2012/01/29 5:20:22
戦前、イスアードの報道において我国の態度に大国らしい寛容さが見られず小国を恐れていると言及があった。本紙ではこの問題について諸国民の誤解を解く必要があると感じ、今回国際問題とノイエクルス史の専門家であるテオドロ・デラパス教授を招いて特集記事を掲載する事にした。
本紙記者(以下記者)「デラパス教授、本日はよろしくお願いします」
デラパス教授(以下教授)「うむ、よろしく頼むよ」
記者「早速ですが教授、今回の我国の行動についてどう思われますか」
教授「簡単な話だ。君はメイドが失礼な口を聞いたらどうするかね」
記者「杖やムチで打ち付けるのは違法ですから、クビにします」
教授「そういう事だ。分かるだろう」
記者「我々のような本国人(注1)はそれで分かりますが、今回は異邦人にも分かるようにという趣旨なのでもう少し説明願えますか」
教授「そもそも我国が寛大だというのが思い込みなのだよ。歴史を見て見たまえ」
記者「歴史と言いますと?」
教授「ノイエクルス史だ。君の学校は理系中心なのかね(注2)」
記者「とんでもない。きちんと修めました」
教授「元々我国は内向的で独善的で他国に対する思いやりなどかけらも持ってはいない。それがノイエクルスだ」
記者「それが大国らしからぬと批判されているのでは?」
教授「大国らしくなかろうがノイエクルスは変わらない。73年戦争当時と全く同じだ」
記者「歴史の連続性という事でしょうか」
教授「その通り。当時、我国がヴィントシュトースに突き付けた要求は正当だったが彼らから見れば法外で押し付けがましかったのは確かだ。あの頃と全く変わらん。しかし73年戦争と言えば英雄ブルクハルトの世紀は非常にいい映画だね。今から1世紀以上前の映画だが未だに再販が絶えないのも頷けるよ。思わず最近出た特別版DVDを3セット買ってしまってね。次は3D版が出るというじゃないか。もちろん買うが、映画会社のこういう商法は全く商人根性の浅ましさを」
記者「教授!確かに私も3D版の為にテレビを買い替える予定ですが、本題から外れますので」
教授「そうだった。73年戦争もそうだが、その後も数え上げればきりがない。ノイエクルス史390年を通じて我国が小国に配慮したのは後にも先にも南瓜と連邦を結成した時だけだ」
記者「ユーク戦争やスピリア併合、モルダバイト問題、ノルスモール戦争などですね」
教授「南瓜にしたって元々は植民地としての扱いから出発している。工業化による連邦経済への貢献が期待されなければあそこまでの厚遇は無かっただろう。南瓜人の性格と連邦経済の要求が一致した類稀な成功例だよ、これは」
記者「何故我国はそういった性格を持っているのでしょう」
教授「建国以来我国で力を持っていたのは大土地所有者と商人どもだ。それぞれ内向的で伝統を重んじ規律正しい性格と、強欲で独善的な性格を持っている。それらが合わさって国の方針となっているというところだろう」
記者「民衆はどうでしょうか」
教授「奴らは熱狂できれば何でも良いのだよ。これは政治学の初歩だよ、君。だからこそ我が国では強力な指導者と独裁、クーデターが続いたのではないかね」
記者「それらの政治風土が合わさって強権的で独善的、しかも内向的な我国の性格が生まれたと」
教授「ノイエクルス史を学んでいればこのくらい常識なのだがね。教育水準を云々する前にノイエクルス史を必修にしたほうが良いのではないかね、彼らは。薄っぺらいイスアード史だとか役に立たない経典だとかを読むよりよっぽどためになるだろう」
記者「全くその通りですよ、教授。うちの子供は当然私立ですが(注3)地区教育評議会が歴史の時間を削減する決定をしましてね」
教授「全く嘆かわしい。ああ、メインテーマについてはこんなものにして続きはパブでどうだね」
記者「喜んで御伴いたしますよ」
注1:ノイエクルス自由国の上流階級。本国在住者でも生まれが卑しい場合は本国人とは見なされない。下流階級や植民地人(南瓜人)との混血を本国人に含めるかは議論が分かれる。
注2:ノイエクルスにおける伝統校は文系中心。理系中心は庶民校や新興校に多い。
注3:ノイエクルスにおける公立学校の扱いは低い。全寮制の私立校に子供を入れる事は上流階級の条件でもある。
本紙デスクとしてはノイエクルスが偏狭ではないというインタビューを期待していたが、編集委員会でもインタビューへの賛意が圧倒的だった為そのまま掲載する事とした。