今月初めより暫定首都ミュンツェン特別市の各地で発生している、ノイエクルス連邦からの独立を求めるデモ活動は、今週に入りその勢いを益々強めている。12日、元老院議会堂前には5万人以上の参加者が集まり、ノイエ本国の統治能力の低さを嘆きつつ、KPOに助けを求める声が上がった。自治政府は、ノ連との協定に記載された大規模港の維持費(自治政府発足当初の政府予算の大半を占めていた)を捻出するため苦戦した過去や、度々海賊により国庫の現金及び食糧庫の備蓄を奪われた過去など、ノ連との協定とその結果生じた困難に対処しなければならなかった事情をふまえ、数年前から独立を目指す方針を水面下で進めていた。しかしながら、政府の想定よりも早く、イスタシア住民の不満が頂点に達したのである。ノイエ本国における先の反乱軍騒乱は、ノイエクルス人のみならず当該地域にビジネス等で訪れていたイスタシア住民にも被害を与え、かつノイエ本国の行政能力、とりわけ軍事機構の腐敗と沈黙に多くの注目が集まる結果となった。わずか1発の攻撃弾を反乱軍に命中させるため時には数週間をも浪費するノ連軍の”実力”は、イスタシア地域の安全保障を担うにはあまりに脆弱であることが示されたのだ。
また、イスタシア地域内に存在するノ連直轄領では、そこで産出される石材のうち1ヵ月あたり5000万トンの石材をノイエ本国に輸送することが協定により決められているが、そうして輸送された石材が輸送先の港で集積地に収まりきらず、そのまま海へ投げ捨てられている映像が先日のドキュメンタリー番組で大々的に発表されると、住民の怒りは爆発した。
そんな中、自治政府代表のファルケンハウゼン氏ら率いる社会自由党は帝国党ら王党派の協力の下、これまで水面下で進んでいた計画を前倒しする形で、14日の元老院議会にてイスタシア自治政府のノイエクルス連邦からの離脱に向けた政府方針案を採決した。
政府方針によれば、イスタシア地域のノイエクルス連邦からの独立に向け、
1.イスタシア地域内のノ連直轄領において産出される石材を、ノイエ本国へ”連邦の資産”として定期供出させられている現状を打開するため、KPOによる通商評議会の協力を得てこれを是正する
2.KPOによる”通商評議会”は我が政府の自由な貿易を阻害するものでは無いという”明白な事実”を改めてKPO関係者に確認するとともに、国際社会の理解促進に努める
3.ノ連直轄領に存在する連邦軍駐屯地の入口に掲げられた「ノイエクルス自由国<?>軍」の表札は連邦軍の無能さを象徴しており、<?>文字を撤去できなければ我が地域の安全保障を担うに値しないため軍の撤退を要求し、代わりに自治政府軍及び諸邦軍の拡張が進むまでの間、有事の際のミサイル攻撃弾による対処等の支援を有力国家に求める
4.一般の民衆よりはるかに長寿かつその美貌を保ち続ける”美少女アイドル諸侯”の威光の下、人々が生活を営むことが人権の欠かせない一部分を成していることはフリューゲル世界の君主主義者諸君にとって今や”常識”であり、非美少女アイドル君主国であるノイエクルス連邦に組されている現状ではこの威光を存分に発揮できないため、結果的に住民の人権が損なわれている現状を連邦からの離脱によって是正する
5.自治政府の連邦からの離脱後は、自治政府の発足より培われた民主的な政治制度をさらに発展させつつも、同時に封建制の伝統を受け継ぐ各諸侯領及び教会領に、地方自治体として民主的な中央政府の統治の範囲内で広範な自治権を与える
6.フリューゲルで最も幸福かつ人権尊重のなされた地域を目指し、政府一丸となって奮闘する
等を目標として定め、これを達成するために必要な手段を講じていくとしている。
これらの背景には、イスタシア地域における君主制への憧憬が強く影響している。元老院議会の多数派は社会自由党で占められているものの、帝国党をはじめとする王党派勢力の発言力もまた根強い。旧イスタシア王国の元君主その人であるマイル・フォン・リンガリア大公を支持する”正統王党派”と、現在イスタシア南部に居を移し、未だいのらが跋扈する地であるヴェストリュッセル地方の奪還を目指すアリシア・フォン・ランガル大公を中心とした”ランガル王党派”の2者間による若干の対立があるため、君主主義者も決して一枚岩では無いものの、ひとまずイスタシア地域に立憲君主制国家を樹立する流れは着実に進んでいるものと思われる。
具体的な手続きや各国との交渉は今後明らかになっていくであろう。
1178年 5月20日 ミュンツェンタイムズ政治部
イスタシア地域の国際指標上の国家ポイントが7万超にこれを祝した成長記念碑が落成
今月発表された統計データによれば、イスタシア地域はウラン鉱山開発支援協定の締結後、安定した財源を基に飛躍的な経済成長を遂げ、住民の幸福度は国際的な指標によるとフリューゲル世界第2位となった。同時に、国家の経済・軍事的規模を示す国際的指標である「国家ポイント」も、イスタシア地域全体で7万ポイントを突破した。これは、ノイエクルス本国と連邦構成国の南瓜共和国を合わせた数値よりも高く、「国家の実力」という意味では宗主国を完全に上回ったとみてよいだろう。
自治政府はこれを記念し、暫定首都ミュンツェン特別市の郊外に記念碑を建造することを決定、本日この記念碑が無事落成した。市民はこれを歓喜の声で祝福し、市井では先日のノイエ本国での反乱軍騒乱の写真と記念碑の写真を並べたコラージュ画像がばら撒かれており、イスタシア独立の機運は留まるところを知らないようだ。
1178年 5月10日 ミュンツェンタイムズ政治部