948年12月27日付〈中央通信〉
大統領選挙は下馬評とは裏腹に大差での決着となった。26日に一般投票で上位2候補となった人民党ケンラ・アゲート中央処理委員長と革新党ユンク・ブラッドストーン軍部委員長による大統領選挙上院投票はケンラ中央処理委員長が45名の上院議員のうち39人の支持を獲得、わずか6人の票を得るにとどまったユンク軍部委員長を破り12年ぶりに人民党大統領が誕生することになった。
現職のクルト・ムトロライト大統領は次の6年間に限る形での再選の資格を残していたが、「12年の革新党政権」のために再選を求めず引退を表明、ユンク軍部委員長への政権禅譲を目指していた。しかし、936年の大統領選挙においては人民党系の2候補(イルト・デマントイド大統領及びケシス・サードオニクス中央処理委員長)が分立したため革新党大統領の誕生に結び付いたが、人民党系の候補があっさりケンラ中央処理委員長に一本化された今回の大統領選挙で同様の「事故」は起こらず、940年議会選挙で弱体化したとはいえ強固な支持基盤をいまだ維持している人民党が力を見せる結果となった。
ケンラ中央処理委員長は上院投票の結果が伝えられると直ちに「安定的な政権運営のため、まずは議会選挙に力を注ぐ」と表明、2年後の950年に迫っている共和国議会下院総選挙に向けた準備を進めるとした。この「2年」という数字は新大統領の就任から共和国議会選挙までのインターバルとしてはクルト大統領の4年間(936年大統領当選→940年議会選挙)を下回り現行憲法下で最短である。新政権はその実績を評価されるための時間的余裕もないまま議会選挙に突入することとなる上、その選挙の意味合いも大きい。事実上12年間の大統領任期及び10年間の下院議員任期はともに960年に満了するため、950年代は878年に発効した現行憲法の下では最長となる丸10年間の「無選挙期間」となり、人民党は勝利すれば長期間にわたって共和国の政界を完全に支配することができる。既に「950年選挙はこれまでの選挙とは意味合いの異なる重要なものになる」(人民党幹部)などの声も聞かれ始めており、緊張感が漂っている。
リブル・ベロガトー両国復活
948年7月中旬、数年~十数年にわたって国際社会との交信が途絶していたリブル・ベロガトー両国が国際社会に復帰した。ベロガトーヴィチ大公国が以前の体制をそのまま維持しているとみられる一方で、リブル地域はモリキロー将軍率いるリブル民主共和国が倒れてリブル民主主義人民共和国に体制が転換しており、同国の情勢安定化が急がれている。
リブル民主主義人民共和国はリブル民主共和国の外交的権利義務を引き継ぐと表明しており、WTCO及びFUNの加盟国としての地位確認を求めていることから外交委員会は両組織に働きかけを行っている。WTCOについては事務局が国家としての連続性を認め加盟国として承認されたが、FUNについては現時点で明確な回答を下していない。旧リブル民主共和国に対して非公式な支援を行っていた新洲府共和国がリブル民主共和国の反政府勢力が主体となって成立した現体制に対して「注視」すると報じているが、この件とリブル新体制のFUNにおける判断が遅延していることの関連性は不明瞭である。
ケンラ新内閣発足、左派中心の顔ぶれ
949年1月18日付〈中央通信〉
委員会 | 氏名 | イデオロギー | 政党・期 |
中央処理委員長 | コンナ・モリオン | 委員会主義 | 人民党・新任 |
内務公安委員長 | ボルア・アメトリン | 中道派 | 無所属・2期 |
軍部委員長 | ユンク・ブラッドストーン | 委員会主義 | 革新党・2期 |
動力委員長 | テュテル・ブラッドストーン | 組合主義 | 連合党・新任 |
生産搬送配給委員長 | サジン・クリソプレーズ | 委員会主義 | 革新党・2期 |
住環境委員長 | トーネ・ユーファストーン | 組合主義 | 連合党・新任 |
研究設計委員長 | キルシ・デマントイド | 組合主義 | 無所属・新任 |
技術委員長 | イファン・アメシスト | 委員会主義 | 革新党・新任 |
外交委員長 | アンク・モスアゲート | 国家社会主義 | 革新党・2期 |
949年1月1日に就任したケンラ大統領の委員長指名が出揃った。すべての委員長が新任か就任2期目というかなり新鮮な顔ぶれとなったが、ケンラ大統領の任命した委員長5人は全て左派と目されており、中道派~右派がかなりの数委員長に任じられていたここ2回ほどの委員長指名とは大きく転換することになった。
興味深いのは、サンディカリスト(表では組合主義表記)が3人も任命されたことである。連合党が党綱領から社会主義を削除して以来、国内のサンディカリスト勢力は支持政党を明瞭にせず国政選挙でも投票先が分散していたが、今回の人事は未だ国内にかなりの数があるサンディカリストの票を求める人民党執行部の意向が働いたとみられている。近年連合党の凋落が続いている中で事実上の二大政党となっていた人民党・革新党はともに党内の中心的な政治勢力が委員会社会主義であるため、イデオロギー的な対立構造はここしばらく不鮮明であった。しかし、これで人民党がサンディカリストの「囲い込み」に成功すれば930年代のような「1強多弱」の政局が再現される可能性もある。
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