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超越連盟、外交委員長と国連大使の弾劾を要求

1181年5月2日付〈中央通信〉

 超越連盟は1日、安全保障理事会においてセニオリス連邦代表が加烈別利芹5ヶ国が提出した決議案に対して反対投票―すなわち拒否権の行使―を表明したことを受けて、安保理の会合が終了した後直ちに外交委員長と国連大使をこの事態の「責任者」として弾劾するための決議案を共和国議会に提出することを発表した。ティーナ・ユーファストーン共和国議会議員は超越連盟を代表して、「超越連盟の各派は次の通り合意した。今般の外交委員長と国連大使を中心に行われた共和国の外交方針について、何も得るものがなく、共和国が支持してきた国際法の基盤であるところのA/RES/4/1がもはや数多くのFUN加盟国に尊重されていないという事実を明らかにした。さらに友好的な関係を築くことが可能であり、あるいは築いてきたはずの一部国家との関係をいたずらに損ねた。したがって、我々はムメイ・トリディマイト外交委員長並びにセレン・ヘリオトロープ国連大使の弾劾を要求することとした」と記者団に述べた。ムメイ外交委員長はこの発表を受けて、「安全保障理事会において国連大使が行った言動をはじめとする外交行為が刑法上の犯罪を構成するとは考えられず、弾劾という法手続きを政治的目的に利用しようとする超越連盟の態度に対して強い怒りを覚える」というメッセージを発表した。安全保障理事会における議論は国内の政治的対立に飛び火しつつあるようである。
 外交委員会は1176年にカルーガ条約第三条並びに第六条の改正について、その意図と条約解釈を問う公開質問状をリブル民主共和国と共同で発出した。これに対してカルーガ条約機構(KPO)は部分的に回答したが、これを受けて共和国は安全保障理事会に対して「カルーガ条約における“先制的自衛権”概念のFUN体制との整合性について」という名称で議題提起を行い、カルーガ条約第六条が主張する”先制的自衛権”がFUN体制、特に憲章第28条及び第31条に基づく戦争行為に「正当性のある戦争」の解釈を制限した「戦争の正当性挙証の事前的必要性に関する決議(文書記号A/RES/4/1)」に矛盾している可能性について批判を行った。KPOを代表して発言していたトータエ社会主義人民共和国代表は、KPOは「FUN加盟国・非加盟国を問わず、ある国が別の国から宣戦布告を受けた際に、被宣戦国から軍事的援助を求められた場合その国に軍事的援助を与えるために参戦する権利」を有しており、それは憲章第28条にも第31条にも定められていない権利であるが、それを放棄する意思はないと安保理で繰り返し表明した。
 セレン・ヘリオトロープ国連大使はこれについて「第三国間の戦争に安保理の授権なしで介入する権利を留保しようとしている」としてA/RES/4/1に矛盾するという指摘を繰り返し、最終的に加烈別利芹5ヶ国によって起草された「カルーガ条約の先制的自衛権問題に関する決議」案を議場に提出した。当該決議案はA/RES/4/1に基づかない権利を留保していることを「国際の平和及び安全に対する明白な脅威」であることを認定し、カルーガ条約の関連部分の改正を要求するものであった。しかしながら、本決議案は安全保障理事会の同盟理事国であるセニオリス連邦の代表から「KPO加盟国は信頼できないという認識から介入を是認するもの」として反対することを表明した。決議案は現時点でも投票の途上にあるが、同国が反対を表明したことから決議案は採択される可能性はなくなり、否決されるものとみなされている。
 このような事態を招いたことについて、超越連盟の内部からはそれぞれの立場に沿って外交委員会の一連の行動を批判する声が上がり続けていた。連盟内の最大勢力である円環派はセニオリス連邦との外交的摩擦を招いたこと、近年角錐派から分離することで成立した五胞派はKPOとの関係を損なったこと、議会民主派は安保理という「一部加盟国の代表性を欠いた」場所で法的な議論を展開しようとしたことを主として批判している。連盟内の意思統一は必ずしも成立していないようではあるが、いずれにせよ連盟はムメイ外交委員長とセレン国連大使にその責任があるとの見解で一致し、共和国議会に弾劾を提起する運びとなったとみられている。
 この動きを受けた政界の他政治勢力の反応は複雑である。ムメイ、セレン両者の出身母体である台形派はこの動きに協力に反発しているが、左派勢力の中でも他の派閥の動きは微妙な様子だ。正方派は派閥全体としては「外交委員長や国連大使が外交の一環として行った行為が刑法犯罪に問われるわけがない」という原則論から弾劾に反対することを決定したが、一部の共和国議会議員は「外交委員会は結果として失敗し、フリューゲルの平和と安全を守っていたA/RES/4/1を”紙屑”に貶めてしまった」と憤りを隠さず、正方派が共和国議会で弾劾決議案の採決に反対票を投じることに抵抗している様子である。また、超越連盟と袂を分かっていた形のサンディカリスト連合は本件に同調する動きを示している。超越連盟との協力に常に含みを持たせていた非超越派はもちろん、超越連盟を「偽超越」と呼んではばからなかった超越派も今回に限っては弾劾に賛成することを検討している様子である。
 弾劾決議案が可決された場合、中央処理委員会が弾劾の是非を審査することとなる。カーン・ジャスパー中央処理委員長は1178年に就任したばかりであり、正方派の内部での政治的立ち位置がはっきりしていない。中央処理委員会は弾劾を認めない公算が高いと考えられているものの、これほどまでに激しい反発を国内で引き起こした外交委員会が「無傷」で済むかどうかは予断を許さないところである。

共和国議会、外交委員長・国連大使の弾劾訴追を発議

1181年5月27日付〈中央通信〉

 26日、超越連盟が提出したムメイ・トリディマイト外交委員長並びにセレン・ヘリオトロープ国連大使に対する弾劾訴追決議が共和国議会で採決され、賛成333、反対225(退席42)で可決された。サンディカリスト連合は採決直前の議員総会で賛成方針を決定した一方、正方派の一部は投票前に議場から退席し、派閥全体が反対票を投じたのは両名の出身母体である台形派のみとなった。
 弾劾訴追が発議されたことを受け、共和国議会は7月中に公聴会を開催し、9月末までに中央処理委員会が両名の弾劾の是非を判断することとなっている。

外交委員長、公聴会で自己の行為の犯罪性を否定

1181年7月24日付〈中央通信〉(15:00発表)

 本日正午から、ムメイ・トリディマイト外交委員長に対する弾劾訴追に関する公聴会が開催された。超越連盟は議会における代表者であるティーナ・ユーファストーン共和国議会議員が自ら「検察官役」の代表を務め、ムメイ外交委員長が主導した安保理における一連の共和国の外交姿勢への非難を展開した。ティーナ議員が初めに読み上げた訴状曰く、安全保障理事会における議題提起は「KPO諸国との外交関係を損ねることを意図したもの」であり、「国際社会を不安定にすることにより国内における対立勢力を力で抑え込むことを正当化しようとするもの」であり、「国家の利益ではなく、自らの、あるいは自らの所属する政治集団の利益を図ったもの」であるとし、したがって「国家に対する反逆行為である」と超越連盟側の立場が表明された。これに対し、ムメイ外交委員長は「最終的にセニオリス代表による拒否権行使によって決議案こそ否決されたものの、決議案は5理事国によって提出され、7理事国が賛成した」ことを最初に述べた上で、「結果的に決議案の採択にこそ失敗したが、国際社会の幅広い数の国が我が国の提起した”先制的自衛権”とA/RES/4/1の間に不整合が存在しているという事実を支持した」ことは、「国際社会を不安定にすること」とは真逆の意図であることを明確にし、「共和国が国際法を遵守することを通じて世界の平和と安定を守っていくというコミットメント」によって自国の利益を達成しようとしたものであると反論した。
 超越連盟はティーナ議員とムメイ外交委員長の冒頭のやり取りの後は各議員による個別の審問へと移行したが、それぞれの議員からムメイ外交委員長に対して示された「反国家的行為」はまちまちであり、超越連盟が本件について「ムメイ外交委員長の糾弾」以外の点では統一されていないことを示唆するものであった。円環派からは「共和国の近年の外交的基盤であった、いわゆる『加烈瀬協調』を完全に損ない、あまつさえ拒否権の行使という形で両者間の対立関係を際立たせてしまったことは、今後安保理を円滑に機能させていくことを全く不可能にしてしまいかねない」と、主として対セニオリス関係を中心に批判が行われたのに対し、五胞派からは「新興勢力であるKPOに対して露骨に圧力をかけるような姿勢を取ったことは、今後のフリューゲル全体の活力を損ない、世界全体の衰退を加速させかねない」という形の、司法民主派からは「安全保障理事会が陣営に関して偏った構成になっていることが安保理という組織自体の正当性を揺るがしており、その点を無視して安保理を議場に選んだことが本質的な問題」という形の糾弾が展開された。
 ムメイ外交委員長はこれらすべての批判に対して個別に反論を行ったものの、台形派議員以外からは擁護する声がほとんど上がらず、孤独な戦いを強いられることとなった。曰く「セニオリスとの関係性が大きく損なわれたとは考えていない」、「仮定に仮定を重ねた下でしか成立しえない『世界全体の衰退』によって国際法秩序が損なわれるとは考えられない」、「安保理は主要陣営の同意を得ることによって法的拘束力のある判断が可能なフリューゲル唯一の組織であり、その点を無視することはそれこそ問題」であるとしたが、客観的にセニオリスの拒否権、国際法秩序がかえって損なわれたと考えられる結果の前ではこれらの反論が議場において説得力を発揮したとは言えない空気であった。ムメイ外交委員長が最後に「私が失敗したと諸君がどれほど訴えたとしても、私が”失敗”したことが犯罪を構成するという諸君の主張は全く正当化できないものであり、このような政治的動機によって弾劾という法的手続きを濫用した諸君の行為は忘れられないであろう」と言い切った時点で公聴会は予定されていた2時間半を終えた。
 今後、審議は中央処理委員会の非公開の議場に移行することとされているが、中央処理委員会は「情勢を踏まえて最適な判断をする」と説明しており、公開を求める圧力に対して中央処理委員会が応じるかどうかが注目される。

【速報】共和国議会議事堂付近で銃声

1181年7月24日付〈中央通信〉(15:12発表)

 複数の情報源から、ジャスパー市内の共和国議会議事堂付近で銃声が聞こえたという通報があった。新たな情報が入り次第続報をお伝えする。

ムメイ外交委員長狙撃さる。意識不明の重体

1181年7月24日付〈中央通信〉(16:29発表)

 内務公安委員会はムメイ・トリディマイト外交委員長が公聴会後に共和国議会議事堂付近で狙撃されたと発表した。内務公安委員会の説明によると、ムメイ外交委員長は共和国議会議事堂に近いホテルに宿泊しており、公聴会の日程が決まった時点から議事堂からホテルまでの移動を徒歩によることを強く要求しており、内務公安委員会は徒歩による移動ルートを確保するためにこの区画を本日早朝から通行禁止に設定していた。15時9分ごろ、ムメイ外交委員長は議事堂から出て数十メートルのところで遠距離からの狙撃を受けた。銃弾は胸部に命中したと見られており、直ちにジャスパー市内の病院に救急搬送されたが、意識不明の重体に陥っているという。
 議事堂の守衛は銃声の直前に数百メートル離れたジャスパー市内の高層ビルの屋上付近からフラッシュのようなものが焚かれるのを見たと説明しており、これを受けて内務公安委員会は直ちに当該ビルの捜索に入った。捜索の結果について内務公安委員会は「捜査上の機密」を理由に説明を行っていない。

(追加の情報が入り次第本記事を更新します)

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