メニュー 閉じる

共和国議会、イスタシア全住民の権利尊重を求める決議を採択

1194年6月15日付〈中央通信〉

 14日、共和国議会はイスタシアの独立に向けた住民投票に関し、「すべての住民の意志と基本的権利を尊重すること」「過激な個人崇拝を排し、すべての住民の平等が担保され、すべての地域や民族が他の地域に抑圧されないこと」などの原則を求め、共和国が派遣する選挙監視団について、住民投票がそれらの原則に基づいて行われていることを担保するために働くよう外交委員会に対して要請する決議案を全会一致で採択した。決議案の提出を主導したキルト・カーネリアン共和国議会議員(外交委員会、五胞派)は、「本決議はすべての住民が平等な権利を有する封建秩序の存在しないイスタシアという理念に対して完全な支持を与えるものであって、中道主義・平等主義・地域主義という超越主義の三原則を外交上の方針として拡大し得るものである」と述べ、超越連盟の掲げる「三原則」との整合性を強調した。決議案の投票後に社会主義評議会主流派を代表して発言したケシン・アゲート共和国議会議員(外交委員会、正方派)は超越主義三原則については言及しなかったが、「封建秩序に対する反対と、身分制度に基づく特権を創設することへの反対は共和国の、またフリューゲルのあらゆる国家の共有する基盤であり、本決議案が全ての会派の賛成によって採択されたことを喜ばしく思う」として、政治的立ち位置を問わない普遍的人権意識の存在を支持することを表明した。
 イスタシア住民投票に対する共和国の関与のあり方は年初から審議されてきたが、当初は「過激な個人崇拝を排し」といった文言の挿入にはイスタシア地域内で多数派を占めている君主主義者からの反発を招き、ひいては独立後の対イスタシア関係に影響を及ぼすのではないかという懸念が提示されていた。しかし、イスタシア自治領内での有力紙《ミュンツェン・タイムズ》紙が共和主義者や少数民族の立場を尊重しない解説記事を発表したことを受けて、議会各会派の姿勢は大幅に硬化した。同紙の街頭調査や世論調査によれば、イスタシア地域における政体については「何らかの」君主制を支持すると回答した勢力が65%にのぼるとしたものの、少なくとも全人口の10%が共和制を支持しており、さらに君主制支持勢力の間でもランガル人、カルス人、ハルクスタニア人の間では具体的な君主制の間で意見が一致しておらず、人口の5%ほどを占めるオニキス人は「推し活ブーム」と称するムーブメントの影響を除けば多くの住民が共和制を支持していることが報じられた。ただし、同紙の世論調査はノイエクルス連邦直轄区に多く居住するノイエ系住民の存在について言及していないことから、世論調査もノ連直轄区を除外して実施されたものと推定されている。
 《ミュンツェン・タイムズ》紙はこれらの結果について、共和制を支持するオニキス人については人口に占める割合が低いことから「大勢に与える影響はわずかなもの」であるとした上で、「住民投票が『真に民意を反映したもの』であれば君主制の復活は揺るぎないものとなることが予想され」ると結論付けた。また、ノ連直轄領や駐屯するノイエクルス連邦軍に対する歪曲されたイメージに基づいたプロパガンダが広まっていること、イスタシア自治政府における政府与党である社会自由党が国際的な選挙監視団の派遣について(監視団派遣国に君主国が含まれていないことを理由に)「内政干渉である」と主張していること、社会自由党が「読解力向上キャンペーン」を通じてノイエクルス本国や国際的な選挙監視団が投票所の掲示や投票用紙の記述において読解力に劣る有権者を騙そうとするだろうと暗黙に主張していることについても肯定的な立場から報じている。
 一連の報道が共和国内で紹介されると、イスタシア自治政府や、自治政府に立場が近いと見られている報道機関である《ミュンツェン・タイムズ》紙が君主制を支持する立場に偏った姿勢を採用していることが繰り返し指摘されるようになり、さらに当該報道の中でオニキス人やノイエクルス直轄領住民をはじめとしたイスタシア地域内における少数勢力の意向を無視して国家体制を決定しようとする姿勢が示されていることは共和国内の世論を著しく悪化させた。「対イスタシア関係」を理由に同地域内における封建秩序復活の試みに目を瞑ることを支持する声はほとんど聞かれなくなり、決議案に対して最後まで抵抗を見せたのは対セニオリス関係の改善を訴える勢力となった。3月にはセニオリス連邦大統領が選挙監視団について「必要性明らかでない」と述べ、監視団について否定的な見解を示したことが報じられており、イスタシアに対する姿勢は同国との関係に影響を及ぼすのではないかとの主張が円環派の一部議員を中心に行われた。しかし、瀬大統領発言の後にイスタシア自治領内で少数民族の意見が軽んじられていることが明確に報じられたことは「必要性」を明確に立証するものであるとの指摘や、セニオリス自身が人権問題を軽視する姿勢を主張したわけではないことなどが反論として提示された。最終的には超越連盟が自らの「三原則」を示唆する表現を決議案に盛り込むことを社会主義評議会主流派に同意させる形で決議案は全会一致で採択され、共和国がイスタシアにおける人権状況について「目を瞑る」ことは退けられる形となった。

「オニキス人を守れ!」国内世論沸騰

 イスタシア国内の少数民族であるオニキス人に対する権利擁護の声が国内全体に広がっている。オニキス人は旧地球の白人系アメリカ人移民船団を出自とする人々であるとされており、共和国の主要民族であるパーム系民族との直接的な関係性はないものとみなされている。しかし、日常的に英語を用いること、カルセドニーと同組成の鉱物である黒瑪瑙を示唆する「オニキス」という名称がカルセドニーとの結びつきを印象付けるものであることから、国内では学術的な意味での結びつきとは無関係にオニキス人に対する「親近感」が広がっており、この意識が国内世論に大きな影響を与えたことは疑いない。少数の社会人類学者の間ではオニキス人が「白人系アメリカ人移民船団」を出自とするという主張に対し―旧世界のアメリカ合衆国における白人がアングロ・サクソン、ヒスパニック、アイルランド系などに分かれており、”白人系アメリカ人”という括りの妥当性に対して疑いがあることなどを根拠に―疑問を呈しており、彼らが10世紀以降にイスタシア地域に漂着したという歴史から、彼らがカルセドニーに出自を有するのではないかとの学説を唱えている。この説は学会の幅広い支持を得るには至っていないものの、世論形成に対しては大きな影響を与えている。
 オニキス人と名前の一部を共有しているサードオニクス市においては、「オニキス人の多く住む都市との間で姉妹都市協定を提案すべきだ」という比較的穏健な主張から、「オニキス人がイスタシア地域内の多数派であるランガル人その他に迫害されるのであれば、軍事力を用いてでも彼らを開放すべきである」という過激な主張まで幅広く聞くことができる。伝統的に右派勢力が強いサードオニクス市の出身者は社会主義革命以降目立った政治的地位を得ることが難しくなっており、このことも「少数派同胞」としての意識に影響を与えていると指摘されている。同市内においては共和国議会においては「封建主義の対義語」として用いられる場合以外は言及が避けられる自由主義に対する支持も大っぴらにされていることは、この説を裏付けるものであるとみなされている。
 外交委員会は「オニキス人を特別に重視することはしない」という立場を崩していないが、現実主義的な立場から対イスタシア関係に配慮すべきという主張に対し、場合によっては自治政府との関係性以上に「少数民族の権利尊重」が重視されるという思想が広く受け入れられるためにはこのオニキス人に対する世論の「愛着」が大きな役割を果たしたものとみられている。

タイガーズ・アイ、ヘファイストス市にスタジアム開設

 1194年3月初旬から中旬にかけて、エライ海岸に面したタイガーズ・アイ市、ガーネット州グロッシュラーライト島に立地するヘファイストス市にそれぞれ多目的スタジアムが建設された。今後、国内数ヶ所に同様のスタジアムが建設されることが予定されており、国内のスポーツ振興に貢献することが期待されている。将来的には国内における野球リーグの設立が計画されており、3月27日から29日にかけては両球場を本拠地とするタイガーズ・アイ・ドラフトドジャースとグロッシュラーライト・ミザントロープスとの間で親善試合が行われた。27日に行われたタイガーズ・アイ市での試合ではミザントロープスの4番に2本の本塁打を打たれたうえで完封負けを喫したドラフトドジャースのファンがメガホンをフィールド上に投げ込む姿が見られ、今後のスポーツへの熱狂を期待させるものとなった。

【政治】議会民主派、超越連盟から正式に離脱表明。超越連盟は29議席を失い254議席に。
【社会】フ暦2000年五大氏族復活説ひそかに広まる。歴史学者と物理学者のチームが「旧世界からの移民船がウラシマ効果によって現代や未来にフリューゲルに到達する可能性」を指摘。
【政治】外交委員長、君主主義と超越主義の関係について問われ「君主主義から超越主義が生まれたことは歴史的事実だが、今や超越主義はそれにとどまらないし、超越主義は超越者を作り出すためのものではない」と回答。

関連投稿