1161年5月26日付
【政治】第22回議会選挙・第21回大統領選挙実施 制度的超越党が大勝
<イグナイト・タイムズ>
任期満了に伴う第22回議会選挙・第21回大統領選挙実施は、1159年5月に実施された。
明確な勝者のいない結果から中道政党4党の連立政権が発足した前回選挙から、各党派は今選挙において安定的な多数を獲得することを目標とした。バーバラ・ガレシッチ首相を支えた中道の4党は今選挙に政党連合「自由主義連合」を形成したのに対し、制度的超越党(ITP)とセニオリス社会党(ŠSP)は前回選挙における協力関係を継続する形で政党連合「超越的平等のための新人民戦線」を形成し、また議会比較第一党で右派のセニオリス民主同盟(ŠDZ)も単独で選挙戦に臨んだため、中道連合に対し左右が挑む構図となった。
大統領選挙においては、選挙戦を前にŠSPの現職であるミア・ミロシュ大統領が今選挙における立候補を断念する意向を示し、後継候補としてITPを支持する旨表明した。両党は前回選挙において政党連合を形成し協力関係にあったが、党の議席数の逆転とITP内部の情勢変化に伴い、力関係に大きな変化が生じていた。ミロシュ大統領については、ŠSPとITPの両党を合わせても50議席という議院情勢もあって存在感の低下が指摘されていた。ITP内部からはミロシュ大統領の手腕を疑問視する声が相次ぎ、ŠSPとしても今選挙においてITPとの協力は必要なものであったことより、大統領の2期目への道筋はあっけなく閉ざされる形となった。
再びの新人同士の争いとなった今選挙では、中道の自由主義連合よりコモンウェルス共和党(KRS)のフルヴォイェ・シカティッチ候補、右派のŠDZよりバーバラ・クラリツ候補、超越的平等のための新人民戦線よりITPのアナ・ゴトヴァツ候補の三者がしのぎを削った。
候補が出揃った時点での世論調査では自由主義連合のシカティッチ候補が僅かにリードするとされたが、前回1147年選挙でのミロシュ大統領当選の経緯を踏まえて各派が幅広い支持層獲得に向け動いたこともあって、支持率は拮抗し最終的には個人の人気度が勝負を決するとも言われた。このような拮抗より頭一つ抜け出したのは、新人民戦線のゴトヴァツ候補であった。
ゴトヴァツ候補は選挙戦において、政党連合にも冠された「超越的平等」を全面に打ち出し、昨今の超越支持層の拡大に合わせる形で訴え刷新感を演出した。KRS出身のシカティッチ候補が穏健過ぎるあまりに際立った政策を打ち出せず、ŠDZのバーバラ・クラリツ候補が他派への批判に終始し自身の政策のアピールに欠いたことで、ゴトヴァツ候補の注目度はますます高まることとなった。
議会選挙の傾向も、大統領選挙と連動した。新人民戦線は「超越的平等」に注目が集まった機会を利用し、基礎的な基盤であった労働組合や超越支持層に留まらず、幅広い地域において自己の政策を訴えることに腐心した。与党の自由主義連合は自身を「自由主義の守護者」と位置づけたが、大統領選と同様に「超越的平等」の旗印に対抗できるだけの政策を打ち出せず埋没。ŠDZは農業投資を基軸とした経済構想を打ち立てたが、農村地帯より外への支持拡大に苦戦した。
結果として、大統領選挙は人気面で頭一つ抜けたアナ・ゴトヴァツ候補(超越的平等のための新人民戦線)が勝利。議会選でも新人民戦線は103議席増の153議席を獲得する大勝を遂げ、1039年以来120年ぶりに「超越至上主義」が大統領・首相の両ポストを独占することが濃厚となった。自由主義連合は68議席減の38議席となり、議会第一党であったŠDZは35議席を減らし9議席と共に大敗を喫した。
ゴトヴァツ新大統領は就任会見において「超越主義と、超越のもとでの平等な暮らしを望む全ての人々にとっての歴史的な勝利だ」と宣言。今後12年の施政について「最も超越的なコモンウェルスの時代の幕開けとなる」とし、ITPの超越至上主義者として超越的な改革に強い意欲を示した。
旧超越同盟の超越至上主義者を中核に、共産主義者や民族主義者など急進勢力の系統も汲んだITPはこれまで大統領選挙における勝利こそ経験しながらも、議会選挙においては「与党にはなりそうもない」と評価されてきた。ある識者はITPが今選挙において単独でも105議席を手にしたことについて、「セニオリスにおける超越的価値観がコモンウェルス憲法の始まりとなった『穏健的超越』のみにもはや留まらなくなったことを示す」と話し、「『超越』の名が初めて政界に登場した979年に匹敵する、セニオリスにおける政治的なパラダイムシフトだ」と分析している。
【政治】ミア・タイチェヴィチ氏が第12代首相に
<北方セニオリス新聞>
1159年5月、第22回議会は首班指名選挙を行い、新首相に153票を得たミア・タイチェヴィチ氏を指名した。
アナ・ゴトヴァツ大統領は議会の指名に基づき、同氏を連邦の次期首相に任命した。
なお、同日行われた議長・副議長選挙では議長にアナ・グレグリッチ氏(制度的超越党)、副議長にはイーヴォ・ファブリス氏(セニオリス社会党)がそれぞれ選出された。
【政治】急進的超越の大勝 タイチェヴィチ政権を読み解く
<新セニオリス通信>
1159年選挙において、バーバラ・ガレシッチ首相を支えた中道左派から中道右派までの連合である自由主義連合は完膚なきまでの敗北を喫した。ITPとŠSPの連合による「急進的超越」の連合は、中道連合を陰ながら結びつけていた「穏健的超越」に対して153議席と明確な優越を確保し、ITPの結成以来初めてITP出身の首相が任命されることが確実となった。
敗北したガレシッチ首相は「我々が守り通さなければならなかった、コモンウェルス憲法成立以来の自由で穏健なセニオリスという価値観を、私自身が傷つけてしまった」と敗戦の弁を述べた。自由主義連合は左派的なITP-ŠSP連合と右派のŠDZの両極に対抗する目的で形成されたが、今選挙においてはITP中心の連合「超越的平等のための新人民戦線」が冠した「超越的平等」のスローガンを前に大きく遅れを取った。穏健すぎるあまりに独自色を欠いた自由主義連合に代わり、超越の明確な姿を示した新人民戦線に超越支持層が流れた格好だ。社会民主党(SDP)が与党の地位を失うのは、1075年のキャロリーナ・ファブリス政権の発足以来実に84年振りとなった。
以下にタイチェヴィチ政権の顔ぶれを示す。
役職 | 名前 | 所属 | |
---|---|---|---|
首相 | ミア・タイチェヴィチ | 制度的超越党(加速派) | |
外務長官 | サラ・マヨリ | 制度的超越党(至上派) | |
防衛長官 | ミレンコ・コソル | セニオリス社会党 | |
法務長官 | ルカ・マヨリ | 制度的超越党(加速派) | |
財務長官 | サラ・フリードリーン | 制度的超越党(加速派) | |
内務長官 | サーニャ・ダービシュ | 制度的超越党(色彩派) | |
国土開発長官 | アイラ・シミッチ | 制度的超越党(加速派) | |
教育科学長官 | ゴラン・ガレシッチ | 制度的超越党(色彩派) | |
経済産業長官 | エレオノール・タイチェヴィチ | 制度的超越党(加速派) | |
資源・エネルギー長官 | ミア・ペルコビッチ | セニオリス社会党 | |
運輸衛生長官 | イヴィツァ・シミッチ | 制度的超越党(色彩派) | |
農務環境長官 | イーヴォ・カティッチ | 制度的超越党(加速派) | |
労働長官 | コリンダ・ロビッチ | 制度的超越党(加速派) | |
厚生長官 | アイラ・ファーラン | 制度的超越党(加速派) | |
行政改革長官 | ズラトコ・マテシャ | 制度的超越党(至上派) |
政権はITPとŠSPの連立として発足したが、2名のŠSP出身長官は共にITPの「超越的平等」への忠実性を示しており、ŠSPの色合いは著しく薄い急進的超越を象徴する内閣であると言える。
ITPの幹部は「妨害により潰えた仮初の勝利に代わる、超越主義のための真の勝利を120年越しに手にした」と話す。その念頭にあるのは、「超越至上主義」を掲げ大統領・首相を独占しながらも、議会における議席の不足等により目標であった「超越的改革」の殆どを実行できなかったと言われるヒルダ・キタロヴィッチ第10代大統領とゾラン・シューケル第4代首相の事例と見られる。今議会においてはITPは議会過半数を手にしており、当時に果たせなかった急進的超越に従った改革が推し進められることが予期されている。
タイチェヴィチ首相は、ITPが今後目指していく改革の具体像として、内政から外交までに至る5項目からなる「5つの超越」を掲げた。野党のSDPや進歩自由党(PSL)などは改革案における複数の条項を「現行の憲法理念に反する」と批判する中で、これらの急進的改革がどこまで実行に移されるかが焦点となりそうだ。
【社会】進む労組の地盤変動 社会主義は岐路に
<労働者ネット1000>
過去にミラ・イェリッチ首相らを輩出し、「セニオリス型社会主義」を主導する存在であったŠSPが岐路に立っている。1159年選挙を前に現職であったミア・ミロシュ大統領が出馬断念に追い込まれて以降、支持基盤の労働組合で離反の動きが相次ぎ、従来の社会主義路線はこれまでにないほどに揺らいでいる。
第212回メーデー大会を前にした1160年4月、従来ŠSPへの支持を表明していた複数の産別労組らが相次いで記者会見を行い、次期選挙以降ITPを支持することを表明した。ITP主導の政党連合「超越的平等のための新人民戦線」が大勝を遂げたことへの対応とされるが、ŠSPの求心力低下は否めず、少なからぬ識者は「近年のŠSPはITPの支援なしでは戦えないほど弱体化している」と指摘している。
ある産別労組の幹部は「ŠSPがITPの『超越的平等』を全面的に支持し、そして1159年においてITPの別部隊と化した時点において、社会主義の歴史的役割は終了した」と断言する。ŠSPの伝統的支持基盤の流出は、ŠSPをますますITPに依存した政党としていくものと見られ、歴史ある社会主義政党の行く末に注目が集まっている。
その他
- 【政治】ゴトヴァツ大統領、大統領令第321号『超越的経済構築のための行政改革』に署名 ITPの主張実現に向け準備進める(北方セニオリス新聞)
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