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【ブルースター紙特集】エレーナ・ザラフィアンツ首相/単独インタビュー


ヴェールヌイ労働党ザラフィアンツ政権は、968年で発足から25年を迎えた。
再建後初の人民議会選を目前に控えた942年、発生したデモ事案の責任をとる形で辞任したジダーノフ氏に変わり、労働党書記長に選出されたのが、当時、党の書記/軽工業部長のザラフィアンツ氏だった。


人物紹介:エレーナ・ザラフィアンツ
第6代閣僚評議会議長/ヴェールヌイ労働党書記長
南行政区ブイストルイ市出身。
ユーリ・ノルシュテイン総合大学卒業後、工商計画省に入省した典型的なエリート官僚。
地方生産統制課長、通商計画課長等を歴任し退官。
退官後はヴェールヌイ鉄道で副企業長を務めた後、労働党中央委員会の軽工業部長として招致され、中央委員会書記にまで昇進。
人民議会選前の混乱を理由に引責辞任した前任に変わり、942年11月からヴェールヌイ労働党書記長に抜擢された。
議会選で労働党は過半数を割るも政権党を維持、943年1月から閣僚評議会議長を務める。

SSpactに復帰する一方で、ガトーヴィチやカルセドニーとの交易拡大、石動との国交正常化など、何れのブロックにも与しない姿勢が見られる。「八方美人」「コウモリ外交」と揶揄する声もあるが、真意は不明。
しかし、こうした精力的な外交活動も相まって、再建復興は加速度的に進展し、歴史的な経済構成転換でも大きな成果を収めつつある。
政権発足以来、支持率は緩やかに上昇を続けている。そうした人気と、過去総括にはじまる一部党幹部の追放を経て、党内での権力基盤も盤石になったと言われる。

私生活では二児の母。夫は人民企業に勤める労働者であり、表に出ることはないが、政治的な相談にも乗るという。
可愛いもの好き。国際会議などでは超国アーニャ前代表、瓦国ポポーヴァ総理などを愛でる姿が目撃されている。
ヴェールヌイ人には珍しく酒に弱い。喫煙者だが日に2~3本ほどと量は少なく、また人に吸うところ見せることは滅多に無いらしい。


聞き手:ブルースター紙政治部/解説委員 ガラ・ガシヤノフ

ガシヤノフ
議長同志、本日は貴重なお時間をいただき感謝します。
共和国メディアがこのように最高為政者に単独インタビューを行わせていただくのは今回がはじめての試みです。
937年に全党連立ではじまった初期の復興政権のあとを継ぎ、再開された人民議会の手続きを経て発足したザラフィアンツ政権ですが、フリューゲル歴で誕生から25年を超えました。
スヴィトラーナ政権(579年~599年)を超えて歴代最長となりましたが、今の思いはいかがでしょうか。

ザラフィアンツ
国土の再造成が80%以上の水準に達したのが940年のことです。
前復興政権は最低限度の食住環境の整備と国土再建、いわば下地作りが主任務でしたので「外交や経済の立て直しは次の民主政権で」というのが早い段階から合意されていました。
それらを進めていく上での現実的なスパンを考えれば、現時点において特段に長期であるとは考えていません。
やるべきことを正しく成すために必要な期間であったと思います。いずれにせよ共和国人民の支持と協力があってのことであり、とても感謝しています。

補足:再開に伴い、中の人がフリューゲル歴上の経過年数を厳密に捉えることをやめるという方針をとったこともあり、RP上でこの点を滅亡前と比較することはできない

ガシヤノフ
議長同志は共和国史上二人目の女性元首であり、この点も就任時には注目されました。ご苦労もあったと思いますが。

ザラフィアンツ
性別は為政者としての資質に影響を与えるものではありません。男女差を問題にすることは社会主義憲法の精神とも相容れないものでしょう。
ただ、いまこの時代において、偶然にも各国の指導者には女性が多いですよね。そのことで、外交活動を進める上で多少良い影響はあったかもしれませんね。

ガシヤノフ
たしかに、近年フリューゲルにおける女性の活躍は目覚ましいものがありますね。
首相としての職務と、子育ての両立は大変なのではないかと想像します。この点はご主人の協力もあってというところでしょうか。

ザラフィアンツ
長男はもう中等生なので、ある程度ひとりでなんでもしますし、夫もよくサポートしてくれています。
国家と人民に奉仕する立場ですから、私事についてはなるべく質問を避けていただきたいところです。(笑みを浮かべて)

ガシヤノフ
わかりました。それでは政権のこれまでを振り返ってお伺いします。まずは国内の問題です。
960年代になって正式に表明された経済転換ですが、その進捗について議長同志のご認識を教えて下さい。

ザラフィアンツ
とても上手くいっています。
非公開情報もありますので細かな数値を申し上げることは避けますが、共和国経済は過去最高の状態にあるといって差し支えないでしょう。
今現在がそうであるというだけでなく、理論最大数値をあらかじめ算出した上で実行しています。
共和国経済は緩やかに成長を続けながら超長期的に安定したものになるでしょう。
完全自給経済時代の知見が存分に活きた結果です。

ガシヤノフ
議会選時、労働党は議長同志について「経済畑に強い」をアピールしていました。実際、最大の争点となったのも経済再建、その方針でありました。
労働党が辛くも政権党を維持できた背景には、自給経済体制に対する評価が未だ高いことを意味しています。
議長同志ご自身も、議長就任後の所信表明演説において「自主独立の完全自給経済の再建」を正式に声明されており、党としても同様の認識であったはずですが、これを転換するに至った経緯を教えて下さい。

ザラフィアンツ
完全自給経済という定義からは外れることになりましたが、共和国が志向すべき経済構成の本質は何ら変わっておりません。
それは世界の経済動向に動揺しない安定・安全性の高い経済ということであり、その目的は国家の自主独立性を担保することです。
それが守られる範疇において、最大の利益効率を求め、もって国家を発展せしめて、人民生活を向上させていくことが私達の責務です。
かつての完全自給経済が、安全保障上の要請から推し進められたことと同じで、現在においても同様の考えで基準を満たしながら、利益を最大化する為に、諸要素を吟味検討した上で決断したものです。

ガシヤノフ
工業規模が急速に減じられたことで、これらを職場としていた労働者たちは職を失うことになりました。ここ数年の公開指数上の失業率は6%~5%に及んでいます。
一時は自給経済を復元しようと工業規模拡大を進めていたにも関わらず、急な転換を実行したことにより発生した負荷ではないでしょうか。この問題についてのお考えを聞かせてください。

ザラフィアンツ
外交関係の再構築について一定の目処がたてばこそ、どの程度の経済安定性を確保できるのか試算できます。
再建当初の時点において、実績ある自給経済復元を図ることは自然であり、さもなくば鉱物資源の輸出拡大によってしか歳入を確保できない状態に陥るだけです。
また、転換にあたっては可能な限り段階的な施設撤去を試みました。急な転換という指摘にはあたらないと考えています。

経済構成の転換は職の転換を意味します。多くの工業従事者が、商農業に就かなくてはなりません。この点において、人民のみなさまには苦労をおかけしています。
長年親しんだ職場を離れなければならない大変さは理解しているつもりです。国家の発展とより豊かな未来のために、何卒ご理解いただきたいと思います。
公開指数上の失業率も緩やかにではありますが減じられています。全ては時間の問題です。引き続き全力を上げて効果的な転換訓練と再配置に取り組んでいきます。

ガシヤノフ
ではその外交関係についてお伺いします。政権発足後、すぐさま天超路の3カ国を連続訪問して、各国首脳と会談を実施されました。
特に路国との会談内容は国内的議論を呼び起こし、議会での過去総括にも繋がっていきました。
国内だけでなく、特定の関係国に対してのメッセージ性も強かったのではないかと思いますが、その狙いはどこにあったでしょうか。

ザラフィアンツ
3カ国ともに等しく重要な会談でした。それぞれと友好協力関係の促進を図っているわけですから、あらゆる分野において影響はあるでしょう。
路国との会談だけを特別に取り扱うのは、現在政府が進めている外交施策全体を矮小化して伝えることになっていると思いますよ。

ガシヤノフ
なるほど。では質問を変えます。事実上の表現規制が撤廃されて10年が経とうとしています。
大スラーヴ主義が公式に否定された一方で、民族意識の開放を同時に行ったとみれますが、その後の状況をどのように捉えておいでですか。

ザラフィアンツ
この記事は海外の方も見られるでしょうから、改めて申し上げます。
過去から現在まで、共和国の政府や党が、大スラーヴ主義を支持したことは、ただの一度もありませんでした。
総括によって否定されたのは、大スラーヴ主義ではなく、その発祥である外国の極右政権に裏で迎合して、共和国が内に抱えていた問題を解決しようとした、その愚かしさなのです。

表現規制を見直したのは、957年の特別委員会報告にある通りで、それが自然な姿であり、尊ぶべき社会意識だからです。
その事を我々が理解し、受け入れるのに400年を要することになりました。
純粋社会主義がそうであるように、時には犠牲を払いながらも、歴史の中で国家と人民は絶え間なく成長していくのです。

ガシヤノフ
過去総括は、元を辿れば滅亡前の750年代、リシツキー代表下の文化自由連盟が言及したことがはじまりです。
そして再建後の943年人民議会選を前に、連盟は引き続き「外交・安全保障上の反省と総括」を争点のひとつにしていました。
別路会談から特別委員会の立ち上げまで、労働党は連盟のお株を奪ったようにも映ります。

ザラフィアンツ
連盟が早い段階から特に関心をもち取り組まれてきたことは事実ですが、少なくとも再建後においては、我が党や農民党も同様の認識を共有していました。
そうでなければ、そも再建時に全党連立で復興政権を成り立たせることなどできなかったでしょう。
当然立場や捉え方に違いはありますが、それも含め、特別委員会で党派の垣根を超えてよく話し合われたのです。
そして建国以前から現在にいたるまで、このベルーサの地の歴史を牽引し、最大の責任を負っているヴェールヌイ労働党が、この問題に自らメスを入れることは当然のことです。
これは別路会談の有無とは関係なく、実行されていたことでしょう。ただ一定の国際的関心のもとで行えたことは、別路会談による良い影響だったと言えます。

ガシヤノフ
外交関係、国際問題についての質問に戻します。共和国再建を振り返り、以前と最も大きな世界の変化は、フリューゲル国際連合の存在ではないでしょうか。
天超路との会談でも等しく議題とされたようですが、政府としての対国連政策、基本方針を改めてお伺いしたいと思います。

ザラフィアンツ
等しく議題としたと仰られましたが、それぞれに内容は違います。
ひとつ例をあげるとすれば、ミルズ地域について意見交換したのは天のみです。状況は違いますが、共和国も過去2度に渡り、他地域の自立や主権回復というものにあたってきた経験がありますので、多少役に立つこともお伝えできたのではないかと思います。

外交は、バイラテラルなものとマルチなものがあります。別天関係のような二国間関係と、国連やオプシサヴェートのような多国間関係は、どちらも等しく重要であり、順位付けはできません。
そして共和国の国益を確保していく上で、チャネルは多いにこしたことはありません。
その意味で、国連は現在のフリューゲルにおいて最も多くの加盟国を有する国際機関ですから、やはり重要であることがおわかりいただけると思います。
先進国、途上国、体制の差異によらず、対等外交を是とする共和国にとって、国連は積極的に参与していかなければならないものでしょう。

ガシヤノフ
議長同志は外国において、国連が「制度や運用規範に問題がある」旨の意見を述べられています。
こうした問題意識を、どのように反映していかれる考えでしょうか。

ザラフィアンツ
国連は大変大きな組織ですから、それに起因した様々な弊害があることも事実です。
幸い、そのような問題意識を有するのは我々だけではありません。改善に努力する加盟国がいる限り、共和国もこれを支持し、必要な援助をしていくつもりです。
第12回定期総会で、セニオリス共和国が推進された憲章改正決議案は、まさしく同国が有している問題意識が結実したものであったと言えるでしょう。

ガシヤノフ
セニオリスの名が出ましたが、同国では先の大統領選・議会選ともに社会主義を標榜する人民戦線が勝利を収め、憲法改正による社会主義国家化が秒読みに入りました。
民主的選挙を経て現在の状況に至ったとはいえ、反革命デモの発生など情勢は不穏とも報じられております。
共和国にとってセニオリスは最も新しい同盟国のひとつであり、関心を持たれるところではないかと思いますが。

ザラフィアンツ
政府としても関心を持ち見守っております。しかし同国の政情が、特段に不安定であるとの認識はありません。
このような場合、自由主義か、社会主義か、という二元論で大衆は理解をしやすいもので、その中で反発や混乱が醸成されてしまうことも世の常です。
公正な手続きによって得られたセリオリス人民の選択であれば、これは国際においても尊重されるべきです。
そして同国がどのような道を歩むにせよ、共和国とは正常で友好的な関係が維持されるだろう事を疑いません。

私は個人的に、ミラ・イェリッチ大統領の人物にとても興味がありますね。まさしく歴史的岐路の中で一国の最高責任者を務められるわけですから。

ガシヤノフ
死相が見えた気が。わかりました。
最友好国であれど経済・安全保障上の依存度が高まりすぎる超天連邦、ガトーヴィチ/ベロガトーヴィチに共和国を加えた所謂「スラヴ三国」、レゴリス/カルセドニー/普蘭等の超大国との関係のあり方等、お伺いしたいことは山ほどありますが、予定の時間がきてしまったようですので、最後の質問にさせていただきます。

直近の外交トピックとして、石動との国交正常化が記憶に新しいですが、同国の外交責任者は、正常化の発表の場において「決して友好国となり得る対手ではない」とあえて明言しました。
現閣僚のこのような姿勢は、未来志向の関係構築に良い影響を与えるとは考え辛いですし、共和国側が一方的に融和を図る、謙るような態度をとることは、人民大衆の反感を招くのではありませんか。

ザラフィアンツ
ブルースターは色々なご懸念を持っているようですね。
メディア自身の批判的思考は、政治の緊張と冷静の助けになるものですから、引き続き頑張っていただきたいと思います。

石動との正常化交渉は、けして一方的なものではありません。時にわかりやすいものもあれば、目に見えない阿吽の呼吸というものもあるのです。
問題とされる発言についても、これまでの歴史や、現在の国際関係、国内外のあらゆる要素を鑑みた時に、それが同国にとっては必要なものだということを理解しなければいけません。またそれほど単純なものではありませんが、文化的な違いもあります。
少なくとも、両国はかつてないレベルで、互いに配慮を重ねている事実がある。
聡明な多くの共和国人民は、そのことをわかっていると思いますよ。そしてそれは石動人民も同じなのではないでしょうか。

ガシヤノフ
我々人民も、共和国の発展と、より良い国際環境構築、国益確保を望んでおります。
議長同志は歴代の国家元首と比べ、内外を問わずにご自身が全面に出て意思表示をされることが格段に多いので、それが再建途上の中、不安の中で働く人民に、安心感や納得感をあたえてきたと思います。

本日はお忙しい中、まことにありがとうございました。

ザラフィアンツ
あら、最後は褒めてくださるんですね。
そうですね、政府と党を代表して責任を果たす中で、常に人民に親しい存在でいることを忘れず、今後とも職務を遂行していきたいと思います。
こちらこそ、ありがとうございました。

(ブルースター紙:970年1月下旬)

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