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ネーナ外交委員長、KPO歴訪を終えて会見

118Y年MM月DD日付〈中央通信〉

1182年から1184年にかけて、ネーナ・アメシスト外交委員長はKPO5ヶ国を訪問し、それぞれとの間で二国間共同宣言に署名した。歴訪が終了し、ネーナ外交委員長は歴訪について記者会見を行った。ネーナ外交委員長は歴訪を通じてKPO諸国と共和国との関係性について、「ムメイ・トリディマイト前外交委員長の下で生じた不必要な緊張関係を取り除くために有意義であった」と述べ、KPO諸国との様々な分野における協力可能性について前向きな姿勢を強調した。ネーナ外交委員長の記者会見全文は以下の通り。

 我が国は、一貫して平和維持こそが我が国の利益になるという立場を崩さず、「正当性なき戦争行為の否定」をその中核としてまいりました。一方で、外交委員会は、880年代に採択された「戦争の正当性挙証の事前的必要性に関する決議」について、その法的拘束力を有さない総会決議であるという性質にもかかわらず、一種の国際法規範としての地位を有する文書であり、フリューゲル国際連合のすべての加盟国が同様の認識を有しているはずである、という立場を長年採用しており、先般の安全保障理事会におけるカルーガ条約の定義する”先制的自衛権”概念に対する疑義はこのような立場に基づいて提起されたものであります。
 しかしながら、結果として安全保障理事会はカルーガ条約に対する「是正要求」を採択することに失敗しました。これは、一部の理事国が単に「正当性決議」に対して疑義を呈したことがその理由“ではない”、という点を強調させていただきたいと思います。実際、ほとんどの理事国はその「正当性決議」に対する態度の差こそあれ、最終的には安保理決議案に賛成しています。その失敗の直接的な理由は、一部の理事国が「カルーガ条約機構は『正当性決議』に拘束される義務を有さない」という認識を、当該義務があるという前提に基づいて提出された決議案に反対するという形で明示し、さらにその中の1理事国が拒否権を有する同盟理事国であったことにあります。すなわち、「正当性決議」に対して外交委員会が抱いていたような「国際法規範としての地位」があるという認識は、そもそも同盟理事国の間ですら共有されていなかった、ということです。外交委員会が長年にわたってこの点を誤認していたことが、我々の過ちであり、失敗の理由であると言うことができるでしょう。
 我が国は、このような誤認を元に生じた過ちを正さなければなりません。そもそも信認を得られていなかった「正当性決議」に信認があるという前提で故ムメイ前外交委員長をはじめとする当時の外交委員会のメンバーがKPOに対して迫ったカルーガ条約の是正要求はそもそも行うべきではなかったのであり、複数の陣営を含む多数の国が信認を与えていない「正当性決議」ではなく、すべてのFUN加盟国が、あるいはすべての国家が共有している大前提である「正当性のない戦争行為を行ってはならない」という規範に立ち戻るべきです。そして、KPO諸国を含めた現在のFUN加盟国が一致して支持できるような規範を形成できるのであれば、それを新たに作成すべきでしょう。
 私は上記のような認識の下、KPO各国と「正当性のない戦争行為を行ってはならない」という原則を再確認し、さらに我が国がKPO各国とそれぞれのニーズに応じた協力を行う意思があることを示すことにより、ムメイ前外交委員長の下で生じた不必要な緊張関係を取り除くために尽力してまいりました。我が国は国際社会の平和を守るために活動しているのであって、KPO諸国との関係を損ねることを目的に活動していたかのような誤解は正されねばなりません。安全保障理事会において、我が国がKPO諸国を信用していないという、誤解ないし曲解に基づく発言が行われたことは由々しき事態であり、私たち外交委員会はこのような誤り又は悪意に基づいた風評を取り除くために全力を尽くさなければなりません。
 私はKPO5ヶ国の外相との会談を通じて、各国が異なるニーズを有していること、つまりルクスマグナは安全保障に関する多国間あるいは二国間の約束を、トータエは「正当性決議」がもはや死文である以上カルーガ条約がFUN体制に整合的であることを確認することを、ルーンレシアは国際経済上の状況変化を一部の国が利己的に用いることへの懸念が解消されることを、レゲロは社会主義諸国の間の既存の国際秩序と矛盾しない形での協力関係を、ノエシタは国内開発や貿易の拡大のための支援を、それぞれ望んでいることを知ることとなりました。これらの望みをかなえることは我が国の国益と同じ方向を向いているのであり、それを確認したことは我が国とKPOの間の不必要な緊張関係を取り除くために極めて有意義なものでした。我々は、繰り返しになりますが、我が国とKPOが「対立している」という風評を吹き払わなければなりません。

質疑応答

「正当性決議」について

――現在の外交委員会は「正当性決議」が死文化したという認識を採用しているということでいいでしょうか(中央通信記者)。
 はい。正確に言えば、「正当性決議」は一種の相互的な譲許であり、国際社会のすべての陣営、すべての国家がその法規範性を尊重する立場を採用していることが、それが「死文でない」ための条件であると言えます。しかしながら、先般の安全保障理事会においては、一つの陣営を代表する同盟理事国が正当性決議を法規範として認めることに対して反対票を投じました。これは、先に述べた条件が満たされていないこと、つまり「死文」であることを明らかにしたものであると認識しています。

――共和国は、『正当性決議」をかつて総会に提出した国家でありますが、当該決議にはもはや拘束されないという認識を有しているのでしょうか(同中央通信記者)。
 はい。他の陣営が「正当性決議」を尊重しないことが明らかになった今、我々だけが「正当性決議」を遵守しなければならないという認識は明らかに不公平であり、当該決議が我が国を法的に拘束するという認識はもはや採用できなくなったと言えるでしょう。

――では、我が国はこれから安全保障理事会決議がない状態で、自ら宣戦布告を行う権利を支持するということでしょうか(同中央通信記者)。
 「自ら宣戦布告を行う」ことを正当化できる状況は極めて限られており、憲章第2条第5項の定める「正当性のない戦争は行ってはならない」という規範自体が生きている以上、ほとんどの条件下で「自ら宣戦布告を行う」ことは許されないという状況には変わりないでしょう。しかし、それが許されないのは「正当性のない戦争」であるからであって、「自ら宣戦布告を行う」からではない、ということになるでしょう。

――外交委員会が「正当性がある」と確信している状況下であれば、安全保障理事会決議がないとしても宣戦布告を行う可能性があるということでしょうか(同中央通信記者)。
 「正当性がある」というのは国際社会の多数の認識によって成立するものであるので、我々が「正当性がある」と信じていることそれだけによって宣戦布告を行うという認識は正確ではありません。また、安全保障理事会が「正当性がある」ことを決定する権能を有している以上、我々が「正当性がある」と確信しているなら、それはまず安全保障理事会に対して主張されるべきでしょう。

――これまでカルセドニー政府は『正当性決議』を国際法規範として積極的に擁護してこられたと理解しております。ところが最近、一部の同盟理事国が拒否権を行使したことを契機として、当該決議を十分に尊重しないかのような転換が図られているとの印象を拭えません。
 また、カルーガ条約の先制的自衛権に関する懸念がどのように解消されたのか、本会見において明確な説明が見受けられないとも感じます。 さらに、前外交委員長の下で公式見解として発せられた方針と、今回の方針との食い違いは、国家としての外交方針に対する信頼性を損ねる恐れがあるのではないでしょうか。こうした急激な方針転換や従前の立場との齟齬について、お考えをお聞かせいただけますでしょうか(フリー記者)。

 我が国が「正当性決議」を擁護する姿勢を取ってきたのは、当該決議が全ての国家、あるいは少なくともすべてのFUN加盟国が同様に「正当性決議」を尊重していると信じていたことによるものです。しかし、先の安保理の結論は、その「信念」が誤っていたことを明らかにするものでした。我が国が「正当性決議」を尊重するべきという立場を採用し続けるためには、ムメイ前外交委員長が行っていたように、「正当性決議」を尊重しないとみられる他国に対してその態度を改めるように要求し続ける必要があったでしょうが、私は、そのような外交姿勢を是とせず、各国の協力関係の維持のために我が国の従前の立場を取り下げることをやむを得ないものと判断したということになります。一貫性のために軋轢を生じさせることと、協調のために一貫性を犠牲にすることのどちらがより「信頼性」を損なうかについては、議論の余地があるものと思います。
 カルーガ条約の先制的自衛権に関する懸念が解消された経緯については、加桐両国間の共同声明において表明されている通りです。「懸念」はそもそも「正当性決議」が尊重されるべきという前提のもとに立脚した「懸念」であって、その前提が取り下げられた今、そのような「懸念」はもはや存在の前提を失ったということになるでしょう。

――ブルースターのガラ・ガシヤノフです。外交委員長就任おめでとうございます。数点質問させていただきます。さきほど委員長は、安保理決議案が否決されるに至った原因、つまりは反対票の理由として『一部の理事国が「カルーガ条約機構は『正当性決議』に拘束される義務を有さない」という認識』があり、『その中の1理事国が拒否権を有する同盟理事国であった』、つまりセニオリス連邦が含まれていたからだと説明されました。
当該決議案への反対票は、セニオリス及びトータエの2カ国が投じておりますから、実質的にはセニオリス1カ国のみが反対したという状況です。
『正当性決議』に拘束される義務を有さないという認識が、当該義務があるという前提に基づいて提出された決議案に反対するという形で明示されたという、委員長のご認識を前提にするなら、それを明示したのはセニオリス1カ国のみということになります。
そのセニオリスは、反対票を投じる、つまり拒否権発動を行うにあたっての説明として、①個別の条約への保証はその締約国に限られるべきで、安保理の介入すべき事項ではないということ、②そして今般の介入はKPOへの不信感、「信頼できない」という前提から発せられていること、③説明・提案に十分な検討時間を設けずに決議案が提出された事に対する不服、をあげています。
『正当性決議』に拘束される義務を有さないという認識が、すなわち反対理由であるとする委員長のご説明は不正確であるか、セニオリスや『正当性決議』に反対する諸国と、認識に乖離があるのではないかと感じますが、いかがお考えでしょうか?

 一番目に上げられた、「個別の条約に対して安保理が介入すべきではない」という主張が、まさにカルーガ条約が「正当性決議」に拘束される義務を有さないという主張を構成していると私は認識しています。カルーガ条約が「正当性決議」に整合していないという各国の主張それ自体に対してセニオリス代表は反論を与えていません。それにもかかわらずカルーガ条約を是正する必要はない、ということは、すなわち「カルーガ条約を『正当性決議』に整合させる必要はない」、つまり「『正当性決議』に拘束される義務が存在しない」という主張を行っているのと同値ではないでしょうか。なお、二番目については私が既に述べている通り、あるいは安保理の議場でセレン前国連大使が既に述べている通り、誤解又は曲解に基づく認識であると思いますので、これが拒否権行使の決定的な要因であるとは信じがたいです。三番目については、決議案に対する反対意見が存在するからこそ「検討時間」が必要である以上、そもそも彼らが決議案になぜ反対であるのかとは直接的には無関係な要因であると考えています。

――「KPO諸国を含めた現在のFUN加盟国が一致して支持できるような規範を形成できるのであれば、それを新たに作成すべき」とのことですが、その新たな規範について、現時点で具体案はお持ちなのか、又は協議を各国へ提起する予定、スケジュールに関する計画はお持ちなのでしょうか(ガラ・ガシヤノフ記者)?
 KPO諸国がどのような規範を支持するかについて、私は現在のところ多くを知りません。したがって、「新たな規範」について私から現時点で具体案を提示することは困難です。協議を各国に提起する予定ではありますが、とりあえずはこのようなアイデアの出現元となったルクスマグナ政府との追加的な協議を経てから、ということになるでしょう。

――「個別の条約に対して安保理が介入すべきではない」という主張が「正当性決議に拘束される義務を有さない」という主張を構成すると説明されましたが、はたしてそうでしょうか。
セニオリス代表は、セリティヌム代表の質問への回答の中で次のように述べています。
『トータエ代表自身が示した解釈が条文の運用を拡大し、憲章や決議と矛盾する可能性を認めている点はいかがお考えなのか」という点について、お答えします。現在の安保理としての対応及び措置を検討する中で、あくまで「可能性」というだけであれば安保理として対応・対処すべき根拠として不十分であるということに尽きると思われます。』
この発言からわかるように、可能性や解釈だけで介入べき事案ではないという主張をされているのであり、憲章と決議に対する遵守義務については、否定されておりません。
であるにも関わらず、委員長が、安保理での決議案否決の原因を、執拗に「正当性決議への不信認」であると主張され続けることは、ひとつの疑念を呼び起こすことになります。
すなわち、委員長ご自身が、正当性決議の国際的地位を下げようとしておられるということです。その目的はなんなのか、これが意図したものであるならば、加国の外交・安保政策の将来について、諸外国に重大な懸念を与えます。
そこでお伺いします。委員長が考えられる、正当性がある戦争とは、どのようなものでしょうか。安保理が正当だと認定したもの、という回答は必要ありません。正当性決議不信認を明言した現在の加国単独での判断においてです。ご回答ください(ガラ・ガシヤノフ記者)。

 前半の主張に関しては、正直言って質問自体とは無関係な記者ご自身の意見であると考えられるので、ご自身の記事にお書きになられるとよろしいと思います。私は「正当性決議」の現状における国際的地位を適切に認識しようとこそしていますが、これを意図的に下げようとなどとはしておりません。また、セニオリス代表が決議に対する遵守義務を否定する発言を直接的にはしていないことに注目して同国の立場を類推しようとするのであれば、逆に決議を遵守すべきだとも一度も述べていないこと、それどころかセニオリス代表は安保理の議場で一度も「正当性決議」に言及すらしていないことにも同程度に注目すべきでしょう。
 さて、ご質問にお答えしましょう。私は、少なくとも安保理が正当だと認定したものと、自衛権の行使が「正当性のある戦争」であると認識しています。「安保理が正当だと認定したもの」という回答は不要であると仰られましたが、安全保障理事会が憲章第28条において「正当性のある戦争」を認定する権能を有しており、これがすべてのFUN加盟国が受け入れる共通の規範である以上は、これに対して言及しないことは不可能です。

――イタク通信のラストーチキナです。外相閣下は死文化した「正当性決議」A/RES/4/1をFUNにおいて蘇生させるおつもりはないのでしょうか。また、そのような予定がない場合、A/RES/4/1を遵守する国とA/RES/4/1が死文化したと考える国のいさかいではどちらに味方するのでしょうか。ご意見をお聞かせ下さい(イタク通信記者)。
 加光共同宣言において触れられた通り、「正当性決議」に代わり得る戦争抑止のための枠組みを構築することには前向きな姿勢です。しかしながら、「正当性決議」をそのまま適用することに対する反対意見はかなりの広まりを見せており、「蘇生」するにせよ、その内容は現代のニーズに合わせて修正されなければならないと考えています。後半の質問については、特定の国家間紛争において我が国がどちらの「味方」をするかは個別の事情によるものであり、「正当性決議」に対する立場のみで決定できるものではありませんので、ご質問にお答えすることは少々難しいです。

KPO歴訪について

――外交委員長から見て、もっとも成功した会談はどの国とのそれであったとお考えですか(中央通信記者)。
 私は、KPO5カ国すべてに対する訪問が「全体」として成功であったという認識であり、どれが成功して、どれが成功しなかった、というようなことを述べるのは適切ではありません。とはいえ、これまで知られていなかった協力の可能性を明らかにしたという点ではルーンレシア帝国とのそれが最も大きなインパクトがあったのではないかと考えています。かつての工業国に関する加烈共同宣言のように、異なる陣営に属していても経済政策においては協力の余地があるということを示せたことは大きな意義があるものでしょう。

――先のレゲロとの会談における共同声明において、「社会主義を掲げる各国や各組織の間で相互協力を行うための緩やかな国際会議設立」に支持を表明されています。
現代フリューゲルにおいて政治イデオロギーを共通項とする連帯協力は支持を失って久しいものです。各国の色々な要素に基づく連携協力は否定されるべきではないでしょうが、社会主義相互協力は国際主義を彷彿とさせるでしょうし、延いては新たな国際的対立構造生起の火種ともなりかねません。委員長ご自身も『「イデオロギーに基づく陣営形成」は現在のフリューゲルでは支持を集められない』と発言されておられますから、まさしくそのような認識がおありなのだと想像します。
この話題を提起したレゲロ政府との温度差は著しいと思われますが、委員長はどのように受け止められているのかお聞かせください(ガラ・ガシヤノフ ブルースター紙記者)。

 社会主義諸国間における相互協力が、「新たな国際的対立構造生起の火種」となるような形であれば、それは支持しません。レゲロ外相との会談においても、「既存の国際秩序を尊重した上で」の協力であること、会議において設立される組織の役割が「各国の自主性に対する妨げにならない」範囲に留まることについて合意されておりますので、レゲロ側もそのような「火種」を作りたいと望んでいるわけではないものと理解しております。

――委員長のKPO各国歴訪が「カルセドニーとKPOは対立していない」ことのアピールが最重要目的であったことは、会見の内容からもよく伝わってきましたが、その姿勢はKPO以外の既存の外交関係にどのような影響を与えるとお考えでしょうか(ガラ・ガシヤノフ記者)? 
 ……外交関係は相手があることなので私が断定することはできませんが、少なくとも、悪い影響を与えることはあり得ないでしょう。我が国とKPOの関係が改善ないし向上することによって、我が国との関係が損なわれるような国家は存在しないものと確信しています。

――イヴァングラート通信社のラストーチキンです。外相はこの度SLCN加盟国よりもKPO5カ国を最優先に歴訪しましたが、今後も対KPO外交を特に重視されるおつもりなのでしょうか。
 SLCN加盟国よりもKPO諸国を優先しているという認識を有されているのであればそれは流石に誤りです。私が今回KPO歴訪を就任後最初の大きな行動として行ったのは、ムメイ前外交委員長の下で行われた一連の事態と、その際に生じた「我が国とKPOが『対立している』という風評」を吹き払うことの優先順位が高いと判断したことがその理由です。KPO諸国は我が国の重要な友好国であることは確かですが、KPOを「偏重」しているとは認識していません。私の認識では、現在の我が国の外交姿勢がすべての国を等しいバランスで扱っていると考えています。

――歴訪が「全体として成功」だったとのことですが、この成功は、ムメイ外交によってこれまでのKPO五ヶ国との間に生じた不幸な行き違いをすべて清算し解決したものとお考えですか?あるいはまだ外交的課題は残されているでしょうか(民間紙記者)?
 「すべて解決した」と言えるかどうかは、KPO側の受け止めにもよりますので、私が断定することはできません。しかしながら、現時点においても「外交的課題」が残されているとしても、それを対立関係ではなく、友好的な教義によって解決できるような状況ではあるものと私は信じております。

――端的に伺います。KPOがBCATのように同盟理事国議席を求めたとき、カルセドニーは、そして国連はどのように対応すべきだとお考えですか(フリー記者)?
 まず国連がどのように対応するべきかというのは明らかで、憲章に記載されている手続きに従って総会において同盟理事国議席を認めるべきかどうかについて議論を行い、総会がこれを支持した場合は、安保理が最終的な可否を決定するべきです。「国連」というのはあくまで意思決定のプロセスに関するルールに過ぎないのであって、国連が行うべきなのはあくまでそのプロセスに関するルールを守ることで、それ以上でも以下でもないでしょう。
 カルセドニーがどのように対応すべきかというのも、上記のプロセスに従うべきということになるのでしょうが、ご質問は究極的にはカルセドニーが同盟理事国議席に対して支持するかどうかについて答えを求めているものであると拝察しますので、それについてお答えいたしましょう。まず、ある陣営に同盟理事国議席を与える決議案に賛成することについては、残念ながら―非常に残念ながら―外交委員会の専権事項ではなく、社会主義評議会自体の決裁を必要とする事項であり、現時点で私自身が責任ある回答を行える立場にはありません。現時点で社会主義評議会内で指摘されている課題は概ね以下の通りです。まず、私自身は同意しないことを留保しますが、ルクスマグナの外交的不確実性が同盟理事国議席という形で国際社会に決定的な影響力を及ぼすようになることに対する強い懸念が挙げられています。また、過去のいくつかの事態に対するKPOの対応が、彼らが同盟理事国の席を得るほどには「成熟していない」という主張も行われていますが、これについても私は支持しません。最後に、私自身も支持する懸念点として、現状の安全保障理事会の制度下で同盟理事国が5ヶ国に及ぶようになることは、安全保障理事会の意思決定システムを大きく損ねかねないことが指摘されています。「単独で拒否権を有する理事国が5ヶ国も存在する」という状況は、安保理がほとんど何一つ意思決定できなくなる可能性を高めてしまうでしょう。逆に、国連加盟国が20ヶ国だとして、同盟理事国が5ヶ国というのは一般理事国の理論上の最大数と同数となり、加盟国が20から1つでも減れば「一般理事国より同盟理事国の方が多い」状況を生じさせてしまいます。これは、一般理事国の存在意義を低下させることにつながりかねず、特に非同盟諸国に対して大きなダメージを与え得るでしょう。

外交一般について

――ネーナ・アメシスト外交委員長、本日はご質問の機会を与えてくださりありがとうございます。
貴国の外交委員会にとって、「外交」とともに「貿易」も極めて重要な職務であると理解しております。本日は「貿易」に関する点についてお伺いしたいと思います。
カルセドニー社会主義共和国は、食料を他国に依存する大国のひとつかと思われます。現在、世界の食料需給はさまざまな要因によって変動しており、一部では供給の不安定化が指摘されています。このような状況に対して、貴国政府はどのように認識し、対応を考えているのでしょうか(ルシア・サンチェス ヴィレンシア紙記者)。

 外交委員会は、食料備蓄を可能な限り最大値近くに維持することによって、食料貿易が急減した場合に対応する余裕があるようにしております。この食料備蓄は、仮に我が国に対する食料供給が完全に断たれた場合における3年分の備蓄に相当するものであって、これほどの期間があれば対応することが可能となると見込んでおります。また、食料輸入は多角化しており、食料供給が完全に断たれることは現実的ではありません。仮に、食料供給が現在の50%に落ち込んだとしても、我が国は200億トン程度の備蓄を保持した上で食料需給を均衡させることができます。このような「多角的・大量備蓄」型の食料輸入は自国の食料安全保障に加え、農業国に安定的な資金源を提供することを通じてこれらの国の農業を振興し、ひいてはフリューゲル全体の農業規模を維持することによって我が国への食料供給を安定させることを目指したものでもあります。

――また、食料生産国(輸出国)に対して、貴国が期待することや求めるべき国際協力のあり方についてもお聞かせください(ルシア・サンチェス ヴィレンシア紙記者)。
 我が国が食料生産国に対して期待することは、まず第一に安定して長期間食料供給を継続可能な国家体制を築くことでしょう。新興国にありがちな農村を急速に拡大するタイプの「粗放農業国」は、人口の急増にインフラ整備や福祉施設の整備が追い付かずに急速に国情が悪化することがあるため、長期的なパートナーとしてはリスクが大きいと言わざるを得ません。したがって、適切な国土開発を行い、ドーム型共同農場と農業改良センターを中心とした農業体制を構築することを期待していると言えばいいでしょうか。
 続いて、我が国が農業国に求める国際協力のあり方については、生産側において食料供給がどの程度余力があるかを求めて、余剰分について供給が不足している国家に積極的に働きかけに行くことではないかと思います。タンファ王国やノエシタ社会主義共和国連邦など、食料供給が若干不足傾向にあるとみられる工業国はいくつかあり、これらの国への食料供給が安定することは、工業国が工業に専門化し、限られた銀資源を高効率で活用するために大きな助けとなるでしょう。

――カルセドニーは、本質的に平和主義的であり、そのような世界に向けて努力してきたものと、私は信じます。しかし、同盟国・友好国には、あるいはその他第三国には、本質的に好戦主義的であり、究極的に避戦主義に対して無理解な国があるのではないかと疑っています。ネーナ外交委員長はそのような諸国の「戦争」に対する温度差について、どのようにご認識ですか(フリー記者)?
 好むと好まざるとに関わらず、「本質的に交戦主義的である」主体が存在する、という認識はムメイ前外交委員長が常々表明されていたことでもあり、近年の国際政治学の文脈では広い範囲で共有されているものであると思います。先の安全保障理事会で『正当性決議』に支持を与えなかった国家が存在することについても、その証左としてとらえる向きがあるようです。そして、このような状況においては、「平和を提唱」することすら、それらの主体に対する攻撃的な試みとして解釈され得るのです。我が国は平和主義国家ですが、平和主義を掲げることによって攻撃を受けたと解釈される場合において、平和主義を押し出すことは本当に平和のために資するのかどうかについても、簡単に結論を出してはならない種類の問いであると考えています。

――A/RES/4/1の死文化が取り沙汰されていますが、それ以上に、史上初めての拒否権行使がセニオリス代表よりなされたことで、安保理運営の在り方も変わってくるのではないかと思われます。拒否権が単なる憲章上の概念ではなく、実際に行使されうるものとして現れたことは、これからの安保理、そして国連の在り方をどのように変えるとお考えですか(フリー記者)?
 国際社会に有事が生じ、これに対応するように各国が迫られたときに、「安全保障理事会における議論と、決議を待って、その決議に基づいて対応する」という手続きは、これまでは一般に受け入れられてきました。安保理が「国際社会の求める課題」に全く対応できなかったということは未だかつてなく、各国はそういう意味で安保理の「問題解決能力」に対して信認を与えていたと思います。しかしながら、拒否権が現実のものとなった以上、「国際社会の大多数が解決を望んでいるのに、安保理が解決策―Resolution―を決定できない」状況が発生し得ることを我々はもはや無視できなくなりました。「正当性決議」それ自体も、軍事力の行使が真に必要な場合は安保理がそれを決定するに違いないという信認によって支持されていたものであるということもできるでしょうから、それの「死文化」と、安保理の拒否権は、本質的には同じ方向の変化を示唆しているものであるのかもしれません。

ムメイ前外交委員長について

――帝国通信社のプーチンです。外交委員長閣下はムメイ前外交委員長閣下の外交は致命的な誤りであったとお考えなのでしょうか。そして、その前外交委員長閣下の最期についてコメントをお願い申し上げます。
 ムメイ前外交委員長の下での外交のすべてが誤りであったとは考えておりません。とはいえ、彼らの属する台形派の国際情勢に対する認識が歪んでいたことについては事実として認めざるを得ないのではないでしょうか。ムメイ前外交委員長の最期については、不幸な出来事であったと考えています。

――ムメイ前外交委員長個人に対する評価と、台形派に対する評価を区別して用いられているようですが、両者の相違点はどのあたりにあったとお考えですか(民間紙記者)。
 台形派の外交思想がKPO、特にルクスマグナの「押さえ込み」にあったことは明らかです。ルクスマグナのことを「軍事的脅威」と呼んではばからないような人物が、……流石に外交委員会にはいませんでしたが、他の委員会においては高官のレベルでも存在しました。ルクスマグナの外交官が用いる用語法が独特であるために相互理解が困難であるという側面はあるものの、同国の外交方針がすべての面で我々と相容れないという考えは正しくありません。これが、私の「台形派に対する評価」です。ムメイ前外交委員長個人は、上述したような「嫌光的」な外交思想を有しているようには見えませんでした。彼らはあくまで台形派の一員として、その意思に忠実に行動していたのではないでしょうか。個人的にルクスマグナ人とのコミュニケーションに関して何らかの嫌な思い出があるというような噂は外交委員会ではよく耳にしましたが、私はこれが事実であるかどうかを特定する手段を持っていません。「光に対するよう求められた影」というのが私の「ムメイ前外交委員長に対する評価」です。

その他

ヴェールヌイ公共放送 外3総局のソーニャ・グビンです
外交委員長就任おめでとうございます。そして就任間もなくの外遊お疲れ様でございました。
各報道記者から色々な質問がありました。前委員長のもと遂行されてきた各種の外交方針を正していくという委員長のご意思は、今回の会見でよく伝わったのではないかと思いますが、そうした事を今後とも、安定して不安なく遂行していこうと思えば、政局もございますが、委員長をはじめ、国家幹部層のご健康というものも大切な要素であろうと思います。
カルセドニーでは、主要な政治指導層が、度々暗殺によって命を落とされており、それが政局に大きな影響を与えることも少なくありません。
レタス公安委員長、そしてムメイ外交委員長の例が記憶に新しいですが、ネーナ委員長ご自身として、この点についての気構えであったり、警備に対する対策であったりということがあればお聞かせください。

 ムメイ前外交委員長が暗殺されたときの状況は、率直に言って警備が甘かったと言わざるを得ないでしょう。これについては警備を担当していた内務公安委員会に責任の大部分があると言えるでしょうが、ムメイ前外交委員長自身が自らの強い希望で警護を遠ざけたということについても知られている以上、警護を受けることになる委員長自身の「気構え」が問題になり得るということ自体も否定はできません。
 とはいえ、外交委員会は要人警護を行うことを専門にした組織ではない以上、一般的な水準以上に警護の水準を引き上げるためには内務公安委員会の助けを得る必要があることになります。委員会の独立性の観点から申し上げれば、これもこれで一種のリスクであり、おっしゃられたようにむしろ「警備に対する対策」が必要になるでしょう。したがって、私は外交委員会自身の能力を超えて暗殺の脅威に対応すべきであるとは考えておりません。

――ラ・ヴォワ・デュ・プープル(『我らロムレー人民』機関紙)のルシエンテスです。
この会見場にも多くのフリー記者の方がいらっしゃり、興味深い質問をされていますが、このようなカルセドニーにおけるフリーランスについては、「1人自主管理組織」を組織することで活動しているものと伺っています。
制度的には委員会社会主義と経済的自由の両立を図るこのような1人組織の存在やそれらの協業ですが、カルセドニーにおける社会経済的な位置づけと役割について、閣僚としてどのような立場でいらっしゃいますか?

 自主管理組織の規模の大小は様々であり、「1人組織」であることが特別重要視されるべきであるとは思いません。いずれにせよ委員会に属しており、委員会による統制を受けるという点では大規模な自主管理組織と変わるところはないのであり、彼らにも大規模な組織と同様の権利と義務が付与されるべきであると考えています。外交委員会はその職掌の性質上、「1人組織」の登録数は他の委員会に比べて比較的少ない部類にありますが、例えば雑貨品を専門とした輸入貿易商のような営みを個人経営でされている方はいらっしゃいます。そのような方を主人公にした映像作品もあったように記憶しています。……まぁ、その作品はその主人公の仕事については全く主題から外れているのですが。

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