質疑応答
(外国紙記者)
カルセドニー中央通信のキシヤ・カーネリアンです。皇后陛下、本日は記者会見の機会をいただき誠にありがとうございます。まず、外務長官と宰相の間の権限の関係性についてお伺いしたいと考えております。先般、帝冠党ジークフリード前宰相に対する不信任が議会において可決され、保守党による新政権が発足しましたが、シェーラ陛下は外務長官の地位にとどまっております。これは、カール・シュトラウス宰相がシェーラ陛下の外務長官続投を希望されたことによるものなのか、そもそも宰相には外務長官を指名する権限がなく、シェーラ陛下は皇帝陛下に対してのみ外務長官としての責任を負う制度となっているのか、いずれなのでしょうか。
ご質問ありがとうございます。まず、大前提として、我が帝国において、各省長官はレオナードに対してのみ責任を負っております。帝国宰相は、各長官を指名する権限を有しており、その指名された者を基本的にはレオナードが任命することになります。
しかし、外交分野に関しては特別な事情がございます。外交が内閣が変わると別物に変わるというような事態を避けなければ他国から不安定な国家だと思われ、関係深化が非情に困難になります。そのため、外務長官だけは帝国宰相の意思よりも皇帝陛下の意思を優先するという憲法には書かれていない慣例がございます。その慣例から私建国以来以来ずっと外務長官を歴任してきました。
ですからその慣例に従って私が今内閣においても外務長官を務めております。
少し分かりづらかったかもしれません、この制度についてまだ疑問点があるならお答えしましょ。
(引き続きキシヤ中央通信記者からの質問)
シュトラウス宰相は就任後に「KPO脱退を中心とした外交政策を推し進める」と発表していますが、ご回答を踏まえると、外交方針についての最終的な意思決定権はシュトラウス宰相ではなくシェーラ陛下と、そして皇帝陛下にあるということになると思います。
シュトラウス宰相の唱える「KPO脱退」に関して、シェーラ陛下は外交の最終的な意思決定権者としてどのような立場でいらっしゃるのでしょうか。積極的に支持されるお考えなのか、あるいは議会の意思によって成立したシュトラウス政権の意向を尊重するお立場なのか、あるいは反対ないし路線の微修正を求めるつもりなのでしょうか。
まず、最終的な意思決定権は私とレオナードにあるというご認識で相違ありません。
その上で「KPO脱退」に関しての私の立場は議会の意思、そして臣民の意思を尊重するという立場だという回答になります。議会の意思は脱退なのでしょうから我が臣民がどのように捉えているのか慎重に聞き取る必要があると考えております。ただ、現状私やレオナードは脱退に対して特に反対する気はないことも事実です。臣民の激しい反発があれば外交の最終的な意思決定権者として脱退に反対することもあり得るでしょう。
【セリティヌム連邦 アクタ・ディウルナ紙記者】
皇后陛下、本日はお時間をいただきありがとうございます。セリティヌム連邦のアクタ・ディウルナ紙のセルウィリウス・メテッルスです。KPOからの脱退についてですが、シュトラウス宰相閣下ならびに議会はこの方針を推し進めていくお考えのようです。この決定に至った最大の要因について、お差し支えのない範囲でお聞かせいただけますでしょうか。また、近年KPO諸国は、既存の陣営との対立や、国連の場における議論の中心となる場面が増えているように見受けられます。こうした国際的な動向が、貴国の脱退判断に影響を与えた側面はございますでしょうか。さらに、脱退後の展望についてもお伺いしたいと思います。貴国として、既存の陣営との関係強化を模索されるのか、それとも新たな国際的枠組みの創設を視野に入れておられるのか、現時点でお考えをお聞かせいただければ幸いです。
ご質問感謝します。要因ですか……そうですね…まずは敢えて国名は言いませんが外交的反応が非常に予想しづらい国家の存在があり、我々としては国家観の相違なども踏まえてKPOに所属し続けることが困難であると私とレオナードは考えていました。これ以上のことはとりあえず言わずにおきましょうか…
既存の陣営との対立等に巻き込まれないのかという点は非常に警戒していましたから国際的な動向も大きく影響を与えたというのは否定できません。
今後の展望ですか、まだ考えていませんね、あらゆる陣営に加入することは選択肢としてありますが我が帝国が主体となって陣営を作ることは現状あまり考えていません。
【フリー記者】
圧政者どもに死を!専制政治を打ち倒せ!帝冠は燃やされるべきだ!貴様らの帝国も歴史の墓場に沈む時が来た!民衆のための政府を!皇帝どものためではなく、労働者と農民のための政府を!自由を!革命万歳!民衆の勝利を信じろ!我々は戻ってくるぞ!
ここは我が帝国です。誓約書の存在を忘れられたのかしら……愉快な方ですね(にこやかに笑いながら拳銃を取り出し正確に頭を撃ち抜く)
【民間紙記者】
皇帝陛下、皇后陛下万歳!加桐烈瓦、上位四ヶ国は、自らの陣営を持ち、互いに覇を争っています。このような状況で、どこかの陣営に加入することは、これらの風下に置かれることであり、大国たる我がルーンレシアには相応しくなく、むしろ皇帝陛下の御稜威にもとに一つの陣営を作ることも充分考えていいように思うのですが、やはりそうではなくどこかの大樹の陰に潜むことをよしとされるのでしょうか。
貴方の帝国への忠誠にまずは感謝を。その上で質問にお答えすると陣営を作ることが大国たる我が帝国にふさわしいという点は同意致します。ですが現状陣営を作ることを考えていない理由はまずもってレオナードも私も陣営それ自体をほとんど信用していないことがあります。ルーンレシア主導で陣営を作ったとしてもその陣営すら信じられない様では陣営を作るべきではないだろうと考えているのです。
外国紙記者『レゲロ労働新聞』より質問
①KPOからの脱退を進めるとのことですが、社会主義に批判的な保守党新政権による政権運営において、KPO現加盟国であるレゲロ社会主義人民共和国との友好関係をどのようにお考えでしょうか。
質問ありがとうございます。レゲロ社会主義人民共和国との関係のことですが商品を輸入していること、またレオナードがえらく個人的にレゲロ国を好意的に捉えていることからレゲロ国の方から恐らくKPO主導のものかと思いますが……友好関係を終わらせたいとの意思を示されない限り我が帝国は友好関係を維持・発展させてまいりたいと考えております。
②ルーンレシア帝国は新政権誕生によって社会主義への対応になんらかの変化はあるでしょうか。既に社会主義への取り扱いに一定の制限があるという印象がございますが、社会主義政党の振興に何の影響もございませんでしょうか。
現状社会主義に対して弾圧等を加えていませんし、予定はありません。社会民主主義党の再結党の動きも進んでいると噂もありますが再結党を阻むつもりもありません。社会主義に対してあまり我々がいい印象を持っていないことは事実ですがレゲロ国のような例外がいるのも事実です。よって社会主義の振興には影響はないと考えております。
(外国紙記者)
《Advance! Victory Is Within Us!》紙のオレガリオ・バラデスです。1181年に起きた社会民主主義党によるテロ事件が社会主義や社会主義国によって占められるKPOに対する反感を生む1つの契機となり、そしてその指導者に対する「甘い」判決が帝冠党政権の崩壊の引き金となったことが既に報じられていると認識しております。ルーンレシア市民は、あるいは議会は、社会主義に対して厳しい態度を取るべきであるという声が多数派を占めているというのが現状ではないでしょうか。また、ついさっきも社会主義的なイデオロギーを掲げたテロリストを皇后陛下自ら「処理」されたばかりであり、社会主義テロリズムの脅威は去ってはいないことも明らかでしょう。先ほど《レゲロ労働新聞》記者からの質問に対する回答で、「社会民主主義党の再結党を阻むつもりはない」というようなことをおっしゃりましたが、現在の世論や議会の多数派はそれを支持しているのでしょうか。支持しない場合は、政府としてどのような行動を取るべきであるとお考えでしょうか。
ご質問ありがとうございます。社会主義に対する世論についてですね。間違いなく社会主義に対して好印象を持っている臣民が少数であるというのは事実であろうと思います。ある世論調査では確か80%以上が社会主義に対していい印象がない、またはあまりないを選択していました。社会民主主義党の再結党はあくまで一例ですが恐らく再結党を臣民の多くは反対するだろうと考えられます。その時政府としては無関与を取ります。社会民主主義党に対する悪評を取り除けるか彼らの努力次第であり、その努力を政府として支援するのも妨害するのも私は間違っていると考えているからです。ですがこれは私の考えでありレオナードや宰相などがどう考えているかはわかりません。
(引き続きAdvance!紙記者からの質問)
カルセドニー・ルーンレシア両国の外相会談についてお伺いします。両国共同宣言では、「両国は政治体制に関わらず協力を絶やさない」ことが宣言されました。これは、両国が異なる政治体制―君主主義と社会主義―を採用していることを、外交的な対立の源泉にはしないことを宣言したものと受け止められていると思います。一方で、カルセドニーのネーナ外交委員長はこれに引き続いて行われたレゲロ社会主義人民共和国との会談で、レゲロのラルゴ=ロッティ外交通商部長官の提唱した「フリューゲルインターナショナル」構想に対して賛意を示しました。レゲロのエルノーク終身大統領は「社会主義統一連邦」を構想しているとする観測もあり、インターナショナルがその前段階である社会主義諸国の間の「政治体制に基づく結束」を意味することは明らかです。このようなネーナ外交委員長の姿勢については、ヴェールヌイ社会主義共和国《ブルースター》紙においても、「時代錯誤的」な提案に対する支持であり、「KPO加盟国に対する日和見的な個別対応」であると批判されています。皇后陛下は、ネーナ外交委員長のルーンレシア・レゲロ両国との会談における態度について、日和見主義、あるいは二枚舌であるという認識をお持ちでしょうか。また、ネーナ外交委員長が「KPOとの関係性を重視」するために日和見主義的な姿勢を取ることを厭わないことを踏まえ、KPOからの脱退によって対カルセドニー関係も修正を余儀なくされるとはお考えでしょうか。
ネーナ外交委員長のお考えについては計りかねますが確かに日和見主義に見えてしまっても仕方ないのではないかと考えております。そのうえでKPO脱退後明らかに我が帝国との宣言を軽視しレゲロ国との社会主義国家の連帯構想を強力に進めようとするならばカルセドニーとの関係は修正を余儀なくされるでしょう。友好関係を築く、可能ならば深化させていきたいですが…それは向こう次第ですね。
外国紙の記者質問
ブルースター紙のテレンティア・ベコフです。よろしくお願い致します。本記者会見は、「記者会見」であるにも関わらず、なにかしらの発表や説明が行われず、はじめから質疑応答を受けるという、異例といいますか、特異な形式であると思います。これは一体何を意図して開かれた記者会見なのでしょうか?帝国政府や外務当局として、何か表明・説明する準備があるのならば、あらためてご説明いただけますでしょうか。
ご質問ありがとうございます。この記者会見の意図はそうですね、私の気分です。という訳にもいきませんね、真面目に回答するならKPO脱退を基本方針とする新内閣の誕生は国内のみならず諸外国の疑問や不安を生むと考えておりました。ですから近いうちに記者会見を行うべきであると私とレオナードは考えており、ちょうど今回予定が空いたため本記者会見を行っております。また帝国政府として今回表明することは改めてKPOを脱退するという基本方針に変わりはないという程度であり、特別に表明・説明する予定はありません。
ブルースター紙テレンティア・ベコフ(上部からの続き)
KPO内での協議において、ルーンレシアがKPO内における拒否権を獲得しようされたとのことでしたが、一般的に、軍事同盟であれ経済同盟であれ、加盟国の権利に優劣をつける例はフリューゲルにおいては多くはありません。「5カ国しか」と仰られておりましたが、5カ国はそれなりに大きな規模の国際組織であり、正加盟国を5つ以上持つのは現状KPOのみです。それだけの規模でありますから、尚更加盟国の優劣を後天的に定めることにはハードルがあったと思います。それでもなお、そうした提案を行うという判断に至った動機はどこにあったのか、あらためてご説明いただけますでしょうか。
ご質問ありがとうございます。ルーンレシア帝国がKPO内で拒否権の獲得を提案した背景には、同盟内の安定性と安全性を確保する必要性を感じたからです。今だから言えますがとある加盟国の暴走が、同盟全体の調和を乱す可能性を懸念していたため、主要国に拒否権を付与することで、慎重な意思決定と均衡を保つことを目指しました。
(民間紙記者)帝冠党から独立した帝国戦線は、ヴォルフ下院議員の帝国議会における「帝国の威信を守るためには、KPOの枠組みの中で我々の立場を強化し、より主体的に発言できるようにするべきではないか」という発言に代表されるように、KPOからの脱退を無条件には支持しない立場を取っていたと認識しています。しかしながら、帝冠党政権に対する不信任案は最終的に可決され、帝国戦線はKPO脱退を訴える保守党政権の成立に実質的に協力したものと認識しています。帝国戦線が以前の帝国議会における立場から転換した理由については、おそらくKPO内部での協議が影響したものであると考えていますが、シェーラ陛下は―回答できる範囲でお答えいただければと思いますが―外務長官としてKPO内部においてルーンレシアの立場をどのように表明し、KPO側からどのような返答を得たのでしょうか。あるいは、帝国戦線が立場を変化させた理由についてどのようにご認識されていますか。
ご質問ありがとうございます 。我が帝国はKPO内の拒否権を得られるよう目指す事を表明しましたがある国家が反対され、そしてある国家が賛成し、ほか2国は…正直一カ国そもそも議場にいたのかも怪しいのですが、立場を明らかにしていないと認識しております。5カ国しか所属しない陣営で一カ国に反対される時点で残念ながら我が帝国としては提案は失敗したと考えました。その事を公表した帝冠党中心の内閣に保守党が猛反発していたところ、例の裁判によって保守党が激怒し不信任決議を提出したというのが事実であります。提案の失敗を受け帝国の発言権拡大は失敗したと帝国戦線が考え、不信任決議に賛成し保守党政権が誕生したのでしょう。
(民間紙記者)フリューゲル国際連合安全保障理事会の一般理事国についての認識をお伺いします。一般理事国は、「特定の同盟の支持によってその地位を得ている理事国」―トータエやリブルなどが該当します―と、「特定の陣営に依らず、幅広い国から支持を集めることでその地位を得ている理事国」―セリティヌムやガトーヴィチなど―に大別されると考えられます。KPOは5票中4票を用いてトータエを一般理事国に推薦し、1票の余りは「ルクスマグナの対ガトーヴィチ推薦のために使用する」という構図が長年続いてきました。ルーンレシアがKPOから脱退する場合、後者の「陣営に依らない理事国としての推薦」を得ることは十分期待できると考えられますが、自ら一般理事国を目指すお考えはあるのでしょうか。また、自ら一般理事国を目指さない場合、あるいはそのための条件が整う前段階においては、自国の推薦票をどのように使用するお考えなのでしょうか。
質問、ありがとうございます。そうですね我が帝国は一般理事国は基本的に目指しません。理由はそこまで外務省、またレオナードも理事国になる意味をあまり感じないこと、また外務省の人員不足をこれ以上加速させてはならないと考えているためです。後者は冗談ですけどね。推薦票先ですか…トータエから変更することは考えています。KPOを抜けてもトータエ及びレゲロとの友好は維持しますがKPOのために我が帝国の権利を損なう訳にはいきませんからね。トータエへの推薦を変更してもKPOの4票を固めれば問題なく一般理事国になれるでしょうし。ガトーヴィチは一般理事国を維持できなくなるかもしれませんがその時はガトーヴィチ側から何らか話があるだろうと思います。話がないときはいつでも動かせるように自国推薦の形を取るかもしれませんね。
外国紙記者
帝国新報のラストーチキンです。2点ご質問させてください。
①フリューゲルにおける「帝室外交」は、政治家どうしによる政治外交を超越した、帝室交流・文化交流・両国親善の側面を有すると愚考しますが、畏くも皇后陛下が外務長官にあらせられる以上、ルーンレシア外交にはこのような区別は存在しえないのでしょうか。
質問ありがとうございます。ルーンレシア帝国において、私が皇后として外務長官を務めることは、建国以来続いております。この独特の体制により、帝室外交と政治外交は密接に関連し、帝国の外交はその両面を持つ形で展開されていると認識しております。
②質問が無かったため、敢えて伺います。ルーンレシアがKPOを脱退する目途は立っているのでしょうか。もし立っているのであればそれはいつでしょうか。どうぞ宜しくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます。ルーンレシア帝国のKPO脱退は既定事項となっておりKPO側にも意思は伝えております。しかし急な脱退は安全保障上の問題が発生しかねないため、これらが解決してから脱退する予定です。
外国紙記者
「脱退後もトータエ及びレゲロとの友好は維持する」とのことでしたが、他のKPO加盟国―ルクスマグナ、ノエシタ―との今後の関係についてはどのように変更、または維持していくのでしょうか。
ご質問ありがとうございます。ルクスマグナやノエシタとの今後の関係につきましては、KPO脱退後も、共通の利益と国際社会の安定の分野を主として連携していく所存です。具体的な協力内容や枠組みについては、今後の外交交渉や協議を通じて慎重に検討します。が、ルクスマグナはともかく、ノエシタとの関係に関しては現状正直なところ友好関係とは言い難いものになりそうであるとは考えております。