
フリューゲル暦1236年8月下旬、サンサルバシオン条約機構(以下SSPact)正加盟国からなる条約委員会は公式に声明を発し、ヴェールヌイ社会主義共和国のSSPact加盟申請を全会一致で承認する旨を公表した。この承認をもって、SSPactの正規加盟国はヴェールヌイ社会主義共和国・ロシジュア帝聖平和ドミニウム・新洲府共和国の3か国となる。
ヴェールヌイは成立時点からSSPactを支える主要構成国の一つであったが、最終的に980年代のセニオリスでのクーデターに端を発する一連の政治的浮動を受けてSSPact脱退を表明。その後はベルクマリ条約機構(BCAT)を設立するなど独自路線を取りつつも、SSPact構成国との友好関係は変わらず継続する姿勢をみせてきた。
昨今の瑠瀬戦争やその周辺の社会経済の不安定化により、ヘルトジブリール社会主義共和国・セニオリス共和国が相次いで崩壊、SSPactの正加盟国はロシジュア・新洲府2か国を残すのみとなっていた。同盟組織としての存立基盤が揺らぐこの状況下で、ヴェールヌイの復帰が実現したことの意義は非常に大きい。
この復帰をもって直ちにSSPactが従前のようなハードパワーを取り戻すわけではない。しかし、SSPactが新たな時代へと大きな一歩を踏み出したことは確かである。その一歩がSSPactの再興へと向かうものになるかどうかは、志を新たにしたヴェールヌイ、そしてかの国を迎え入れる決断を下した新洲府・ロシジュアの、連携と結束に懸かっているといえよう。
【政治】超天連邦の超越的存続が確定
フリューゲル暦1236年8月下旬、定例記者会見の中でヴェロニカ・エタニティ―ナ中務ソシアート代表は、超天連邦を存続させる意思を明らかにした。
超天連邦は、912年5月中旬にロシジュア帝聖平和ドミニウム・ヘルトジブリール社会主義共和国を原加盟国として発足した連邦組織。構成国から選出される議員が所属する連邦議会の他、連邦大統領・連邦裁判所など、国家横断的な組織を多数有する。
かかるヘルトジブリールの崩壊を受け、ロシジュアでははらぺこ基金を原資とする天国難民への援助など、連邦構成国として最大限の支援を行うための体制整備が進められている。他方、連邦は今や国家連合としての実態を失っているとの見方も強く、その行く末にもまた注目が集まっていた。
エタニティ―ナ代表は、超天連邦の持続可能性について「物理的な限界は精神的な限界を意味しない。ヘルトジブリールは物質としては崩壊したが、その魂は生きている」と回答。また、ヘルトジブリールの国家再建の希望はいまだ残されており「魂の器を破棄するべきではない」とし、既存の超天連邦の解体やそれに類する制度の改変は行わない態度を明確にした。
翌週に開かれた連邦議会においても超天連邦の今後に関する討議が行われたが、その休憩時間中には連邦議会の慣例として議場近くの茶店よりハーブティーが振舞われた。ロシジュアより選出された議員5名が薫り高い茶の風味に心を温める中、誰も座っていない5議席でもハーブティーが湯気を立てていた。その議席がかつてヘルトジブリール選出の議員が占めていた席であったのは言うまでもない。当該の連邦議会決議によって、超天連邦の各種組織の保守管理等については当面の間、唯一”物理的に”存在する構成国であるロシジュアが全部を負担することになる。
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