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普蘭ライン危機

普蘭ライン危機(普来危機、普蘭合衆国による対ライン共和国宣戦布告に関わる一連の事件)とは、843年8月中旬に普蘭合衆国がライン共和国に対して突如宣戦布告したことをきっかけとする、一連の外交危機である。本記事では、国際会議場(掲示板)や各国報道機関により発表された内容を根拠とできる内容のみを記載し、そのような根拠が存在しない事項(各国の裏交渉、PLレベルの論争など)については確定的な事実としては記載しないものとしている。また、本記事の執筆を行なったのはカルセドニー社会主義連邦共和国のPLであり、同PLの視点で得られる情報をベースに書かれている以上、内容の完全な中立性は保証できないことに留意されたい。

背景

普蘭・ライン関係

宣戦布告が行われる843年8月中旬以前の時点において、普蘭合衆国とライン共和国の間になんらかの外交的対立が存在することは国際社会には知られていなかった。一方で、普蘭合衆国はこれ以降の政府発表でライン共和国に対して「同国のストリーダ王国との定期貿易に対する介入」を行なっていたことを認めており、後述する普蘭合衆国の進めていたストリーダ王国への経済攻撃に関する水面下の交渉で、両国間での意見の不一致が存在したことが示唆されている。普蘭合衆国はこの交渉に関する経緯が直接宣戦布告の原因となったことを否定しているが、両国間の根本的な対立点はここにあったことはほぼ疑いない。

ミルズ皇国における内戦

新興国ミルズ皇国において、ラルバ=アイゼンシュタイン首相が皇政廃止を唱える「共和派」であったことから、皇による専制君主制を支持する「王党派」との間に内戦が勃発していた。内戦については共和派(現政府)の勝利で収束したと発表されていたが、収束発表の直後に同国内に反乱軍が出現、ミルズ政府の要請によるライン共和国軍の爆撃で撃滅されていたことから、内戦が完全に終結したか否かについては疑問符がつけられていた。

事態の進行

ラインに対する普蘭の宣戦布告

843年8月中旬(現実時間2019/7/2 5:12)、普蘭合衆国は以下の文面を旧国際会議場(掲示板)に掲載し、ライン共和国に宣戦布告を行った。

ライン共和国はミルズ内戦において「反乱軍討伐」と称し共和派を支援。 ミサイル攻撃を行い、王党派を支援する我が国の軍事顧問団殺傷した。 現在まで水面下で本件に関する協議を呼び掛けてきたが、拒否する回答を受けるに至り普蘭合衆国は報復軍事行動を宣言する。 宣戦布告期は30371期、開戦期は30379期である。 また、本戦に関する仲裁及び我が国への非難を行う国家は同様に宣戦布告対象となることを心すべし。 普蘭合衆国首相 グエン・ドゥ・フォン

この宣戦布告において、普蘭合衆国の宣戦布告理由の第一として挙げられているのはミルズ内戦において共和派を支援するライン共和国が王党派を支援する普蘭合衆国の軍事顧問団をミサイル攻撃で殺傷したことである点は注目に値する。また、文章の末尾において「仲裁や非難を行った国家に対して宣戦布告する」と宣言しており、国際社会による介入を恫喝的な手法により拒絶している。

〈赤光〉紙とベルクマリ・タイムズの主張

この時期、フリューゲルでは大規模な通信障害(XOOPSの機能停止)が発生しており、各国の報道はslackの告知投票用チャンネルに避難して行われていた。その中で、カルセドニー社会主義連邦共和国の二大政党の一翼であり、この時点では下野していた労働党の機関紙〈赤光〉紙が、「普蘭のライン宣戦の正当性挙証は困難」と題して普蘭合衆国のライン共和国に対する宣戦布告を非難する社説を発表した。内容は、「王党派支援は普蘭=ミルズ平和友好条約第2条に違反する」「ラインミサイル攻撃により被害を受けたのは『反乱軍』のみであり、これにより軍事顧問団が殺傷されたのであれば普蘭は反乱軍の破壊行為を支援していたことになる」「国際社会に情報公開を行わず宣戦に踏み切った」の3点に要約される。それぞれに関する〈赤光〉紙の主張を簡単に説明する。

  • 普蘭合衆国はミルズ皇国(共和派政府)と平和友好条約を締結しており、その中で相互の内政不干渉を約束している。しかし、共和派の政府が「反政府武装組織」として認識している王党派に対し普蘭が支援を行っていたとする(宣戦布告文中の)普蘭合衆国声明は明確にこの内政不干渉義務に違反している。
  • ライン共和国はミルズ皇国内で出現した「反乱軍」に対してSPPミサイルによる攻撃を実施しているが、国際記録(過去ログ)によればこの攻撃は完全な精密攻撃により「反乱軍」のみに対する攻撃に成功していた。この攻撃が「普蘭軍事顧問団」に被害を及ぼしたのであれば、「軍事顧問団は反乱軍を支援していた」ことが明確であり、このような暴徒の活動は正当化できない。
  • 普蘭合衆国は「正当性なき戦争行為の否定」を根本理念に掲げるフリューゲル平和原則条約起草委員会に参加しているが(根本理念への賛同は起草委員会の参加条件である)、それにもかかわらず今回の宣戦布告を「正当化」しようとするような姿勢が見られない。

これを受けて、普蘭合衆国の民間紙である「ベルクマリ・タイムズ」が「カルセドニー〈赤光〉紙社説は論評に値せず」との題で〈赤光〉社説に対して「同紙社説は全て仮定と仮説に彩られた妄言」であると主張した。当該記事は〈赤光〉紙が指摘した3点の懸念については一切反論せず、それに続けて自ら「妄言」と断った上で陰謀論を展開している。

この記事と並べて、ベルクマリ・タイムズは普蘭合衆国政府により公開された、ライン共和国より30371期(843年8月中旬)に送付されたとされる、普蘭合衆国に対する侮辱的な内容を含む極秘通信を公表した(筆者注:画像を保存していなかったので、どなたかアップロードしてください)。同紙は普蘭政府の宣戦布告について、「本内容が報道官から通達されるまではあまりに稚拙で強引な宣戦布告であったと言わざるおえない(原文ママ)」と認めつつも、「これ以上の『正当性』は存在しない」と表明して同国の宣戦布告を擁護した。なお、ライン共和国政府は後の報道でこのような通信が存在したことを明確に否定しており、当該通信が実在したか否かは不明である。なお、普蘭合衆国の宣戦布告が30371期に行われたことを考慮すると、当該通信は事実なら現実時間7月2日午前4時から午前5時12分までの1時間12分の間に送信されたことになる。

〈赤光〉紙はベルクマリ・タイムズの社説がほとんどはじめの〈赤光〉紙社説への反論として機能していないことを確認した上で、「軍事顧問団」について「ミルズ内戦は一旦終結したと判断し、両国間に平和友好条約を締結した」とする一方で「軍事顧問団は内戦終結を模索している」と相互矛盾する主張を行う普蘭政府のライン共和国との公開通信を引用しつつ、同国外交の支離滅裂さを指摘した。普蘭合衆国やベルクマリ・タイムズはこの〈赤光〉紙による批判を黙殺した。

普蘭の対カルセドニー、ギルガルド断交と普来停戦

〈赤光〉紙が強い姿勢で普蘭を批判する一方で、連合党政権下のカルセドニー社会主義連邦共和国政府は「友好国である普蘭合衆国との関係を維持するため」明確な方針を打ち出していなかった。暫定措置として、宣戦直後にカルセドニー政府は「普蘭の対ライン宣戦の正当性」が現時点で確認されていないと判断し、同国への石油の定期輸出を中断することを同国へ通告した。石油は用途がほぼ砲弾の製造に限られる純軍需物資であることがその理由であり、一方でライン共和国への定期送金は「同国は資金を軍事転用する手段(軍事衛星)を持たない」ことを理由に継続を決定した。

普蘭合衆国はライン共和国への定期送金を停止するようにカルセドニーに要求したが、上述の判断を根拠に拒否する旨カルセドニー政府は返答した。カルセドニーが普蘭合衆国に対して負っている条約上の義務は加普平和友好条約及びWTCO条約に定められたものだが、それぞれの規定に関して明確に求められている中立義務は「砲弾・鋼鉄・石油・燃料の交戦相手国への提供禁止」のみであり、資金はこれらの義務に含まれないと同政府は説明している。

これに対して普蘭合衆国はカルセドニーに対して「有事の際の貿易中断」を理由に断交を、「中立義務の定義の揺れ」を理由に加普平和友好条約の不更新を通告した。また、同様の貿易停止措置を取ったギルガルド政府に対しても同様の対応を取っている。823年に締結された加普平和友好条約は5年おきに自動更新されていたが、843年中に不更新が通告されたことにより848年10月8日に失効した。

これと時期を前後して、普蘭合衆国とライン共和国は無条件での停戦、講和に合意した。詳細な交渉経緯は不明であるが、国際社会からの支持を得られなかった普蘭側が対ライン攻撃を諦め、停戦を打診したものと推測されている。

ストリーダ通信社報道と11ヶ国共同声明

普来戦争は開戦前に回避されたが、普蘭合衆国の一連の外交行動に対して危機感を抱いた国々が「多国間協議」を非公式に開催し、普蘭合衆国に対してなんらかのアクションが取られる可能性が高い情勢となった。その中の844年4月3日、ストリーダ王国の国営報道機関であるストリーダ通信社が、普蘭のタヂカラオ国に対する極秘通信を「タヂカラオ国による提供を受けた」として公表した。

ストリーダ通信社の公表した画像

普蘭の明らかな「軍事力を背景にした恫喝」が国際社会に公表されたことで、国際社会において同国を擁護する声はほとんど聞かれなくなった。その中で、845年2月初旬に11ヶ国による共同声明が発表された。当該声明はストリーダ王国への経済攻撃を企図したタヂカラオ、ライン、カタルシア王国への貿易中止要求及びそれに関連したタヂカラオ国への軍事的恫喝、〈赤光〉紙の指摘したことと同様の「軍事顧問団」の有する問題、「極秘通信」が宣戦布告の正当性を証明しないこと、宣戦布告文書において「仲裁を拒否」する普蘭政府の態度が「自ら正当性を放棄したに等しい」ことの4点を主張、「正当性挙証責任を履行すること」を普蘭合衆国に対して要求した。

この声明の連名国は11ヶ国であったが、これ以外にミルズ皇国が同声明を支持することをその後表明している。

烈路声明及び普蘭の鎖国

11ヶ国声明から時を経ずして、845年7月5日に普蘭合衆国の軍事同盟国であるレゴリス帝国及びロムレー湖畔共和国は普蘭合衆国及び11ヶ国声明に参加した「有志諸国」に対して共同声明を発した。この内容は「11ヶ国声明の内容が比較的穏当」と認めた上で、「両陣営の対応次第では世界大戦に至りかねない」との懸念を示しており、「両陣営に対して本対立を戦争に至らしめないことを誓約すること」を要請した上で「戦争が発生した場合は宣戦布告を受けた陣営に立って参戦する(普蘭が有志側に宣戦した場合は烈普、路普条約を無視して普蘭に宣戦する)こと」を宣言した。

この直後、普蘭合衆国は鎖国を発表、両陣営の声明双方に対して返答を行わずに鎖国体制に移行した。これにより、一連の「普蘭合衆国対諸国」という構図での対立は「凍結」され、普蘭ライン危機は(戦争の可能性があるという状況としては)収束した。

影響

FUN総会における議論

850年に発足、851年より開始されたフリューゲル国際連合(FUN)総会第1回通常会期において、ミルズ皇国から「普蘭合衆国の国連加盟に関する問題の議論」が議題として提出された。会期冒頭において、ミルズ皇国は「普蘭合衆国の鎖国体制が終了した後、同国がFUNへの加盟を申請する可能性がある」とした上で、「同国の極秘通信を根拠にした宣戦布告と、それに対する説明責任の不履行がある以上、同国のFUN加盟を現時点で認めるべきではない」とする旨の主張を行った。一方で、普蘭合衆国が出席しないFUN総会で、「断定的な」内容の決議を採択することについては普蘭の同盟国である烈路両国のみならず11ヶ国声明への参加国からも懸念の声が多く、最終的にロムレー湖畔共和国から提出された以下の案(これ以前にヘルトジブリール社会主義共和国が提出した案とほぼ同様で、事実上の両国案と言ってよい)が採択された(A/RES/1/5)。

普蘭合衆国による対ライン共和国宣戦布告に関わる一連の事件に関する決議
フリューゲル国際連合総会は、
・フリューゲル国際連合憲章第1条及び第2条を想起し、
・フリューゲル暦845年2月初旬の11ヶ国による共同声明及び845年7月5日のレゴリス帝国及びロムレー湖畔共和国による共同声明を想起し、
・普蘭合衆国のライン共和国への宣戦布告につき国際平和と合致しない行為であることから遺憾に思い、
・一連の問題に対する普蘭合衆国政府の説明責任が十分に果たされていないとする意見が多数を占めることに注目し、
1.普蘭合衆国に対して以下の行為を強く促す;
(a)ライン共和国への宣戦布告時点における正当性の立証がすべての諸国民が検証可能な状態で行われておらず、そのために未だに正当性の立証を果たしていないという推定が働いているという本総会の見解を受け止め、正当性の立証を当事国が試みる必要があることを認識すること
また、正当性の立証に対して普蘭合衆国が実施できる全ての行為が完了しており、これ以上の行為を実施する意思がない場合はそれを公式に宣言すること
(b)「正当性なき戦争行為の否定」という国際社会における原則を確認し、その正当性立証の最も有力な手段としての説明責任を十分に果たす必要があることを認識すること また、正当性の説明に対して普蘭合衆国が実施できる全ての行為が完了しており、これ以上の行為を実施する意思がない場合はそれを公式に宣言すること
(c)宣戦布告を一方的になしたのは普蘭合衆国であるという事実及び正当性の立証を促す(a)(b)の趣旨を踏まえ、ライン共和国への宣戦布告の正当性の立証責任は専ら普蘭合衆国に帰属する旨認識すること
上記の内容に関して相違がある場合には普蘭合衆国としての公式見解を明確にするか立証責任の放棄を宣言し、今後国際連合の理念に違反することがないよう努めること。
2.普蘭合衆国に対して、その鎖国政策が終了した後最初に開会される総会通常会期において上記の行為を果たすこと及び認識の齟齬等につき対話の機会を与えるために総会にオブザーバーとして参加することを促す。

本決議において、普蘭合衆国にはライン共和国に対する正当性立証の義務があることがあり、それを果たしていないと総会が推定していることが明確化された。一方で、普蘭合衆国に対してこの義務の履行を要求する文言は弱められ、「正当性立証のための可能な全ての行為が既になされている」ことを宣言する余地が普蘭合衆国には残された。このような宣言は、「自国の立証責任の履行不可能を認める」という事実上の敗北宣言にも、「自国の立証責任が完全に果たされている」との宣言にも解釈できるが、総会が「現時点では立証責任を果たしていない」との推定を明示した以上、(この総会の認識が覆らない限り)普蘭合衆国による追加の説明なしで後者の意味として認められる可能性は薄い。

ただし、立証責任以外には普蘭合衆国にはあくまで「今後FUNの理念に違反することがないよう努める」ことが求められているに過ぎず、例えばミルズ皇国の原案において求められていたような「ライン共和国への謝罪」などに関する文言は全て削除されている。