「核兵器が見つかった」
リブル国軍核兵器研究科長、藤村は、厳かに課員村山に言った。
「もしや、今朝ニュースで出ていた、セビーリャの地盤沈下ですか。核実験によるものとの見解が、うちからの情報として報道に出ておりましたが」
「うむ、吾輩がそう記者に話したからな」
藤村は髭を撫でながら得意気である。
「どこからこの情報を」
「どこって、見ればそうに決まってるじゃないか」
「見ればそう、とは」
「そらそうよ、わかってるやんか、ええ?」
雲行きが怪しい。
「村山よ、根拠をこれから探すのが我々の仕事じゃないか」
根拠もなしに結論が湧き上がるのを捏造と呼ぶべきか、はたまた妄想かと村山が考えているのとは関係なしに、藤村は続ける。
「というわけで、今夜一席設けることとする。本作戦を、モテモテウテウテカテカテ作戦と呼称する」
「もてもて……で、ありますか」
「そうだ、我が国伝統のオモテナシだ。セビーリャの駐在武官も男だ。虚心坦懐に腹を割って話せば、きっと打ち明けてくれるハズだろう」
夜、セビーリャ駐リブル武官の鼻先には、超ミニスカートからむき出しの尻と女性器があった。
「我が国の伝統料理、ノーパンしゃぶしゃぶです。どうかご遠慮なく」
「いや、困りますよ、こんなこと」
セビーリャ武官が顔をしかめると、藤村はこの反応を予期していたようで、如才ない愛想笑いを浮かべる。
「いやなになに、どうか御心配なく、我が国ではコンプラなんてものは、衣をつけて揚げて食べるものですからな。なんなら、次の皿でお出ししましょうか」
「なるほど、そういうことでしたら……」
セビーリャ武官も嫌いな方ではないので、すぐさま相好を崩し、ズボンのベルトをはずした。
このあと、乱痴気騒ぎを演じたり、モテモテウテウテカテカテ作戦が失敗に終わったり、接待費が経費で落ちず、藤村の自ハラキリと相なったりしたが、あまりにも見苦しいので、詳細は省く。
藤村が生きている間に核武装が実現した場合、実験場に選ばれる地が決まった事件として、ここに記録する。