963年7月29日付〈中央通信〉
28日、生産搬送配給委員会、住環境委員会、動力委員会は共同で高速鉄道の建設プロジェクトを発表した。この高速鉄道計画はヴェールヌイ社会主義共和国から技術導入を行うこととされているが、国内経済開発に外国技術が採用されることは極めて異例となる。3委員会の発表によれば、計画されているのはクリソプレーズ市を起点とする3路線で、それぞれカルセドニー島南端のユーファストーン市、東端のジャスパー市、北西端のコーサイト市を終点とする。クリソプレーズ=クリストバライト間は970年の開業を予定しているが、3路線の全線開通は980年代半ばとなる見通しだ。
高速船による移動が定着しているガーネット州と異なり地域間移動手段に乏しいカルセドニー島内における高速鉄道の必要性は長年指摘されてきていたが、大規模な高速鉄道プロジェクトは各委員会の権限の範囲内では実施が困難であり、人民党・革新党が訴える「各委員会の独立性」が壁となって実現されてこなかった。960年選挙で連合党が下院の単独過半数を確保し、委員会を横断する自主管理連合組織間連携組織の設立を制限する既存の各種法令(通称:反南の風法)を廃止することが可能になったため、これを受けてのプロジェクト立ち上げとなった形だ。
3委員会は高速鉄道の整備・運営のための自主管理連合組織連盟を立ち上げ、各委員会傘下の自主管理連合組織をこの連盟に所属させることで「委員会の自治」と「委員会横断型プロジェクトの推進」を両立するとしている。設立される連盟の会長就任が内定しているトレイ・コーサイト生産搬送配給委員長運輸局人流部長は記者会見で「教条主義的になった委員会社会主義の制約を解消し、国内経済を活性化することが新時代の共和国に求められており、高速鉄道計画は委員会横断型プロジェクト・外国技術導入という形でその第一歩となるだろう」とその意義を強調した。
ヴェールヌイ鉄道企業長のアレクサンドル・エフレーモフ氏も記者会見に出席し、「政治外交経済のあらゆる分野で比類ない成功を収めているカルセドニーにおいて、この横断型プロジェクトはさらなる飛躍をもたらすものであると理解しています。その象徴的事業である高速鉄道計画に、パートナーとして参与できることを、我々は光栄に感じています。我が国においても、本計画は高い関心下にあります。両国の英知を結集すれば、この世に不可能な事業はないということを示してまいりたいと思います」とコメントを出した。
SLCN、石動・リブル両国に加入を招請
25日、SLCN条約理事会は大石動帝国及びリブル民主主義人民共和国に対してSLCN新憲章への加入を招請することを決定した。両国は近く正式にSLCNに加入するとみられており、ローレル滅亡以降加盟国が共和国と御岳大社領御岳山諸島の2ヶ国のみとなっていたSLCNは加盟国を4ヶ国とすることとなる。石動・リブル両国とは石動のWTCO加盟以降SLCN加入に向けた交渉が続けられてきたが、この度正式に招請が実現する形となった。新たな安全保障関係の拡大に極めて慎重な人民党、FUN中心主義を正面に打ち出していることから安全保障条約であるSLCNの重要性自体を低く見る革新党に対してWTCO加盟国との関係拡大を掲げた連合党が選挙に勝利した結果が外交面でも表れた形だ。
WTCO加盟5ヶ国のうち神聖ガトーヴィチ帝国を除く4ヶ国がこれで共和国と相互安全保障関係に入ることとなるが、連合党内では「瓦国にもSLCN加盟を打診すべきだ」という声が聞かれている一方、対瓦関係の拡大に消極的な世論もいまだ根強いことから明確な結論は見いだせていない。親瓦的な色の強かったアンク・モスアゲート前外交委員長が引退し、連合党内では比較的慎重派のテレト・ブラッドストーン外交委員長が就任したことも「対瓦関係は960年代前半に大きな判断を行うことはすべきではない」という風潮を生み出している。
人民党は当然ながら「対瓦同盟は共和国を813年戦争のような無用な対烈戦争に引きずり出しかねない」とガトーヴィチとの安全保障関係には反対しており、「ガトーヴィチのSLCN加入招請は上院の同意がない限り無効」とする趣旨の訴訟を提起することも検討しているとされる。人民党の影響力がいまだに根強い中央処理委員会裁判局がこの主張を受け入れれば、人民党は下院の10%に満たない議席数を有するのみであるにもかかわらず、上院の影響力を行使することでガトーヴィチのSLCN加入招請を拒絶することができる。連合党執行部はこのような状況も踏まえて「まだその時期ではない」という態度を取ることにしたようだ。
【国際】ロムレー国内に水質異常なしとの路政府正式表明後、ロムレーへの旅行者過去最高の見通し。
【経済】油田探査の再開、「反南の風法」の撤廃と合わせて南の風にさらなる収入をもたらすか。