国連中心主義の行方
フリューゲル国際連合が発足してから100年以上が経過し、国連のあり方を真剣に考える時期が来ているのではないだろうか。S/RES/32では、加盟国・非加盟国を全てを対象にセニオリス・スラブ国へ物資輸送の停止を勧告したが、普蘭ヴェニス商事株式会社、民族自治軍管区ハルィチナー、大秋津國天照院幕府、ヘルトジブリール社会主義共和国、ヴェールヌイ社会主義共和国が決議内容に反してセニオリス地域に輸送を行い、安全保障理事会より遺憾の意や加盟国に対しては実効性ある処分が検討されるなど混乱状態に陥っている。
違反の内訳をみてみると、「適用範囲の誤認」「決議内容の未確認」「決議効力期間の誤認」であり何れの事例を見ても率先して決議違反を試みた訳ではないことが伺える。では何故違反が発生したのかというと、決議内容の周知不足あるいは解釈を要する条文および期間適用の不透明さが原因であると指摘することができる。
まず決議内容の周知不足であるが、安全保障理事会の議論過程は加盟国・非加盟国問わず常時公開されているが全ての国家が閲覧しているとは言い切れず、また議論の複雑化により安全保障理事会に参加している代表以外は詳細把握が難しいのが現状である。安全保障理事会で決議されたものはフォーラムの安全保障理事会スレで発布されるものの、むしろ 発布場所こそリアルタイムで確認している国家が少ないのが現状ではないだろうか。
次に解釈を要する条文に関してであるが、 S/RES/32 第3パラグラフを見るとフリューゲル国際連合加盟国に対してこれを要請し、また、国際社会の各国にこれを勧告するというものが確認できる。これは物資輸送停止を行う対象先に関する記述であるが、安全保障理事会の解釈によると国家間取引以外の民間貿易まで該当するという。どう読んでも文面からは読み取れず、過去のヴェニスグループに対して株式の投資が行われた際は、各国の民間企業が国家の意思を経ずに投資した事例もあることから国家取引と民間貿易は区別するべきであり、国際慣例として民間貿易も含まれるとする主張は全ての国が同意できる条件ではなく、民間貿易も対象にするのであれば言及する必要があったのではと疑問を呈さずにはいられない。
もっとも徹底した管理社会や計画経済を実施していない自由主義国家で民間貿易を完全に制御することは事実上不可能であることは指摘しておきたい。最後に期間適用の不透明さについてであるが、実際に決議するまでの議論に参加していたヘルトジブリール社会主義共和国が違反した事実に基づいても、安全保障理事国の参加代表でさえも決議内容をいまひとつ把握していないのが実情である。特に期間適用は厳格に行われるときもあれば事後適用になる場合もあり時々に応じて解釈が異なるのではないだろうか。
上述に挙げた状況が積み重なった結果、図らずも決議に違反してしまう環境が創出されているのではないかと考える。仮に安全保障理事会をフリューゲル国際社会における秩序と権威の象徴と見なすのであれば 5か国が違反した決議などというものは事実上形骸化されていると断言してもよいであろう。
また、決議の議論過程や決議違反した場合に安全保障理事会が行う対応についても確認しておきたい。特定の対象国・組織に対して勧告が発生するとき、当該対象国・組織が発言の機会を求めるのであればオブザーバー招致の採決を経て安全保障理事会において発言する機会が与えられると考えられる。筆者はここに重大な問題があると指摘したい。何故ならば無条件に発言の機会が与えられないのである。安全保障理事会の状況を詳細に把握していなければ発言の機会を要求する必要性に気づけず、また採決を要することから安全保障理事会の構成国で当該国・組織にオブザーバー参加されると都合が悪い国が含まれている場合は否決される可能性があるのである。
前者においては、ヘルトジブリール社会主義共和国およびヴェールヌイ社会主義共和国のセニオリス地域への物資輸送違反議論過程において実例として発生している。安全保障理事会からはヘルトジブリール社会主義共和国代表に対して説明が要求され回答を行った。これに対して神聖ガトーヴィチ帝国代表及びカルセドニー社会主義共和国代表により追及が行われ ヘルトジブリール社会主義共和国代表より再回答が行われることで議論は着地を見た。一方でヴェールヌイ社会主義共和国は安全保障理事会の構成国から招致を求める声がなく、 自らがオブザーバー招致を要求しなければいけない状況であることに気づけなかったばかりに一方的に決議が採択されてしまう事態に直面した。
後者においては、セニオリス・スラヴ国がオブザーバーとして発言の機会を求めたが採決によって否決されたため実現することができなかった。これら実例を見るに安全保障理事会は対象国・組織の意見や主張を自由に制御した上で強権的な拘束性を持つ決議を発布できると言わざるえない。この様な状況で決議されている現状は非加盟国のみならず加盟国でも抵抗があるだろう。
総括すると現状の安全保障理事会により発布される決議は、「満足に周知されず」「国際慣例の大義名分をもとに安全保障理事会が自由に条文が解釈でき」「効力期間も時々に応じてさじ加減が違い」「対象側は意見表明すら満足にできない」ものなのである。そして違反、抵触すると更なる制裁・要求を突き付けられるのである。弊害はこれまでに述べた通りである。
既にルクスマグナ共和合衆国皇国を口火として安全保障理事国の構成国以外からは不満の声も漏れ聞こえており、また推薦国指定制度も更新しなければ従前に推薦した国が継続されることから新しく一般理事国が参加することもハードルが高くなってしまっている。
筆者はこの様な安全保障理事会による寡占体制に異議があるため、普蘭合衆国は反国連主義を掲げていると考える。最後になるが批判ばかりではなく改善として以下の様な案を提案して締めくくりたい。決議は遅滞する可能性はあるが、それでも一方的に強権で影響力の大きい決議が発布される現状よりは国際社会の安寧に繋がるはずである。
1.特定の対象国・組織に対して勧告が発生する決議に関しては必ず総会に諮り広く周知すると同時に多数決をもって決定すること。
2.特定の対象国・組織に対して勧告が発生する決議に関しては安全保障理事会より事前に対象へ通告し、その対象がオブザーバーとして参加を求めるのであれば無条件にこれを認めること。
3.オブザーバー参加は理事国と対等の立場とし、自由に議論する権利を有するものと規定して議論を終了させる際には双方の合意を必要とすること。
文責:普蘭戦略研究所 リヒャルト・フォン・グスマン
オーヴァリア大公領、
フリューゲル国際連合に加盟申請へ
オーヴァリア大公領がフリューゲル国際連合に加盟申請を行い、安全保障理事会で議論が展開されている。普蘭合衆国は反国連主義を貫いてはいるが他国に関しては干渉せず、むしろ王冠連合発展のためには自然の流れであると好意的に受け止めている。 しかし一部から外交窓口がオーヴァリア大公領に集約されている王冠連合は、フリューゲル国際連合でも高度な意思連携が予想されており団結して行動すると考えられている。
これにより仮に王冠連合の構成国3ヵ国がそれぞれ加盟したとき、一般理事国推薦において相互に推薦しあうことで3票を持つ状態になる。加えて王冠連合に対して恣意的な肩入れをする国家が出現すると4票となるため、王冠連合の構成国すべてが一般理事国として安全保障理事会に参画することが可能である。王冠連合全体で1票なのかそれとも3票なのか、今後どの様に国際社会のパワーバランスが変化するのか注視が必要だ。
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