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タイチェヴィチ首相が辞任 他

1168年3月27日付

【政治】タイチェヴィチ首相が辞任 「諸般の混乱の責任を取る」 超越的改革未達で退陣へ

<イグナイト・タイムズ>

1166年1月、ミア・タイチェヴィチ首相は「我々が招いた数々の混乱の責任を取る」として、首相の職を辞すると発表した。アナ・ゴトヴァツ大統領は辞職届を受理し、タイチェヴィッチ政権は次期選挙を待たずに総辞職することとなった。選挙を経ない形の首相の辞職は、首相職が設置された989年以来初めてのこととなる。

辞職に至った経緯としては、現憲法における軍備制限条項の撤廃を含んだ1163年憲法国民投票の否決から連なった、数々の政治的混乱が大きいものと考えられている。タイチェヴィチ政権は就任時に制度的超越党(ITP)の目指す改革像として「5つの超越」を掲げた。党の急進的超越綱領に基づく構想は党、外交、制度、経済、社会と多方面にわたる中で、野党の社会民主党(SDP)などは「1063年以来の現憲法と衝突する」として激しい反対を繰り広げたが、ITPが過半を占める議会情勢の中で複数の法案が採決されてきた。

タイチェヴィチ政権は、現憲法との衝突を懸念された複数の法案について「憲法裁判所の求めがあれば、いつでも合憲性を証明する事ができる」としていたが、結果的に看板政策の多くにおいて違憲判決を受ける異例の事態となった。

1163年憲法否決を受けて策定された、現憲法規定の海軍は慣習国際法上の海軍ではないとし6万人を超えた防衛艦隊の増員を定めた法定は、現憲法規定の由来であるハルクステン条約が国際規定であることを指摘され違憲と判断された。地方政府を200の「郡(županija)」に属する1000の「オプチナ(općina)」に再編するとした法定は、直接民主制を根幹とするオプチナ制度が現憲法で定める二元代表制の原則との矛盾が指摘され違憲と判決された。タイチェヴィチ政権が1159年選挙を通じ訴えた「超越的平等」の実現を目的として、コモンウェルスの経済構造を「職業的自律共同体(Strukovna autonomna zajednica)」を基礎単位とするボトムアップ型の構造に転換することを定めた法定は、新規参入者のみならず既存の企業などに対しても強制的に解散・再編を求めた点が現憲法の経済的自由権を侵害するものとして違憲判決が下った。

政権肝いりの複数の法案がことごとく違憲となる異例の事態に、SDPら野党は1165年11月に「憲政を脅かす危険な試みを繰り返している」として1075年1月のイバナ・ブロズ元首相に対するもの以来史上2度目となる内閣不信任決議案、さらに1165年12月には「違憲の疑いが強い複数の法令について拒否権を行使せず憲法違反の行為を助長した」としてアナ・ゴトヴァツ大統領に対する弾劾訴追決議案を史上初めて提出するに至ったが、いずれもITPとセニオリス社会党(ŠSP)の反対によって否決された。

第二共和国の憲政史上で異例中の異例となるこのような事態に対して、タイチェヴィチ首相はなお「我々の党是を実現するための実現可能な手段を練りたい」と表明していたが、ゴトヴァツ大統領に対する弾劾訴追までも提出される事態に至ってITP内部では「超越的出直し」を求める声が大きくなっていた。首相やITPに対する抗議デモも相次ぐ中で、ついにゴトヴァツ大統領からも「超越のために深刻な対立が生じたのであれば、我々は超越それ自体を超越しなければならない」との声明が発出されるに至り、タイチェヴィチ首相は志半ばで辞任を余儀なくされることとなった。

タイチェヴィチ首相の後任としては、1111年選挙での初当選以来ITPの議席を守り続け5期目を迎える大ベテランのマリナ・グルバッチ法務長官が有力視されている。グルバッチ氏は法務長官就任以前の1150年代に「超越的改革はあくまで現憲法に則って遂行されるべきであり、それは必ず改憲の形を取ることになる」と発言したことでも知られており、あるITP幹部は「法改正による超越の限界に突き当たった以上、改憲による超越を目標にITPの出直しを図るべきだ」と話した。

野党SDPの幹部は一連の交代劇に「ITPの政策の危険性は既に露わになっており、どのような手段が持ち出されようとももはや市民の認識が変わることはない」と釘を刺した上で、首相の辞任について「立憲主義に則るという首相の良識が現れた素晴らしい決断だ」と皮肉した。

【政治】ルカ・マヨリ氏が第13代首相に

<北方セニオリス新聞>

1166年1月、第22回議会は首班指名選挙を行い、新首相に153票を得たルカ・マヨリ前法務長官を指名した。

アナ・ゴトヴァツ大統領は議会の指名に基づき、同氏を連邦の次期首相に任命した。

【政治】”超越的出直し”なるか マヨリ政権を読み解く

<新セニオリス通信>

ITPの単独過半数獲得とともに史上初のITP出身者として就任したタイチェヴィチ前首相は、1166年1月に「諸般の混乱の責任を取る」として辞任を表明した。タイチェヴィチ政権における6年7ヶ月とは、1163年憲法の国民投票における否決を受けてŠSP主導で制定された防衛艦隊増設の法定を始め、地方自治体や経済の再編という看板政策を現憲法を顧みずに改革を断行し、憲法裁判所の違憲判決を受け足止めされる特異的な状況であった。

政権に最終的に引導を渡したのは、アナ・ゴトヴァツ大統領の「我々は超越それ自体を超越しなければならない」との発言であった。前首相は1165年に史上2度目の内閣不信任決議案を提出されてもなお続投に意欲を示していたが、史上始めて大統領に対する弾劾訴追決議案が提出され、さらに各地で抗議デモも相次ぐという情勢を受けた大統領の発言により、ITP内部からの「超越的出直し」を求める声を無視できなくなった格好だ。

以下にマヨリ政権の顔ぶれを示す。

役職名前所属
首相ルカ・マヨリ制度的超越党(加速派)
外務長官ラヴォスラフ・ルジチカ制度的超越党(加速派)
防衛長官ゴラン・グレグリッチ制度的超越党(加速派)
法務長官マリナ・グルバッチ制度的超越党(加速派)
財務長官サラ・フリードリーン制度的超越党(加速派)留任
内務長官サーニャ・ダービシュ制度的超越党(色彩派)留任
国土開発長官アイラ・シミッチ制度的超越党(加速派)留任
教育科学長官ゴラン・ガレシッチ制度的超越党(色彩派)留任
経済産業長官エレオノール・タイチェヴィチ制度的超越党(加速派)留任
資源・エネルギー長官ヨシップ・ガレシッチ制度的超越党(加速派)
運輸衛生長官イヴィツァ・シミッチ制度的超越党(色彩派)留任
農務環境長官イーヴォ・カティッチ制度的超越党(加速派)留任
労働長官コリンダ・ロビッチ制度的超越党(加速派)留任
厚生長官アイラ・ファーラン制度的超越党(加速派)留任
行政改革長官ズラトコ・マテシャ制度的超越党(至上派)留任

後任となったルカ・マヨリ首相は、ITP内部で要求されてきた「超越的出直し」に沿うベテランのITP党員であり、過去にはITPの目指す超越的改革について「改憲の形を取ることになる」などの発言を行っていたことでも知られる。マヨリ首相自身は議員として5期目となり1166年時点で82歳という年齢も踏まえ周囲には「自分が果たせる役割はせいぜい1171年までバトンを繋ぐことだ」などと語っているとされており、法改正での実現に拘り結果的に超越的改革のほとんどを実現できなかったタイチェヴィチ政権に代わり、「改憲による超越」を目標に党内議論を急速に進め次期政権に引き継ぐものと見られている。

閣僚の人員は多くの部分で前政権から引き継ぐ形となったが、マヨリ首相の前職である法務長官を含め、いくつかの人員において入れ替えも行われている。特に際立つのは、前政権において防衛長官並びに資源・エネルギー長官を輩出していた連立与党ŠSPが、今政権においては閣僚指名を回避されたことだろう。

ŠSPはタイチェヴィチ政権下で1163年憲法の発議並びに防衛艦隊増設法令の策定で中心的な役割を担ったが、憲法改正は国民投票で否決され艦隊増設も違憲判決を受け無効となった。両法案はITPにとっては元来関心が薄かったといわれ、ITPの中堅議員は「ŠSPへの配慮の結果としてITPが足を取られる結果となった」と評価している。今回の閣僚人事においてŠSPからの任命が回避されたことは、このような前政権での経緯を踏まえた処分であるとも、あるいは騒動を経てŠSPの影響力が如実に低下したことの証左とも考えられている。

また政権移行に伴い、外務長官と国連大使についても人員の入れ替えが行われた。ITPの外交方針は1123年選挙で「超越的国家連合」構想が敗れて以来明瞭ではなく、タイチェヴィチ政権はどのような外交政策を取るかは未確定の要素が多かった。1165年に入りITPは超越主義を外交政策においても取り入れること、すなわち超越主義に基づく価値観外交との綱領を採択したが、政権発足時に外交方針が定まっていなかったことについて消息筋は「無視できない外交的な混乱を生じさせた」と話している。今回の人員入れ替えについてマヨリ首相は「1165年に採択されたITPの外交指針に基づき改めて人員を選任した」と説明しているが、前外務長官並びに前国連大使の更迭は外交政策面でも出直しを図るという目的もありそうだ。

ITPの綱領実現を名目とした強引な政権運営により多大な混乱を生じさせたタイチェヴィチ政権から打って代わり、Iマヨリ首相は改革に向けて「超越的出直し」を図ると声明している。首相とITPの語る「超越的出直し」は、タイチェヴィチ政権がもたらした禍根を癒やすものとなりうるのか。マヨリ首相に課せられた責務は決して軽くない。

【政治】急進的超越の輪広がる 左右両極の政党が合流へ

<イグナイト・タイムズ>

急進的超越を旗印に複数の派閥を束ねるITPは、タイチェヴィチ政権下において党の基盤拡大を狙う「党の超越」を掲げていた。ITPは1159年以来、「穏健的超越」の支持層も含む様々な党派への訴えかけを続けてきたが、その成果は政界の大規模再編という形で現れたようである。

1167年4月、左派のセニオリス社会党(ŠSP)と右派のセニオリス民主同盟(ŠDZ)は相次いで記者会見を開き、制度的超越党(ITP)への合流を公表した。両党は旧セニオリス共産党や旧フルヴァツカ・スラヴ再興運動の解党以来「左右の極」と見なされてきた政党であり、両党の合流によりセニオリス政界の構図は「穏健的超越」と「急進的超越」の二項対立に集約されることとなる。

ŠSPは会見において「超越的平等の実現に向けて、より深い関係を築くことが最善だと判断した」としている。同党はITPの政権掌握前の1147年選挙よりITPとの協力関係を築いてきたが、ITPの伸長を前に次第に存在感の低下が指摘されるようになり、1163年憲法の否決で求心力はますます損なわれた。今般の合流は、同党の掲げていた「セニオリス型社会主義」の魅力が大いに損なわれ、「超越的平等」に吸い取られた結果と言えるだろう。

一方ŠDZは合流について「農民の利益を追求する我々の将来像と、国家の超越化を図るITPの将来像が一致した」と説明している。ŠDZは1147年選挙において他党を凌ぐ比較第一党の地位を手にしたが政権獲得の機会にありつけず、続く1159年選挙では「急進的超越」の波に飲み込まれ埋没し一桁議席に転落していた。ŠDZは党勢回復に向けて超越的支持層への基盤拡大も模索していたとされるが、識者はこの合流劇について「ŠDZが農本主義拡大の代償として自ら進んで自律性を捨てたのか、あるいは単に足を掬われただけなのかは怪しい」と評価している。

両党の合流により、ITPは議会で計162議席を有する巨大政党へと拡大する。野党の社会民主党(SDP)などが「一枚岩であるようには到底思えない」と疑念を呈する中、ITPが5つもの党内派閥をどのように操縦していくのかが注目される。

【社会】セニオリス労働総同盟が分裂 ITP台頭の余波で路線対立抑えきれず

<労働者ネット1000>

セニオリスにおける労働組合のナショナルセンターは、実に約176年ぶりに分立の時代を迎えそうだ。1168年3月、セニオリス労働総同盟(ŠKS)に所属してきた複数の労働組合幹部らが合同で記者会見を行い、「超越的経済労働者連絡会議(Povezujuća konferencija transcendentalnih ekonomskih radnika / 略称:PKTER)」を立ち上げることを表明した。同組織は「労働者の権利擁護と共に、超越主義の究極的目標である超越的経済に向けての協同体制の構築を図る」としており、ITPの「経済の超越」政策を後方支援することを目的としている。

今回の分裂は、ŠKS内部での経済路線を巡る路線対立が激化したことが背景にある。労働組合においては、近年の世界におけるITPの拡大とともに同党の掲げてきた「超越的平等」を支持する組合も増加しており、ŠKSでは旧来からの社会民主党(SDP)、セニオリス社会党(ŠSP)に加え、制度的超越党(ITP)も含む3党に支持が分散した状態にあった。ŠKSはなおも労働者の権利擁護の旗印の下で結束を保ってきた。しかしITPのタイチェヴィチ政権が発足し本格的に急進的な経済転換が試みられると、主にSDPを支持してきた穏健な労組はITP支持に異議を唱えるようになり、路線対立は深刻な事態へと発展した。1167年に入りŠSPがITPに合流したため、ŠSP支持の労組がITPとSDPの両極に分かれたことも対立に拍車を掛けた。穏健のSDPを支持する労組は、ŠKSによるITPへの支持を取りやめることを公然と求めた。こうして内部対立は決定的なものとなり、ITP支持労組の離脱とPKTERの結成に至った。

PKTER結成に参加した関係者は「労働者の団結は何よりも重要な事項であるにも関わらず、今回のような分裂に至ってしまったことを遺憾に思う」とした上で、「組織は変わるものの、労働者の権利擁護という方針は一貫した方針であり、組合員の活動に支障がなきよう最善を尽くしたい」としている。しかしŠKSのある関係者は「現場の組合員、特にPKTERへの合流を決定した労組は一様に動揺している」と明かしており、労働運動への影響が懸念される。

その他

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