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上院任期固定法案を巡って大統領と下院対立

929年1月29日付〈中央通信〉

 929年共和国議会に人民党・革新党・連合党の主要3党の議員からなる超党派議員グループが提出した上院任期固定法案を巡って大統領と議会の対立が生じている。この法案は、委員長・上院議員の任期を大統領選挙に連動させ、大統領が憲法の規定で再選が保証されている場合は委員長・上院議員の改選を行わない(任期が6年から12年に延長される)とするもので、下院が将来的に想定しているとされる「上院公選制」に向けた布石ともされている。イルト・デマントイド大統領はこの法案が成立すれば930年末に予定されている委員長・上院議員に関する人事権を事実上奪われ、現在の委員長と上院の構造のまま936年末の任期切れまで務めることになるためこの法案に強く反発している。一方の下院は仮に上院が法案を否決したとしても下院で再可決する構えであり、法案の成立は確実な情勢となっている。
 下院各党がこの段階で上院任期固定法案を提出した背景としてはイルト大統領と下院のイデオロギー的な対立構造が表面化してきたことが大きい。イルト大統領は「中道派」と呼ばれる社会主義に対する明瞭な支持を与えない政治勢力に属しており、近年極端に左傾化が進んでいる国内世論とはしばしば衝突してきた。経済的な安定が確保されていることから支持率はさほど低下していないとはいえ、各委員会の末端を構成する自主管理連合組織代表委員からはイルト大統領やその任命した委員長が「委員会の社会主義的な風土を無視して右翼的な人物を登用するケースが目立っている」との批判が上がり始めている。イルト大統領は委員会の末端からの批判などどこ吹く風で、「ミクロな視点しか持てない各自主管理組織を上層から統制することこそが結局のところ国家の繁栄に結びつく」と豪語してはばからないが、下院議員にとっては有権者である自主管理連合組織代表委員の支持を失うことは致命的であり、大統領の「暴走」を抑えにかからざるを得なくなった形だ。
 下院の将来的な思惑は上院議員を現在の(大統領が任命権を有する)委員長による任命から、各委員会の自主管理連合組織代表委員による公選(下院同様の選挙制度)に変更することにあるとみられている。委員会の「民意」が上院議員に、さらには上院議員が選出する大統領に直接的に影響するようになれば、大統領の「超然性」は一気に失われ、下院の多数党が大統領に対する影響力を強めることになる。一方で、与党人民党内にはそこまで急進的な改革には消極的な声も大きく、革新党・連合党も意見をまとめきれていないことからこれは実現するとしても930年選挙以降になると考えられる。

930年選挙に向けて各党始動

 上院任期固定法を巡って大統領と下院の対立が生じていることは横に置き、各党は930年選挙に向け準備を始めている。930年は924年末に大統領に選出されたイルト・デマントイド大統領の1期目の終了年でもあり、憲法の規定で再選が保証されるイルト大統領への信任を問う「中間選挙」としての役割を持つ、イルト政権の12年間で唯一の国政選挙であることから各党ともに普段以上に力を入れている。
 与党人民党は920年以降の議会多数党、あるいは924年以降の政権党としての実績を強調して過半数維持を目指す。共和国を貫く「委員会社会主義」のイデオロギーを強調し、「右翼に媚を売る」連合党や南の風に対する批判を強めるのと同時に経済の委員会による統制が安定をもたらしたと訴える。一方で、イルト大統領は社会主義のイデオロギーにこだわりを見せない「中道派」であることから人民党のイデオロギー重視の態度とは矛盾も生じており、野党各党からはこの点を攻撃されている。また、イルト大統領が推し進める「委員会が自主管理組織を統制する」形での中央集権化は「労働組合の自主性という共和国の自主管理組織の根幹を揺るがしかねない」との反発をサンディカリストから受けており、「イデオロギーなき中央集権化は権威主義と何が異なるのか」(連合党幹部)との声も上がっている。
 前回選挙で100議席近くを失い第二党に転落した革新党は、サンディカリストの人民党批判とは異なる角度から政権批判を展開する。すなわち、人民党政権はFUN総会を全体的に軽視しており、先の第7回通常会期で成立した決議が本会期であっさりと覆されるのを座視し、FUNの活動の「一貫性」を損なったとするものである。連合党はガトーヴィチ民主帝国の一般理事国の地位維持がこれにより不可能になったことを指摘するが、革新党はその点は重視しない。一方で、FUN総会第8回通常会期の議論期間のうち921年~924年は革新党シジト政権の時期にあたっていることから「総会における無策」は必ずしも人民党のみの責任であるとも言い難い点は弱みである。
 一方で、革新党も「委員会社会主義」としてのイデオロギーを強く訴えている点では人民党と共通している。委員会社会主義への支持は現憲法成立以来一貫して高く、この傾向が続けば次回選挙後の共和国政界はほぼ「人革二大政党制」が成立するとの声が上がっている。803年憲法下のような制度によらずとも二大政党制が成立し得るという指摘は特に少数政党となる連合党や南の風にとっては脅威であるが、党綱領改正以降サンディカリスト勢力のつなぎ止めが難しくなりつつある連合党は十分な対抗策を打ち出せていない。

【特集】臨時選挙制度の顛末

 FUN総会第8回通常会期は3つの決議を採択して928年末に閉幕した。共和国が提案したフリューゲル中央銀行総裁設置決議が全会一致で採択されたことはFun流通の促進を目指す共和国にとって大きな勝利である一方、共和国が第7回通常会期で提案し、可決成立していた一般理事国臨時選挙制度がレゴリス帝国の主張する臨時選挙制度廃止決議によって廃止されたことは、合わせて提案された一般理事国推薦基準に関する憲章改正決議が妥協点となっているとはいえ、共和国外交にとってはひとつの後退とも言える結果となった。本特集では2会期に渡ってFUN総会の注目の中心となった臨時選挙制度の流れと共和国のこの制度に対する関わりを概観する。
 一般理事国の数が「加盟国数÷5」の「理論上の上限数」を満たさない場合に臨時選挙によって枠の不足を埋める臨時選挙制度は、「安保理理事国の数が減ることは安保理が一般加盟国から遠い組織になりかねない」という革新党の懸念がガトーヴィチ民主帝国の一般理事国としての地位保全を求める連合党の主導する外交委員会と結びついて提唱されたものであり、第7回通常会期で烈天両国以外の幅広い賛成を得て成立した。この制度に基づく臨時選挙は919年に行われ、ガトーヴィチ民主帝国と新洲府共和国が理事国の地位を争った末、同票による抽選が行われガトーヴィチ民主帝国が8期連続となる一般理事国に選出された。
 人民党は当初総会を「無視」する立場から賛否を示していなかったが、烈天両国が第7回通常会期議論期間の最終盤、914年に反対を表明すると加烈天協調関係維持を理由に制度への態度を否定的なものに転じた。その人民党が920年末に議会の過半数を占め、924年にはイルト・デマントイド中央処理委員長(当時)を大統領候補に擁立して政権を奪還する流れの中、共和国は臨時選挙制度廃止決議案に対して強く反対はせず、事実上一般理事国の地位を「奪われる」に等しいガトーヴィチ民主帝国が反発する中で各国が臨時選挙廃止に流れるのを静観した。
 一方で、レゴリス代表は共和国の「安保理理事国が少なくなることへの懸念」の解決策として一般理事国の推薦に必要な推薦票を現在の5カ国から4カ国に削減する憲章改正決議を提出、これも可決成立した。共和国は妥協点としてこの憲章改正を支持し、今後憲章改正に必要な10ヶ国の賛成を得て採択されたことは前途に光を見せるものであるが、同じく10ヶ国の批准が必要な平時における居住施設に対する軍事演習禁止条約が第3回通常会期(871年〜878年)に採択されてから半世紀を経てなお発効に至っていない(しかも、この間第7回通常会期では参加勧告決議まで可決している)という事実もあり、憲章改正が実際に発効するのがいつの時期になるかは見通せない。ガトーヴィチ民主帝国は臨時選挙制度の廃止に伴い931年〜940年の間、FUN発足後初めて安保理を離れることになる。941年の復帰を目指している同国にとって憲章改正の早期発効(935年末までに発効しなければ941年の理事国には5ヶ国の推薦が必要になるだろう)は不可欠であり、今後憲章改正への批准を各国に呼びかけていくと考えられる。

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