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革新党、安保理における政府の対応を批判

976年1月1日付〈中央通信〉

 975年12月20日の共和国議会下院における討議で、革新党ヤトウ・アメシスト下院議員はセニオリス・クーデター以降の政府のFUN安保理における対応を2時間にわたり批判した。セーフ・ブラッドストーン下院議員を中心に連合党議員は政府の対応を擁護したものの、今回の一連の事件がトーネ政権の推し進めてきた「同盟国中心外交」にとって大きな失点になった事実は覆せないようだ。
 971年4月15日に発生したセニオリス・クーデターに対しては同年9月下旬に採択されたフリューゲル国際連合安全保障理事会第31号決議がクーデター政権を否認、クーデターにより拘束されたミラ・イェリッチ政権の復帰を要求したが、「救国評議会」を称するクーデター政権はこれを拒絶、972年8月には「セニオリス・スラヴ国」憲法を採択して体制の強化を図った。前後して972年3月下旬には安保理が第32号決議によって「スラヴ国」地域への物資輸送を禁止する経済制裁を決定したが、普蘭合衆国、民族自治軍管区ハルィチナー、大秋津國天照院幕府がこの決議に反して「スラヴ国」地域に送金を行ったため、経済制裁は事実上無効化された。これを受けて安保理は975年1月中旬に第34号決議を採択してセニオリス共和国が加盟国であるサンサルバシオン条約機構の条約機構軍(事実上ヘルトジブリール社会主義共和国軍)による強制措置=軍事制裁を容認、4月中旬にはヘルトジブリール軍によるセニオリス地域への衛星レーザーを用いた爆撃が開始された。
 その一方で、経済制裁決議に反して「スラヴ国」に送金を行った3ヶ国には安全保障理事会の議場で批判が集中、FUNの非加盟国であり経済制裁決議に従う法的義務を有さない普蘭、ハルィチナー両国に対しては安保理は第33号決議によって「遺憾の意」を表明するにとどまったが、FUN加盟国でありながら安保理決議を無視して「スラヴ国」と貿易を行った秋津国に対してはレゴリス帝国代表から猛烈な批判が展開され、単なる「説明責任」では収束しそうにない状況だ。
 ヤトウ下院議員は安保理における政府の一連の対応の中でも、第34号決議の採択直後に神聖ガトーヴィチ帝国代表の提案した安保理の一時閉会に対して共和国が賛成し、安保理の会合がいったん終了した直後にレゴリス帝国代表の要求により直ちに会合が再開した流れについて「秋津国に関する議論を回避しようとしていたと見られても仕方がない」と強く非難した。外交委員会はこの安保理の閉会に賛成した理由について「『スラヴ国』への対応は第34号決議の採択でいったん終了した以上、『セニオリス・クーデターに対する安全保障理事会の対応の検討』を議題として招集されていた安全保障理事会の会合を終了することは当然」との見解を示しているが、ヤトウ下院議員は「既に普蘭合衆国による第32号決議違反について普蘭代表のオブザーバー参加を得てまで議論されている中で、少なくとも同等、あるいはより深刻な問題である秋津国による決議違反について議論することは『クーデターに対する安保理の対応』の範疇であることはこの時点で理事国内での共通の認識であり、外交委員会見解は形式論を盾にしているに過ぎない」と反駁、安保理の会合が直ちに再開した結果について「共和国に実質的な利益をもたらすことなく、烈路両国のWTCO3理事国に対する不信感だけを無意味に煽った」と指摘した。
 ヤトウ下院議員は2時間の討議の最後に、「同盟国の無秩序な拡大がFUNを中心とした共和国の外交に悪影響を与えることをトーネ政権と連合党は認識すべきであり、連合党外交はもはや失敗に終わったと認めるべきであろう」と、具体的な国名を挙げることこそしなかったものの、同盟国が安保理決議違反を引き起こしたことを連合党の掲げる同盟国中心外交に引き付ける形で批判、同盟国中心外交の立役者であるテレト・ブラッドストーン外交委員長の辞任を要求した。セーフ下院議員は「普蘭、ハルィチナー、秋津国による安保理決議違反と共和国の外交方針を直接結び付けることは適切ではなく、今回の件について反省するべきところは反省するとともに、現行の外交の成果を今後も広げていくことが必要」と逃げたものの、テレト外交委員長を次期大統領に望む声は萎んでおり、テレト外交委員長は外交委員会初の大統領の地位という大魚を今回の件で逃すことになりそうだ。

【社説】強制措置決議報道に見る新ミルズの国民性

975年12月29日付革新党機関紙〈赤光〉

 フリューゲル国際連合安全保障理事会第34号決議(以下強制措置決議)は、「セニオリス・スラヴ国」に対するサンサルバシオン条約機構軍による軍事制裁を容認し、セニオリス・クーデターに始まる一連の情勢にとっては新たなステップとなった。この決議には神聖ガトーヴィチ帝国が反対しロシジュア帝政平和ドミニウムが「絶対的に平和を希求するという国是」を理由にSSPact加盟国でありながら棄権票を投じた一方、3ヶ国の同盟理事国がいずれも賛成するなど基本的にはFUNにおける主要3陣営すべてが同意する形で採択された。しかしながら、独立後特定の同盟に所属せずある意味では「同盟内の協調圧力」に影響されない立場であるルクスマグナ共和合衆皇国(以下新ミルズ)の主要通信社であるルクス・タイムズ紙は「【国際】別国と天国 瀬国に宣戦布告 安保理は対話を行わず静観の構え」と題する記事でこの決議を批判的な論調で報じている。いわゆる「ミルズ訛り」の国際共通語によるこの記事は読解が難しいために我が国の市民にはあまり知られていないようであるが、独立後の新ミルズ国民の様相を知る上でなかなか有意義な内容を含んでいることから、本記事で紹介することにしよう。
 ルクス・タイムズ紙の記事は概ね3つの論点から構成されている。第一に強制措置決議の評価、第二に「救国評議会」及びその成立背景、第三にFUN自体に対する言及である。
 第一の論点である強制措置決議の評価について、新ミルズ国内では人道上の理由から攻撃目標を軍事施設(ミサイル基地等)・準軍事施設(森等)・「救国評議会」関連施設(秘密警察等)に絞った第5パラグラフが主に批判の対象となっているようだ。あるミルズ市民はルクス・タイムズ紙の取材に「全員鏖殺」(=強制敗戦規定が充足される段階までのセニオリス地域に対する無差別爆撃)せよと回答しており、それを不可能にする強制措置決議の規定は「実効性がない」とする。FUN成立以前、特に7世紀以前のフリューゲルにおいては一般的であった民間人殺戮を禁止するような国際法は未だ存在せず(正確に言えばアズリール条約が存在するが事実上死文化している)、このような野蛮な主張がまかり通ってしまうことは現在のフリューゲル国際法にさらなる発展が求められるところであろう。
 第二の論点である「救国評議会」の成立背景について、ルクス・タイムズ紙は943年5月選挙以降の左派の躍進がクーデターの原因であるとした上で左派政権は「右派に譲歩すべきであった」としている。同紙は第一の論点の中でも「救国評議会」が安全保障理事会で発言機会を得られなかったことについて「一方的に安保理が強圧をかけていると認識されても仕方ない」と主張しており、全般に「救国評議会」の不法・暴力行為に対して甘く、セニオリス市民の意思やセニオリス憲法上の正統性に関する視点が弱い。民主主義の手続きを尊重せず暴力に訴えることは国連統治下に移行する以前のミルズ皇国内では一般的であり、「暴力には屈さなければならない」と考える新ミルズ国民が数多く存在することはある程度まではやむを得ないのだろう。
 第三の論点であるFUNに対する視点では、ルクス・タイムズ紙は「外圧をかけるだけなら同盟組織で十分であり、国連である必要はない」「国連が外圧をかけることは国連の意義を脆弱化させる」と主張する。同紙は国連の存在意義を「対話を以て、平和を模索すること」に限定しているようであるが、FUN憲章の筆頭である第1条1項にはFUNの目的として「平和に対する脅威の防止及び除去」を明確に掲げており、暴力的な手段によって平和を破壊する「救国評議会」に対する強制措置は国連の意義を脆弱化させるどころかむしろその意義の達成のために不可欠であることは明らかである。また、FUNとはそもそも軍事力の行使という重大な「外圧」の是非を特定同盟の判断のみによって行うことを原則として否定し、陣営横断的な国際社会の多数国による協議の枠組みに判断を委ねることで「正当性なき戦争行為」の防止を図る組織である。「国連を挟まない外圧」を無批判に肯定する同紙の論調はそれこそ「国連の意義」を理解していないと言わざるを得ない。加えて、かつて「ミルズ共和国」を称する集団によってミルズ皇国が国家元首アダム皇が誘拐されるなど重大な危機に陥った際にも、FUNは安全保障理事会第3号決議によって「ミルズ共和国」に対する強制措置を実施することでこの問題を解決に導いたことを指摘しておきたい。新ミルズ国民はこの時も「対話を以て」アダム皇を返してくださいとお願いする方が望ましかったと考えているのだろうか?
 全体としてルクス・タイムズ紙の記事は、新ミルズ国民の人道や市民の権利に対する意識の欠如、「救国評議会」との対話を唱える一方での国際社会における協議の枠組みの軽視、自ら国際社会の「圧力」によって救われた過去を持ちながらその意義を否認する自己矛盾などを明確に描き出している。この記事は独立後の新ミルズにおいて国民がどのような水準にあるかを理解する上で、なかなか興味深い記事であると言えるのではないだろうか。

【政治】チジノ生産搬送配給委員長、趣味のドライブ中に交通事故。軽傷であり、公務に支障なしと発表。
【経済】国内の食料備蓄激減。責任は「救国評議会」か経済制裁か。
【国際】秋津国対瀬送金責任者切腹。「文化の違い」外交委員長

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