864年12月28日付〈中央通信〉
●労働党 ●連合党
864年12月27日に投開票された大統領選挙の結果、連合党の推薦するキウィク・ムトロライト動力委員長の当選が確実になった。同時に行われた地方選挙区においても連合党が過半数の議席を獲得、労働党中心で進められてきた共和国の政界は激震に見舞われることになった。
連合党は党主流派のキウィク動力委員長がすんなり候補に決まったのに対し、労働党は「三大城塞」内部での候補調整が難航、その中で国内で知名度の高いユハル・ツァボライト国連大使(元外交委員長)に候補として白羽の矢が立ったが、結果的にこれが敗因となった。「国際の正義」外交を掲げるユハルは熱狂的な支持を集める一方で、保守的な価値観の根強い労働党支持層全体に訴えかけることができなかった。結果的に、労働党は主要な支持基盤の一角であったアゲート州すら落とす大敗を喫することになった。
また、ラス・アノド海賊連合に対するミルズ皇国の宣戦布告という国際社会の緊急事態において、選挙運動のため帰国を余儀なくされたユハルはほとんどコミットできず、その一方で連合党籍のトレア・カーネリアン代理大使が事態の収束に大きく貢献したとみなされたことが国内で嫌悪感の強かった「連合党の外交政策」に対する評判を一気に取り戻すことに結びついたとする分析もある。
選挙区 | 労働党 | 連合党 | 選挙人数 | ユハル支持率 | キウィク支持率 |
ウェストカーネリアン州 | 9 | 6 | 7 | 56.3% | 43.7% |
エライ州 | 10 | 5 | 6 | 56.3% | 43.7% |
アゲート州 | 9 | 6 | 5 | 47.6% | 52.4% |
エラキス州 | 4 | 11 | 7 | 23.7% | 76.3% |
ガーネット州 | 5 | 10 | 9 | 27.2% | 72.8% |
クリソプレーズ特別市 | 5 | 5 | 3 | 46.9% | 53.1% |
クリストバライト特別市 | 2 | 8 | 3 | 20.0% | 80.0% |
東ジャスパー準州 | 3 | 2 | 1 | 54.7% | 45.3% |
合計 | 47 | 53 | 41 | — | 当選 |
獲得選挙人数はキウィク27、ユハル14
キウィク政権の展望
当選確実が報じられると直ちにキウィク陣営は各委員会の委員長候補をリストアップしているが、いわゆる中央処理委員会、内務公安委員会、軍部委員会の「三大城塞」には連合党員がほとんどおらず、特に委員長に任命することが可能な局長クラス以上はほぼ完全に労働党<孤立主義派>によって固められている。そのため、これら3委員会については労働党から委員長が選ばれることになるが、この点はキウィク政権にとっての障害であると見込まれている。一方で、他の6委員会については連合党から委員長が任命されることは間違いなく、特に外交委員会についてはトレン・シトリンが普蘭ライン危機への対応の責任を取って辞任して以来の連合党外交委員長が誕生する運びとなった。外交委員長にはチシヤ・モスアゲート安全保障理事会が任命される見通しであり、外交委員長が任免権を持つ国連大使についてもトレア・カーネリアン代理大使がそのまま昇格すると見込まれている。
一方で、連合党は今回獲得した53議席を既存の委員会議席244に加えて、共和国議会で297議席を有するにとどまる(労働党は403議席)。少なくとも次回選挙の行われる870年までは少数与党となることが確定しており、キウィク政権がどの程度の実効性を持った政策を打ち出せるかは不明である。連合党は労働党内の派閥対立を利用し、特に<国際主義派>を味方につけることで立法手続きを進めていきたい構えであるが、外交政策における両者の乖離をどこまで埋められるかは疑問である。
エラキス州沖合で国籍不明船か
864年末、エラキス州の沖合で国籍不明船の目撃報告が相次いだ。ユーファストーン市の港湾職員(生産搬送配給委員)は、「どこの国の国旗とも思えない真っ黒な旗を掲げていた。船体はボロボロで、よくあの船で長期航海をしているものだと思った」と証言しており、その正体は全く不明である。船は西(ガーネット州方面)に抜けていったとされているが、ガーネット州内の海上保安任務の事実上のトップであるフェリペ・エスカミジャ・トレント軍部委員会海軍局ガーネット州部長は記者団に対し「州内、あるいは州近海を航行する船舶は全て把握しているが、そのような不明船は承知していない」と回答している。
エラキス・ガーネット州内においてはこの船に関するうわさが拡散しており、「幽霊船だったのではないか」「『南の風』に影響力を持っている他国の要人が乗っていたのではないか」「ラス・アノドのジャバルティ提督が再起を図るためガーネット州に逃げ込んだのではないか」などと、根も葉もない憶測が語られている。