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社会主義共和国憲法、国民投票にて否決 他

1076年4月9日付

【政治】社会主義の跋扈 「社会主義共和国」憲法が発議へ

<イグナイト・タイムズ>

第14回議会選挙において勝利した社会主義者は、その勢いのままに宿願の達成に歩みを進めた。

セニオリス社会党のイバナ・ブロズ首相は選挙後、度々「社会主義の宿願は既に選挙において承認を受けている」と繰り返し強調してきた。その自信には、社会党と共産党において議会の3分の2を占める強力な議会情勢が背景としてある。社会民主党のマリン・フリードリーン大統領は「コモンウェルスの価値観を破壊するいかなる改憲にも署名することはないだろう」と言明したが、首相は一見して政策的距離が根深いように見える共産党との協議を通じ成立に持ち込む構えを見せた。

首相は改憲草案の発議のタイムリミットを「1075年5月の第14回大統領選挙まで」と設定していた。マリン・フリードリーン大統領は同月に任期切れとなる以上、第14回大統領選挙に勝利し発議を目指す手もあったが、第14回議会選挙での勢いをそのままに国民投票を有利に進めたい狙いだ。

共産党との協力にあたって、首相も所属する社会党の社民派と共産党の政策的な距離感は問題となるかに見られたが、共産党が歩み寄る姿勢を見せたためにその不安は解消された。共産党幹部は「共産主義社会の実現において、社会主義革命は必要な過程の1つであり、短期的目標は彼らと完全に一致している」と延べ、一時的な共闘を優先したことを示した。

首相はコモンウェルスの問題点を、「力なき政府、ブルジョワジー・民族主義への寛容、無知蒙昧・日和見の象徴たる政党人」と羅列した。例にない強い口調にも現れるかのように、新たな社会主義憲法の内容は、1002年から66年間続いた社会共和国憲法、そして過去に発議され国民投票にて否決された970年憲法よりもさらに踏み込んだ、社会主義体制の実装とも言うべき内容となっている。

「勤労人民が指導し、労働者・農民の同盟を基礎とする社会主義共和国」という新たな価値観は、首相が社会主義憲法の構想として語った「我々が建設する社会主義国家は、勤労者の利益を蝕み侵害する無知蒙昧を排除し、真に勤労人民が指導し、社会共和国の同じ轍を踏まぬ国家でなければならない」との言葉を反映したと言える。すなわち社会共和国を死に追いやった”元凶”である「自由」と「民主」という価値観を排除したのである。「勤労人民の指導」「労働者・農民の同盟を基礎」との条項は、階級闘争を是認する社会党共産派・そして共産党の意向が色濃く現れている。

社会主義共和国との価値観に示されるように、体制もまた社会主義的なものへと大きく変化することとなる。コモンウェルス憲法で「公衆の健康を害さない限りにおいて」保証されている国民の自由・権利は、社会主義憲法において「社会主義体制において認めうる範囲内において」のみ保証されることとなる。首相はこの条文について「勤労人民の指導という社会主義国家の目標達成のための必要不可欠な改革だ」と説明したが、野党の社会民主党は「社会共和国憲法も踏み込まなかった聖域を荒らしている」と強く非難。共産党を除く野党からは集会・結社・表現の自由、そして議員資格への制限を正当化しうるとの指摘がなされ、激しく批判されている。首相は「彼らの考える社会主義体制の姿は偏見に満ちたものだ」と反論したが、一方で共産党は「社会主義体制下の国民は、共産主義社会へのたゆまぬ努力と、社会主義を損なわせる反動の抑止という2つの義務を背負う」と野党の主張を認める姿勢を示しており、批判はますます強まっている。

財政権は、特に強く社会主義体制の影響を受ける分野だと言える。コモンウェルス憲法では「公衆の健康と国家の安全を妨げない限りにおいて保証される」ものである財政権は、社会共和国憲法時代に回帰し「法律の規定に基づき保証」され、「公衆の健康に供する義務を伴う」ものとなる。そして国民の私有財産については、「国は、公共の利益の必要性のために、市民の資産・財産の公共化を、補償と併せて行うことが出来る」と国有化の余地を大きく認めるものとなった。土地所有についても「国は、全ての土地について、公共の利益の必要性のため、法律の規定に基づき監督する」との社会共和国時代に回帰する他、「その使用は、法律の規定に基づき届け出の義務を伴う」と旧憲法よりも更に踏み込んだ「生産手段の国有化」の姿勢が大きく示されるものとなった。

体制変革としては、権限行使における議会・首相の承認要求や拒否権覆しのハードル低下といった大統領の権限縮小や、内閣の「閣僚評議会」への改名といった内容も含むが、大きく目立つのは「勤労人民の指導」の体制化であろう。新憲法では大統領・議会議員・裁判官としての資格について、「社会主義体制に対する支持」がその要件として盛り込まれた。現時点でこの要件を満たす国政政党は共産党・社会党のみであると目されており、マリン・フリードリーン大統領は「コモンウェルスへの敵対のみならず、セニオリスの伝統的価値観全てへの宣戦布告だ」と警鐘を鳴らしている。

野党の猛反発の中、新憲法は1073年11月に賛成168反対32棄権0によって議会を通過した。フリードリーン大統領はこの憲法草案について「市民への抑圧を正当化しようとするものであり、現職大統領として見過ごすことなど出来ない」として署名を拒否したが、社会主義憲法は議会の3分の2以上の多数を獲得しているため、発議の要件を満たすこととなる。新憲法発効後の国旗・国号等の変更を定めた「1073年国旗国号変更法」も採決され、こちらも賛成168反対32棄権0によって成立した。

社会主義憲法の行方は国民投票に移ることとなった。野党は「セニオリスの価値観守護」を唱えて猛烈な反対運動を展開する中、選挙の熱狂冷めやらぬうちにという首相の戦術が成功を納めるかが注目される。

【政治】社会主義共和国憲法、国民投票にて否決 首相の責任追及は必至か

提案されていたセニオリス社会主義共和国旗

1073年11月、「勤労人民の指導」などの社会主義国家建設を定めた「セニオリス社会主義共和国」憲法が国民投票に掛けられ、賛成率が48.8%であったため否決となった。投票率は63.1%だった。

社会主義憲法に関しては、社会党主導の議会運営において野党の見解に回答がなされないなど議論の不十分さが指摘されていたが、共産党・社会党の両党によって議会3分の2の多数が確保され、半ば強行的に発議が行われた。議論が不十分との指摘について社会党の幹部は「過去970年憲法発議後に想定されていた追加の憲法改正案として人民戦線内部で検討され、その後社会共和国の期間において社会党内部で塩漬けになっていた草案と概ね同一だ」と、十分に議論を経た草案であることを強調していた。

しかしこのような強硬手段が、憲法成立の成否に影響した可能性は否めない。国民投票において反対票を投じた人に訪ねた調査では、その理由を「議論が拙速だから」などといった理由が3割程を占めた。第14回選挙での勢いを殺さず国民投票を有利に進めるというイバナ・ブロズ首相の戦術は、完全に裏目に出たと言える。

議会の圧倒的情勢を背景に発議した新憲法が僅差で否決されるという事態に、ブロズ政権の地盤は大きく揺らいでいる。閣外から憲法発議に協力した立場である共産党は「今回の事態を招いたのはブロズ政権の反動的姿勢のみが原因である」として首相の辞任を求めた。そして社会党内部でも、共産派からは「首相の指導力不足が顕になった」と批判がなされ、所属派閥である社民派からも一部では「首相の辞任は不可避」との声が漏れている。

首相のレームダック化が急速に進む一方で、社会党において後継首相の候補は定まっていない。有力な候補としてはイヴィツァ・ポポビッチ外務長官があるが、ポポビッチ氏は改憲失敗後に共産派に鞍替えした経緯があり、社民派の反発を招いている。一方で社民派の間で衆目が一致する候補はこれまでのところ出ていない。ある幹部は「このまま党大会を開けば首相の座を共産派に奪われてしまう」と危機感を示し、首相交代に否定的な認識を示している。首相も記者会見で「やるべきことはまだ多い」と退任を否定しており、党内外での批判は社会党にとって頭の痛い問題となりそうだ。

【政治】ブロズ政権への内閣不信任決議案、議会で可決 社会党大造反で異例の事態に

<北方セニオリス新聞>

国民投票での新憲法否決以来、イバナ・ブロズ首相の凋落が止まらない。ブロズ首相は否決の責任を巡って党内外から激しく批判を浴びたが、社会党における後継候補の未確定が続いたことで一時は持ち直したかにも思われた。しかし、首相がレームダックであるとの事実は変わらぬままだったようだ。

1075年1月、野党の社会民主党はイバナ・ブロズ政権に対する内閣不信任決議案を提出した。内閣不信任決議は議院内閣制を採る多くの国家において立法府に認められた憲法上の権限であるが、半大統領制を標榜するコモンウェルス憲法は不信任決議に関する規定を有していなかった。社会民主党の議員が事由説明において「現首相の指名が議会の権限である以上、議会は首相を信任しない旨を決議する権限も有していると解するべきだ」としたように、第二共和国の憲政史上で内閣不信任決議が提出されたことだけでも初であり異例の事態だった。

この決議案は社会党の圧倒的な占有率を背景につつがなく否決されるかに見えたが、社会党の議会議員団長は党議拘束を行わないという異例の対応に出た。結果社会党は共産派を中心に賛成票を投じる動きが相次ぎ、憲政史上初の内閣不信任決議案は賛成109反対78棄権13によってまさかの可決という事態へと陥った。社会党は共産派議員56名から49名の反対と4名の棄権、社民派議員87名からも3名の反対と9名の棄権を出すという大分裂の状況を露呈した。

首相擁護派のある議員は、社会党の議員団長が票の取りまとめを行わなかった点について「党としてあるべき一線を踏み越えた」と批難した。議員団長は「不信任決議案自体が異例の事態であるのだから、その判断は議員個々人の考えに委ねるべきと判断した」と釈明したが、前出の議員は「未必の故意があったのは間違いない」と指摘している。議員団長は決議案に反対票を投じた立場だが、所属派閥は共産派だった。

不信任決議案の成立を受けてブロズ首相は「かかる決議は行政府に対する立法府のクーデターだ」として反発し、なんら対応を採る必要はないと強弁。その上で「決議が示した不信任の事由が承服できないものである以上、首相として議会の解散を行い国民の信を問う」と宣言した。解散時期を「1075年5月を持って議会を解散し、大統領・議会同時選挙を実施する」とした。憲政史上2度めの議会解散により、1075年は12年ぶりの大統領・議会同時選挙の年となりそうだ。

不信任決議のまさかの可決からブロズ首相による議会解散が立て続けに起き、社会党はますます動揺している。社民派内では次期選挙後の方針を巡って首相批判派と擁護派での意見対立が深刻化し、公認候補を巡ってさえも意見統一ができない状況が続いている。迫る社会党内での大統領予備選挙では、共産派が一致する一方で社民派が乱立し共倒れするとの観測も広がっており、社会党内の情勢は選挙情勢にも影響を与えそうだ。

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