976年3月21日付
【政治】救国評議会議長、ブランコ・レコ海軍中佐に 攻撃にて評議会壊滅し
<北方セニオリス新聞>
975年11月、救国評議会構成者のブランコ・レコ海軍中佐は、スラヴ国トップにあたる救国評議会議長の職について「972年憲法の規定に基づき継承した」と発表した。レコ氏によれば、975年5月の天国による評議会本部に対する攻撃において評議会構成者は軒並み死亡ないし重傷による職務執行不可能の状態となり、継承順位第18位である自身が継承する状況であったという。
発表が遅れた要因として「国家がさらなる混迷に陥ることを恐れた」と釈明した。施政方針として「同盟国との戦争状態は異常であり、一刻も早い和平を実現しなければならない」として、安全保障理事会決議及び条約機構勧告の履行についても言及した。
12月にはクーデター以降に救国評議会により公表された「反資本主義活動防止法」、「経済正常化法」、「青年組織健全化法」、「国家結束法」等に代表される人権抑圧法の”無効”を宣言した。イェリッチ大統領を始めとした共和国政府関係者らについても”無罪”が宣言され、「我々の手で不当な苦しみを受けた国民がいる事実は、それらを守るべき立場である我々にとって考えられぬ失態であった」と謝罪した。
イェリッチ大統領は、これらの宣言を受けて「ようやく、共和国があるべき姿に戻りつつある」と述べた。安保理決議・条約機構勧告の履行に言及した点については「国際社会は正統たる政権が我々のみであることを認めているのであり、履行となれば取れる手段は当然一つのみであろう」と指摘。後日には議会議員らと共に超党派の「セニオリス共和国臨時政府」を発足し、和平と経済復興の二点を早期に実現させると宣言した。
宣戦布告から1年が経とうという中、新たな救国評議会体制のもと和平の道は切り開かれるのか。レコ氏の手腕が注目されている。
【社会】新党ブーム 抑圧からの解放で政界流動的に
<新セニオリス通信>
救国評議会が起こしたクーデターは、政界に思わぬ作用を生み出したようだ。975年12月の「国家結束法」廃止を受け、内務省には一度解党を迫られた政党のみならず、多種多様な政党の届け出が相次いで出された。
話題となった政党をいくつか紹介しよう。『差別主義を許さない党』は綱領において「民族多様なセニオリス地域にスラヴ主義・正教主義などは馴染まないのであり、断固としてこれを破壊せねばならない」とし、代表はハルクステン県知事選挙への立候補を表明している。この一方で『宗教差別を許さない党』は「我々は神の導きの元成立しているのであって、正しき事を信ずる我々が差別的取り扱いを受けることはあってはならない」とし、前述の『差別主義を許さない党』への”聖戦”を宣言している。内務省は「政治信条は自由であり、また結社の自由も認められるが、治安を乱す行為は許されない」と釘を差している。このような政治的な小競り合い以外にも、『煽り屋から国民を守る党』は「公道を利用する運転者は全て交通モラルを守る義務を有しているのであり、煽り行為は断じて許されない」と社会運動を中心に据えた一番手として話題を呼んだ。
これらはあくまで話題性に特化し影響力は限られる政党と言えるが、一方で国政も無風では終わらないようだ。
セニオリス共産党、社会民主党左派に所属する政治家らは「人民戦線の発展的解消」を謳い、『セニオリス社会党(Šenioridska Socijalistička partija / ŠSP)』の形成を発表した。議会での影響力をかさ増しし、イェリッチ大統領体制を全面的に支える目的と見られる。一方でこの動きに共産党の一部は与せず、『セニオリス共産党』を独自に届け出た。同党関係者らは「最大綱領主義者(Maksimist)」を自称しており、共産党の事実上の分裂として受け止められている。
ロシジュアにおける「セニオリス超越的協同共和国」の出現にインスパイアされたものと思われる「超越同盟(Transcendentalna zajednica / TZ)」は、超越研究の学生団体や市民団体などを糾合し誕生した。救国評議会下において超越研究は政治的なものと見なされていなかった影響で、超越同盟は当初のの予想を遥かに上回る勢いで党勢を拡大しており、党幹部らは国政進出に意欲を覗かせている。議会における「超越派(Transcendentalist)」議員の誕生は急速に現実味を帯びているようだ。
そして救国評議会下で労働組合の活動は制限を受け続けていたが、反抗の中で「労働組合が国家の中心的権力であるべき」とする「サンディカリスト(Sindikalist)」の動きが生まれつつあった。国家結束法の廃止を受けて、この動きを糾合する「サンディカリスト連盟(Sindikalistička federacija / SF)」が誕生している。主要労働組合はノーコメントの立場を取っているが、サンディカリスト連盟は「資本主義、社会主義の二項対立に第三の道を提唱する」と国政挑戦の姿勢を明確にしており、旧来の「国家主義」からの鞍替え運動も見られるなど無視できない勢力となりそうである。
967年選挙から時が経ち、「救国評議会」の崩壊も秒読みと囁かれる中で、政界は来る選挙に向けにわかに活気づいている。イェリッチ大統領は超党派の「挙国一致政権」の発足を表明したが、この関係が永続的でないことは明白だ。次期選挙後の政界の行方に目が話せない。
【政治】救国評議会、共和国政府の正統性を是認 軍国体制終了へ
<イグナイト・タイムズ>
「救国評議会」のブランコ・レコ海軍中佐は976年3月、ミラ・イェリッチ大統領が形成したセニオリス共和国臨時政府が「セニオリスを代表する正統な権力」であることを認め、同月中に権力移譲を完了させると表明した。既に中央省庁では救国評議会の空席状態を受けて共和国政府側の長官と連携する動きが出ており、復帰はスムーズに進むものと見られる。
この表明により、971年4月以来5年近くに渡って続いた軍国体制は崩壊することとなった。イェリッチ大統領は「972年の自称憲法は間もなく消滅するだろう」と語っており、大統領・議会・裁判所の分立構造がようやく戻ることとなる。
約5年振りに国政に復帰したイェリッチ大統領は国家の課題として「まずは早期和平の実現と、救国評議会によって破壊された行政機構の回復だ」とし、「民主的な正しき選挙の実施によってようやく『臨時政府』の役割は終わる」と述べた。
共和国憲法上では次期選挙は979年5月に予定されることとなるが、「救国評議会の問題はもはや国際問題と化しており、適切な時期を待ちつつもかつ可能な限り早期な実施が望まれており、我々は実施時期に拘らない」として前後する可能性を示唆した。
軍国体制は終焉し、共和国は正常な形に戻りつつある。しかし救国評議会が残した傷跡は決して浅くない。「挙国一致政権」の正念場はここからである。
【政治】共和国の傷を癒せるか? 「挙国一致政権」を読み解く
<新セニオリス通信>
975年12月頃にイェリッチ大統領自ら形成した「セニオリス共和国臨時政府」は、976年3月に救国評議会が消滅したことで国政の場に復帰した。臨時政府は大統領・大統領補佐団・第5回議会から構成される大規模な集団だが、救国評議会が本部として流用していた大統領府・議会議事堂は再建されておらず、大統領府は荒地の上仮設施設を設けて代替され、第5回議会はユーダリル県議会を間借りし運用されてきている。そのような中で形成された「挙国一致政権」は、第5回議会と大統領の連携を強化が主眼とされたものであり、憲法上の規定に則り第5回議会の承認を受けた上で発足された。新たな大統領補佐団の人員は以下の通り。
役職 | 名前 | 所属 | |
---|---|---|---|
副大統領 | オリーヴィア・ヴラトコヴィチ | 自由民主党(共和派) | |
外務長官 | アナ・クラリツ | セニオリス社会党(社民) | 留任 |
防衛長官 | イヴァナ・マティアヴィッチ | 自由民主党(立憲派) | |
法務長官 | フラニョ・ガレシッチ | 進歩自由党 | |
財務長官 | イヴィッツァ・トゥジマン | 社会民主党 | |
内務長官 | ズヴォニミル・クラニチャール | セニオリス社会党(共産) | 留任 |
国土開発長官 | ミラ・グレグリッチ | 進歩自由党 | |
教育科学長官 | ペトラ・ミロシュ | 自由民主党(自由派) | |
経済産業長官 | イヴァナ・グルバッチ | 社会民主党 | |
資源・エネルギー長官 | ペトラ・ウーシッチ | セニオリス社会党(社民) | 留任 |
運輸衛生長官 | エレオノール・ペルコビッチ | セニオリス社会党(共産) | 留任 |
農務環境長官 | ゴラン・ミロシュ | 進歩自由党 | |
労働長官 | ミルコ・ヴライサヴリェヴィッチ | セニオリス社会党(社民) | 留任 |
厚生長官 | クリスタ・カティッチ | セニオリス社会党(共産) | 留任 |
行政改革長官 | ダリオ・マテシャ | セニオリス社会党(社民) | 留任 |
人民戦線の大勝を背景に自らの政治信条を前面に押し出した人選が特徴であった971年4月以前のイェリッチ政権の様相から一変し、クーデターの原因とも指摘された『分断』の修復を意識した形となっている。
新たな副大統領には自由民主党の共和派からオリーヴィア・ヴラトコヴィチ氏が任命された。「イェリッチ大統領とはむしろ真逆と言っても良い」と評される氏の任命は、自由民主党もまた救国評議会下において迫害を受けた経緯を示すものであり、国家的課題を前に左右の括りを乗り越えることを強調している。
その他の長官人事についても、分断の修復を目的としたものが目につく。特に経済政策関連については多くが中道左派の社会民主党や進歩自由党への交代が行われており、穏健的手法により経済再建を進めることが明確となった。軍を管轄する防衛長官は自由民主党より任命され、イヴァナ・マティアヴィッチ防衛長官は「シビリアン・コントロールを取り戻し、憲政の最後の擁護者たる軍隊を再建させる」と息巻いた。
人事を終えた大統領は「クーデターへの関与者を共和国法に則って適切に処罰する」と表明した。クーデターにより破壊されかかった共和国の価値観は、今急速に蘇りつつある。
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