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リブル核武装研究室の華麗なる日々(3)

「ご先祖様が、核兵器を我々に遺していたぞ!」

 藤村が興奮しながら、一冊の小さな本を持ってきた。

「ご先祖様……?」

 村山が怪訝な顔をすると、藤村が「ウオホン」と咳ばらいをして、演説を始めた。

「惑星フリューゲルへ人類がやって来た際、多くのものが地球へ遺棄されたり、何世代にもわたる宇宙の旅の中で忘れられたが、その中には重要技術たる、核爆発技術と恒星間航行技術がある。爾来千年以上、我々の科学技術はまったく進歩が見られない。つまり、我々の文明は、千年前に地球で瓶ビールをラッパ飲みしていた、大学生にも劣るのだ。我々は我々のご先祖様、先賢にすがるしかない」

「それはそうかもしれませんが、その本に核兵器の作り方が書いてあるのですか」

「いや、どうやらこの本が核兵器らしいんだ、見ろ」

「えーと、……的原子爆弾、この前の部分は」

「ネズミに食われた。ご先祖様も、核兵器をもってこずにネズミなんか連れてきて、意地が悪い」

「中はご覧になりましたか」

「いや、なにしろ千年以上前の古文書だからな、下手に触ると崩れるだろう」

「では慎重に……本が原子爆弾ねえ……この本、どうも数式らしいものが見当たらんですな」

「なんだ、核兵器に数式が必要なのか?」

 村山は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。

「お前は核兵器を見たことがあるのか?見たこともない核兵器の作り方がお前にわかるのか?わかるというのなら話は早い、今すぐ作れ、さあここで作れ」

「とにかく、崩れないよう慎重にスキャンした上で、研究してみます」

 一週間後、村山が核武装成功に成功したという。

「ついにやったか、核爆弾はどこだ」

「ここにあります」

「どういうことだ」

「まずはお聞きください」

 目を輝かせる藤村に、村山は語り始めた。

「中国には、むかし、「愚公、山を移す」という寓話があった……愚公は、息子たちをひきつれ、くわでこの二つの大きな山をほりくずそうと決心した……わたしが死んでも息子がいるし、息子が死んでも孫がいる、このように子々孫々つきはてることがない……毎日、山をほりつづけた。これに感動した上帝は、ふたりの神を下界に送って、二つの山を背負いさらせたというのである……われわれは、かならずやりとおし、たえまなく働くものであって、われわれも上帝を感動させるはずである……」

「……そのこころは?」

「偉大なる領袖毛主席が我々を導いてのたまわく、ここにおける愚公とは我々であり、上帝とはリブル国民なのです!我々が子々孫々たゆまず努力することで、国民を動かして必ずや目標を達成することができる、この必勝不敗の毛沢東思想、この信念と信仰こそが精神的原子爆弾であり、私は既に核武装をしているのです!」

 藤村は村山に、防災都市防御施設の破壊を命じた。

 村山は一晩中タックルを続けたが、防災都市は崩れなかった。藤村は上帝が核兵器をよこしてくるまで続けるよう命じ、帰宅した。

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