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プレンコビッチ首相暗殺 / 第14回議会選挙実施 他

1073年3月13日付

【社会】プレンコビッチ首相暗殺される 犯行動機めぐり憶測飛び交う

<北方セニオリス新聞>

1069年11月、ハルクステン城において式典に参加中であったセナ・プレンコビッチ第5代首相が銃撃を受け倒れた。首相は直ちに近隣の医療機関に運ばれたが、治療の甲斐なくそのまま帰らぬ人となった。61歳だった。

容疑者はただちに特定されたが、首相を撃ったのと同じ不明の形式の銃によって自殺を図り、意識不明の重体となった。手術は成功したものの現在も意識は戻っておらず、警察は意識が戻り次第事情を聞く方針だ。

突然に発生した首相の暗殺事件にセニオリス全土が震撼している。職務を引き継いだキャロリーナ・ファブリス首相代行(兼外務長官)は直ちに記者会見を開き、「我々のコモンウェルスを作り上げ、超越のあるべき姿を示した偉大なる人物を失った」と個人を悼んだ。首相暗殺という事態が勃発したことについて「このような凶悪事件を抑止できなかったことは、我々の治安行政にとって痛恨の極みだ」と謝罪。「このような事件を二度と許してはならないと肝に銘じ、容疑者の動機など慎重な捜査を進める」と言明した。ミルコ・モドリッチ内務長官も同日に会見を開き、「今回のような事態を許したのは、治安行政を担う我々の致命的な失態だった」と認めた。モドリッチ長官は責任を取り首相代行に対し辞任を申し出たものの慰留されたと明かし、「首相代行が言明した通り、慎重な捜査と再発防止を徹底し、市民の安心を取り戻す」とした。

容疑者の動機を巡っては様々な憶測が飛び交い、週刊誌など各媒体が競って報道を重ねている。世論の注目度は著しく高いものの、捜査関係者によると容疑者には親族等の身寄りもなく、人間関係が希薄であったために動機の解明は難航している模様だ。首相代行は「容疑者の犯行動機を巡っては現在はあくまで捜査中の段階である。世論の関心が高い事件でもあることから、憶測による報道は厳に謹んでほしい」と報道各社に要請した。

【政治】第14回議会選挙実施 中道連立の崩壊

<イグナイト・タイムズ>

第二共和国の憲政史上初の解散に伴う第14回議会選挙は1071年1月に実施された。

キャロリーナ・ファブリス首相代行が解散に踏み切った経緯には、セナ・プレンコビッチ首相暗殺事件後における与党連立内の政治的温度差があった。ファブリス首相代行の所属政党であり議会第一党でもある超越同盟は次期首相について、ファブリス首相代行をそのまま第7代首相に任命することを主張した。しかし連立の主要パートナーであり自党の首相を不幸な事件で失った格好となった社会民主党は、プレンコビッチ首相の後継として自党出身の人物が相応しいと主張。意見対立は直ちに連立の存続をも左右するほど深刻なものではなかったが、ファブリス首相代行はこの意見対立が与党批判に繋がることを恐れた。そこで首相代行は選挙戦を通じて首相任命の行方を確実にすることを選択し、第二共和国史上初の解散総選挙が幕を開けることとなった。「競争を通じ超越同盟の優位が確認されるなら、社会民主党も納得するだろう」とは与党関係者の声だった。

しかし首相暗殺という前代未聞の事件から間もない選挙戦は、飛び交っていた事件に関する憶測の応酬を激化させ、結果的に「全ての価値観を尊重する」コモンウェルスの価値観とは程遠い血みどろの闘いとなってしまった。中道連立内での競争と、プレンコビッチ首相の”弔い合戦”として中道連立優位の確定を目論んだ首相代行にとって、まさしくシナリオ外の展開となったといえよう。

発端となったのは、左右2つの大手報道機関が報じた容疑者に関する報道記事であった。左派系の労働者ネット1000による「暗殺事件の真相とは 容疑者は三色協会と結びつき」と題する報道は、暗殺事件の容疑者が大学生時代に三色協会の影響を受けるとされるサークルへの所属していたとするものであった。三色協会は「スラヴ正名運動」などスラヴ主義的な主張で知られる政治団体であり、労働者ネット1000は容疑者がこの学生時代を通じ「三色協会の強い影響下に置かれるようになった」と主張。犯行に至った動機を「第一共和国時代からの歴史的建造物でありハルクステン人の民族的シンボルでもあるハルクステン城に首相が訪れるという行為に、セニオリス人のスラヴ的価値観を汚されると思い込んだことによる一方的な犯行」と推測し、右派・民族主義を批判した。

一方右派系のヤドラスコ・ニュースは「左翼革命勢力の恐怖 アカの鉄砲が首相を撃った」と題し、容疑者が所属する労働組合を通じて共産党員との人脈を構築したと報じた。セニオリス共産党は第13回議会でも1議席を有する第二共和国建国以来の国政政党であるが、共産主義体制の実現のため暴力革命をも容認することで知られ、ヤドラスコ・ニュースはこの共産党との繋がりによって「容疑者は暴力革命に傾倒するとともに、1002年憲法(社会共和国)を改正した首相に強い恨みを抱くようになった」と推測。「首相がハルクステン城に訪れるという情報を掴んだ容疑者が暴力革命を実現させるために行った凶悪犯罪である」と主張し、左派・社会主義勢力への警鐘を鳴らした。

これらの報道は一様に、容疑者が生活する中で偶然にできた可能性もある「人的結びつき」を「容疑者の思想」に拡大解釈したものであり、犯行動機について一つの憶測を提供するに過ぎなかった。両紙に槍玉に挙げられた三色協会と共産党はそれぞれに「容疑者とは全く無関係であり、所属歴もない」と声明しており、捜査機関も「動機解明の一環として容疑者の人的結びつきも捜査しているが、現段階で断言できることは何もない」と憶測を事実上否定している。

しかし大手2紙が行ったセンセーショナルな報道は、首相暗殺という衝撃的事件の真相究明を望む市民の欲求を著しく刺激し、左右の対立は激しい誹謗中傷合戦へと発展した。中道連立の首相代行は激しい対立を前に「すべての価値観を尊重する」コモンウェルスの価値観と「冷静・正確な捜査」を約束したが、首相代行とミルコ・モドリッチ内務長官が共に捜査機関の成果として「まだ確実に言えることは何もない」とのみコメントし続けたことは「中道連立は対立する左派/右派を庇おうとしている」というさらなる憶測を呼び込むこととなり、選挙戦は泥沼の様相を呈した。

誹謗中傷の応酬となった選挙戦の中で、3陣営に共通した主張は「真相究明と再発防止」だった。選挙戦は泥沼であったが、最終的にリードを手にしたのは「治安行政改革」を掲げより具体的な再発防止策を示した社会党・共産党の左派勢力であった。優勢報道を受け焦ったとみられる極右のフルヴァツカ・スラヴ再興運動(HSPP)支持者が刃物を持って共産党の選挙集会に現れるという事件が勃発したことは、左派勢力のさらなる優位を確定づけた。

そして選挙結果は、セニオリス社会党が100議席増の143議席獲得、セニオリス共産党が24議席増の25議席と著しく荒れたものとなった。連立与党の超越同盟・社会民主党・進歩自由党は合わせて90議席を失う大敗を喫し、中道連立は誰の目にも明らかな形で崩れ去ることとなった。特に中道の進歩自由党・共和自由党は結党以来初めて議席を失うこととなり、旧自由党から細々と続いてきた自由主義の議席が初めて完全に消滅した。ファブリス首相代行は「プレンコビッチ首相が守りたかった価値観を我々が守ることができなかった」と悲痛の面持ちで語り、「権力継承はつつがなく行われるだろう」と言葉少なに敗北を宣言した。

社会党はこの結果を受けて「ブルジョワジー・反動・日和見に対する、社会主義人民の完全なる勝利だ」と宣言。社会党・共産党による社会主義勢力が議会の3分の2を制したことを受けて「一度損なわれた社会主義の価値観を今こそ復活させる時」と声明した。社会党のある幹部は「我々が連邦憲法を尊重する理由が無い」と断言しており、専門家は「社会共和国憲法下で遂に行われることがなかった『社会主義共和国』構想の実行を意味する」と分析している。

【政治】イバナ・ブロズ氏が第6代首相に

<北方セニオリス新聞>

1071年1月、第14回議会は首班指名選挙を行い、新首相に143票を得たイバナ・ブロズ氏を指名した。

マリン・フリードリーン大統領は議会の指名に基づき、同氏を共和国の次期首相に任命した。

なお、同日行われた議会・副議長選挙では議長にキャロリーナ・フィリポヴィッチ氏(セニオリス社会党)、副議長にはドラジャン・アシュネル氏(セニオリス社会党)がそれぞれ選出された。

【政治】社会主義の回帰 ブロズ政権を読み解く

<新セニオリス通信>

コモンウェルス成立と共に忘れ去られたと思われた社会主義者たちは、全土を震撼させた事件を契機に復活を遂げたようだ。

1071年1月、第二共和国史上初の解散に基づく議会選挙では、セニオリス社会党・セニオリス共産党の左派勢力が大躍進し、議会の3分の2を占める大勝を遂げた。解散を断行したキャロリーナ・ファブリス首相代行は、プレンコビッチ首相暗殺事件以降の後任首相を巡る与党内での温度差と中道連立の議席拡大を狙っていたが、選挙戦は暗殺事件に巡る各勢力の主張が交錯し混迷を極めた。与党は左右両派の展開する憶測に対しあくまで「捜査中だ」と突き放そうとしたが、この対応はいささか説明不足の印象を与え、中道勢力が対立する左派/右派を擁護しているとの憶測さえも与えてしまった。「全ての価値観を尊重する」コモンウェルスの価値観が損なわれた選挙戦の様相から、首相代行の戦略が失敗したことは誰の目にも明らかだった。

セニオリス社会党は、自党のみで議会の過半数を制する情勢を背景に、約31年ぶりの社会党出身の首相を任命する権利を得た。一部では第14回議会選挙で事実上”共闘”関係にあった共産党との連立も取り沙汰されたが、社会党内部は共産党の掲げる全体綱領主義と距離のある社民派が優勢の情勢であり、実行に移されなかった。

以下にブロズ政権の顔ぶれを示す。

役職名前所属
首相イバナ・ブロズセニオリス社会党(社民派)
外務長官イヴィツァ・ポポビッチセニオリス社会党(社民派)
防衛長官セヴェリナ・チリッチセニオリス社会党(共産派)
法務長官ミラ・フリードリーンセニオリス社会党(社民派)
財務長官フラニョ・クトゥラセニオリス社会党(共産派)
内務長官トミスラヴ・サナデルセニオリス社会党(社民派)
国土開発長官サマンタ・ルジチカセニオリス社会党(共産派)
教育科学長官フラニョ・オジュボルトセニオリス社会党(共産派)
経済産業長官エレオノール・チリッチセニオリス社会党(共産派)
資源・エネルギー長官コリンダ・マルティッチセニオリス社会党(社民派)
運輸衛生長官ニキツァ・ヴラトコヴィチセニオリス社会党(社民派)
農務環境長官ダリオ・シミッチセニオリス社会党(共産派)
労働長官ミルコ・クラリツセニオリス社会党(社民派)
厚生長官トミスラヴ・グラバルセニオリス社会党(共産派)
行政改革長官アンドレイ・タイチェヴィチセニオリス社会党(社民派)

イバナ・ブロズ新首相は会見において「社会共和国ですらなし得なかった、社会主義理念の国家体制化を実行する」と断言した。社会党幹部はこれを「社会主義共和国憲法を我々の手で遂に成すという意思表示だ」と明言したが、社会民主党所属のマリン・フリードリーン大統領はこれに「ある一つの価値観を強制する憲法草案に私が署名することはない」と反発し、数少ない社会民主党所属議員も反対する意向を示している。

大統領の署名を受けずに憲法改正を発議するためには議会の3分の2以上の支持が必要であるが、社会党単独ではこの議席数を満たしていない。首相に残された選択肢の1つとしては1075年に迫る第14回大統領選挙を待つというものがある。しかしある社会党重鎮は「国民投票での通過を考えるなら、第14回議会選挙での高揚が冷めきらぬうちに発議するのが重要だ」とし、共産党と連携し議会3分の2の確保を目指す方針を示している。

共産党幹部は「社会主義共和国の一刻も早い建設に必要な努力は、いかなるものであっても惜しまない」とし、早期発議に協力する意向を既に示している。全体綱領主義を掲げ暴力を辞さない姿勢を見せる共産党と議会制をあくまで重視する社会党は政策的距離が大きいが、現在のところ社会主義共和国憲法発議は双方の利害が一致する点となっており、早くも議会では2党主導による新憲法論議が始まっている。

しかしながら、早期発議を目指す方針の2党に対する野党勢力の反発は大きい。セニオリス民主党は「彼らが強引な手段に打って出れば必ずしっぺ返しを食らう」と牽制し、大規模な反対運動を展開することを辞さないとした。またフルヴァツカ・スラヴ再興運動は「彼らは”970年憲法”の教訓を忘れてしまったらしい」と、国民投票における否決後971年クーデターを招いた過去の事例を引き合いにして非難した。超越同盟もまた「彼らがあくまで手を取り合うことを拒もうというのなら、コモンウェルスを守るためできる限りのことをする」と同党としては例にない強い言葉で反対しており、首相が早期発議にあたりどこまで支持の輪を広げられるかが焦点となりそうだ。

その他

  • 【政治】フリードリーン大統領、大統領令第190号『コモンウェルスの価値観促進』に署名も議会にて無効決議 大統領の無力化鮮明に(北方セニオリス新聞)
  • 【社会】社会党政権により動く暗殺事件捜査 被害者の動機「民族主義的動機」と捜査関係者明言 被疑者意識不明も近く書類送検か(労働者ネット1000)
  • 【社会】歪められた法治主義 裏とり軽視の”動機”断定は首相の政治的意向か 被疑者周辺「アカの魔の手からあの子を救って」(ヤドラスコ・ニュース)
  • 【社会】検察、民主党・HSPP党本部を家宅捜索へ 「政治資金不正の疑い」も党関係者「社会党による政治的圧力だ」容疑否認(新セニオリス通信)
  • 【国際】ヴェニス荒廃 先セニオリス人に聞くこの先「ルッコラに呑まれ、スラヴに呑まれ、アカに呑まれた”祖国”に帰るくらいならこの地で飢え死ぬほうがマシだ」(北方セニオリス新聞)
  • 【社会】三色協会幹部に逮捕状 暗殺事件への関与疑い 協会声明「我々の無実は明らかだ」(新セニオリス通信)
  • 【国際】新たな国連大使にティホミル・ゴトヴィナ氏 「SSpact同盟理事国としての役割重く受け止め励む」(イグナイト・タイムズ)

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