877年9月25日付〈中央通信〉
7月18日に行われた国民投票において、労働党が発議したカルセドニー社会主義共和国憲法は国民の57.8%の支持を受けて承認された。新憲法は878年1月1日から施行されることになる。新憲法は我が国は自主管理組織とその上位組織である委員会を中核とした社会主義国家であることを明記し、自主管理組織への所属を国民の明確な権利と位置付けている。単に共和国を社会主義国家とのみ位置付けており、その解釈に多義性があった旧憲法と比べると、共和国の「委員会社会主義」国家としての側面が強調されたと言える。また、共和国の連邦制は廃止され、これまで州政府が担っていた戸籍管理などの業務は自主管理組織に統合されることになる。これに合わせて国名から「連邦」の2文字が外されることになった。
新憲法で最も大きな制度変更がなされたのは共和国議会である。新憲法は上下両院を有することになる。下院は基本的には連邦共和国議会を引き継ぐが、100議席の地方選挙区は廃止され、862年憲法以前から存在する600議席の委員会選挙区に集約される。立法府としての機能のほとんどは下院が果たすことになり、予算については過半数、法案についても下院の支持があれば上院が否決した場合においても再可決によって成立させることができる。また、任期は10年と半減され10年ごとに全議席が改選されることになった。上院は直接選挙ではなく、委員会単位で委員長が任免することができる。委員会の委員長は大統領による任命制なので、上院は立法府というより行政府に近い。上院が立法機関としての役割を十分に果たすことができるのは条約の批准においてのみであり、条約の批准に関しては上院が否決する限り下院が再可決したとしても採択することができない。上院議員は各委員会ごとに5名であり、結果的に45名が上院議員となることになる。
国家元首は862年憲法と変わらず大統領であり、その任期も変更されていない。すなわち、任期は6年であり必ず1度は再選されることができるが、同一人物が大統領に就けるのは3期までにとどまり、18年にわたり大統領を務めたならばその後は引退を余儀なくされる。しかし、大統領の選出手続きは大きく変更され、州単位の選挙人選挙から「国民の直接投票→上院による決選投票」という二段階制がとられることになった。大統領選挙は基本的には国民の直接選挙によるが、過半数の得票を獲得した候補が存在しなかったならば、上院議員による投票で大統領が選出されることになる。
また、移行手続きとして、年明けに新憲法が施行された時点で共和国議会の地方選挙区選出の議員はその地位を失うが、委員会選挙区選出の議員は(870年選出、860年選出を問わず)880年までその地位を保持し、880年選挙で全ての議員が改選されることとされた。
政界再編進む
改憲の成立を受け、労働党は正式に解党を発表した。労働党所属議員は旧<孤立主義派>が中心となり結党した人民党、旧<国際主義派>が中心となり結党した革新党の両党に分党、党勢の衰えつつある連合党を見限った一部議員を吸収してそれぞれ拡大している。現時点で人民党所属議員は地方選挙区選出議員が失職し議会定数が600となった時点の議会過半数をわずかに上回ることになる321人、革新党所属議員は121人となっている。両党の議席の合計は442人で、これは解党前の労働党の委員会選挙区選出議員合計の420人よりかなり多く、労働党系の両党が連合党系議員の引き抜きにより今後の政界における影響力を奪い合っている構図と言える。また、地方選挙区選出の労働党議員の中で旧進歩党系の議員が集まって民主前進党を立ち上げたが、労働党中枢からはまともに取り合われず、委員会選挙区選出議員からこれに合流する議員は現れていない。
「南の風」系の右派議員は連合党の惨状を見て連合党を離党、新党南の風を結党したものの、ほとんどの所属議員が地方選挙区選出であることもあり、新憲法施行後も議員の地位に留まる議員はわずか5人である。「南の風」は地方選挙区から委員会選挙区への鞍替えにより880年次選挙での議席拡大をもくろんでいるが、特に「南の風」の影響力が小さい本土の連合党右派系議員からは悲観論も出ており、特に東ジャスパー準州出身のペンタ・ジャスパー議員は新党南の風への合流を選ばずに委員会選挙区選出議員としてはただ1人で地方党を立ち上げた。地方選挙区選出議員の中でもガーネット州やエラキス州といった連合党の地盤地域以外から選出されている議員の中からはこれに同調する動きも出ており、次回選挙での動向に注目される。
この、労働党系の人民党・革新党・民主前進党、連合党及び連合党から離党した南の風及び地方党の6党が現職共和国議会議員(地方選挙区含む)の参加の得られた政党であり、州の地方政府機能の解体が行われ地方議会も消滅することから、これらのみがこれ以降当面の間のカルセドニー政界に影響力を及ぼし得る政党であることはほぼ間違いないと言える。
大統領、イスタシア問題「静観」
レテン大統領はイスタシアを巡る情勢に対して静観の構えを続けている。4ヶ国によるイスタシア王国への「開国要求」から始まったこの紛争は、イスタシアが開国を受け入れレゴリス帝国とウラン鉱山開発支援協定を締結したことで解決したかに思われたが、その中でイスタシアが「外務省を設置した」と発表、それ以前に同国が「外務省」名義で行っていたあらゆる外交行為が実は虚構だったのではないかとの疑念が持ち上がったことで問題が再燃している。レゴリス帝国はイスタシアの外交姿勢を「狂言を働いている」と懸念、回答がなかった場合は「様々なオプション」を有しているとしている。ここで、「様々なオプション」という表現は、一般に「軍事力行使を排除していない」という意図で用いられることが多いことから、一部の有識者からは「レゴリス帝国はイスタシア王国への宣戦布告を検討しているのではないか」という懸念が上がっている。
正当性なき戦争行為を禁じたフリューゲル国際連合の同盟理事国であるレゴリス帝国が、「軽々に」戦争に踏み切る可能性は低いと言ってよいが、万が一戦争に事態が発展した場合は共和国も何らかの対応を余儀なくされるであろう。しかしながら、レテン大統領は「FUN憲章に反した事態が生じない限り静観を続ける」という態度を崩しておらず、レゴリス帝国の声明に対する言及も避けている。大統領自身の思惑としては、改憲という国内の重要な節目に国際問題に首を突っ込むことで国内世論の混乱を招きたくないといったところであろうが、イスタシア国制への関与をほのめかしているノイエクルス連邦や、レゴリス帝国を中心とした4ヶ国など、関係国はイスタシアに対する態度を次第に硬化させており、事態は予断を許さない。
革新党は改憲の発効までは(地方選挙区選出議員の失職までは人民党単独では議会の過半数を割っているため)確実にレテン政権を支持するとしながらも、党内急進派からはレテン大統領の態度に対して「烈椅対立を戦争に至らしめないのがFUNの役割であり、静観を続けることはFUN体制に対してネガティブな影響がある」との声も上がっており、レテンの煮え切らない態度に対して懸念が生じ始めている。
【社会】ボードゲーム大会2年目も開催。トッププレイヤーの戦績を予想する「馬券」も販売。
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