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新貿易版箱庭諸国からの引退についての考察

※本記事は貿箱アンソロジーです

概要

新貿易版箱庭諸国とはおよそ10年の歴史を持つゲームであり、当初一桁の年代から始まったフリューゲル歴はまもなく4桁に届こうかというところに達している。

現存する最古の国家は恐れ多くもこのゲームの管理人でもあらせられるノイエクルス自由国である。建国は「1ターン」とのことであり、現実世界2006年11月27日に1年を36期とする「暦年制定宣言」が成されるよりも前のようである。その歴史には凄まじい重みを感じざるを得ない。
それに次ぐ第二の古参国は南瓜共和国となるらしい。残念ながら具体的にフリューゲル歴何年に建国が行われたのかを示す資料を発見することは出来なかったが、フリューゲル歴170年に「南瓜連邦併合要求」が行われたことは確認できた。逆にそれ以外には何も見つからないのでこわい
三番目に古い現存する国家は277年に「レゴリス首長国連邦」として建国されたレゴリス帝国まで下り、さらにガトーヴィチ民主帝国(「ガトービチ帝国」として427年建国)が続いている。
建国時期が不明瞭な南瓜共和国はともかくとして、それぞれの古参国の建国時期には100年~200年ほどの間隔が開いている。現在10世紀に及ぶフリューゲル歴と比べ150年、250年とは短いように感じてしまうが、これでも筆者が担当するトルキー社会主義共和国(631年建国)と比較すると建国から現在までの歴史に近い年月である。更新頻度が現在よりも短かった可能性を考えてもこれは決して無視できる長さではない。(そして、旧旧貿箱掲示板の「【投票】フリューゲル暦改暦について【意見募集】」を見るとその可能性も低いようだ)
当然、かつてのゲームにはこれらの国家のみが存在していたという訳ではなく、むしろ現在からは想像が付かない全く異なる国際情勢が形成されていた。かつての貿箱掲示板から雑談スレッドの機能をも受け継いでいる貿箱Slackではこうした古参プレイヤーから「あの国は~」のようなこぼれ話も稀に聞かれ、この10年の間においてはプレイヤーは著しく入れ替わってきていたということが伺える。

そして、現在受け持つ国家の建国時期そのものは遅いが実際にはかつての国際情勢の姿を知っている潜伏転生組も居る。それを考慮するとむしろ貿箱の主要プレイヤーは昔から変わっていないのではとも考えられるが、彼らが筆者のようなプレイヤーが居る場で口を開くことは決して無いわけなので、真相は想像するしかない。

さて、このように歴史が長い新貿易版箱庭諸国においてプレイヤーの引退とはもはや常識なのであるが、一方で現実の現代社会においては国家を成す領域、国民、主権が自然消滅するというのは少なくとも簡単に起こることではない。”消滅”にはまた別の”誕生”かもしくは”強制力”が伴っていることがほとんどであり、一切圧力が働かずとも”消滅”が起こりうるというのは特異的と言える。
また役者がそれぞれ本来の自分とは全く異なる姿を演じる演劇などで考えると、箱庭諸国は国家を演じるものではあるが、新貿易版箱庭諸国の公演は幕が下りること無く10年に達しようとしている。幕が降りない間にその演者がすっかり入れ替わるというのは演劇においては考えられないことであり、”国家を演じる”点に関しても特異的と言える。

しかし現実として、新貿易版箱庭諸国において引退が常識として受け止められていることもまた事実である。本記事ではこの「常識」について考察していきたい。

実例

引退の間際実際どのようなことがあったのかはその場に居ないと知り得ないことが非常に多い。ここでは執筆者が実際に”見た”(ちゃんと見てたとは言ってない)事例について考察する。往々にして放棄時期はあらゆる資料においても明瞭でない事が多く、説明が難しい部分が多い。また後から確認できる資料が一行報道のみという場合も多いが、一方で長文報道などによって兆候を示している場合もあり、滅亡までの道のりは様々である。さらなる情報はカルセドニー先生に頼むべし 多分先生のほうがもっとよく知ってる

ざっくばらんに分類してしまえば「賑やかな引退」か「静かな引退」か、そして「超長期凍結」かによって区別ができるだろう。

まず「賑やかな引退」の事例については、実のところの数としてはあまり多くない。筆者が気づいてないだけかもしれない
成蘭連邦王国(フリューゲル歴668年12月滅亡[出典])は「内乱の拡大」を事由に滅亡。資源は関係各国に分配したようだ。
ヴァノミス連邦(フリューゲル歴728年8月頃滅亡)は「【社会】熾烈な地域対立、民族対立は激化を辿り内戦は泥沼化、もはや国際社会復帰は不可能(出典:1行報道newsID:6672)」との報道を最後に滅亡。Twitterによれば一部資源は新興国に流されたとも言われるが、定かではない。[出典]
ストリーダ王国(フリューゲル歴898年1月頃滅亡)は「【政治】ローゼッカー首相、フリューゲルに感謝と別れを告げる声明を発表 他惑星移住を前に(出典:1行報道newsID:8499)」との報道を最後に滅亡。他惑星移住の事由としては「急激な地殻変動(出典:1行報道newsID:8489)」が挙げられていた。資源の再分配が行われた痕跡は確認できない。
外交などの内部事情を知る術は無いものの、これらに共通する点は国家の放棄に対してもRPによって理由付けを行っていることである。挙げた3例においては内戦、内戦、緊急脱出とあまり明るい事由ではないが、直前までRPを行うことは事情が急激に悪化し箱庭諸国に触れることが出来なくなった状況では難しいことであり、平時よりある程度滅亡に至る道筋を想定していた可能性も考えられる。

一方の「静かな引退」については、新貿易版箱庭諸国において圧倒的に多い引退方法であるといえる。以下では間近な代表例のみを挙げる。
フリューゲル歴で241年9月に建国され、非常に長い期間南瓜共和国に次ぐ古参国となっていたタヂカラオ国は最後の1行報道が707年10月(出典:newsID:6493)のまま32251期にひっそりと幕を下ろした。
一時は1億を超える人口を誇る超大国となっていたフェネグリーク帝国は長期放置の結果その規模を大きく縮小し、そのまま32679期に滅亡した。
西瀛公国、メロシラ王国は成立当初貿箱Slackや外交掲示板で積極的に発言するなど意欲的な活動が見られたが、次第に活動を鈍化させ沈黙。最終的に経済の発展を見ること無くそれぞれ32055期、32692期に滅亡した。
レガルトニアス共和国は現実世界2020年3月の凍結解除以降国名の変更など精力的な活動が見られたが、同じく次第に活動を鈍化させ沈黙。32453期に滅亡した。

これらは基本的にRPにおいては何ら兆候を示されること無く、ゲーム上で放置ターン数が蓄積することでのみ引退の気配を感じさせる場合が多い。これは急激な事情の変化やモチベの低下にPLが対応できなかったものと考えられ、Wiki編集など何かしらの要素が欠ける新興国においては特によく見られる現象でもある。ただし無言で唐突に放棄コマンドを入力した場合もあるのかもしれない。[要出典]

滅亡寸前のフェネグリーク帝国の状況

特殊な事例である「超長期凍結」は、管理人によってゲーム上のターンの進みを一時的に停止させる機能である「凍結」の状態が非常に長期に渡り続く状態である。これはゲーム上は引退にほぼ等しい状態でありながら中の人は復帰を目指している場合もあり、実際にゲームから引退しているのか否かは判別することが難しい。
現在の事例としては普蘭合衆国、ヨリクシ共和国、西岸州独立連合共和国が挙げられる。
これらの3国はそれぞれ2019年7月16日[出典]、2017年3月16日[出典]、2016年11月30日[出典]からの凍結を申請しているが、これらの申請において希望していた凍結期間を超えて現在も凍結状態に有る。
これらの国のPLが既に引退してしまったのか復帰が少々遅れているだけなのかを判別する術は連絡が取れない限り無い。一方で過去には超長期に渡り凍結状態にあるとしてPLの確認無く(?)凍結解除に至った事例が2008年[出典]、2012年[出典]、2015年[出典]に確認され、凍結が必ずしも永続的でないのも確かである。
凍結が超長期に渡る理由としては急激な事情の変化やモチベの低下にPLが対応できなかったと考えられるが、一方で凍結申請という事前の対応を行っていたという点よりこれらは「賑やかな引退」と「静かな引退」の中間のような事例であるとも言えよう。

考察

さて、これらの事例より新貿易版箱庭諸国における引退という事例の特異性について考察する。

概要に示したとおり、実際の国際社会に於いて「相手国が引退する」という事例はまず起こり得ないものである。しかしこれまでの新貿易版箱庭諸国において過去に突然引退したために復帰後に問題とされる事例は確認されない。これはローカルルール上にそのような規定が存在せず、追求しようとすればRPの前提を破壊する行為となることが第一であろうが、それに並んで「新貿易版箱庭諸国をゲーム開始時から遊んでいるプレイヤー」が既に管理人以外に存在しないことも大きいだろう。

100%居ないとは言い切れないと思うが

ある国が突然の引退した場合の弊害は、スクリプト上では貿易関係の突然の断絶、またRP上では条約の失効や国際組織の崩壊など数々存在する。
熾烈な舌戦を繰り広げ、時に揚げ足取りさえ容赦しないこのゲームにおいては当然「引退による損害の補填」という”口実”も思い浮かぶことだろうが、これは「ゲームを最初から遊んでいる」という前提によって、引退をするという行為を戦略的に用いることが出来る者同士でしか成り立たない。
ゲームの開始時点が異なる者に対してこの論法を誤って発動してしまえば非難の応酬、あるいは自身の立場を逆に危うくする結果になりかねず、もはやその前提を共有する者が1名しか居ない以上はこの論法も成立し得ないのである。

またロールプレイングという点に関しても、”演者”がことごとく変わっても”公演”が問題なく続いているという特異性がある。
これはこの新貿易版箱庭諸国が10年近くに渡り継続していることにより生まれたものでもあろうが、第一の要因としては変化が現実時間で数ヶ月、数年の単位を掛けた緩やかなものだったことが考えられる。

ここでいう変化の要因とはもちろん主要なプレイヤーの引退である。事例において確認したとおり、プレイヤーの引退のほぼ全ては長期放置による「静かな引退」である。国の放棄とは8~9世紀中に起こったカルセドニーの入力ミスによる滅亡(資料発見できず、提供願います)など極一部を覗いて基本的に不可逆的な変化であり、一度起きてしまえば国際情勢は二度と元の形に戻ることがない。
一方で長期放置による滅亡は360ターン前後(現実時間約2ヶ月)の連続した放置を要し、これによって引退による変化の影響は個別のRPに対し非常に緩やかなものとなる。
この不可逆的な変化が緩やかなスパンで積み重なることにより、”演者”がごっそり変わっているのに”公演”は問題なく続く状態が形成されているのであろう。
フリューゲルにおいて各四半世紀の国際情勢はそれぞれで全く違うものになっていると考えられる。今フリューゲルの市民が見ている国際社会は、その人生を終えるまでに全くの別物となっているのかもしれない。全くもって地図もへったくれもない世界である。

総論

考察を進めるに当たり、「新貿易版箱庭諸国で相手国に何かを求め続ける」という行為が非常に薄い氷の上に有ることを実感した。
まず大前提として、「相手国に何かを求める」には相手がそれに合わせたRPをしていなければならない。そして第二の前提として、それを継続してもらうためには、その間相手側の興味関心時間などが新貿易版箱庭諸国に向いていなければならない。
その前提の上で、更に相手に何かを伝えるためのハードル、相手に受け入れてもらうためのハードル、相手に継続してもらうためのハードル等々満たさなければならない条件が数多く存在するわけであり、外交とは難しいものなのだと今更ながらに痛感した次第である。

筆者はこれまでのRPを振り返って「なんとかなるだろう」という水準でRPを展開し、たまたまなんとかなってきたためにここまで来れたに過ぎないように思う。トルキー社会主義共和国の安全保障の根幹となっていたSSpact加盟、長期凍結後の国際社会復帰の成功、商農国としての食糧輸出政策の成功、これらは全て自らの力だけでは決してなし得なかったことだろう。

筆者の担当するトルキー社会主義共和国は631年に建国されていた。これは建国時期的に近い世代がセビーリャ(626年)、ヨリクシ(634年)、西岸州(648年)。少し上にロムレー(611年)、カルセドニー(616年)、ヘルトジブリール(619年)。少し下にローレル(674年)が居るというあたりであり、そんなに前だっただろうかと考え込んでしまった。

この違和感の正体は729年~823年という長期に渡り凍結を経験したこと、そして初期におけるRPが漫然としたものであったことも大きいのかもしれない。

考えてみなくともフリューゲル国際連合安全保障理事会の一般理事国になれないのは明らかなことだった。こんなやり方では”上”に行くことは決して出来ない。建国の時期が近いカルセドニー、ヘルトジブリール、ロムレー、ローレル、セビーリャは、私が腑抜けている間にどのような舌戦を戦っていたのだろうか。
しかし、それでも”ここ”まで来ることが出来たのは、非常に幸運なことだった。
これまで私をもり立ててくださった皆様にはこの場において感謝を申し上げたい。ありがとうございました。

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