1181年9月18日付〈中央通信〉
社会主義評議会は17日、ムメイ・トリディマイト外交委員長が7月24日の公聴会直後に狙撃され、同日中に死去したことを発表した。ムメイ外交委員長は公聴会終了後の15時過ぎ、共和国議会議事堂から宿泊していたホテルに向かう途上でジャスパー市内の高層ビルから狙撃を受け、意識不明の重体となったことが同日中に報じられていたが、死去していたことが正式に発表された形となった。
クルネ・カーネリアン内務公安委員長は社会主義評議会を代表してムメイ外交委員長の死去について発表した後、現段階の捜査結果として実行犯を狙撃事件直後に狙撃地点とみられる高層ビル内に滞在していたティルデ・サードオニクス容疑者にほぼ特定したこと、ティルデ容疑者は内務公安委員会捜査部隊が事件直後に捜索に踏み込んだ時点で既に死亡しており、狙撃直後、あるいは内務公安委員会の捜査官がビルに踏み込んだ時点で自殺したと判断していることを合わせて説明した。内務公安委員会が追って公表した報道機関向け資料によれば、ティルデ容疑者は外交委員会傘下の小規模な自主管理組織において勤務していたが、昨年後半に勤務態度不良を理由に解雇されており、事件当時においては失業者であった。容疑者宅の捜索によって押収された資料から、容疑者は「権力志向」が強く、自らが「共和国大統領」になる資格があるといったような誇大妄想を抱いており、大統領制の復活を支持する角錐派系の集会に繰り返し参加していたことが明らかになった。容疑者は大統領制を廃止した社会主義評議会に対して強い恨みを抱き、体制に「打撃」を与えることを目的に犯行に及ぶことを決意したという走り書きを残しており、内務公安委員会は狙撃事件をティルデ容疑者の単独犯行と判断し、容疑者死亡により捜査を終了するものとした。
外交委員会総選挙、超越連盟躍進
1181年12月27日付〈中央通信〉
共和国議会の選挙要求決議に基づいて行われた外交委員会選出共和国議会議員選挙は、超越連盟が全80議席の過半数となる45議席を獲得して勝利した。安全保障理事会における”先制的自衛権”概念についての議論がセニオリス連邦の拒否権という形で決着したことに対して外交委員会の各自主管理組織は非常に厳しい判断を下した。外交委員会内で議席の多数派を占めていた正方派・台形派はともに議席を大きく減らす惨敗を喫した。特にムメイ外交委員長を擁し、今回の一連の騒動の「主導者」と見なされた台形派は外交委員会内の議席の6割を失った。
これに対して超越連盟系の各派はほぼ軒並み議席数を伸ばしたが、円環派は改選前の10議席を半減させる結果となり、同派の連盟内での影響力が失われつつあることを象徴する結果となった。円環派は親セニオリス的な「超越国家との協調外交」と、平和主義に基づく「国際的軍拡モラトリアム」の両者が外交政策上の主導権をめぐって争い、最終的に後者が採用されていたが、この「平和路線」はほとんど支持を集めなかった。出口調査では平和維持を重視すると回答した有権者の大半が未来主義者に投票したことを明らかにしており、円環派がこのような路線の唱道者として「信頼されていない」と分析されている。今回の選挙の最大の勝者は新興勢力である五胞派であり、「KPOとの関係改善」を前面に打ち出してムメイ外交委員長下での外交政策を強く否定する姿勢が支持を集めた。対セニオリス関係の改善を支持する有権者の票は円環派が路線をずらしたためにそちらへは向かわず、未来主義者やサンディカリスト(超越派)などに向かい、この両派が「第2の勝利者」となった。
角錐派はムメイ外交委員長暗殺事件の容疑者が角錐派の支持者であり、犯行動機にも影響していたことが公表されたために支持が伸び悩んだが、安保理の事件が長年の「加烈瀬協調」からの一種の転換であると評価した有権者が親BCAT的な外交政策に一定程度の支持を与えたために議席をわずかに増やすことに成功した。同派は超越連盟の中では傍流に位置しているために、ムメイ外交に対する批判者の中でも比較的保守的な、超越連盟に対する懐疑主義的な立場を取っている有権者の支持の受け皿になることにある程度成功したことも指摘されている。
サンディカリスト(非超越派)、議会民主派、自由主義者は議席を獲得できなかった。外交委員会を重視しない態度を取って超越派の支援に回ったサンディカリスト(非超越派)はともかく、外交政策を明示的に打ち出しながら全く支持を集められなかった議会民主派と自由主義者は敗北を受けて内部の派閥対立に発展する可能性が指摘されている。
ネーナ安全保障局次長、次期外交委員長に指名
1182年1月18日付〈中央通信〉
社会主義評議会は17日、ネーナ・アメシスト外交委員会安全保障局次長代理を次期外交委員長に指名した。外交委員会はネーナ安全保障局次長代理の外交委員長指名を社会主義評議会に対して推薦しており、社会主義評議会がこれを受け入れた形となった。局次長、それも代理が局長を飛ばして一気に外交委員長に就任することは極めて異例であるが、局長・局次長級の外交委員はほとんど全員が正方派・台形派に所属しており、昨年末の外交委員会選出共和国議会議員選挙の結果、外交委員長への就任がほとんど期待できない状況下にあり、異例の人事もやむを得ないと判断された模様だ。
ネーナ安全保障局次長代理は五胞派に属しており、安全保障局内の「非同盟諸国部門」に長年属した後、駐ルクスマグナ大使などを歴任していた。対KPO関係についての調査研究を長年行っており、現在の状況を踏まえて適任であるとの判断によるものとされるが、実質的にはKPOに対して融和的な姿勢を提案する外交委員会内の高官が他にほとんどいなかったことによる消去法であるとみなされている。
ネーナ安全保障局次長代理は社会主義評議会からの外交委員長への指名を受けて、記者団に対して「まずは亡くなられたムメイ外交委員長にお悔やみを申し上げたい」と述べた後、「外交委員会の悪癖は一掃されなければならない」と表明、局長・局次長から部長クラスまでの人事を大幅に刷新する予定だと明言した。正方派・台形派系の上級役職者を「掃除」するとしているが、外交委員会内に未だ大きな勢力を有する両派の外交政策に対する影響力を完全に取り除こうという試みはかなりの反発を生むと考えられ、外交委員会が安定した活動を取り戻せるようになるまではもう少しかかると見られている。
【政治】ネーナ外交委員長、就任会見で安全保障局内に「KPO部門」を新たに設立することを表明。
【政治】未来主義者、予想外の躍進に「過去との決別というテーマが支持されたのかもしれない」
【政治】中央処理委員会、セレン・ヘリオトロープ前国連大使の弾劾を却下。ムメイ外交委員長については「外交委員長死去のため弾劾手続きは終了」と判断。
【社会】「超越的ゆで卵」正式に発売。「最も好みの茹で時間を模索してほしい」開発者。
【社会】Advance!紙、「ムメイ暗殺は内務公安委員会の自作自演」説を提唱。
【国際】芹連邦クリュサノス執政官就任。セビーリャ系「ラテン主義運動」に影響する可能性の指摘も。