2014/10/02 19:43:53
(忠実女学院経済学部国際政治学科教授、橘実雄)
553年6月、多くの凄惨な流血をもたらしたエルツの擾乱は帝国軍の勝利により無事集結した。まことに喜ばしい事である。外務省による同国への渡航規制も折をみて順次解除されることであろう。
しかし、この一連の事件に於いて一点、注視すべき点がある。それはドクツ第三帝国のエルツに対する強硬政策の、唐突な雪解けである。
ご存知のとおり同国は540年代から突如エルツに対する外交態度を硬化させ、遂には国交断絶に至った。しかし不可解な事に、それについてドクツ側の明確な理由は何一つ、ドクツ政府からは明らかにされていないのである。
そして今回の内乱を経ての、唐突な国交再開とクンツ・シュパング外務大臣の「霧は晴れた」宣言である。今回に至っても、ドクツ政府から国交再開の旨は発表されているものの、その明確な理由ははっきり言って説明されていない。
私はこの問題を、ひどく重大に受け止めたい。外交は国家の「挙動」である。「挙動」を起こす理由が理解できない、という状態を「挙動不審」という。私としても、世界に冠たる正義と自由の国家とも言うべき(暗殺と政争の横行する軍事独裁政権の我が国など足元にもおよばない)ドクツ第三帝国が「挙動不審」な国家であるなどとは思いたくない。どんな場合であれ物事には「経緯」がある。幾千万の国民の運命を担う国家の舵取りたる「外交」であればそれは尚更のはず。自由と正義を愛する先進国であり、その王道ゆえに多くの友邦をもっているドクツには、その「経緯」を説明する義務があるはずだ。