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前動力委員長、反体制派と協力のかどで政界追放

1039年5月25日付〈中央通信〉

 1038年2月に反社会主義勢力と接触していた疑いで拘束されていた前動力委員長とその私設秘書ら合わせて8名について、中央処理委員会司法局は反体制派との協力を認定、また付随して起訴されていたいくつかの微罪について有罪とし、執行猶予付きの禁錮刑と無期限の公職からの追放の判決を下した。一方で、判決は内務公安委員会の主張していた前動力委員長自身の「反社会主義活動」自体の認定には踏み込まなかった。前動力委員長以下8人の被告は反体制派との接触を否定した上で、「具体的な」反社会主義活動が存在しないのに「誰かと接触した」ことを理由に起訴されることは不当だと訴えてきたが、後者に関しては事実上被告側の主張が通った形である。しかしながら、司法局は「反体制派との接触」自体が認定されたことは公職追放には十分な理由であるとして、社会主義評議会による動力委員長の解任を追認した。
 前動力委員長の拘束と解任は中央処理・内務公安の両委員長が主導しており、両委員長を擁し評議会内で影響力の大きな正方派が非主流派派閥の影響力を削ぐことが目的との見方も根強い。前動力委員長は旧南の風系の出自であり、委員会社会主義勢力が旧来自由主義を掲げていた政治勢力の排除を図ったとの観測もあるが、「イデオロギーとは直接的には関係のない権力抗争であり、かつてから委員会社会主義を支持している政治家は安全だと考えることはできない」(住環境委員会幹部)とも指摘されている。

1040年次選挙に向けて下野勢力再編の兆し

 1040年末に予定されている第48回共和国議会選挙を前に、1020年の政変で下野している各勢力に再編の兆しがある。1032年末の臨時選挙では政変直後の混乱や「反社会主義的勢力」に協力的とされる候補の出馬停止などのため、わずか48議席にとどまる惨敗を喫した下野勢力であるが、社会主義評議会政権に対する叛意は潰えていない。
 1020年まで政権を担っていた連合党・民主前進党の支持基盤だった各勢力は、現在主に4派に分かれて活動を続けている。中心となっているのは従前より最大勢力であるサンディカリストのようだ。サンディカリストは1020年政変の間接的なきっかけともなった民主前進党改憲草案を現時点でも支持しており、委員会の自主管理組織に対する統制権限を弱めることを第一に主張している。一方で、旧民主前進党系の民主主義勢力は2派に分裂しており、1032年臨時選挙が「民主的な手続きを担保していない」として「適正な」選挙の実施を唱える議会民主派、行政府と一体化した司法権を有する中央処理委員会を「解体」して司法府を独立させることを要求する司法民主派が主導権を争っている。これらの派閥は社会主義体制自体に対する立場は肯定的ないし中立であるが、これに対して最も急進的な自由主義派は社会主義体制に対する消極的な支持すら完全に打ち切り、「1020年政変によって共和国の社会主義は自らその正統性を破壊した」として社会主義体制の完全な放棄と自由主義体制への移行を唱えている。
 中央処理委員会はこれらいずれの主張も程度の差こそあれ「反社会主義的」との認定を下しており、該当する思想を有する人物の1040年次選挙への出馬を認めないとしている。しかしながら、明示的にこれらの主張への支持を表明していない一方で社会主義評議会に対しては野党的な立場を取る共和国議会議員やその候補は少なからず存在しており、これらの候補は下野勢力の議会における代表者とみなされている。特にサンディカリストは1040年次選挙で議会にこのような候補を多数当選させることで、評議会政権が容易に無視できない政治勢力を確保することを目指している。一方で、その他の3派閥は評議会政権下で行われる選挙について「評議会政権に不利な結果が出るとは思えない」との認識のもと資源投入には消極的との観測が伝えられており、選挙を通じた議会勢力の拡大という目標自体が下野勢力全体に共有されるかは不透明な情勢だ。

【社説】四同盟時代の国際社会とFUN

 同盟理事国派遣組織へのBCATの追加について、総会で「条件」として挙げられていた普蘭合衆国の加盟、ヴェールヌイ社会主義共和国の復帰の双方について両国がその意思があることをFUN事務局に対して通告した。これを受けて安保理におけるBCATの事実上の代表者であるガトーヴィチがヴェールヌイの復帰及びBCATの同盟理事国追加の両議題を安全保障理事会に提出した(普蘭加盟は加盟申請審査委員会に回され、近く加盟が認められるものと見込まれている)。なお、1038年末に閉会したFUN総会第19回通常会期において採択された総会決議は普蘭加盟・ヴェールヌイ復帰の両件が成立した時点で安保理にBCAT同盟理事国の追加を勧告するものである。そのため、それ以前の段階で安保理がBCATの同盟理事国追加について議論を開始することには不自然さがあるものの、BCAT側は同盟理事国の次回任期である1041年の開始までにBCAT同盟理事国の推薦を間に合わせるために若干強引に安保理における議論を早めたい様子だ。
 BCATの同盟理事国追加に対して、普蘭加盟・ヴェールヌイ復帰以外の要件を示した国・陣営は存在せず、おそらく安全保障理事会も両条件が満たされたことを確認した後に同盟理事国追加を決定するものとみられる。それ以降FUN体制は「四同盟」時代に突入することになるが、ケレト・サードオニクス外交委員長以下外交委員会の主流派は「すでにBCATは事実上陣営としての性格を整えており、今回の決定はそれを再確認するものに過ぎない」として、「四同盟時代」は既に始まっているとの見方をしている。そう考えると他の3陣営が有する一種の「特権」である同盟理事国の席を、4番目の同盟に簡単に与えようとしていることはやや意外ではあるが、FUNがその成立後の2世紀にわたって、ー旧世界における国連のような「陣営対立のための戦場」ではなくー「フリューゲルにおける陣営横断的な共通基盤を築くためのフォーラム」としての役割を果たしてきたことも踏まえればむしろ当然とも言えよう。
 FUN自体は未だ完全なものではなく、(ヴェールヌイ復帰に際して加盟国の権利及び特権の停止勧告に関する取極めが必要とされたように)改善を続けるべきものである。見えている範囲においても、共和国が第20回通常会期の議題として提出した総会手続規則の改正、同盟理事国の増加に伴う一般理事国の安保理における影響力低下問題、活動が事実上停止しているフリューゲル中央銀行の改革、進まない国際法基盤の整備、と課題は数多い。BCATがFUNにおいて相応の発言力を得たことが、FUNが改革と発展を続けていくために前向きな影響を与えることを願うものである。

【経済】新人の動力委員長、石油・砲弾の輸出拡大に意欲も、「どこの国にでも売れるものではない」と付言。
【社会】影響力低下に喘ぐ「南の風」、委員会社会主義への「協力」も見返りはなく。

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