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新体制の在り方をめぐる議論が激しさを増す

1037年6月1日付〈中央通信〉

 社会主義評議会政権内で、新体制の今後の在り方をめぐる議論が激しくなっている様子だ。評議会は1040年に予定されている共和国議会選挙までに新体制に向けた方向性を確定させる方針であるが、現行憲法のままで社会主義評議会体制を恒久化する新体制が構築可能だとする体制内の主流派に対し、反社会主義勢力の再度の台頭を許さないために憲法を改正すべきとする改憲派が攻勢を強めているために現時点においても明確な結論は見出されていない。改憲派の内部にも改憲の方向性をめぐって対立があるため一枚岩とも言えず、評議会に加わっている旧南の風系の勢力の影響力も不明瞭なため、状況は混沌としている。
 エルネ・モスアゲート元大統領が拘束された1020年以降、社会主義評議会は大統領を置かず、中央処理委員長を筆頭とする9人の委員長による合議によって政権が運営されている。委員長が退任などで欠けた場合は評議会内の協議によって後任が任命されているが、中央処理・内務公安・軍部の3人の委員長が評議会の事実上の主導権を握っているために、この3委員会がそれ以外の6つの委員会の委員長人事を掌握している構図だ。現行憲法の規定上委員長は委員会内の推薦名簿から大統領によって指名されることとなっているが、評議会は「暫定的な体制であり、緊急時であるからやむを得ない」として評議会による委員長人事を正当化している。しかし、現時点ですでに15年以上を経過している「暫定体制」が、何年までなら許容されるのかについて明示的な判断はなされておらず、恒久的な体制の構築の必要性が指摘されている状況となっている。
 中央処理委員長・内務公安委員長をはじめとする体制内主流派(現行憲法の「完全さ」を支持しているという意味で正方派とも呼ばれる)は改憲は不要との立場をとっている。中央処理委員会司法局は既に現体制が現行憲法に整合的であるとの司法判断を下しており、「社会主義評議会体制が100年続いたとしても、憲法上何ら問題はない」(中央処理委員会幹部)とする。現行憲法上保証された人民の権利に対する侵害を理由にエルネ元大統領らを拘束した評議会の立場として、「現体制を継続するためには憲法改正が必要」と認めること自体がそもそも矛盾しているとの見方もある。これに対して、軍部委員長を中心とする派閥は、803年憲法下のような大統領を置かない政治体制を改憲によって明示し、委員長を社会主義評議会が任命する手続きを正当化することによってはじめて、現行の体制を恒久化することが可能になるとの見方をとっている。この勢力は、大統領を頂点とする現行憲法体制から「頂点」を切り落とした改憲を主張しているという意味で台形派と呼ばれている。
 旧南の風系の動力委員長をはじめとする第三の派閥は、大統領制を廃する改憲は支持しているものの、委員長の任免は各委員会に委ねられるべきだとしており、いずれにせよ中央処理・内務公安・軍部の3委員会が主導することになる社会主義評議会が委員長人事に介入する状態が恒久化することに反対している。「すべての委員会は対等」であることを掲げるこの派閥は(対等性を表す円から中心の大統領を取り除いたという意味で)円環派と呼ばれている。中央処理委員会などの1020年政変の中心となった委員会からは敬遠されているものの、これらの「中枢」である委員会によって「末梢」扱いを受けている委員会内には円環派が少なからず存在しているため、一定の発言力を確保している構図だ。最後に、技術委員長を筆頭としてわずかながら評議会内に勢力を有する少数派閥は、大統領制を廃止すること自体に反対の立場をとっている。国家元首として、あるいは9つの委員会のまとめ役としての大統領が恒久的に不在になれば、各委員会の独立性が過剰に強化され、政治の一体性の維持が難しくなるとしている。大統領を中心としたピラミッド構造を維持(あるいは再建)すべきとするその主張から角錐派と呼ばれるこの派閥は、現在の評議会体制の恒久化は望ましくないとする立場をとっているという意味では非主流派(改革派)であるが、改憲には中立的な立場である。

BCAT同盟理事国決議案、FUN総会で可決見通し

 1035年から投票期間に移行したFUN総会第19回通常会期は現時点までに投票の趨勢が決した状況である。ガトーヴィチ代表が提出した、「普蘭のFUN加盟とヴェールヌイのFUN復帰が成立したならば、その時点で総会がBCATの同盟理事国追加を安全保障理事会に勧告する」とする趣旨の決議案はBCATの加盟国にとどまらない広範な支持を獲得、確実に可決される見通しとなった。ヴェールヌイはセニオリス・クーデターに際する「セニオリス・スラヴ国」に対する経済制裁を定めた安保理決議に対する違反を指摘され、安保理にFUN憲章上の権利の一部を停止される「処分」勧告を受けた際に、安保理の議場で意見を陳述する機会を与えられなかったことを不当としてFUNからの脱退を通告している。同国が復帰することが目指されることがBCATの総意として示された上でガトー提出の決議案にも盛り込まれたことは大きな一歩であり、加盟国間においても広く歓迎されている。
 ヴェールヌイは上述のような経緯から、復帰に際して安保理が加盟国の憲章上の権利を停止する「処分」を勧告するためには対象国に対する聴聞を義務付ける手続きの制定を求めており、総会の投票と並行してガトーヴィチ代表は安全保障理事会においてそのような内容の決議案を提出した。共和国もこの安保理決議案の起草には関わっているとされており、政界もヴェールヌイのFUN復帰について、「FUNの包摂する範囲が拡大することは安全保障上有利」(軍部委員会幹部)として期待を寄せている。

共和国、1041年から同盟理事国復帰へ

 WTCO及びSLCNは1041年以降のFUN同盟理事国として共和国を推薦する旨発表、990年末に同盟理事国を退任して以来50年ぶりに同盟理事国に我が国が復帰することが決定した。外交委員会は「BCATの同盟理事国追加など、安全保障理事会を取り巻く状況は変化しており、リブルには途上にある経済体制回復に注力してもらい、陣営外交は当面我が国が引き受けることが妥当だとの判断に至った」としている。
 一方で、「国際社会の騒動に巻き込まれるべきではない」とする現政権の一貫した方針に対して同盟理事国への復帰は反するのではないかとの懸念も根強く残っている。左派の一部からは「国際社会との外交・経済関係を完全に断ち切り、革命直後の8世紀前半のような鎖国体制に移行すべきだ」との声すらも上がっており、同盟理事国への復帰が「リブル復興までの一時的な措置」ではなく恒久的な状態になるのであれば政権内の火種になりそうだ。

臨時選挙、社会主義評議会支持派が圧勝

1032年12月28日付〈中央通信〉

 27日に投開票が行われた共和国議会臨時選挙は、社会主義評議会を支持する候補が議席の92%に相当する552議席を確保して圧勝した。中央処理・内務公安の両委員会による厳正な審査の下、「反社会主義的でない」と認定を受けた候補のみが出馬を許可された中、ほとんどの候補は社会主義評議会に対する支持を表明し、そうでない候補も反社会主義的勢力との決別を宣言して選挙に臨んだ。
 安定した社会主義評議会体制の確立のために評議会支持派の間での政策論争は控えられたものの、体制支持派の中で議論となった外交政策においては「国際社会に対する外交的関与を最低限にすべき」とする孤立主義勢力が最大の支持を集めた。その一方で、経済関係を含めた対外関係を完全に断ち切ることを訴えた極左はほとんど支持を得られず、有権者の大半は現在の「安定した国際関係」が継続されることを望んでいることが窺えた。
 なお、臨時選挙に当たって成立した特別法に基づき、今回の臨時選挙で当選した議員の任期は1040年末までと定められており、1040年末からは社会主義評議会の発足以前と同様10年ごとに選挙が行われるとされている。

【国際】トラハト=ラシュハ滅亡、FUNに850年から一貫して加盟している国は残り6ヶ国に
【政治】1035年末に新たな一般理事国の追加に向けた交渉が行われたが妥結しなかった、外交委員会幹部談
【経済】御岳山滅亡によって石材供給が激減も、建材需要も低下しているため「直ちに問題はない」PLC委員長

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