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WTCO・SLCN及びSSPact、同盟理事国を交代

986年1月17日付〈中央通信〉

 984年3月下旬、国際交易協力機構(WTCO)及び神聖なる協働的国家聯盟(SLCN)は両組織を代表して派遣されている同盟理事国を991年以降共和国からリブル民主主義人民共和国に交代することを決定した。7月にはサンサルバシオン条約機構(SSPact)も同盟理事国をヘルトジブリール社会主義共和国から新洲府共和国に交代することを公表、991年のフリューゲル国際連合安全保障理事会同盟理事国は利新両国にレゴリス帝国を加えた3ヶ国となることとなった。共和国はSLCN加盟3ヶ国及びロムレー湖畔共和国からの一般理事国としての推薦票を確保し、991年以降は一般理事国の立場で安全保障理事会に残留することになる一方、ヘルトジブリールは理事国から退任する見通しである。
 この同盟理事国の交代は国内のどの政治勢力も予想できておらず、かなり唐突に公表されることになった。テハネ・ヘリオトロープ大統領は記者団に対して「FUNにおける国際協調は特定国間の協調にとどまってはならず、3つの主要陣営(WTCO&SLCN、SSPact、レ帝同盟)全体の協調関係に拡張していかなければならないが、そのためには同盟理事国の交代という形で一種の『分権化』を図ることが必要であると判断した」と同盟理事国の交代について説明した。拒否権を有する同盟理事国の地位を明け渡すことで共和国の国際社会における地位が低下するのではないかという問いに対しては、「1世紀半近いFUNの歴史の中で我が国が拒否権を行使しなければならないような事態は起こらなかったし、万が一これから起こるのであればそれはWTCO&SLCN全体として受け入れがたい事態であろうから、拒否権を有するのが我が国かリブルかいずれであるかについては問題ではない」と答え、新たに同盟理事国となるリブルがWTCO&SLCNの代表者としての役割を果たしうると強調した。
 突然行われた重大な決定にもかかわらず、政界は落ち着いてこの判断を受け止めている。セニオリス・クーデター以降「騒がしく」なった国際社会に引きずられて国内の安定が損なわれつつあるとの批判を強めていた人民党はこの交代を支持することを表明、連合党内の同盟国重視派も「リブル同盟理事国はWTCO&SLCNの国際社会における地位を上げることはあれ下げることはない」と好意的に受け止めている。革新党内では共和国のFUNにおける地位低下は避けがたいとして批判する声も上がっているが、一方で加烈天に実質的な意思決定の責任が集中していたことが別府危機を引き起こしたとする考え方から、今後求められるであろうFUN改革において同盟理事国の「聖域化」が回避できたことは「全ての加盟国にとって有意義なFUN」というコンセプトに対しては有効だとして支持するべきとの指摘もあり、党として同盟理事国の交代に対して批判的にはなっていないようだ。

991年以降の安保理は8理事国に

 985年末を持って締め切られた一般理事国推薦の集計の結果、991年以降の安保理は史上最多の8理事国から構成されることが明らかとなった。近年の加盟国急増をうけたもので、同盟理事国から一般理事国に立場を変える我が国に加えてサンシャ独立国が新たに一般理事国に加わる。WTCOは同盟理事国となるリブル民主主義人民共和国を加えて半数の4理事国を占めるようになり、レ帝同盟系理事国は現在と同じくレゴリス帝国及びロムレー湖畔共和国の両国のままであるが、SSPact系の理事国はヘルトジブリール社会主義共和国及びロシジュア帝聖平和ドミニウムの退任を受け新同盟理事国の新洲府共和国のみとなる。一方で、各一般理事国の推薦国を見る限りでは必ずしもその所属同盟に限らない広範な支持を集める理事国が多いことも明らかであり、理事国について「各同盟の持つ票」というような数え方はあまり適切とは言えないであろう。

国名所属同盟理事国
リブル民主主義人民共和国WTCO・SLCN同盟理事国
カルセドニー社会主義共和国WTCO・SLCN一般理事国
大石動帝国WTCO・SLCN一般理事国
神聖ガトーヴィチ帝国WTCO一般理事国
レゴリス帝国レ帝同盟同盟理事国
ロムレー湖畔共和国レ帝同盟一般理事国
新洲府共和国SSPact同盟理事国
サンシャ独立国無所属一般理事国
991年~1000年次の予想される理事国の顔ぶれ

 安全保障理事会に同盟(同盟理事国の派遣主体として認められている各組織)に一切所属していない国家が理事国として籍を置くことになるのは今回のサンシャ独立国のケースが初めてである。先述の通り推薦は同盟の枠に必ずしもとらわれず入り組んだ構造をしているため、単純に推薦先=支持基盤と考えることはできないが、サンシャの理事国入りについてはまずSSPactがこれを推し、レゴリス・カドレン共和国の推薦票を代行国という立場で握っているロムレーがこれを支持したと観測されている。ロムレー自身については同国内の報道でも当初一般理事国の地位を退くことが確定的との見方がされていたが、「票の移動」を難しくする様々な摩擦(特に、近年外交不活発なトラハト=ラシュハ連合王国の票、990年まで投票権が停止されているため事実上「現職理事国」しか推薦できないヘルトジブリール社会主義共和国の票について)の存在や、交代先となりうる幅広い合意が得られる理事国候補の不存在などを背景に、結局理事国としての実績豊富さを買われてレ帝同盟外の各国の支持を集める形で理事国に残留する見込みとなっている。このような複雑な経緯で推薦を集めた各国に加え、WTCO&SLCN及び王冠連合の支持を得た共和国及び大石動帝国、WTCO外からも独自に支持を得た神聖ガトーヴィチ帝国の3理事国が一般理事国としての地位を得ることになった。
 一方で、明確に自薦を表明するなど一般理事国入りの意思を示していたセリティヌム共和政は最終的にサンシャ及びラ・フローリド共和国の票を集めるにとどまって理事国から「落選」することになった。当初は共和国及びロムレーがセリティヌムを推薦し理事国入りは確実とみられていたが、WTCO&SLCNの同盟理事国交代を受けて共和国が自国推薦に切り替えたこと、ロムレーが推薦先をサンシャに変更したことで票が足りなくなった。共和国の推薦先変更については、セリティヌムが共和国とロムレーの推薦を得た直後にベルクマリ条約(BCAT)に調印したことで加路両国のセリティヌム推薦の前提であった「非同盟的な理事国候補」という条件が壊れてしまったことが原因という噂も流れている。しかしながら、タント・スティショバイト外交委員長は「あくまでWTCO&SLCN内の理事国決定プロセスの結果としてセリティヌムに推薦するための票が失われてしまったに過ぎず、セリティヌムへの我が国の態度は推薦を行った時点から現在まで一貫している」としてこれを否定しており、「推薦先変更について我が国とセリティヌムとの、あるいはBCATとの関係を損ねかねないような解釈がなされていることは遺憾である」と釘を刺している。いずれにせよ、加路両国の支持を得られなかったことでセリティヌムの理事国入りは1001年次以降に持ち越しということになった。

FUN総会第14回通常会期、投票期間へ

 981年に開会したFUN総会第14回通常会期は984年末をもって議論期間を終了して投票期間に移行した。セニオリス共和国の提起した総会特別会期の投票期間短縮及びサンシャ独立国の提案した国際商取引に関する慣習法の正文化・紛争仲裁のための作業部会設置については幅広い支持を集め、現状反対の立場を取る加盟国は存在していない。これに対して新ミルズの提案した2つの議案(天秋両国に対して「FUN憲章及び安保理決議の遵守」を求めるもの、クーデター等の「国家不安定化事態」へのFUNの対応を定めることを常設国際法委員会(PILC)に求めるもの)についてはそれぞれ懸念が示されており、現状「クーデター対応法典化決議案」に対して神聖ガトーヴィチ帝国代表が「PILCにおける新ミルズ代表の努力を期し」て賛成した以外一切賛成は得られていない。
 共和国は「FUN憲章及び安保理決議の遵守」を求める前者の決議案には強い懸念を示さなかった(セニオリス共和国代表の猛反対を考慮して投票は棄権している)が、後者のクーデター対応法典化決議案については新ミルズ代表の想定する法典化の方向性について強い不同意を示した。新ミルズ代表の提出した決議案に同国の構想する法典化の内容は含まれていなかったことを理由に反対票を投じることこそしなかったものの、限りなく「反対に近い棄権」であることを明らかにしたと言える。新ミルズ代表の構想はセニオリス・クーデターに対する安全保障理事会の一連の対応(第32号決議による経済制裁、第34号決議によるSSPact主体の軍事制裁)を踏まえたものであろうが、ある外交委員は「瀬クーデターについては『救国評議会』あるいは『スラヴ国』の正統性否認、安保理による事態の改善要求と段階を踏み、『スラヴ国』側が要求を受け入れなかったことで初めて制裁が発動されたものであり、新ミルズの『まず経済制裁を行い、極めて低いハードルで軍事制裁へ移行できる』という構想は瀬クーデターにおける安保理の対応とは全く異なる」と述べ、安保理の対瀬対応の延長線上にあるものではないとの認識を示した。
 総会の議場でクーデター対応法典化決議案に対して明確な反対を表明した加盟国は存在しないことから、この決議案はおそらく可決されるものと観測されている。そうなれば第14回通常会期の会合が終了する989年以降PILCにおいて新ミルズ代表の構想が実質的に議論されることになり、現在共和国が示している懸念を新ミルズ代表が解消できるかが注目されている。

【政治】民主前進党改憲草案、連合党サンディカリストから明確な支持得られず。改憲成立の可能性はさらに薄く。
【経済】南の風、大規模な石油生産を再開。国内外での需要増加が背景。
【国際】セリティヌム=新ミルズ間の一般理事国推薦に関する対立、延焼は回避された模様。

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