によって社会主義評議会は憲法上の明確な位置づけを与えられ、1世紀以上に渡って続いた「暫定体制」を「恒久的な体制」に正式に移行させることとなる。
 1020年の政変以降、社会主義評議会内にはかつての大統領制が委員長の任命権限を通じ共和国社会主義の根幹を担う委員会に対して圧力をかけることを可能にし、結果的に共和国の社会主義体制を危うくする存在となっていたということについて概ねの合意が存在した。各委員会の委員長によって構成され、委員会の立場を直接的に代弁する社会主義評議会が国家元首としての権限を掌握するべきであることについての広範な支持が存在していたにもかかわらず、1030年代から続けられてきた新体制をめぐる議論においては、細かな見解の差異から現実の制度変更に結びつくことがなく、結果として1世紀以上に渡って「憲法上の定めのない暫定体制」が継続することとなった。11世紀前半に評議会内で指導的地位にあった「正方派」は改憲の必要性を否定する立場を取っていたのに対し、1050年ごろから評議会の主流派となった「台形派」「円環派」両派は改憲によって新体制を恒久化する必要性を強く支持していた。しかしながら、新たな国家元首となる社会主義評議会議長の地位を中央処理・内務公安・軍部の3委員長によって寡占することを目指す台形派と、9人の委員長全員が持ち回りで社会主義評議会議長を務めるべきであるとする円環派の間の意見の不一致、共和国議会内の無視できない「反評議会」勢力などが妨げとなり、現時点に至るまで改憲の発議には至らなかった。
 しかしながら、近年の国際情勢の変化やそれに伴う環境の「解凍」に伴って、評議会は重い腰を上げ、改憲の方向性をまとめる意思を示した。評議会内の主流派である台形派と円環派の意見対立は非主流派である正方派と角錐派が(両者の本来の思想との矛盾を承知の上で)円環派を支持する姿勢を示したことで円環派に天秤が傾く形となり、共和国議会に評議会が提案した改憲決議案においては社会主義評議会議長は「9人の委員長が1年任期で持ち回る」形とされている。また、改憲案によれば、大統領制や、委員長・共和国議会議員の任期制(前者は6年、後者は10年が本来の任期であった)は廃され、各委員長や共和国議会議員はその選出母体が後任を選出するまでその地位にとどまることとなる。現在においても、共和国議会議員選挙は1062年を最後に、委員長の選出(大統領による指名)は1014年を最後に行われておらず、これらの地位は選出母体(委員長については各委員会、共和国議会議員については選挙区である自主管理連合組織)による交代手続きによってのみ後退している。改憲はこの実質的に形骸化したこれらの任期を正式に廃止するものであるが、大統領の廃止を含めて基本的には現状追認的なものであるため、政治情勢に大きな変化をもたらすものとは考えられていない。

久方ぶりの新興国は氷漬けのフリューゲルを融かすか

 1120年に建国されたトータエ社会主義人民共和国は、同時期に建国されたノエシタ社会主義共和国連邦との連携の下、国際社会に積極的な関与の意欲があることを示し続けている。外交委員会は同国の銀鉱山開発を支援し、その後も同国に積極的に関与することで同国の経済発展に対する期待していることを明らかにしている。国情不安定なノエシタはともかく、トータエがここ1世紀余りのフリューゲルが全く欠いていた「新興国」―単に建国されて日が浅いだけではなく、中期的・長期的に国際社会における地位を築くことが期待できる国家―であることは疑いない。
 同国の成立と成長は単に1国がフリューゲルに加わったというだけではなく、長期的に「氷漬け」になっていたフリューゲル自体の解凍を予感させるものであるかもしれない。長年その名に背負った「責任」に反して―あるいはそれに従って―独立への動きを見せなかったセビーリャ責任政府も、ついに「独立の検討を開始」したことが報じられ、長期的に経済が停止しているレゴリス帝国・ヘルトジブリール社会主義共和国との貿易関係を清算する国も複数現れるなど、明らかにフリューゲルは水面下で対流の兆しを見せ始めている。
 しかしながら、「融け」ているように見えるのはあくまで深部であって、惑星フリューゲルの海洋面が全球凍結に近い状態であることには未だ変わりない。トータエが加盟したとはいえ、フリューゲル国際連合は1089年に第24回通常会期が閉会して以降40年間会合を開催しておらず、安全保障理事会に至っては1040年にBCATを同盟理事国を派遣する「同盟」と認めて以降一度も議論らしい議論をしていない。各国の外交活動も決して活発とは言い難く、トータエに関連する経済支援協定を除けば締結された条約はここ数十年存在しない。トータエによって刺激された「氷漬け」のフリューゲルが、解凍されて元の姿を取り戻すに至るか否かは決して楽観することはできないのかもしれない。

【経済】全フリューゲル的な工業生産不足は解決の余地があるのか。識者は「新興工業国の成立が不可欠」と指摘。
【政治】委員長が市民の前にほぼ姿を現さないことについて、「ホログラム大統領とどう違うのか」という声も。

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