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連合党、議席減も単独過半数維持

980年12月28日付〈中央通信〉

 27日に投開票が行われた共和国議会選挙(下院総選挙)の結果、960年次選挙以来の第1党であった連合党は29議席減らして304議席を獲得、議席数をすり減らしたものの単独過半数を維持した。テハネ・ヘリオトロープ大統領は連合党の勝利を祝するコメントを発表、連合党系でありながら党公認候補のチジノ・ジャスパー前生産搬送配給委員長を僅差で破って当選していたテハネ大統領であったが、今後は連合党を明確に与党と位置付けて政界に臨むことになりそうだ。もう1つのテーマとなっていたイデオロギー論争は委員会社会主義系の人革両党が一定の復権を果たす一方で南の風は議席を半減させる大敗を喫し、民主前進党も議席を減らしたことで改憲の見通しは遠くなった。
 連合党の「受けの広さ」が目立つ形の結果となった。セニオリス・クーデター以来のトーネ・ユーファストーン前大統領やテレト・ブラッドストーン前外交委員長の外交政策は世論に強い批判を浴び、テレト前外交委員長はテハネ大統領の就任に伴って事実上失脚したが、連合党自体は「同盟国外交」からある程度「FUN重視」に舵を切る形で世論の支持をつなぎとめることに成功した。タント・スティショバイト現外交委員長は連合党内ではFUN重視的な立場を取っており、完全とは言わないまでもある程度政権の外交姿勢に対する批判票を吸収することに成功した。このような形で、連合党は強い支持を得られていないにもかかわらず流動票の大多数の支持を確保し続け、結果として痛い敗北を免れた。
 今回の選挙で最大の勝利者となったのは人民党であった。人民党は20年前の選挙で議席の4分の3を失う壊滅的な敗北を喫する以前の水準には及ばなかったものの議会の4分の1を超える159議席を確保し、同じく委員会社会主義を党是とする革新党と合わせると改憲を阻止できる議会3分の1を取り戻した。ヤトウ・アメシスト下院議員を中心に連合党外交を猛批判した革新党と比べると目立っていないように思われたが、「ハト派」「安定志向」の外交を志向していると有権者に受け取られ、また支持率の高いテハネ大統領が大統領選挙での選挙協力に「配慮」し、外交姿勢を人民党寄りのものにしたこともあって支持を確保した。これに対して革新党は外交姿勢については「過激」にすぎると受け取られたことから、「反ー反社会主義」票程度しか議席の上積みを果たせず、16議席増の90議席にとどまった。
 「改憲勢力」は軒並み勢力を失った。「セニオリス・クーデターよりもフ中銀」を唱え、クーデターやそれに起因する数々の外交面での軋轢を「無視」する態度を取った南の風の外交姿勢は支持を得られず、「社会主義に反対する」姿勢自体も支持されなかったことから、前回増やした議席のほぼすべてを失って960年次選挙並みの水準である33議席に逆戻りした。「委員会社会主義は非民主主義的」と一貫して主張している民主前進党も、選挙戦序盤では風が吹いたかに見られたものの、委員会社会主義勢力の猛反発を招いたことで結局勢いは萎み、7議席減の13議席にとどまった。現行の委員会社会主義自体が「広範に」支持されているとはもはや言い難いが、チジノ・ジャスパー前生産搬送配給委員長の大統領選出馬に代表される自由主義者の政界への影響力拡大は委員会社会主義に限らず「社会主義勢力」全般の懸念を呼び、「反ー反社会主義」とでも呼ぶべき社会主義系政党の支持拡大をもたらした様子だ。

民主前進党、改憲草案起草へ

981年1月17日付〈中央通信〉

 昨年末の共和国議会選挙で13議席にとどまって敗北した民主前進党本部は、「委員会社会主義を基礎とした現行憲法体制の限界が世論により示されたことは明らかだ」として、改憲草案の起草と将来的な共和国議会への提出を目指すことを表明した。テハネ・ヘリオトロープ大統領は改憲には消極的な立場であるが、現行の委員会社会主義体制に対する不満は与党連合党内にも広まっていることから、民主前進党は草案の提示により議論を呼び起こし、サンディカリストをはじめとする非委員会社会主義系・民主主義系社会主義勢力の結集を目指ざし、また草案によって注目を集めることで伸び悩んでいる民主前進党自身の勢力拡大にもつなげたい構えだ。
 民主前進党は現行憲法である877年憲法に反対する旧進歩党系の労働党員が結成した党で、現行憲法の成立以来一貫して現行憲法が「非民主主義的である」との立場を取ってきた。主要な「改憲項目」として、中央処理委員会からの裁判所の分離、自主管理組織に対する委員会に所属する義務の削除、行政府に対する委員会の影響力の排除と政府首班の権限強化などを掲げており、今後これらを中心に改憲草案を作成する模様だ。ただし、民主前進党内の主流派である社会主義派は「自主管理社会主義の枠組み自体は維持されるべき」としており、急進的な自由主義者が求める労働者自主管理権(※資本主義国家における企業に相当する自主管理組織について、所属する労働者が不可侵の売買できない所有権・経営方針に対する投票権を有するとする権利。)の削除には踏み込まないとしている。
 民主前進党内でも民主主義派と呼ばれる非主流派閥は自主管理主義の枠組み維持自体に対して懐疑的な立場であり、経済については自主管理組織所有権の売買(※株式の発行)を認めるなど、完全な自由化を達成した上で、労働者の生活の維持は国家から提供される福祉によるべきであるとする。南の風などの自由経済派はこれに近い立場であり、社会主義派の提唱する改憲方針が国内の自由主義者の全面的な支持を得られる保証はない。自由主義者が民主前進党の改憲草案起草を受けて独自の草案を別個に作成する可能性もあるが、連合党内の最大派閥であるサンディカリストは労働者自主管理権の削除を含んだ改憲草案には一切応じない構えである。連合党は複雑な党内構造のために改憲に向けた統一的な意思を示せない状態であり、南の風内の自由主義者はガーネット州の自治権を国家制度に組み込むことを優先する立場であることから、自由主義者が労働者自主管理権の削除を含めた独自の改憲草案を共和国議会に持ち出せるようになるにはまだ時間がかかりそうだ。
 また、人民党・革新党をはじめとする国内の委員会社会主義勢力は民主前進党の「現行憲法が非民主主義的」という主張自体に対して「怒りを隠せない」(人民党幹部)様子だ。委員会による自主管理組織に対する統制は委員会社会主義の基盤であり、委員会を国政から排除すると言っているに等しい民主前進党の改憲に委員会社会主義者が賛成することはほぼあり得ない。保守派・急進派双方に反対勢力を抱えたまま進められる民主前進党改憲案が現在の国会の勢力図で通ることはほぼ期待できず、改憲の実現には990年に行われる大統領・共和国議会ダブル選挙において改憲を支持する大統領を当選させたうえで議会の3分の2を改憲支持勢力で確保できるかが問題となる見通しだ。

【国際】3ヶ国が投票権を停止されて開かれるFUN総会第14回通常会期、4議題を同時に審議へ。
【経済】甚大な経常赤字で一時定期送金に未送。サンシャ群発隕石による商品輸入停止の影響。

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