源朝臣輝子解 申請 御竜籠帰洛並びに将軍宣下並びに歴代将軍追宣下の事
言上三箇条
一、殊に 鴻恩を蒙り御叡慮せられんと請う御竜籠本州へ帰洛の事
右の情、謹んで案内を検するに、本州海内は既に臣源朝臣の凶賊を平定し戦火の狼煙悉く絶えん。願うらくは 御竜籠の本州へ帰洛せられ、海内一統天下万邦に本朝光復の大号令を宣られんと欲す。望請 鴻恩。早く道理に任せ御叡慮せられんと欲す。
一、殊に 鴻恩を蒙り御叡慮せられんと請う臣源朝臣輝子征夷大将軍宣下の事
右の情、謹んで案内を検するに、臣源朝臣輝子憚りながら清和源氏石動足利将軍家の正嫡にして、此度本州海内平定の功此れ在り。願うらくは、本州海内の御卒を束ね、本朝を四夷より奉護せんがため、征夷大将軍の官、宣下せられんと請う。望請 鴻恩。早く道理に任せ御叡慮せられんと欲す。
一、殊に 鴻恩を蒙り御叡慮せられんと請う歴代将軍追宣下の事
右の情、謹んで案内を検するに、直衣宮院以降足利将軍家は、縦い其の身の九重に無くとも君の護りと畏みて本州海内を平定せんと一族の者其の血を血河に流し斃るる事限りなし。彼の者共無くして臣無く、臣無くして海内平定成らず。伏して請う、足利材子、足利澄子、足利植子、足利晴子、足利栄子、足利昭子、足利通子、足利周子、足利常子等九名の我が母、祖母、祖先らに征夷大将軍位を追って宣下せられんと請う。望請 鴻恩。早く道理に任せ御叡慮せられんと欲す。
以前三箇条、一々 天聴に達せられ 御叡慮を以て 御聖断せられんと欲す。仍って在状を勒し、以て解す。
皇紀四三八年十月十五日 源朝臣輝子(花押)