1月10日、君主制連合は前回不受理となった体制案に代わり、再調整案として新たな憲法案を発表した。
新憲法案では、旧イスタシア王国にてみられた主君と宰相(従者)の間の疑似姉妹関係(シュベスター制度)を再現する形で、本国政府の示す「基本原則」に抵触しない選挙元首制の実現を目指す仕組みが盛り込まれている。この新憲法案は旧イスタシア王党派が提案し、そこに「推しカップリング文化」に興味を示す旧ラングラード皇帝派が賛同することにより実現したものと思われる。住民の間では早くもこの新制度に対し関心が集まっており、日頃から百合を嗜む紳士・淑女らによる「推しカップリング会議」が早くも各地で開催されている。
なお、男性の総統の就任は想定しているか?との我々取材陣の質問に対し、君主制連合は公式見解として「想定はしており、実際に過去男女間の姉弟契約が歴史上例外的にみられたこともある。総統は元老院議員の中から指名されるため、百合を愛する議員が多数派である限り心配はいらないだろう」と返答した。
*シュベスター制度*
旧イスタシア王国にて、国王陛下とその女性宰相、あるいは各地の貴族とその女性従者との間で交わされた疑似姉妹契約。夫婦のように教会で挙式を行い、指輪を交換した。血縁の姉妹であるかのように振る舞い、主に人生経験の豊富な不老不死あるいは長寿の君主・貴族が新任の宰相・従者を姉として導くという文化が広くみられた。
併せて、再調整案では、前文にも新たな文言が追加されている。
先の君主制連合による体制憲法案が不受理となったことに関しては、住民を含め多くの民衆・組織が反発し、他の体制案は不可解なまでにスピーディーに受理されたことを踏まえノイエクルス連邦及び監視団諸国に対する不信感が強まっていた。特に問題となった全イスタシア労農連盟案のプロレタリア独裁ぶりには住民の多くが驚愕し、「なぜこの非民主的かつ財産権侵害極まりない制度案が受理されたのか理解不能だ」「住民投票管理委員会の頭にはロールケーキしか詰まっていない!!」「この世には労働者と農民しかいないと思いあがっているのか!?」など民衆の間では日々怒りの声が上がっている。我々独自の取材によると、労農連盟案はイスタシア地域内のノ連直轄領から発出されており、イスタシア地域全体を考慮・代表されたものとは思えないことが明らかとなっている。現在直轄領を除くイスタシア地域全域では世界最高水準の社会保障が担保され、失業率も世界最低水準、労働環境は良好なものと様々な統計データにより示されている。また、地域の農業は大規模穀物メジャーによる高度に機械化された小麦生産や、全工程の9割以上が自動化された野菜工場等がメインであり、前時代的に搾取される農民・労働者などほぼ存在し得ないからである。逆に、自治政府が協定上その自治権を行使できない結果として社会保障の範囲外となった直轄領内では、現在事実上の「無政府リバタリアニズム」に陥っており、貧富の格差や劣悪な労働環境がまかり通っているまさに「無法地帯」となっている。これらの事情を踏まえれば、今回の奇妙な体制案の相次ぐ登場とその受理という結果の背景が見えてくるだろう。監視団諸国についてはその後の監査結果公表により住民の間では「不十分ではあるが、ある程度中立的な立場が示され、特に立憲君主制の可能性について前向きな見解が得られた」とし一定の評価を下す声が多くみられ、監視団諸国への評価もやや上向きになったものと思われる。
さて、これらの事情から、君主制連合及び与党社会自由党は、互いの新憲法案にある共通の前文を書き加えることで合意した。これにより、住民の怒りに対する溜飲は下がるだろう。
以下が再調整案として提出された憲法案(通称:百合開花案)である。
イスタシア諸邦連合帝国憲法
(通称:連合帝国憲法)
これまでイスタシア地域住民は、連邦本国政府の度重なる怠慢あるいは失策により引き起こされた数々の困難、我々イスタシア自治政府の管轄下にない連邦直轄領における劣悪な住環境等による同胞の生存権の危機といった苦難に30年以上の長きにわたり耐え忍んできた。さらには、我々の将来的な自治権をかれらの意図する形態に制限せしめんとする諸国の策動にも侵されてきた。我々は住民の基本的な人権及び各民族固有の文化が損なわれたこれらの時代の苦渋を忘れず、一貫して市民の諸権利を保障すること、地域における文化を尊重しその振興を図ること、及び公的機関の活動に誠実と正確を確保することを責務とし、その責を担うべく後継政府を樹立するに至った。
今日、イスタシア自治領はノイエクルス連邦からの正式な独立に際し、継承政府の国号をイスタシア諸邦連合帝国(Vereinigtes Schwesterreich von Istasie Territorien)とすることで合意した。
イスタシア自治政府は自治領内の住民の総意に基づき、継承政府の誕生を祝してこれを制定し公布する。
第一章 連合帝国の範囲と地方自治
第1条 イスタシア諸邦連合帝国(以下連合帝国)は、従来のイスタシア自治領の領土・領海・領空から成る。
1.イスタシア自治領内のノイエクルス連邦直轄領も連合帝国の主権下に帰属する。
第2条 連合帝国を構成する諸邦は以下に分類され、法律によって別途定められる範囲の自治権をもつ。
1.領邦(オストアレフィス公領、アンガンチュール公領、アンガス公領、ヘルヴォル大公領、エルーカ公領、キルツハウエン公領、ヴェストリュッセル大公領、トパゾライト侯領)
2.特別市(ミュンツェン市)
3.特別自治領(モーティス領、セレン領)
4.教会領(ボードラウゼ大司教領、リーリエンブルク大司教領)
第3条 諸邦は国家に準ずる自治組織として設置され、その長は諸邦の形態により以下の異なる方式によってその地位及び権能が規定される。
1.領邦においては、従来のイスタシア自治領の下で伝統的に首長に就いていた者とその直系子孫が引き続き首長を務める。首長は儀礼的存在であり、宰相に対する助言のみがその権能と認められる。首長の地位の相続及び家系断絶等の事態においては別途法律で定めるものとする。首長の権威の下、住民の直接投票によって民主的に選出される宰相が領邦における行政を担うものとする。
2.特別市及び特別自治領においては、首長は法律で定めるところにより市民あるいは住民の直接投票によって選出され、その行政を担うものとする。民族、信条、性別、社会的身分、出身、教育、財産などによって差別されてはならない。
3.教会領においては、首長は各教会組織の構成員から別途法律に定められた方法(コンクラーベ)によって選出される。首長は宗教的、儀礼的存在であり、宰相に対する助言のみがその権能と認められる。首長の権威の下、住民の直接投票によって民主的に選出される宰相が領邦における行政を担うものとする。
第4条 諸邦は独自の警察及び軍事組織をもつことが認められる。
1.単独諸邦の範囲を超えた国内事案あるいは危機、他国との紛争等の事態に際しては、姉君の権威ならびに内閣の権限の下召集を受け連合帝国としての職務にあたるものとする。
第5条 諸邦には、法律の定めるところにより、その議事・立法機関として議会を設置する。議会を構成する議員は、連合帝国の元老院に準ずる形で民主的に選出されなければならない。
第6条 諸邦は、この憲法及び法律に反しない限りにおいて、諸邦議会の権限の下に各領法あるいは条例を制定できる。
(中略 諸邦の下に属する地方自治体について等)
第二章 姉君(Großartige Schwester)と内閣
第10条 連合帝国の国家元首の尊位は姉君(Großartige Schwester)に委託される。
1.姉君の尊位は旧イスタシア王国の君主の地位を継承するものではなく、また旧来の伝統的な王位等とは異なる新政府独自の儀礼的な称号であることを確認する。
2.姉君は国民すべての「姉」であり、また同時に内閣の長たる総統を導き深遠なる絆で結ばれる姉である。
第11条 姉君の任期は10年とし、以下の方法で国民の直接投票により選任される。
1.姉君の被選挙権は現職の各領邦及び教会領の首長にのみ付与される。
3.全候補者のうち、最大多数の票を獲得した者が皇帝の尊位を得る。
第12条 連合帝国の行政権は、姉君の助言及び導きの下、総統に属する。
第13条 総統(Doge)は、下院議員の中から下院によって指名され、姉君の任期と常に同一でなければならない。
1.姉君と総統は、選任・指名の後すみやかに元老院議場にて法律に定める形式にしたがって「開花の儀」を挙行し、これをもって任期中の疑似姉妹/姉弟契約を締結する。
2.任期満了の後、姉君、総統のどちらか一方あるいは両方が交代となる場合、「舞い散りの儀」を挙行し、円満に相互の契約は解消される。
第14条 総統は自らの権限の下、組閣を行う。
第15条 総統は各国務大臣を任命できる。ただし、全国務大臣のうち半数以上は元老院の議員から選定されなければならない。
第16条 総統は、連合帝国の陸・海・空・宇宙・近衛軍及び連合帝国の軍務に実際に就くため召集された各諸邦の軍隊の最高司令官である。
第17条 総統は、他国と条約の締結を行う権限を有する。ただし、締結には元老院の両院で総議員の3分の2以上の賛成による承認を必要とする。
第18条 連合帝国内において、災害、紛争、その他の事態により公共の安全および秩序に著しい障害が生じ、それによって国家あるいは各諸邦の存続が危ぶまれる際には、総統は公共の安全及び秩序を回復させるために必要な措置をとることができ、必要な場合には、武装兵力を用いて介入することができる。また、この目的を達成するため、必要な場合には、総統の命令にてこの憲法の第48条及び第49条に定められた国民の権利を一部停止出来る。
・ただし、この措置を講じ事態が収束した際にはすみやかに国民の全権利を回復し、また総統は姉君ならびに元老院の事後承認を得なければならない。
第19条 省庁の創設・統廃合及び各省庁の権限は、法律によってこれを定めるものとする。
(中略)
第三章 立法
第25条 連合帝国の唯一の立法機関として元老院を設置し、これを国権の最高機関とする。
第26条 元老院は、上院及び下院の両院でこれを構成する。
第27条 元老院は、国民を代表し選出された議員によって組織される。
第28条 議員の選挙権及び被選挙権は、法律によってこれを定める。民族、信条、性別、社会的身分、出身、教育、財産などによって差別されてはならない。
(中略 議員の任期、法律制定の手続き、下院優越の原則等)
第四章 司法
第37条 連合帝国のすべての司法権は、最高裁判所及び法律に定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
1.すべての裁判所は、行政及び立法機関からの独立性を保たなければならない。各裁判官は、その良心に従いこの憲法及び各法令にのみ拘束される。
第38条 最高裁判所裁判官は、内閣でこれを任命し、その他の下級裁判所裁判官は、最高裁判所裁判官によって任命される。裁判官は、心身の故障により職務を全うできないことが明白な場合を除き、10年ごとに実施される国民審査あるいは公の弾劾によらなければ、罷免されない。
第39条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所として設置される。
(中略)
第五章 国民の自由及び権利・義務
第42条 連合帝国民たる要件は、法律によって定める。
第43条 連合帝国の主権は国民に属する。
第44条 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求の権利は、人権相互の衝突に際しない限り最大限保障される。
第45条 すべての国民は、民族、信条、性別、社会的身分、出身によって差別されてはならない。
1.身分的特権は、伝統的領邦の首長に関する儀礼的地位に属するものを除き、その一切が廃止される。
第46条 個人の思想信条の自由は、これを侵してはならない。
第47条 元老院は、国教を樹立し、もしくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、国民の言論もしくは出版の自由、集会、結社あるいは政府に対する請願の権利を侵す法律を制定してはならない。検閲は、これをしてはならない。
1.ただし、その集会・結社の目的または構成員の行動が国民の基本的人権及び民主主義を著しく侵害もしくは除去し、または、連合帝国の存立を危くすることを目指すものは、違憲である。違憲の問題については、最高裁判所が決定する。
第48条 すべての国民は、全連合帝国内において居住、移住の自由、土地の取得及び職業選択の自由を有する。公共の福祉の観点からやむを得ない場合を除きこれを制限する法律を制定してはならない。
第49条 すべての国民は、政府及び地方自治体に対し民主政治の発揮に必要たりえる情報の公開を請求し閲覧する権利を有する。国家機密及び公共の福祉による制約は必要最小限度のものに留め、別途法律によりこれを規定する。
第50条 すべての国民は、アイドル、バンドグループその他アーティスト等に親しみこれを鑑賞及び応援する権利が最大限保障される。政府は都市人口に対し必要たりえる規模の公演に供する施設を整備する責務を有する。
第51条 すべての国民は、納税の義務を負う。
(中略)
第八章 改正
第55条 この憲法の改正は、元老院両院の総議員の3分の2以上の賛成で元老院を発議し、その議案は国民の承認を得なければならない。全国民の直接投票において過半数の賛成を得ることによってのみこれが承認される。
1.憲法改正について前項の承認を得た際には、姉君はただちにこれを連合帝国の名において公布し、公布から6か月後にこれを施行する。
(中略)
第十章 補則
第60条 この憲法は、公布の日から起算して6か月を経過した日から施行する。
1.ただし、国号の制定及び使用については、公布の日と同日から開始するものとする。
(後略)
社会自由党、独自案を発表 「民主共和制を封建的フレーバーで包み込んだもの」
君主制連合の再調整案が提出されたのと同日、イスタシア社会自由党からも体制案が公表、提出された。
社会自由党は会見で「従来のフリューゲルにおける民主共和制を踏襲しながらも、一部我が地域の事情に合わせ民主共和制を封建的フレーバーで包み込んだものを作成した。先の君主制連合案を修正する形であるため大枠は変わっておらず、住民の皆様には是非ご理解をいただき有意義な投票をお願いしたい」と述べた。
以下、イスタシア社会自由党による憲法案
イスタシア諸邦連合帝国憲法
(通称:連合帝国憲法)
これまでイスタシア地域住民は、連邦本国政府の度重なる怠慢あるいは失策により引き起こされた数々の困難、我々イスタシア自治政府の管轄下にない連邦直轄領における劣悪な住環境等による同胞の生存権の危機といった苦難に30年以上の長きにわたり耐え忍んできた。さらには、我々の将来的な自治権をかれらの意図する形態に制限せしめんとする諸国の策動にも侵されてきた。我々は住民の基本的な人権及び各民族固有の文化が損なわれたこれらの時代の苦渋を忘れず、一貫して市民の諸権利を保障すること、地域における文化を尊重しその振興を図ること、及び公的機関の活動に誠実と正確を確保することを責務とし、その責を担うべく後継政府を樹立するに至った。
今日、イスタシア自治領はノイエクルス連邦からの正式な独立に際し、継承政府の国号をイスタシア諸邦連合帝国(Vereinigtes Reich von Istasie Territorien)とすることで合意した。
イスタシア自治政府は自治領内の住民の総意に基づき、継承政府の誕生を祝してこれを制定し公布する。
第一章 連合帝国の範囲と地方自治
第1条 イスタシア諸邦連合帝国(以下連合帝国)は、従来のイスタシア自治領の領土・領海・領空から成る。
1.イスタシア自治領内のノイエクルス連邦直轄領も連合帝国の主権下に帰属する。
第2条 連合帝国を構成する諸邦は以下に分類され、法律によって別途定められる範囲の自治権をもつ。
1.領邦(オストアレフィス公領、アンガンチュール公領、アンガス公領、ヘルヴォル大公領、エルーカ公領、キルツハウエン公領、ヴェストリュッセル大公領、トパゾライト侯領)
2.特別市(ミュンツェン市)
3.特別自治領(モーティス領、セレン領)
4.教会領(ボードラウゼ大司教領、リーリエンブルク大司教領)
第3条 諸邦は国家に準ずる自治組織として設置され、その長は法律に定めるところによって民主的に選出され、行政を担う。
第4条 諸邦は独自の警察及び軍事組織をもつことが認められる。
1.単独諸邦の範囲を超えた国内事案あるいは危機、他国との紛争等の事態に際しては、総統の権限の下召集を受け連合帝国としての職務にあたるものとする。
第5条 諸邦には、法律の定めるところにより、その議事・立法機関として議会を設置する。議会を構成する議員は、連合帝国の元老院に準ずる形で民主的に選出されなければならない。
第6条 諸邦は、この憲法及び法律に反しない限りにおいて、諸邦議会の権限の下に各領法あるいは条例を制定できる。
(中略 諸邦の下に属する地方自治体について等)
第二章 行政
第10条 連合帝国の国家元首の地位は総統(Doge)に委託される。
第11条 連合帝国の行政権は、総統に帰属する。
第12条 総統の任期は10年とし、国民の直接投票により選任される。
1.現職の総統は連続して次期の総統に立候補することはできない。
3.全候補者のうち、最大多数の票を獲得した者が総統の地位を得る。
第13条 総統は自らの権限の下、組閣を行う。
第14条 総統は各国務大臣を任命できる。ただし、全国務大臣のうち半数以上は元老院の議員から選定されなければならない。
第15条 総統は、連合帝国の陸・海・空・宇宙・近衛軍及び連合帝国の軍務に実際に就くため召集された各諸邦の軍隊の最高司令官である。
第16条 総統は、他国と条約の締結を行う権限を有する。ただし、締結には元老院の両院で総議員の3分の2以上の賛成による承認を必要とする。
第17条 連合帝国内において、災害、紛争、その他の事態により公共の安全および秩序に著しい障害が生じ、それによって国家あるいは各諸邦の存続が危ぶまれる際には、総統は公共の安全及び秩序を回復させるために必要な措置をとることができ、必要な場合には、武装兵力を用いて介入することができる。また、この目的を達成するため、必要な場合には、総統の命令にてこの憲法の第48条及び第49条に定められた国民の権利を一部停止出来る。
・ただし、この措置を講じ事態が収束した際にはすみやかに国民の全権利を回復し、また総統は元老院の事後承認を得なければならない。
第18条 総統は、元老院下院を解散する権限を有する。
第19条 省庁の創設・統廃合及び各省庁の権限は、法律によってこれを定めるものとする。
(中略)
第三章 立法
第25条 連合帝国の唯一の立法機関として元老院を設置し、これを国権の最高機関とする。
第26条 元老院は、上院及び下院の両院でこれを構成する。
第27条 元老院は、国民を代表し選出された議員によって組織される。
第28条 議員の選挙権及び被選挙権は、法律によってこれを定める。民族、信条、性別、社会的身分、出身、教育、財産などによって差別されてはならない。
(中略 議員の任期、法律制定の手続き、下院優越の原則等)
第四章 司法
第37条 連合帝国のすべての司法権は、最高裁判所及び法律に定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
1.すべての裁判所は、行政及び立法機関からの独立性を保たなければならない。各裁判官は、その良心に従いこの憲法及び各法令にのみ拘束される。
第38条 裁判官は、内閣でこれを任命する。裁判官は、心身の故障により職務を全うできないことが明白な場合を除き、10年ごとに実施される国民審査あるいは公の弾劾によらなければ、罷免されない。
第39条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所として設置される。
(中略)
第五章 国民の自由及び権利・義務
第42条 連合帝国民たる要件は、法律によって定める。
第43条 連合帝国の主権は国民に属する。
第44条 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求の権利は、人権相互の衝突に際しない限り最大限保障される。
第45条 すべての国民は、民族、信条、性別、社会的身分、出身によって差別されてはならない。
1.身分的特権は、その一切が廃止される。
第46条 個人の思想信条の自由は、これを侵してはならない。
第47条 元老院は、国教を樹立し、もしくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、国民の言論もしくは出版の自由、集会、結社あるいは政府に対する請願の権利を侵す法律を制定してはならない。検閲は、これをしてはならない。
1.ただし、その集会・結社の目的または構成員の行動が国民の基本的人権及び民主主義を著しく侵害もしくは除去し、または、連合帝国の存立を危くすることを目指すものは、違憲である。違憲の問題については、最高裁判所が決定する。
第48条 すべての国民は、全連合帝国内において居住、移住の自由、土地の取得及び職業選択の自由を有する。公共の福祉の観点からやむを得ない場合を除きこれを制限する法律を制定してはならない。
第49条 すべての国民は、政府及び地方自治体に対し民主政治の発揮に必要たりえる情報の公開を請求し閲覧する権利を有する。国家機密及び公共の福祉による制約は必要最小限度のものに留め、別途法律によりこれを規定する。
第50条 すべての国民は、アイドル、バンドグループその他アーティスト等に親しみこれを鑑賞及び応援する権利が最大限保障される。政府は都市人口に対し必要たりえる規模の公演に供する施設を整備する責務を有する。
第51条 すべての国民は、納税の義務を負う。
(中略)
第八章 改正
第55条 この憲法の改正は、元老院両院の総議員の3分の2以上の賛成で元老院を発議し、その議案は国民の承認を得なければならない。全国民の直接投票において過半数の賛成を得ることによってのみこれが承認される。
1.憲法改正について前項の承認を得た際には、総統はただちにこれを連合帝国の名において公布し、公布から6か月後にこれを施行する。
(中略)
第十章 補則
第60条 この憲法は、公布の日から起算して6か月を経過した日から施行する。
1.ただし、国号の制定及び使用については、公布の日と同日から開始するものとする。
(後略)