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第5回大統領・議会選挙実施 他

967年11月20日付

【政治】第5回大統領・議会選挙実施 社会主義が国政掌握

<イグナイト・タイムズ>

バーバラ・オリーン大統領の任期満了に伴う第5回選挙は967年5月に施行された。

共和国史上初の「無所属大統領」であったオリーン大統領は次期選挙への不出馬を早々に表明しており、選挙戦は第2回選挙以来36年ぶりに新人のみで争われることとなった。
“社会主義議会”の誕生という結果であった961年の第4回議会中間選挙以降、社会主義革命が間近と言われる情勢の中で各陣営の候補者調整は以前にも増して真剣なものであった。

セニオリス共産党及び社会民主党の左派から構成される人民戦線は、予備選を制したミラ・イェリッチ農務環境長官を擁立した。社会主義革命を掲げるイェリッチ候補に対抗するため、社会民主党の右派と進歩自由党からなる進歩主義連盟では大ベテラン同士の予備選を制したドゥブラフカ・マタチッチ行政改革長官が擁立された。マタチッチ候補には自由民主党の候補予定者も支持を表明し、ここ2回で分裂していた中道勢力の結集が実現した。一方で「自由主義者が社会主義の躍進に加担した」と見る保守党・青き八重歯の2党ではこの動きに乗ずることはなく、双方の批判者としてマーヤ・カティッチ候補が擁立された。青き八重歯からの候補者は共和国史上初であった。

社会主義革命を前に各陣営の内外での政治的力学は類を見ないほどに働き、選挙戦の構図は第1回選挙以来の「左派VS中道VS右派」の三つ巴の構図に回帰した。しかし中道を囲う左右の候補者は第1回選挙などとは比べ物にならないほど急進的なものであり、「極左VS中道VS極右」がより実情を表していると言える。

選挙戦のテーマが「社会主義革命の是非」であったのは明白だった。マタチッチ候補は「協同主義」を掲げて経営者や中小企業による団体の権利擁護を主張し、社会主義に不満を持つ中道派層の取り込みを図った。またカティッチ候補は社会主義者を「国賊」として過激な主張を繰り返し、支持の引き剥がしを目論んだ。

しかしそうした主張を持ってしても、イェリッチ候補の中道層への浸透は妨げることが出来なかった。勝負の分かれ目となったのは、イェリッチ候補が民主政を擁護する姿勢をも見せていたことだろう。「社会主義の経済政策を正当化できるのは民主的権力のみ」などといった主張は毎度のごとく繰り返され、”極左”色を薄めることに一役買った。そして”社会主義議会”の存在を念頭に「社会主義革命の是非という議論は既に決着がついてる」としたことは、社会主義革命に至る道を”既成事実化”した。他の2候補の「社会主義体制は人々を抑圧する」との批判に対しイェリッチ候補が「資本家による労働者への抑圧は民主的に正当なのか?」と悠然と言い放った公開討論における場面もまた、他の2候補にとって痛い失点であった。

人民戦線は日を追うごとに勢いを増していき、最終的に大統領選をミラ・イェリッチ候補が制し、さらに議会選も29議席増の計141議席を獲得するという大勝を遂げた。最大の批判勢力であった進歩主義連盟は、中道層への浸透阻止に何の役割も果たせず28議席減の計29議席という大敗だった。イェリッチ新大統領は「人民の決意を必ずこの任期中に実行させる」として社会主義体制実現に強い意欲を見せた。憲法改正発議の条件は満たされており、共和国の資本主義の歴史に終止符が打たれようとしている。

しかし不穏な兆候も見られる。保守勢力は「改正限界説」を取り上げるなどして社会主義体制導入に猛反発しており、落選したマーヤ・カティッチ氏も支持者らに「最後の最後まで戦って欲しい」と呼びかけるなどしている。ミラ・イェリッチ新大統領は社会主義体制化までの道筋として「初めに社会主義の根幹理念を憲法に導入した後、新共和国をじっくり形作っていく」と示した。しかし各地では保守勢力が主導する反革命デモが度々発生し、第一歩目の国民投票を前にこうした反発はますます激化すると見られている。更に一部では関連議員が軍関係者と会談したと報じられるまでに至っており、情勢は一気に不穏なものとなっている。人民戦線が掲げた社会主義革命が平和裏に実現するかは定かではない。

【政治】社会主義体制導入へ イェリッチ政権を読み解く

<新セニオリス通信>

ミラ・イェリッチ新大統領

963年改憲は共和国を救うものではなかった。第5回選挙の結果は大統領選、議会選共に人民戦線が勝利し、共和国は同陣営が掲げた社会主義体制の導入への道を歩むことが決定づけられた。
大統領は少なくとも社会主義体制導入を2段階以上に分けて行うことを示した。第一弾は社会主義の根幹理念の導入であり、第二弾以降で共和国の新たな形を練り上げていくとしている。しかし保守勢力からの反発が激化し、情勢はやや不穏さを増している。大統領は自らの役割を「平和なる革命」と評しているが、その思惑通りに事が進むかは分からない。

議会と大統領の関係を見ると、本選挙は大統領の所属と議会の多数派が噛み合うものとして実に919年の第1回選挙以来の結果となった。社会民主党が左右に引き裂かれている今、大統領補佐団人事も完全に人民戦線から任命になると予想され、注目はむしろ「セニオリス共産党からの任命が何名であるか」に集まっていた。最終的に承認された大統領補佐団人事は以下である。

役職名前所属
副大統領ズラトコ・ブロズ社会民主党(左派)
外務長官アナ・クラリツ社会民主党(左派)留任
防衛長官ミレンコ・メシッチ社会民主党(左派)
法務長官セナ・ラーゲルクヴィスト社会民主党(左派)
財務長官トミスラヴ・ヴチュコヴィッチ社会民主党(左派)留任
内務長官ズヴォニミル・クラニチャールセニオリス共産党
国土開発長官アンドリア・シュカレセニオリス共産党
教育科学長官イヴァナ・リンドヴァル社会民主党(左派)
経済産業長官アンドリア・ヴライサヴリェヴィッチ社会民主党(左派)留任
資源・エネルギー長官ペトラ・ウーシッチ社会民主党(左派)留任
運輸衛生長官エレオノール・ペルコビッチセニオリス共産党
農務環境長官アンドリア・ブラシッチ社会民主党(左派)
労働長官ミルコ・ヴライサヴリェヴィッチ社会民主党(左派)留任
厚生長官クリスタ・カティッチセニオリス共産党
行政改革長官ダリオ・マテシャ社会民主党(左派)

人事は社会民主党の左派及びセニオリス共産党によって承認された。進歩自由党の支援を要したバルバリッチ政権や大統領が無所属であったオリーン第1,第2政権と異なり、全ての長官が社会主義の人民戦線から任命される予想通りの展開であった。注目されたセニオリス共産党からの氏名は4名であり、バルバリッチ政権時の共産党系無所属を含めた3名と比較しても多い結果となった。

オリーン第2政権からの5名の留任はやはり社会民主党の左派からの出身者であるが、その左派出身長官の間でも明暗が別れた。任命が見送られたアンドレイ・ラチャン前副大統領やドゥブラフカ・シュカレ前国土開発長官などはセニオリス共産党に対しやや批判的な立場と目されていた人物だった。野党勢力はこうした動きを「セニオリス共産党の影響力の拡大」として見ており、警戒感をより一層強めている。
また、これまでの所比較的”穏健”な人物が任命される傾向にあった治安維持等を担う内務長官に共産党から指名されていることも野党勢力の不興を買っている。ズヴォニミル・クラニチャール新内務長官は「大統領の公約である平和裏な社会主義革命を実現すべく全力を挙げる」と表明したが、この発言が却って「共産党による言論弾圧を想起させる」と猛反発を受け、新長官は早々に「私は自由社会を尊重している」と釈明に追われた。

議会と大統領を人民戦線が制した今、共和国が社会主義体制の導入に歩を進めていくことは間違いない。保守勢力が猛反発する不穏な情勢の中、政権は果たして平和裏な革命を実現することが出来るのか。イェリッチ政権に課せられた責務は決して軽くない。

【社説比較】社会主義体制導入へ 共和国の歩む道とは? 

<セニオリス共同国際通信>

967年5月の第5回選挙では社会主義革命を掲げた人民戦線が大統領選、議会選の双方を制した。ミラ・イェリッチ新大統領は改憲に基づく社会主義体制化を明確にしており、否が応でも共和国が社会主義体制導入に向かっていくことは確実となっている。

共和国において国外の社会主義国家のモデルとしてよく挙げられるのは、カルセドニー、ヘルトジブリール、ヴェールヌイの3カ国である。他にも武力放棄により体制を打倒し誕生したリブル民主主義人民共和国や、無政府地域からシンギャラリティ計画に基づき成立したヴェニス・コンプレックス内のセフィラ09「ガヴリール社会主義帝国」なども社会主義の事例として知られるが、いずれの事例にしてもそれぞれに全く異なった背景を有しており、体制についても国・地域ごとに特色が異なり統一的な”社会主義”の有り様などは見出だせない。

共和国が歩む道とは、一体どのような物なのであろうか?

労働者ネット1000は「人民の勝利」と題し、第5回選挙における人民戦線の勝利は「社会主義体制実現に向けた人民の努力が実を結んだものであり、そして労働者にとっての記念すべき出来事だ」と称賛した。社会主義体制の有り様としては「社会主義の根幹とは、社会の欠かすことが出来ぬ歯車たる労働者に寄り添うことだ」とし、「無産の象徴である資本家の欺瞞を打ち砕き、公有化・国営化を断として押し進めるべき」と主張した。

イグナイト・タイムズは「社会主義化を決断するまでの過程は全て民主主義の結果だった」と指摘し、「人民戦線は少なくとも今の所民主主義の尊重しているように見える」と評価。保守勢力の不穏な動きについて「闇雲な阻止は民主主義を破壊せんとする試みだ」と断じた。一方で「民主主義といった価値観は一度崩されれば元に戻るのは困難だ」とした上で、「社会主義体制下における権利の抑圧について、政府は大きな説明責任を果たさなければならない」と注文した。

新セニオリス通信は「第二共和国の終わりの時」と題し、今回の選挙結果を「経済的自由主義に対する最後のトドメ」と評価。社会主義体制において一定の権利の制約が想定されることについては「建国当初の共和国では考えられなかったことであり、また許される価値観でもなかった」と指摘した。一方でこうした選挙結果は「一朝一夕で生み出されるものではない」として、「これまでの穏健勢力の全てが国民の不満に寄り添えていなかったことは間違いない」と指摘。「闇雲に反対を唱えるのではなく、何が足りなかったのかを真摯に見直して欲しい」と反対論者に対し注文した。

北方セニオリス新聞は「社会主義者の脅威が迫っている」と指摘し、今回の選挙結果を「社会主義勢力による共和国憲政にたいする最大の挑戦」と評価。「今こそ共和国の守るべき価値観を見つめ直すべきだ」と主張した。また想定される社会主義体制化が「国民投票を通過する必要がある」と確認した上で、「来る国民投票における行動をよく考えて欲しい」と訴えた。

ヤドラスコ・ニュースは「民主主義の自滅」と題し、今回の選挙結果が「闇雲に憲政という建前を尊重しようとした末路だ」と酷評。「自称穏健主義者はこの流れを止めるどころかむしろ助長していた」と評価し、「我々の愛すべき国家が危機にさらされている。今この国を守るために為さねばならぬことは明らかだ」として反対運動を呼びかけている。

イェリッチ政権の誕生は共和国に多大な変化を与えることは間違いない。社会主義体制導入の是非を問う国民投票の時は刻一刻と迫っている。市民らは共和国に対しどのような審判を下すのかが注目される。

その他

  • 【政治】イェリッチ大統領、大統領令第111号『社会主義導入に向けた憲法議論の開始』に署名 社会主義支持の姿勢を鮮明に(北方セニオリス新聞)
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