1174年11月3日付〈中央通信〉
1173年12月にトータエ社会主義人民共和国南部ジュリオーストク市で発生したカリナースク地区開発の停止に反発するデモ隊の一部が「カリヌナ解放戦線」(KLF)と称する武装集団に転じ、トータエ国内の最大の物流拠点であるジュリオース港を一時占拠する事態に至った。一連の報道と9月15日付でルクスマグナ共和合衆皇国政府によって発せられた公開質問状に対するトータエ政府の回答によって得られた情報を要約すれば、KLFはジュリオース港内23ヶ所に爆発物を設置し、カリナースク地区をKLF(あるいはその支持母体であるカリヌナ人)に対して引き渡さなければジュリオース港を使用不可能にすると脅迫したものとされる。これに対して、トータエ政府は外務大臣を代表者として交渉に当たらせ、6月にはKLFをジュリオース港から撤退させたことが報じられた。この際の合意事項として、KLF側がジュリオース港の引き渡しと武装解除に応じることと引き換えにトータエ政府はKLF関係者を逮捕・訴追せず、カリナースク地区の開発を「再検討」するものとされたことが発表されている。KLFによる蜂起の主要な動機であったとみられるカリナースク地区の開発停止が撤回されるのか否かは現時点では明らかになっていないが、現時点で明らかになっている情報の限りにおいてはトータエ政府は概ねKLFの要求を受け入れたものと考えらる。このような同国政府の対応は全般に「弱腰」なものであったと言わざるを得ない。その後、トータエ政府はKLFを「政治的、軍事的な反撃」によって無力化することを声明したが、一度でもテロリストに対して譲歩的な態度を取ったことは覆しようがなく、KLFの「無力化」が実現するかどうかについては予断を許さない。
また、KLF指導者の声明などを確認する限りでは、KLFはトータエ政府がノエシタ系を中心とするスラヴ人に牛耳られているという認識を取っていると見られており、KLFが極めて民族主義的な傾向を背景に、カリナースク地区にカリヌナ人の「聖域」を建設することを企図しているようにも考えられる。さらに、このような民族主義的な傾向はスラヴ圏の大国である神聖ガトーヴィチ帝国の反応を招いており、同国はKLFの「反スラヴ主義的」傾向に対する懸念を表明する声明を発表し、ルクスマグナによる公開質問状に対して連名するなど、本件に「スラヴ国家」の立場から重大な関心を寄せていることを明らかにしている。これもまた、本件が「民族主義」の惹起に一役買っていることの証左であろう。
このような「民族主義的テロリズム」に対してトータエ政府が屈したも同然の対応を取ったことは、我が共和国を含めた社会主義世界全体にとって憂慮すべきことではないだろうか?KLFの要求を受け入れてトータエ政府が自国内に民族主義に基づいた聖域を建設することを容認するのであれば、同地域内における労働者の権利や、地域内で新たに少数派となる諸民族の権利は損なわれ、さらには最終的にはその「聖域」はトータエ国家自体の社会主義に基づく団結を転覆させる工作の策源地になりかねない。また、ガトーヴィチの反応に代表されるように、すべての問題を「異なる民族の間の対立」の形で認識する姿勢は、労働者と経営者、社会主義と資本主義、普遍主義と地域主義といった、万国の労働者が意識すべき本質的な対立を捨象してしまいかねない。トータエ政府は、社会主義者たるもの、民族主義の脅威に対して弱腰な姿勢で臨むことがどのような結果をもたらすのかを認識すべきであるし、我々社会主義者は「行政院による平和維持声明」によって示されたKLFの「無力化」に向けた活動が進展するかどうかに重大な関心を抱くべきであろう。
文責:トルネ・シトリン住環境委員会報道局長
カリヌナ人はガーネット州の自由主義者の模範である
1174年11月4日付〈Advance! Victory Is Within Us〉紙
カリナースク地区開発をめぐるカリヌナ人のトータエ中央政府に対する反乱は、我ら自由主義者の模範とするべきである。カリヌナ解放戦線(KLF)の指摘したトータエ政府内の民族的偏りは、我が国における状況に相似な姿をしている。委員会社会主義者たちの政府は本土において多数派を占めるカルセドニー系に占められており、旧世界における彼らの「友人」であったアイサ系がそれに次ぐ地位にある。セビーリャ系・ヴァノミス系の出自を持つ人物が社会主義評議会内で主要なポストを占めることは決してない。
さらに、セビーリャ系が多数派を占めるガーネット諸島における自治を確立する取り組みは失敗し続けている―我々は、委員会主義の名の下に本土に都合よく分割された選挙区のために、議会に独自の代表者を派遣する権利すら持たない。ガーネット州の内部においてさえ、責任ある地位は「南の風」時代からガーネット州の指導者面をし続けるアイサ系に占められ、多数派であるセビーリャ系の地位は抑え込まれ続けている。超越連盟の内部においても「南の風」の上層部のすり替わりである円環派が「指導者」面をし続けている。自由主義や民族主義は抑圧され、ガーネット州は本土において権力を求める者たちのための道具として使われ続けているのである。
カリヌナ人は、トータエ中央政府に対して自らの力を示した。議会主義による二歩進んで三歩下がるような「漸進」などではなく、力を見せることによってのみ、社会主義を掲げる中央政府から、地方は権利をもぎ取ることができるのである、ということが証明されたのである。彼らこそ、我々ガーネット諸島の民衆にとって模範とすべきであろう。
文責:マルコ・アドルフォ・ナバルロ・スビサレタ Advance!紙記者
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