1190年3月24日付〈中央通信〉
23日14時30分ごろ、ラヤン・ヘリオトロープ軍部委員長が視察に訪れていたエライ海岸沿いのミサイル基地に対して地対地巡航ミサイル10発が着弾した。カルセドニー島北西部の防衛を担当する陸空軍局第2軍の発表によると、ミサイルのうち7発は基地周辺に配備されていたコルベット部隊に撃墜されたが、3発がミサイル基地の敷地内に着弾、うち1発がラヤン軍部委員長が視察中であった弾薬庫に直撃して誘爆を引き起こした。この誘爆によってミサイル基地は全壊しており、特に弾薬庫から半径300m以内の人員の生存は絶望視されている。
23日夜、軍部委員会はミサイルの発射地点をグロッシュラーライト島北岸に特定し、ガーネット諸島を担当する海軍局第2艦隊と陸空軍局第4軍内から当該地域の制圧と容疑者の確保を目的としたタスクフォースを編成する予定であると発表した。しかし、ガーネット諸島内からの志願兵で構成されている第2艦隊と第4軍が「適切に機能する」か否かについて懐疑的な意見も上がっており、事態の進展は不透明な状況である。
超越連盟躍進も、連盟内の不和表面化

1190年12月22日付〈中央通信〉
21日に投開票が行われた共和国議会選挙は、超越連盟が改選前から49議席を伸ばし、1162年の結成時を上回り史上最多となる283議席を獲得した。連盟の議会代表を務めるカルラ・クリソプレーズ議員(五胞派)は記者団に対して「ネーナ外交委員長を中心とした近年の外交姿勢への賛意や、超越連盟という枠組み自体に対する支持が現れた結果」と述べて勝利宣言を行った。高齢のため選挙後に交代することが予測されているエント・アベンチュリン生産搬送配給委員長や、テジン・ムトロライト技術委員長の後任が超越連盟の主導で指名されること、1189年に発生した「地盤沈下未遂事件」によって逆風が吹き荒れていたセレスティノ・ラボイ・ドローレス動力委員長も続投が容認されることなどが確実となり、超越連盟は総じて現在有している政治的影響力を守ることに成功した。一方で、ペンタ・ブラッドストーン住環境委員長を支えていたサンディカリスト連合は住環境委員会における議席の7割以上を失う惨敗を喫し、ペンタ住環境委員長が来年初めにも解任されることは避けられない情勢となった。同委員会では台形派が大幅に勢力を拡大しており、台形派内で比較的穏健派に属するセメン・アゲート住宅局長が後任の最右翼となっている。台形派は選挙期間中に「社会主義の敵」に対する非難を繰り返しており、特に報道局内ではこの点が懸念材料となっていたが、セメン住宅局長は投票日前日に自身が委員長に就任した場合にも報道局人事に介入しない姿勢を明言してこの懸念に対応した。これを受けてサンディカリスト連合はセメン住宅局長がペンタ住環境委員長の後任に就任することを支持する見通しであり、超越連盟は議席を大幅に伸ばしたものの委員長ポストの獲得は難しい模様である。
全体として超越連盟の勝利が伝えられているが、連盟内のパワーバランスは大きく変化した。選挙前に82議席を有し超越連盟内の最大勢力であった議会民主派は議席の大半を失い29議席にとどまり、五胞派(旧角錐派を含めて131議席)、円環派(82議席)、未来主義者(42議席)に次ぐ第4勢力まで転落した。これは、議会民主派が大勢力を有していた生産搬送配給委員会の選挙運動において超越連盟の指導部が議会民主派に対する露骨な嫌がらせ―連盟の選挙活動予算の提供拒否、議会民主派現職議員がいる選挙区への対立候補の擁立、ネガティブキャンペーン等々―によるものであると広くみなされており、議会民主派内部では超越連盟が議会民主派を「切り捨てた」という声が広まっている。ソリン・アメトリン議員を中心とする、連盟指導部に対する協力的な姿勢を取っていた議会民主派首脳部が軒並み落選した結果、外交委員会選挙の結果を受けて派閥の中枢から退いていたティーナ・ユーファストーン議員が現在の議会民主派の「まとめ役」の地位を再度確保した様子だ。ティーナ議員は21日に夜に記者団に対して「超越連盟は委員会社会主義者内部での権力抗争に敗れた者たちが復権を果たすための梯子としての存在になり下がった」と語気を荒げ、超越連盟からの離脱は既定路線であると明言した。
3月23日に発生したラヤン・ヘリオトロープ軍部委員長の暗殺事件は選挙結果にほとんど影響を及ぼさなかった。軍部委員会における選挙の争点はレゴリス帝国からの購入が取りざたされている「外洋艦隊」の管理者が誰になるかにほぼ絞られており、台形派は過半数を維持したものの議席を減らし、ラヤン軍部委員長の後任を台形派から出すことへの承認と引き換えに正方派が要求していた「艦隊管理のための委員会から独立した組織の設立」を概ね容認せざるを得ない状況となったと見られている。正方派内ではこれを機にクルン・ウェストカーネリアン海軍局長を軍部委員長に指名し、台形派から社会主義評議会主流派内での主導権を取り戻すべきだとの声も上がっているが、台形派との関係性の維持が優先される可能性が高い。
【特集】外交委員会選挙、サ連超越派躍進

共和国議会総選挙の一部として行われた外交委員会における総選挙は、サンディカリスト連合内の「超越派」と呼ばれる、自らを急進的超越主義と位置付ける派閥が大幅に勢力を伸ばした。もともとサンディカリスト非超越派がほとんど外交に関心を有しておらず、サンディカリスト連合のリソースを最大限に利用できる立場であったとはいえ、ほぼ3倍増の20議席を獲得したことで五胞派に次いで一挙に外交委員会内の第2派閥となった。五胞派も議席を伸ばし、ネーナ外交委員長の掲げる「親KPO外交」が一定の支持を得ていることを示したが、超越連盟の他派閥は議席を伸ばせず、結果的に外交委員長の支持基盤は若干不安定になった。
ネーナ外交委員長の外交姿勢は旧来のカルセドニーの外交姿勢とは一線を画したものであるとみなされており、国際的に波紋を広げている。ヴェールヌイの《ブルースター》紙が「危険な外交方針の変節」と題した特集を組んだのを皮切りに、ルーンレシアのシェーラ・アレクシス外務長官もネーナ外交委員長の姿勢を「日和見主義的」であると表明、セニオリスのラヴォスラフ・ルジチカ前外務長官は退任後のインタビューで「目的のためには手段を選ばない、他人をスケープゴートにすることも厭わない」とネーナ外交委員長を評した。このような状況下で委員長に対して野党的な立場を取っていた各派は一斉にネーナ外交委員長に対する批判を展開したが、選挙結果としては明暗が分かれることとなった。
円環派とサンディカリスト超越派は「”先制的自衛権”事件後にKPOとの関係改善を図るのは理解できる」とした上で、「関係改善が対KPOに偏っており、拒否権の行使という形で最も重大な反対を表明したセニオリスとの関係性を改善しようとする動きが全く見られない」と非難し、結果としてかなりの支持を集めることに成功した。ただ、対セニオリス関係一辺倒の主張を行っていた円環派に比べ、「対瀬関係と対KPO関係の間のバランスを取る」ことを強調したサンディカリスト超越派の方が外交委員会内の「対KPO関係重視」という全体的な世論と矛盾が生じず、結果として彼らが選挙における最大の勝者となった。社会主義評議会主流派は「守旧的な」外交方針への回帰を訴えたが、全体に論調が抽象的であり、具体的な外交方針について明言を避けたことが原因で支持を落とした。既にKPO支持層は外交委員会内に大勢力を築き上げており、同派のネーナ外交委員長への批判が「反KPO的」であるとみなされたことも票離れが進む原因となったと見られている。未来主義者も抽象的な「超越的外交」を唱えたものの、これもあまり支持を集めることはできなかったようだ。
選挙後に議会民主派が超越連盟からの離脱を表明したことは、同派が外交委員会内に議席を有していなかったために外交委員会内の勢力構造には大きな影響を及ぼさなかった。しかしながら、超越連盟が次第に「五胞派によって統制される委員会社会主義右派」と化してきたという認識が広まっていることは、特に未来主義者が超越連盟に対して懐疑的な評価を与える原因になっているようである。今回の選挙で再選したメレン・モスアゲート共和国議会議員は記者団に対して「超越連盟とサンディカリスト超越派が”超越の本家”を取り合って久しいが、我々はそろそろ最終的にどちらが本当の意味で超越的であるのかを判断するべき時に来ているのかもしれない」と述べ、超越連盟が「五胞派のための権力装置」と化すのであればそれは超越主義の理念と相容れないだろうと述べた。未来主義者が超越連盟から離れれば超越連盟は外交委員会の過半数を維持できなくなるため、同派の今後の動きは共和国政界に波紋を広げそうだ。
タンファ・リブル相次いで重工業化
1188年5月中旬にタンファ王国で、1190年9月初旬にリブル民主共和国で工業政策が変更され、両国は相次いで重工業政策を採用した。共和国は両国に対して重工業化後の資源・燃料消費量や商品生産量についての推計データを提供しており、両国の重工業化を強力に後押ししている。アラン・ツリーアゲート産業技術開発研究所所長(研究設計委員会)は両国の重工業化について「近年のいわゆる”重工業革命”の成果により重工業が使用に値する産業となったこともあるが、我が国の開発したシステムによって資源消費や生産高の推計が極めて容易になったことにもよるもの」として成果を強調した。資源消費推計システムについて一般公開の予定があるかについては「オペレーティングシステムとの整合性の観点から、一般に使用されているOSでの使用に適したバージョンが完成していない」として現亜段階では否定的な見解を示した。
タンファ王国は80兆Va相当、リブル民主共和国は160兆Va相当の工業生産が期待され、これは両国が先端工業を前提に行っていた商品輸出量をほぼ完全にカバーすることができる。また、産業技術開発研究所発表の資料によると、(特化率600%の下で)先端工業は銀1万トン当たり50.4兆Vaの商品を生産するのに対して重工業は鋼鉄1億トン当たり75.6兆Va相当の商品を生産する。ただし、消費する燃料は先端工業の4億ガロン/銀1万トンに対して重工業の12億ガロン/鋼鉄1億トンと3倍に増加しており、アラン産業技術開発研究所所長は「両国、特にリブルの重工業化は御岳山諸島からの大規模な燃料供給により、フリューゲル全体の燃料需給状況に余裕が生じたことが大前提」だと認めた。
アラン産業技術開発研究所所長の属する正方派内の「実用派」と呼ばれる派閥は、このタンファやリブルの重工業化を自派の成果として1190年末の総選挙に臨んだが、世論は一般に「重工業の利益はそもそもの重工業の生産性の改善それ自体に起因する」との認識であり、正方派(実用派)の活動が両国の重工業化に重要な役割を果たしたとする彼らの主張は支持されず、同派は総選挙で議席の35%を失う大敗を喫している。
【政治】ラヤン軍部委員長、エントPLC委員長の後任はそれぞれ台形派、円環派から選出。他派閥は自重したとみられる。
【政治】セメン・アゲート住環境委員長就任。就任会見では「私の任務は文字通り居住環境を改善することにある」
【国際】ガトーヴィチ、タンファ王国のベロガ国旗採用に反発。ネーナ外交委員長「”諸要求”の内容を注視」