1097年7月11日付
【政治】超越同盟解散の余波 政界に大規模再編の波
<新セニオリス通信>
1079年12月、キャロリーナ・ファブリス首相は超越同盟の解散手続きについて全て完了したと報告した。同党は同年1月に「歴史的役割は既に達成された」として解散が決定づけられていたが、1079年をもって党の103年の歴史に完全に幕を下ろした形だ。
ファブリス首相は今後、超党派の会派による「超越同盟」の首相として活動するとしたが、足元では第15回議会のだ一党所属議員の行き先が模索されると共に、極右極左勢力の瓦解など複数の要因が重なって、大規模な政界再編が繰り広げられた。
旧超越同盟の穏健派議員らと自由共和党は1月の解散宣言に前後してかねてより関係を深めていたが、1079年10月についに「穏健的超越体制への支持」を党是とする『コモンウェルス共和党(Komonvelta republikanska stranka / KRS)』を結党した。同党はコモンウェルスにおける共和主義について「中道・穏健的な民主政治を支持する立場」と説明したが、記者らの質問に対し党がより踏み込んだ表現を行うことはなかった。識者らは「超越同盟が担っていたもう一つの役割である『究極的な中道穏健派』という立場を引き継ぐ党だ」と分析し、コモンウェルスにおける多様な主張をつなぐ支柱的存在になると予想している。
左派の社会党では共産派所属議員を中心とした大規模な除名の余波から、党勢回復のために「派閥主義の解消」と「民主社会主義的綱領の再確認」が謳われた。実質的には社会派が壊滅状態の共産派を吸収した格好であり、急進的傾向を押さえコモンウェルス体制内での社会主義理論実践に注力していく格好だ。
右派のセニオリス民主党では執行部主導の不正の余波を受けて甚大な執行部不信がまん延し、党内の2派閥が共に独自の動きを続け再建を模索していた。党内左派の立憲派は、同じくイメージ回復を模索していたリバタリアンの解放党との競技の結果中道右派政党の設立で合意し、1080年1月に立憲主義・市場自由主義を旗印とする『立憲民主党(Ustavno-demokratska stranka / UDS)』が誕生した。一方の保守派もまた民主党の存続を望んでおらず、1080年2月に民主党の正式な解体を宣言すると、再起を期して保守主義の新政党『セニオリス民主同盟(Šenioridska demokratska zajednica/ ŠDZ)』を設立した。両党は共に資本主義の熱烈な支持政党という立場を受け継いでいるが、かつて「社会主義的」とまで批判したコモンウェルス憲法への立場は穏健化しており、あくまでも市場原理に基づく活気あるコモンウェルスという目標を強調している。
だが、今般の再編の中で最も大きくそして注目されている変化は、1084年9月における超越に基づいた統治を主張する『制度的超越党(Institucionalna transcendentalna partija / ITP)』の結成であろう。
共産党、フルヴァツカ・スラヴ再興運動、急進人民党のかつての党員たちも含むこの新政党は、旧超越同盟のうちヒルダ・キタロヴィッチ第10代大統領の政治理念などに見られたような「超越至上主義」を支持する党員が中心となって結党された。内部にはその来歴より3つの派閥が存在しており、その政治理念の差は決して小さくないものと見られているが、「コモンウェルスの超越化」という旗印のもとに党は団結を保っているようだ。
大規模除名の余波を受けて壊滅的被害を被っていた極左共産党からの合流者は、かつて掲げていた共産主義理念の変形と見られる究極の平等社会「超越社会」の実現を目指す派閥「加速派(Akceleratorist)」を形成している。一方政治資金不正の余波で同じく壊滅状態にあった極右フルヴァツカ・スラヴ再興運動は、セニオリス民族保守党などその他の民族主義団体なども巻き込んで「色彩派(Višebojnost)」を形成した。セニオリスに位置する様々な文化の融和と「超越的文化」の形成を主張しており、コモンウェルスの資産を文化的領域にまで拡大することを主張している。そして超越至上主義者と急進人民党出身者によって構成される「至上派(Nadmoći)」は、文字通りに超越至上主義を掲げる派閥であり、超越が全てにおいて優先される国家の実現に向けて活動している。
主要政党がコモンウェルス憲法に賛成の立場に回る中で、制度的超越党は最後まで残った急進的反対派を糾合する政党として立ち上がった。ファブリス首相は所属政党の解散と第二共和国史上最大の欠員という中でも議会を解散せず任期満了を迎えるのではないかとの観測が囁かれる中、政情がどのように変化していくのかが注目される。
【国際】レゴリス帝国、同盟理事国兼一般理事国に サンシャ独立国滅亡を受け
<北方セニオリス新聞>
1086年、フリューゲル国際連合は1091年~1100年の一般理事国推薦結果を公表し、レゴリス帝国が次期の一般理事国に就任すると公表した。一般理事国推薦を巡っては1085年までにこれまで一般理事国を務めていたサンシャ独立国が滅亡しており、推薦票の行方が注目されていた。
レゴリス帝国は「フリューゲル経済諸国同盟及びレゴリス帝国と直接または間接に安全保障条約を締結している諸国」の同盟理事国として既に安保理に参画しているため、今回の公表により国連史上初の同盟理事国と一般理事国を兼務する国家が誕生することになった。レゴリス帝国の安保理における投票権について国連事務局は非公式の回答として「明示的な規定はない」としているが、コモンウェルス外務省は「安保理における投票権は憲章第16条により『各理事国』に1個ずつ付与されていることから、レゴリス帝国の有する票は変わらず1つである」と解釈を提供している。
今回の同盟理事国兼一般理事国の誕生の背景として識者は「リーダーシップを取りうると見なされている国家の不足が大きかった」と指摘している。サンシャ独立国の一般理事国就任については「非陣営所属国の発言力強化」が理由の一つにあったとされており、陣営からの距離感や外交的発信力など複数の要因が加味された結果推薦に足る国家が見出されず、兼務支持という異例の結論に至ったというのが識者の見立てだ。
イワン・コソル外務長官は「これまでも同盟理事国として長年に渡り実績を積んできたレゴリス帝国の新たなる門出を祝福したい」とコメントしたが、ある関係筋は「推薦票にSSpact加盟国やオブザーバー国が多く関係することから、政治代表国として推薦票取りまとめのリーダーシップを取ることを模索していたが、適切たる候補国を見出すことが出来なかった」と明かしている。
フリューゲル国際連合では近年では国連新本部策定に関する議論が進行しているが、総会通常会期は会合が非開催となる会期も目立ち、また本部策定の議論についても停滞状態にあるとして「冷温停止」の状態が指摘されている。SSpact同盟理事国の立場にあるコモンウェルスが、冷温停止の国連の中でどのような対応を行っていくのかが注目される。
【政治】第16回議会選挙・第15回大統領選挙実施 勝者なき結果に
<イグナイト・タイムズ>
任期満了に伴う第16回議会選挙および第15回大統領選挙は、1087年5月に実施された。
第15回議会では旧共産党および旧社会党共産派を中心とした議員の大量除名により、第二共和国史上で最大の34名の欠員を生じていた他、キャロリーナ・ファブリス首相の所属政党でもある超越同盟が解散し多党による統一会派「超越同盟」に移行するなど異例の事態となっていたが、ファブリス首相は最終的に議会の解散に踏み切ることはなく第15回議会も任期満了による選挙を迎えることとなった。
解散に踏み切らなかった背景として首相自身は「1075年の結果は明白」と話していたが、政権幹部は実態としては首相の支持基盤たる中道陣営の選挙準備が整わなかったことに加え、社会民主党とコモンウェルス共和党の水面下での主導権争いがあったと語っている。
大規模な政界再編後初となる選挙であるために、今選挙では新政党の活動にも注目が集まった。
大統領選挙では現職で社会民主党のミリヴォイ・メシッチ大統領に対し、新進気鋭の制度的超越党のステファン・ホルワート候補、コモンウェルス共和党のアナ・ペルコビッチ候補が挑む構図となった。
メシッチ大統領は従来の社会民主党路線をそのまま受け継ぎ、これまでのセニオリスの伝統的経済政策とも言えるまでになった左派的経済政策の継承を訴えた。同氏は第二共和国において社会民主党の中道左派路線が果たしてきた役割についても触れ、いまや第二共和国で最も長く存続する政党となった社会民主党への支持を呼びかけた。一方の制度的超越党のホルワート候補は、現職候補の掲げる社会民主主義に代表される既存のイデオロギーは全て時代遅れとして批判し、「超越的政治体制」への移行を訴えた。コモンウェルス共和党のペルコビッチ候補もまた「イデオロギーからの脱却」を旗印に市民生活に密着した訴えを展開しており、選挙戦の構図がこれまでの左右対立などから変化したことを印象付けた。
メシッチ大統領と社会民主党は当初有利な展開になると見られていたが、選挙戦では制度的超越党が超越の未来像を提示したのに対して新鮮味のない主張を行っているものと見なされ次第に失速した。ファブリス首相は政界を引退しており社会民主党とも無関係ではあったものの、第15回議会が最大の欠員を抱えながらも解散されなかった点が民主主義を標榜する現職陣営にとっての負い目となり、さらにコモンウェルス共和党との対立の結果社会民主党はより「超越から遠い」政党と見なされたことも痛手となった。
結果として大統領選挙では制度的超越党のステファン・ホルワート候補が党の初陣ながらも勝利し、議会選でも同党が17議席増の55議席を獲得し勢力を伸長させた。中道連立の構成者であった社会民主党・コモンウェルス共和党はそれぞれ23議席減・7議席減と議席を失った一方で、第15回議会では苦しい立場にあったセニオリス社会党、立憲民主党、セニオリス民主同盟は議席を増やし、党勢回復の一歩を踏み出した。
今選挙ではこれまで協力関係にあった中道勢力間の対立もあって制度的超越党の勢力伸長が目立ったが、一方で政情全体を見ると制度的超越党が「勝利」を得たとは言い難い。党は議会では比較第一党となったものの、大統領が拒否権を安定的に行使できる81議席のラインには達しておらず、大統領の権限は限られた状態にある。また制度的超越党は「超越至上主義の理念を共有できるのなら連立も可能だ」と公表したものの、その条件に叶う連立候補は現在までに見出されておらず、首相の選出についても危ぶまれる状況となっている。
識者は「議会のそれぞれの勢力は拮抗状態にあり、大統領与党も十分に権威を発動できるだけの勢力を確保できていないため、『勝者の居ない』選挙結果である」と評価している。あるベテラン議員は「制度的超越党の妥協を求めるよりも、第二党のコモンウェルス共和党を軸に連立を構築する方がより易しい」と話しており、首相任命の行方に注目される。
【政治】イワン・コソル氏が第8代首相に
<北方セニオリス新聞>
1087年5月、第16回議会は首班指名選挙を行い、新首相に102票を得たイワン・コソル前外務長官を指名した。
ステファン・ホルワート大統領は議会の指名に基づき、同氏を共和国の次期首相に任命した。
なお、同日行われた議会・副議長選挙では議長にナターシャ・オレシュコビッチ氏(制度的超越党)、副議長にはイーヴォ・バリエンホルム氏(コモンウェルス共和党)がそれぞれ選出された。
【政治】抑制的な左派政権? イワン・コソル政権を読み解く
<新セニオリス通信>
1087年5月の総選挙では、大統領には制度的超越党のステファン・ホルワート氏が当選し、党も55議席を獲得し比較第一党となったが、超越至上主義への固執から連立交渉はことごとく失敗。第二党のコモンウェルス共和党を軸とした政権構築が模索されることとなった。
コモンウェルス共和党は、連立パートナーとして左派の社会党と中道左派の社会民主党を選択し、再び左派的な政権が誕生することとなった。党は現在の穏健的超越体制の維持を条件に左派政党の政策を概ね丸呑みする形となったが、それは「日和見」と揶揄されるまでに特定のイデオロギー色が薄い共和党だからこそ出来た芸当だった。
以下にコソル政権の顔ぶれを示す。
役職 | 名前 | 所属 | |
---|---|---|---|
首相 | イワン・コソル | コモンウェルス共和党 | |
外務長官 | ミルコ・ファーラン | セニオリス社会党 | |
防衛長官 | カルラ・ポリャク | コモンウェルス共和党 | |
法務長官 | ミルコ・パヴロヴィッチ | 社会民主党 | 再任 |
財務長官 | アナ・モホロビチッチ | 社会民主党 | |
内務長官 | ステファン・マノリッチ | コモンウェルス共和党 | 再任 |
国土開発長官 | アイラ・ロビッチ | 社会民主党 | 再任 |
教育科学長官 | マリオ・ルジチカ | セニオリス社会党 | |
経済産業長官 | ヨシップ・シミッチ | セニオリス社会党 | |
資源・エネルギー長官 | セナ・マノリッチ | 社会民主党 | |
運輸衛生長官 | マルコ・ブラジェビッチ | コモンウェルス共和党 | 再任 |
農務環境長官 | セヴェリナ・ヨシポヴィッチ | コモンウェルス共和党 | |
労働長官 | ヨシップ・セッテルバリ | コモンウェルス共和党 | 再任 |
厚生長官 | マルコ・ブラシッチ | コモンウェルス共和党 | |
行政改革長官 | グン・コラク | 社会民主党 |
イワン・コソル新首相はキャロリーナ・ファブリス前政権における外務長官経験者であり、コソル政権における閣僚にも前政権からの再任者が数名見られる。前政権で水面下で主導権争いを繰り広げた共和党と社会民主党が同じ与党に再び収まっており、「方向性はファブリス前政権から大きく変わらない」と評する向きもある。
一方で社会党の連立参入は、第15回選挙等において火花を散らしてきた超越主義と社会主義の和解を象徴するものと見られている。社会党のある幹部は「超越主義的体制は社会主義的経済と決して矛盾しない」と従来の対決姿勢を緩める方針を示しており、社会民主党の幹部は「これまで第二共和国の長い期間において我々や社会党が主導する経済左派路線が続いてきたことを考えるなら、今連立は『船を大きく揺るがさない』ということに尽きるだろう」と政権の意義を強調した。
セニオリスにおける急進主義政党を糾合する形で誕生した制度的超越党の伸長は、コモンウェルスを揺るがすと指摘されているが、第16回議会は第二共和国の歴史で長らく続いてきた左派的政権を再び誕生させた。コソル首相は制度的超越党を念頭に「コモンウェルスの安寧を望むならば、超越の名を称する冒険的思想に目を離すべきではない」と話しており、首相が穏健派政策の意義を市民に示せるかが問われている。
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