885年7月19日付
ガトーヴィチ内戦終結 入国基準正常化
884年9月、ガトーヴィチ民主帝国内部において「ガトーヴィチ・ツァーリ国」が蜂起したことにより生じた瓦内戦は両政府の統合と統一選挙の実施、君帝継承論議の終結を定めるスヴャトホースト合意が為されたことで終結した。合意に基づく施策が885年1月までに完了し、同国の情勢は完全に正常な軌道へ戻った。
これらを受けて政府は885年1月中にガトーヴィチ人入国基準の一時的な厳格化を定めていた「瓦地域対応緊急特例法」の失効を宣言した。特例法は「ツァーリ国」関係者によるトルキー国内における犯罪行為などを警戒したもので、野党第一党のトルキー労働党や共産党、与党内の左派が主導し制定されたものだった。
共産党のアルズ・クビライ人民院議員は「大連立による政権運営などいまだ政情の混乱が続いてる」と指摘する一方、一連の内戦終結を受けて政府は「同国情勢が正常状態に戻ったことに安堵するとともに、同国の復興が速やかになされることを願っている。」とコメントした。
共産党重鎮ら3名が引退 急進派の党掌握は不可避か
共産党のメスト・イェシルメン党代表、ファルク・エルケン書記長、サム・バヤル前選対議長の重鎮として知られる3名は884年12月、共同で会見を開き政界からの引退及び党役職からの辞任を表明した。
3名は引退の事由として「求心力の低下」を挙げ、同党急進派との論争に次第に追い詰められている守旧派の状況を明確に示すこととなった。
地域に強固な基盤を有し、共産党の精神的支柱でもあった3名の引退は同党の守旧派に大打撃となるものと見られ、勢いづく急進派による党全体の掌握は待ったなしの状況となっている。
3名は共に人民院議員として活動しているが、選出選挙区の定数は全て4以下であることから885年4月に補欠選挙が行われる。
急進派出身のヤウズ・エクシオウル選挙対策議長は「党の運営に尽力してきた3名に敬意を表し、共産党の議席を守り抜く」と意欲を語ったが、急進派は守旧派の憔悴状態を尻目にその基盤を完全に急進派に塗り替えることを目論んでいるとされ党内の禍根となりそうだ。
885年4月補欠選挙実施 共産党は全敗
885年4月、共産党議員3名の辞職に伴う補欠選挙が3区において実施され、結果は即日公表された。
選挙戦は共産党の基盤として知られるコンヤ県第5区(定数3)とマラテヤ県第6区(定数3)、右派の基盤の中で激しい選挙戦の末共産党候補者が勝利したアンタリア県第7区(定数2)において行われた。
全選挙区において守旧派重鎮の基盤を塗り替えることを目論む共産党急進派が出馬しており、当選者は1名のみという狭き門の中で各政党は推薦などの調整に明け暮れ、選挙戦は事実上「共産VS非共産」の構図となった。
選挙結果は共産党出身の候補者は全て落選し、共産党急進派の目論見は外れ人民院における共産党会派は3議席を喪失することとなった。
コンヤ県においては守旧派が支援した候補が急進派候補の得票を上回り、急進派は選挙戦略の見直しを余儀なくされそうだ。
それぞれの詳細な選挙結果等は以下の通り。
コンヤ県第5区
有権者総数:782,533人 投票率:67.6%
当選 | 候補者名 | 政党 | 得票数 | 支持・推薦等 |
---|---|---|---|---|
○ | ファリフ・ジュンブル | トルキー労働党 | 330,229 | 社会民主党、共和人民党、緑の党、公正党が支持 |
ジャフェル・アイクル | 共産党 | 138,859 | 共産党守旧派 | |
キユルル・エヴェレン | 共産党 | 60,255 | 共産党急進派 |
メスト・イェシルメン=共産党代表の出身地であるここにおける選挙は、社会民主党、共和人民党、緑の党、公正党の右派勢力が全て独自候補擁立を見送ったことで事実上の左派選挙となった。
共産党は当初イェシルメン氏の右腕として働いたジャフェル・アイクル氏を擁立したが、急進派は前回選挙において党首への刺客として出馬していたキユルル・エヴェレン氏を再度擁立し明確に対決姿勢を示した。
結果としては右派政党の支持を取り付けたトルキー労働党のファリフ・ジュンブル=元人民院議員が県政与党である労働党の基盤票や共産党への不審票のみならず、内紛に呆れた共産党支持者の票までも吸収し漁夫の利を得る格好となった。また刺客を送り込まれたアイクル氏も急進派のエヴェレン氏を抑え込むことに成功し、急進派の目論見は大きく外れることとなった。
エヴァレン氏の敗北に関しては「人格や性別が把握できず、青い服装に拘り妙に幼い容姿を持っているという不気味さが票離れを生んだ」とこぼす急進派関係者も見られ、同氏は「私の不徳の致す所だ」と謝意を述べた。
アンタリア県第7区
有権者総数:883,112人 投票率:79.8%
当選 | 候補者名 | 政党 | 得票数 | 支持・推薦等 |
---|---|---|---|---|
○ | ピリー・オザイ | 公正党 | 370,907 | 緑の党が推薦 |
ギュズィデ・セキ | 社会民主党 | 207,791 | 共和人民党が推薦 トルキー労働党が支持 | |
バイェーズィート・メネメンジオウル | 共産党 | 125,973 | 共産党急進派 |
アンタリア県は共和人民党や公正党の基盤として知られるが、この第7区の前回選挙ではファルク・エルケン=共産党書記長が巧みな選挙戦術を展開し県内で唯一共産党として当選しており、同県内の共産党組織の精神的支柱として同氏が一層重視される要因となっていた。
この補欠選挙には前回選挙において共産党に敗れ惜しくも当選を逃したピリー・オザイ=前アンタリア県議(公正党)、初代内閣総理大臣のメフメト・セキの家系出身の女性で人民院への鞍替えを目指したギュズィデ・セキ=元地方院議員(社会民主党)が早々に出馬を表明したが、共産党守旧派は同氏の引退以降有力な候補を擁立するに至らず、急進派の強引な推薦に乗せられるがままとなった。エルケン氏選出時に協力関係があったトルキー労働党は急進派の候補者に嫌悪感を示し、早々に社会民主党候補者に支持を表明している。
選挙戦中セキ氏は第四共和政の重視を強調しメネメンジオウル氏はエルケン氏の社会主義精神の強化を主張したが、基盤や地の利を活かし党組織の力を存分に発揮したピリー・オザイ氏が勝利を収めた。
メネメンジオウル氏はエルケン氏が得ていた得票も大きく割ることとなり、敗北を宣言した。
マラテヤ県第6区
有権者総数:605,901人 投票率:78.4%
当選 | 候補者名 | 政党 | 得票数 | 支持・推薦等 |
---|---|---|---|---|
○ | セルピル・エリジェ | 緑の党 | 235,089 | 社会民主党、共和人民党、トルキー労働党、公正党が推薦 |
セレン・バヤル | 共産党 | 234,483 | 共産党急進派 | |
イスメト・カヤジ | 無所属 | 5,453 | 共産党守旧派が支持 |
農業を基盤とするマラテヤ県は環境主義と共産主義への関心が強いことで知られ、前回選挙においてもこれらとの関連を主張した候補者が多数当選する結果が出ている。
マラテヤ県中においても特に閑散とした地域とされるこの第6区はこの傾向が特に著しい。国政進出を目指すセルピル・エリジェ=前マラテヤ県議はイスラフィル政権の全面的バックアップを受け、「環境至上」を訴え非共産主義票の吸収も狙った。一方共産党急進派は前回選挙における当選者だったサム・バヤル=前共産党選対議長の次女であり同氏への刺客でもあったセレン・バヤル=元人民院議員を擁立し、共産主義精神の重要性を訴えた。
選挙戦は著しい接戦となり、最終的に606票という小差を制して緑の党のエリジェ氏が勝利を収めた。これらの動きより距離を置く層より立候補したイスメト・カヤジ氏は埋没し票を伸ばせなかったが、5,453票との数字は勝敗を分けた票より大きなものであり、バヤル氏の陣営の関係者は「ここを拾えていれば」と嘆いた。
「赤と緑の女性の対決」を制したエリジェ氏は「厳しい選挙戦だった。」と振り返り、陣営に携わった関係者らに感謝を示した。
その他
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