1182年9月18日付
【政治】急進的超越の結実 「超越主義」憲法が発議
<イグナイト・タイムズ>
旧超越同盟の解散後、超越主義の急進的な主張を受け継いだ制度的超越党(ITP)は、結党以来穏健的超越に基づき起草された現在の1068年憲法を批判してきた。ITPの勢力はここ数回の選挙で眼を見張るほどの躍進を遂げたが、ついに長年の悲願が実を結びそうだ。
ITPの求める超越的改憲は、第一次タイチェヴィチ政権下で憲法の成約から実現し得なかった政策、「制度の超越」と「経済の超越」を実行することにあった。ミア・タイチェヴィチ首相は「我々は第一次政権における訴えを変えることはない」と訴え、憲法裁判所で違憲判決を受け無効となった政策は「コモンウェルスが真に超越を達成するために不可欠の施策だ」として支持を訴えた。第23回議会におけるITPの圧倒的な議席占有率において議論されたのは、そのような改憲の是非そのものではなく、むしろ第一次政権が志し頓挫した政策以外の超越をも今期で実現を目指すのか、という点であった。
ITPにとり自在に急進的超越憲法を起草できる機会とあって議論は白熱したものとなったが、派閥間の合意の元で盛り込まれた政策は国民投票で敗れた1163年憲法の「軍備制限解除」が盛り込まれることで落ち着いた。この政策は旧セニオリス社会党が唱え旧セニオリス民主同盟などが支持していたが、両党は後にITPに合流した。ITP内の天使派・農本派となった両勢力は「超越傍流」と呼ばれ圧倒的少数派の立場に甘んじていたが、「超越本流」に属するタイチェヴィチ首相が配慮を見せる格好となった。
発議された憲法草案の概略をいかに示す。
- 前文における国家の価値観の変更
- 「超越主義に導かれる、直接民主主義を根幹とするコモンウェルス(Komonvelt / Commonwealth)」
- 地方政府再編
- 「州」制度の廃止、議会議席数と同じ数の「郡(županija)」への再編
- 基礎自治体の再編、人口1万~3万人の「オプチナ(općina)」を1郡あたり5個設置
- 直接民主制の「住民集会」によるオプシナの決定原則
- 超越的経済の制度化
- 経済原則
- 「コモンウェルスにおける経済は直接民主主義を基礎とする」
- 「職業的自律共同体(Strukovna autonomna zajednica)による直接民主的経済活動は、コモンウェルス経済の不可分の要素である」
- 財産権「全ての市民の超越的利益を前提として保証される」
- 国有企業・資産の取り扱い「コモンウェルスにおける全ての公有資産・財産は、直接民主的監督の下に付されなければならない」
- 経済原則
- 軍備制限
- 軍隊従事者陸軍40万人以下、海軍6万人以下→削除
ITPではこの憲法改正に合わせて国旗・国号の変更を行うかについても議論が行われたが、こちらは最終的に現国旗・国号を維持することが支持された。ITP幹部は「1068年憲法がいかに超越にあらざる憲法であったとしても、セニオリスにおいて初めて超越的法制の導入を試みたという歴史的意義を忘れてはいけない」と語る。
国号については「直接民主主義に基づく基礎自治体により構成される超越主義共同体としての姿とも似通う」として、そして国旗については「セニオリス地域における象徴的な3つの色彩と、超越主義を示すシンボルを融合させた、超越的セニオリスの姿を示す効果的な国旗」として評価された。1068年憲法の策定が旧超越同盟の解散とより急進的なITPの結成に繋がった歴史的経緯を踏まえ、国旗国号の継承によりITPの急進的超越の正統性を改めて誇示する狙いもあると見られる。
憲法草案は1179年1月、賛成191反対9によって議会を通過し、アナ・ゴトヴァツ大統領の署名により発議された。ミア・タイチェヴィチ首相は草案について「超越主義の勝利は近い」として成立を祝福し、国民投票に向けて「市民の超越的な意思を示すときだ」として支持を呼びかけた。
【政治】超越憲法成立 急進的超越主義が結実
<新セニオリス通信>
1179年1月、地方政府再編や超越経済の制度化などが盛り込まれた1179年憲法が国民投票に掛けられ、賛成70.5%を受けて成立した。投票率は57.2%だった。
草案の議論過程の中では国旗・国号の変更についても議論されたが、最終的には現国旗・国号の維持が支持された。初の超越憲法の象徴として誕生した現国旗・国号は、1179年憲法においても超越的象徴として引き続き用いられることとなりそうだ。
複数の識者は、新憲法はセニオリス連邦憲法(1068年憲法)成立以来の抜本的な制度改革となると指摘している。特に経済改革面では「職業的自律共同体(Strukovna autonomna zajednica)による直接民主的経済活動は、コモンウェルス経済の不可分の要素である」とした項目は、第一次タイチェヴィチ政権下で違憲判決を受けた経済再編の法律を合憲に施行するためのものと考えられており、識者は「現実に憲法通りの体制が整えられるまでの壁は非常に高いものとなるだろう」と指摘している。
ミア・タイチェヴィチ首相は憲法成立を受けて「真に超越的な国家の歴史がここに始まった」と宣言。憲法に記されるような超越的改革を迅速に進めるとした。
【政治】野党再編議論が進展 勢力結集で次期選挙に備える
<北方セニオリス新聞>
1180年3月、野党のコモンウェルス共和党(KRS)、進歩自由党(PSL)、社会民主党(SDP)、そして議院外政党の立憲民主党(UDS)は共同で記者会見を行い、次期選挙において政党連合「有機的超越連合」を形成すると発表した。野党勢力の歴史的敗北という結果に終わった1171年選挙以来の野党間協議の一つの成果として発表されたものであり、KRSの幹部は「ITPによる強権的な超越に対抗する穏健派として、コモンウェルスにあるべき超越の姿を示す」と語っている。
会見では、同じく議論が行われていた野党再編についても結論が報告され、PSLとSDPが合流し中道左派の新生「社会民主党(Socijaldemokratska partija / SDP)」を、そしてKRSとUDSが中道右派の新生「セニオリス自由党(Šenioridska stranka liberalizma / ŠSL)」を形成し、再出発することとした。PSLの幹部は「合致点の多い政党が競合することによる共倒れの懸念を回避すると共に、争点の単純化を狙ったもの」と明かしている。
政党連合の結成、党の再編により、1183年に控える次期選挙は「ITP対野党」の単純な構図となることが予想されている。SDPの中堅議員は「最低限の目標はITPの暴走を食い止めること」としており、新たに示された「有機的超越」が「制度的超越」を代替しうるものと見なされるかが注目される。
【国際】フリューゲル国連初の拒否権が行使 野党批判も大使「必要な判断」
<イグナイト・タイムズ>
1181年5月、フリューゲル国際連合安全保障理事会はカルーガ条約の改正などを求める内容を含んだ「カルーガ条約の先制的自衛権問題に関する決議案」の投票を行い、決議案はコモンウェルスの拒否権によって否決された。コモンウェルスのグン・ヴチュコヴィッチ国連大使は投票を前に「条文の内容と決議案の根拠としての解釈が乖離している」として反対を示しており、決議案を共同提出したカルセドニー、レゴリス、ヴェールヌイ、リブル、セリティヌムの五カ国との溝が埋まらないまま投票要求が行われた末の拒否権行使となった。決議案は共同提出国に加えガトーヴィチ、ラ・フローリドを加えた7カ国の賛成を受け、反対はセニオリスに加えトータエの2カ国であった。
フリューゲル国際連合で史上初の拒否権発動という事態に、国際社会では動揺が広がっている。カルセドニーでは決議案否決を受けて外交委員長・国連大使の弾劾訴追決議が超越連盟より提出され、サンディカリスト連合が賛成に回ったことで可決された。レゴリスでも外相が辞任を表明するなど、各国の国内政治への飛び火も見られる。
コモンウェルスにおいても、第23回議会において拒否権発動に関する質問が行われ、野党からラヴォスラフ・ルジチカ外務長官並びにヴチュコヴィッチ国連大使への批判が飛ぶ場面もあった。ルジチカ外務長官並びにヴチュコヴィッチ国連大使と野党議員のやり取りの概略を以下に示す。
――今回の決議案に棄権ではなく拒否権を行使するに至った要因は(ŠSL)
「今回の決議案は恣意的な解釈に基づき提案されたものとの認識を拭えなかった。かのような恣意的解釈に基づき個別の国際条約への介入を認める前例を作ることは、国連組織にとってのあまりに危険な前例となるものと認識し、その成立を阻止するための必要な判断として反対票を投じた。」(国連大使)
――国際社会では今決議の否決により、一部ではA/RES/4/1が紙くずとなったという声もあるが(ŠSL)
「もし今会合を通じて当該決議が紙くずとなったとしたのならば、それは諸国の戦争行為についてその正当性を判断する根拠以上のものではなかった決議が拡大解釈され、個別の国際条約に介入する根拠として用いられた時点においてだ。その死は悲劇などではなく、当該決議について真剣に守りたいと願っていた者など誰も居なかったということによる歴史的必然だ。連邦による拒否権の影響など考慮すべくもない。」(外務長官)
――大使としてのA/RES/4/1への認識は(ŠSL)
「当該決議は安保理でも一部の理事国から発言があったように、加盟国による実行が伴って初めて法的規範となり得るものだ。当該決議はある時点、少なくとも決議当初では国際法秩序の重要な一部だったのだろう。」(国連大使)
――現時点での認識は(ŠSL)
「少なくとも当該決議は無効だと我先に宣言した大使がいるということ。それだけだ。」(国連大使)
――答えになっていない(ŠSL)
「加盟国による実行が必要となる法的規範において、その不実行を明言した理事国が居た。この時点で連邦としての当該決議についてのあらゆる回答は意味をなさないということだ。」(外務長官)
――A/RES/4/1に対する”未必の故意”があったか(SDP)
「あの決議案がA/RES/4/1の今後を大きく左右するものであり、そしてA/RES/4/1を真剣に守りたいと願っているのなら、今回の決議案に関わる議論は慎重にも慎重を増して行われるべきであった。未必の故意があったというのなら、それは既に連邦が反対の意思を示していたにも関わらず投票を強行した共同提出国の側に他ならない。」(外務長官)
――一部では大使による他国代表への心証が賛否決定に強く影響したとも言われているが(SDP)
「斬新な観点による質問だ。残念ながら、今回は心証のみによって賛否を決定したわけではない。」(国連大使)
――心証が賛否決定に影響したことを否定しないということか(SDP)
「少なくとも、心証のみで意思を決定できるほど生易しい議題ではなかったのは確かだ。」(国連大使)
――拒否権行使による外交関係への影響は(SDP)
「私はないと確信しているが、他国の受け止めまでを保証することは出来ない。」(外務長官)
――外交関係への影響を顧みずに賛否を決定したのか(SDP)
「既に述べたように、連邦は国連組織における悪しき前例となることを懸念し反対票を投じた。仮にこの行為により外交関係に影響が生じるというのなら、それは当該国との間に国連組織の役割についての埋めがたいほどの認識の相違があるということなのだろう。」(外務長官)
(概略終わり)
野党のŠSLは拒否権の行使について「国際協調による平和主義実現という目標に逆行する過ち」として非難。SDPも「安保理組織への信頼性を著しく傷つけ、国連の機能性を貶めた」と批判している。野党は拒否権の行使を受けて、タイチェヴィチ政権による外交方針を「超越主義外交」の是非も含めて質したい構えだが、ITPは関心事項と見なしておらず、1183年に控える次期選挙での争点となることも予想されている。
【政治】「ハルクステン自治議会」が発足 旧州議会議員が結集
<ハルクステン・ポスト>
ハルクステン地域の自治制度は新たな局面を迎えることになりそうだ。1182年6月、旧ハルクステン州議会の議会議員28名により「ハルクステン自治議会」が発足した。組織は1179年憲法の発効とともに廃止された州議会に代わる地域の民意結集を狙ったもので、州内の55のオプチナのうち32が自治議会議員のための選挙実施を決定している。
自治議会はその創立について「連邦政府に対する独立のような意図を持ったものではない」としている。創立の背景には、州の廃止とオプチナへの再編によりハルクステン地域に特有の郷土意識が薄れることへの危機感がある。自治議会が独自に集計した州の意識調査ではオプチナ制度がハルクステンの価値観と「適合しない」との回答が68%を占めたとされる。消息筋は「自治議会は従来の州政府に代わってハルクステン地域の民意を代表する存在となり、ITPの”急進的超越”からハルクステンの価値観を守ることが目標」と明かした。
ハルクステン自治議会は現時点で参画を決定しなかったオプチナについても「共にハルクステンの夢を紡ぐことを楽しみにしている」としている。定数は議員の選出を決定したオプチナと連動するとしており、主に政党連合「有機的超越連合」や地域政党「ハルクステン中央党」で構成される自治議会が今後存在感を発揮していけるかが注目される。
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