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イベント―カルセドニー国内の「超越主義」

1161年4月下旬

1160年次選挙の直後に円環派委員長の後任として同派から支持されて就任したエント・アベンチュリン生産搬送配給委員長は、円環派・角錐派連合と反体制派の共同歩調による新政権の樹立構想を明確に掲げており、この新政権を「カルセドニーにおける超越主義政権」と呼ぶことを提唱し始めた。エント生産搬送配給委員長は円環派・角錐派連合という委員会社会主義体制の内部に由来する政治勢力と、反体制派というその外部に存在する政治勢力が、両者の間の対立を「超える」ことによって成立する連合政権として新体制を構想しており、そのための共通の理念として「超越主義」を掲げたのである。近年、円環派の一部はは貿易関係のあるロシジュアやセニオリスから「密輸入」されていた超越主義思想を受容し、自らを一種の「超越」であると位置づけるようになりつつあったが、そもそもがカルセドニー国内で全く人気のない君主主義に根源を持つロシジュア的な超越主義をそのままカルセドニーに導入することは事実上不可能であった。この制約のためにカルセドニー国内の超越主義思想はなかなか発芽に至らなかったが、エント生産搬送配給委員長は「超越主義」をカルセドニー国内の政治思想と結びつけることで、以下に掲げる「超越的社会主義共和制」の概念を示し、初めてカルセドニー国内政界に超越主義を明示的に持ち込んだ。いわく、

超越とは社会主義である。
エントは超越主義は君主主義に結びつくものではなく、あらゆる形態の社会主義を包括し得る思想であると述べた。委員会の自律、労働者による自主管理、労働組合の権利といったカルセドニーにおける社会主義の根底にある理念はすべて超越主義とは矛盾しないとした。

超越とは中道主義である。
超越主義はあらゆる排他的な急進思想を排した中道路線でなければならないとする。「左右の両極を排した、穏健な中道路線による国家運営」こそが超越主義たる条件であり、超越主義は「不寛容に対してのみ不寛容となる」べきであるとした。

超越とは平等主義である。
超越主義は特定の政治勢力に特権的な地位を与えてはならないとする。三大城塞による他の委員会に対する支配権の行使などはあってはならず、すべての委員会が平等な地位を有するべきであるとした。同時に、強力な権限を有する大統領のような、「特定個人に対する権力の集中」も否定するとした。

超越とは地域主義である。
超越主義は、職域からなる委員会に政治への参加を限定せず、カルセドニー国内の各地域にもその特性に応じた政治的意見を有することを確認すべきであるとした。超越主義は「職域主義が地域主義を排除すること」から自由にならなければならないと唱えた。

エントはこの「社会、中道、平等、地域」の四原則を超越主義の理念とし、円環派・角錐派連合と反体制派をこのような「超越主義体制」に包含することを提案した。エントの掲げた超越主義は委員会社会主義の内外の区別を「超越」することを根本的な理念としており、エントはこれを「向きを定めない」ことを意味する“Non-Oriented”と呼んだ。国際共通語では「無向派」と訳されるが、「新体制の内部にある二面性を否定する」という意味から「表裏一体派」と意訳することもあるようである。

これに対して、反体制派内の議会民主派を中心に、エントの四原則を「円環派に有利に作られている」として批判する声も上がり始めた。反体制派からすれば忌むべき委員会社会主義勢力の一員であった円環派が、その事実を見えにくくしたまま反体制派の中に入り込み、その内部で支配的な地位を握ろうとする試みではないかというのである。考えてみれば、「社会主義」原則は委員会社会主義の原則的な立場との矛盾を避けるためのものであり、「中道主義」原則は本来「極左」たる委員会社会主義勢力の一員であったはずの円環派を自ら中道主義と位置付けることを可能にしており、「平等主義」は円環派の社会主義評議会内での立場である「すべての委員会の対等」をそのまま反映しているだけであり、「地域主義」は「南の風」の権威主義派閥をその由来としているためにガーネット州内に影響力のある円環派に都合のいい原則である、のかもしれない。

こうして、エントの四原則を受け入れることに否定的な立場を取る勢力が反体制派や角錐派を中心に出現するに至った。議会民主派の一員であるティーナ・ユーファストーン共和国議会議員は新体制のあるべき姿を“House with Two Rooms”「部屋の二つある家」と呼び、委員会社会主義の内部から離反した円環派・角錐派と、その外部に位置付けられる反体制派の間の差異を明確に認識し、その上で「1つの家」の中で協力体制を築くことを目指すべきであるとしている。ティーナは「部屋の二つある家は直観的には分断されているように見えるかもしれないが、実際には一点に縮めることができる」と述べ、現時点での両勢力の相違は将来的に修正されることができるものであると主張している。興味深いことに、ティーナ自身も自らの体制が「超越主義的な」体制であることについては肯定的な立場を取っている。エントの四原則が「委員会社会主義と反体制派の間の対立からの超越」として超越主義を位置付けているのに対し、ティーナはそのために特定の原則を受け入れることはせず、「対立からの超越」からも超越すべきであると提案している。

円環派・角錐派、反体制派はエントの四原則をどの段階まで新体制の原則として受け入れるのであろうか。いずれの原則を新体制が採用するかによって、各政治勢力がどの程度まで新体制に協力的であるかが決定されると同時に、今後のカルセドニー国内における「超越主義」の行先も同時に決定されることになるであろう。


(1)超越とは社会主義である。
この原則は、自由主義者を事実上「超越主義」の域外に置くことになる。反体制派内の「漸進急進論争」の結果として影響力を低下させている自由主義者であるが、この原則が「超越主義」に不可欠なものとして採用されることは確実に1つの勢力を「超越」の包含から取り落とすことになる。一方で、サンディカリストをはじめとした反体制派内の労働者勢力はこの原則の採用を強く望んでいる。「超越主義」と「社会主義」が対立的なものになれば、最終的にカルセドニー国内で強力に支持されている社会主義思想によって超越主義は排除されてしまうかもしれない。

:1: 社会主義原則を超越思想の不可分な一部として受け入れる。
:2: 社会主義原則は超越主義において不可欠ではない。


(2)超越とは中道主義である。
自由主義者や司法民主派といった、1135年憲法下の委員会社会主義体制と完全に相容れない思想は、「中道主義」の採用によって排除されることになるだろう。また、正方派や台形派は「左の極」と見なされており、これらの委員会社会主義勢力を拒絶することにもつながる。一方で、中道主義を否定することは、抑え込まれている急進主義者の勢力の盛り返しにつながり、同時に委員会社会主義を掲げる保守派の復権の余地を広げるかもしれない。

:1: 中道主義原則を超越思想の不可分な一部として受け入れる。
:2: 中道主義原則は超越主義において不可欠ではない。


(3)超越とは平等主義である
これは、「三大城塞」の優越性を支持する台形派だけではなく、大統領制を支持する立場にある角錐派にとっても問題のある原則である。他に「行き場所」のない角錐派はこの原則が採用されたとしても「超越主義」の一部に残留はするだろうが、角錐派の新体制への影響力を著しく低下させることになるだろう。一方で、サンディカリストや各民主派は「労働者・市民の平等」を絶対的な原則として捉えており、それを受け入れないことは超越主義の求心力を低下させる可能性が高い。

:1: 平等主義原則を超越思想の不可分な一部として受け入れる。
:2: 平等主義原則は超越主義において不可欠ではない。


(4)超越とは地域主義である。
これは、選挙権の拡大を示唆しており、反体制内の議会民主派に対しての一定のアピールになる。また、ガーネット州が「特別な地位」を手に入れる道を開く選択肢でもあり、その点で自由主義者にも支持されるかもしれない。しかし、サンディカリストのような「職域の地域に対する優越」を支持する勢力にとっては1つの後退を意味することになる。また、877年憲法で連邦制が廃止されて以来、「地域主義」は社会主義体制にとっての最大の敵であるとみなされてきた。社会主義勢力は一般に地域主義を好ましく思わない可能性が高い。

:1: 地域主義原則を超越思想の不可分な一部として受け入れる。
:2: 地域主義原則は超越主義において不可欠ではない。


(5)新たな原則を創設する。
「四原則」に加えて、新たな原則をカルセドニーにおける超越主義の「題目」に加えようとする人々がいるようである。……。

:浮かぶセールスマン:


各原則を受け入れるごとに、カルセドニーにおける「超越主義」は思想として堅固になり、結果として新体制の安定性も増すだろう。しかし、それぞれの原則と相いれない政治勢力は「超越主義」から排除されるか、新体制内での力を失うことになる。また、「超越主義の原則」は、「南の風」の権威主義派閥を前進としているためにガーネット州内に影響力を持ち、委員会社会主義の一部として社会主義評議会体制を支えていたにも関わらず自らを「中道」と位置付けて反体制派と組むことを目指しており、さらに中小委員会の「平等主義」主張を代弁する立場にある、円環派の「都合」をかなりの意味で代弁していることにも注意しなければならないかもしれない。


※各原則がカルセドニーにおける「超越主義」の原則として採用されるかどうかを単純多数決で決定します。
※「原則」が1つ否定されるごとに、成立する「超越主義」の思想的堅固さが損なわれると考えられています。
※反体制派に対して「貢献」があるPLは、100兆Va単位で消費することで追加の1票を得ることができます。追加の1票は4つの投票のどれか1つに使用することができます。
※(5)については、新たな原則について提案がある場合カルセドニーPLにDMを送ってください。直ちに採用されることはありませんが、今後のカルセドニー国内の「超越主義」の解釈に影響を与える可能性があります。

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