今月21日、イスタシア君主制連合に属する帝国党、イスタシア王冠党、カトリック光明党、ラウリス教会連合党の4党が共同で新憲法案の公表に踏み切った。各王党派の立場を尊重しつつ、過去の地球に存在した選挙王政を参考に民主制を取り入れ上手くまとめ上げたと、広報官は意気揚々と我々報道陣に答えた。一部カルセドニー人の話題となっているオニキス人(現在セレン島を中心に居住)の保護や、ノイエクルス連邦直轄領に現在居住するノイエクルス人に対する保障についても、かれらが居住する地域はほぼ新憲法案中で創設が示されている「特別自治領」と重なっており、当人たちによる高度な自治が保障されるため問題ではないとした。しかし、ノイエクルス連邦本国より発表された新体制に対する基本原則に概ね寄り添いながらも、一部明確にこれを無視し逸脱する憲法案の強行的公表に、与党社会自由党の間では衝撃が走っている。同日、イスタシア君主制連合の関係者は本国政府に対し同憲法案を提出。これが本国でどう扱われるか、国際社会がどう反応するか地域の人々は戦々恐々としながら見守っている。
今回の事態を受け、与党社会自由党党首のエトガー・フォン・ファルケンハウゼンは会見にて、至急同党による修正案を作成すると宣言し、今後の展開が期待される。
以下がイスタシア君主制連合より公表された新憲法案である。
イスタシア諸邦連合帝国憲法
(通称:連合帝国憲法)
今日、イスタシア自治領はノイエクルス連邦からの正式な独立に際し、継承政府の国号をイスタシア諸邦連合帝国(Vereinigtes Kaiserreich von Istasie Territorien)とすることで合意した。
イスタシア自治政府は自治領内の住民の総意に基づき、継承政府の誕生を祝してこれを制定し公布する。
第一章 連合帝国の範囲と地方自治
第1条 イスタシア諸邦連合帝国(以下連合帝国)は、従来のイスタシア自治領の領土・領海・領空から成る。
1.イスタシア自治領内のノイエクルス連邦直轄領も連合帝国の主権下に帰属する。
第2条 連合帝国を構成する諸邦は以下に分類され、法律によって別途定められる範囲の自治権をもつ。
1.領邦(オストアレフィス公領、アンガンチュール公領、アンガス公領、ヘルヴォル大公領、エルーカ公領、キルツハウエン公領、ヴェストリュッセル大公領、トパゾライト侯領)
2.特別市(ミュンツェン市)
3.特別自治領(モーティス領、セレン領)
4.教会領(ボードラウゼ大司教領、リーリエンブルク大司教領)
第3条 諸邦は国家に準ずる自治組織として設置され、その長は諸邦の形態により以下の異なる方法により選出され、行政を担う。
1.領邦においては、従来のイスタシア自治領の下で伝統的に首長に就いていた者とその直系子孫が引き続き首長を務める。首長の地位の相続及び家系断絶等の事態においては別途法律で定めるものとする。
2.特別市及び特別自治領においては、首長は法律で定めるところにより市民あるいは住民の直接投票によって選出される。民族、信条、性別、社会的身分、出身、教育、財産などによって差別されてはならない。
3.教会領においては、首長は各教会組織の構成員から別途法律に定められた方法(コンクラーベ)によって選出される。
第4条 諸邦は独自の警察及び軍事組織をもつことが認められる。
1.単独諸邦の範囲を超えた国内事案あるいは危機、他国との紛争等の事態に際しては、皇帝の権限の下召集を受け連合帝国としての職務にあたるものとする。
第5条 諸邦には、法律の定めるところにより、その議事・立法機関として議会を設置する。議会を構成する議員は、連合帝国の元老院に準ずる形で民主的に選出されなければならない。
第6条 諸邦は、この憲法及び法律に反しない限りにおいて、諸邦議会の権限の下に各領法あるいは条例を制定できる。
(中略 諸邦の下に属する地方自治体について等)
第二章 皇帝と行政
第10条 連合帝国の国家元首の尊位は皇帝(Kaiser)に委託される。
1.皇帝の尊位は旧イスタシア王国の君主の地位を継承するものではなく、また旧来の伝統的な王位等とは異なる新政府独自の称号であることを確認する。
第11条 連合帝国の行政権は、皇帝に帰属する。
第12条 皇帝の任期は10年とし、以下の方法で国民の直接投票により選任される。
1.皇帝の被選挙権は現職の各諸邦の首長にのみ付与される。
2.上記にかかわらず、現職の皇帝は連続して次期の皇帝に立候補することはできない。
3.全候補者のうち、最大多数の票を獲得した者が皇帝の尊位を得る。
第13条 皇帝は、その母体とする諸邦の首長を皇帝在任中も兼任する。皇帝としての任期は、諸邦内の首長としての任期より優先され、場合により任期満了が同一日となるよう首長在任期間が延長される。
第14条 皇帝は自らの権限の下、組閣を行う。
第15条 皇帝は各国務大臣を任命できる。ただし、全国務大臣のうち半数以上は元老院の議員から選定されなければならない。
第16条 皇帝は、連合帝国の陸・海・空・宇宙・近衛軍及び連合帝国の軍務に実際に就くため召集された各諸邦の軍隊の最高司令官である。
第17条 皇帝は、他国と条約の締結を行う権限を有する。ただし、締結には元老院の両院で総議員の3分の2以上の賛成による承認を必要とする。
第18条 連合帝国内において、災害、紛争、その他の事態により公共の安全および秩序に著しい障害が生じ、それによって国家あるいは各諸邦の存続が危ぶまれる際には、皇帝は公共の安全及び秩序を回復させるために必要な措置をとることができ、必要な場合には、武装兵力を用いて介入することができる。また、この目的を達成するため、必要な場合には、皇帝の命令にてこの憲法の第48条及び第49条に定められた国民の権利を一部停止出来る。
・ただし、この措置を講じ事態が収束した際にはすみやかに国民の全権利を回復し、また皇帝は元老院の事後承認を得なければならない。
第19条 省庁の創設・統廃合及び各省庁の権限は、法律によってこれを定めるものとする。
(中略)
第三章 立法
第25条 連合帝国の唯一の立法機関として元老院を設置し、これを国権の最高機関とする。
第26条 元老院は、上院及び下院の両院でこれを構成する。
第27条 元老院は、国民を代表し選出された議員によって組織される。
第28条 議員の選挙権及び被選挙権は、法律によってこれを定める。民族、信条、性別、社会的身分、出身、教育、財産などによって差別されてはならない。
(中略 議員の任期、法律制定の手続き、下院優越の原則等)
第四章 司法
第40条 連合帝国のすべての司法権は、最高裁判所及び法律に定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
1.すべての裁判所は、行政及び立法機関からの独立性を保たなければならない。各裁判官は、その良心に従いこの憲法及び各法令にのみ拘束される。
第41条 裁判官は、内閣でこれを任命する。裁判官は、心身の故障により職務を全うできないことが明白な場合を除き、10年ごとに実施される国民審査あるいは公の弾劾によらなければ、罷免されない。
(中略)
第五章 国民の自由及び権利・義務
第42条 連合帝国民たる要件は、法律によって定める。
第43条 連合帝国の主権は国民に属する。
第44条 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求の権利は、公共の福祉に反しない限り最大限保障される。
第45条 すべての国民は、民族、信条、性別、社会的身分、出身によって差別されてはならない。
第46条 個人の思想信条の自由は、これを侵してはならない。
1.ただし、私有財産制の全面否定を目指すものはこれに含まれず、公の秩序に明確に反する際には、政府は適切な対応を講じることができる。
第47条 元老院は、国教を樹立し、もしくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、国民の言論もしくは出版の自由、集会あるいは政府に対する請願の権利を侵す法律を制定してはならない。検閲は、これをしてはならない。
1.ただし、私有財産制の全面否定を目指すものはこれに含まれず、学術研究目的を除き公の秩序に明確に反する際には、政府は適切な対応を講じることができる。
第48条 すべての国民は、全連合帝国内において居住、移住の自由、土地の取得及び職業選択の自由を有する。公共の福祉の観点からやむを得ない場合を除きこれを制限する法律を制定してはならない。
第49条 すべての国民は、政府及び地方自治体に対し民主政治の発揮に必要たりえる情報の公開を請求し閲覧する権利を有する。国家機密及び公共の福祉による制約は必要最小限度のものに留め、別途法律によりこれを規定する。
第50条 すべての国民は、アイドル(各諸侯を含む)、バンドグループその他アーティスト等に親しみこれを鑑賞及び応援する権利が最大限保障される。政府は都市人口に対し必要たりえる規模の公演に供する施設を整備する責務を有する。
第51条 すべての国民は、納税の義務を負う。
(中略)
第八章 改正
第55条 この憲法の改正は、元老院両院の総議員の3分の2以上の賛成で元老院を発議し、その議案は国民の承認を得なければならない。全国民の直接投票において過半数の賛成を得ることによってのみこれが承認される。
1.憲法改正について前項の承認を得た際には、皇帝はただちにこれを連合帝国の名において公布し、公布から6か月後にこれを施行する。
(中略)
第十章 補則
第60条 この憲法は、公布の日から起算して6か月を経過した日から施行する。
1.ただし、国号の制定及び使用については、公布の日と同日から開始するものとする。
(後略)
フリューゲル暦 43023期 1195年 1月22日 ミュンツェン・タイムズ