ありがとうロムレー!種牛提供受ける
ベイクラント島で畜産場が再開され、食用牛については、ロムレー湖畔共和国から提供を受けた種牛を用いられることがわかった。
福祉、教育事業や各種インフラが再建途上の中、我々の生活の楽しみは食事につきる。食糧生産は軌道にのっており不自由ないとはいえ、卵や肉の流通は未だ限られており高価だ。
各国が共和国の再建事業を支援する中、ロムレー湖畔共和国からは累計100万t以上もの食肉を提供を受けており、これがいかに日夜建設に励む人民の活力を支え、勇気付けたかは語るまでもない。
政府が計画を前倒ししてまで畜産場の再開を決めたのも、ロムレー牛が果たした役割を評価してのものだろう。
過去、共和国の牛、鶏、羊は、シベリア共和国から持ち込まれた品種が大半を占め、次いでクシミニャール種、ベルーサ在来種を品種改良したものであった。これらは在来種を除き、国家停止の影響で既に失われており、在来種にしても、長い空白期間の中で良質な血統は望むべくもない状況だ。
そんな中でのロムレー牛の種牛提供は、共和国畜産業にとり、まさに福音である。
ブランド牛は、その国と地域が長年に渡り改良を重ね、維持発達させてきた財産であり、とりわけロムレー牛は世界的評価が高いものであるから、感謝してもしきれぬものだ。
勿論、家畜飼料や気候風土の差もあり、ロムレー牛を元に生産される食用牛は、オリジナルと品質を異にすることになるだろうが、その素性の良さに、期待が寄せられることは無理からぬことだろう。
再建後初の議会選 労働党が第一党死守も過半数割れ
共和国が再建復興、いわば”仕切り直し”を図ってから初の人民議会選が実施された。
議会選を間近に控えた942年9月から11月にかけ、全国で過激デモが発生したことで、延期も危ぶまれていたが、予定通りに実施された。
結果は労働党が第一党を死守したものの過半数を割れ、次いで連盟、農民となった。
国家停止時の責任を指摘される労働党は苦戦を強いられたものの、経済政策を進める上での実績と安定感、ザラフィアンツ氏の書記長就任の報がこれを更に後押しして票を支えた格好だ。
文化自由連盟は政権奪取とはいかなかったものの、野党第一党の地位を得ており、その主張に一定に支持があることを示す形となった。
最大の争点となったのは経済開発の方針である。
停止以前、共和国は自給経済を維持したまま指数上の先進国にまで成長、国際情勢の影響を受けない屈指の安定経済を誇り、それが外交上の強みとしても機能していた。
先進国規模における自給経済は、生産性/人口/乱数要因の振れ幅まで加味して緻密な調整を必要とする労力を要し、その一方で純利益は微々たるものにならざるを得なかった。
共和国が自給経済を構築するに到ったのは、既存社会主義国に対する不信と、某国による強制外交を、建国間もない時期に目の当たりにした事が大きく影響しており、いわば安全保障上の要請であった。
体制維持の手段としてはさておき、純粋社会主義が求める生産のあり方そのものは、自給経済と何ら関係がない。
富の増大を目的とする純粋社会主義に照らせば、利潤を追求した経済体制を敷き、それを社会福祉に集中投下し続けるべきだとの論も根強い。
この場合、必然的に消費大国又は輸出大国であることが求められ、双方とも輸入大国を兼ねる姿にならざるを得ない。利益も元手も、国際市場に大きく依存してこそ大きな利益を掴むことができるのはこの世界の原理原則だ。
結論から言えば、労働、連盟、農民の3党全てが、こうした過剰生産/過剰消費の経済大国を志向することに懐疑的だ。
労働党は「独立性の高い堅実強固な経済こそ共和国不変の方針」という立場を崩さない。再建後、完全自給を明言してはいないが、国父ノルシュテインの「国家建設最終案」が党是である以上、いずれ完全自給を志向することになるのは必然だ。
選挙を前に、工商計画省出身のザラフィアンツ氏が書記長に就任したことも、経済”復元”重視の姿勢を示していたと言えるだろう。
文化自由連盟は、より国際市場の中で利潤獲得を目指す方針。自給率は高めに推移させるべきだが、輸出に耐えるだけの余剰生産力を持つべきという主張だ。「販路が途絶えた場合にも、代替先や転換までに余裕を持たせることができる水準を構築することは、完全自給体制を維持することよりも容易く、収支も上であり、人民生活向上にも役立つ、最も合理的な体制」というのである。抑制された人口の中で、低維持費高生産性のミニ商品輸出国といった趣だが、これからの100年、そうして生産された規模の商品需要がどの程度に及ぶのかは不透明な点も多い。
民主農民党は、食糧/畜産/観光その他といった商工自給率を意識しない自給経済を志向する。現在の国際需要に照らしても、食料輸出は安定的な利益を国にもたらすだろうとしており、また商品生産とその消費に関連しない収益物の限界活用があわさり、元来よりも強固な自給経済体制を実現しようというのである。ただ商品が消費できない人民生活のあり方が、自給経済と主張できるのかといった疑義は国内に根強い。実際、労働や連盟にしても、この政策について「人民生活の豊かさを奪う」として理解を示していない。
サンサルバシオン条約復帰 問われる安保政策
サンサルバシオン条約機構の条約委員会は、942年6月付で、共和国が正加盟国としての地位が回復したことを確認したと明らかにした。
再建復興にあたり、停止以前の国際的地位や権利、条約についても全て失効されたとする立場だったが、機構の政治代表国であるヘルトジブリールが地位回復を提案、共和国がこれを内諾しており、正準加盟国やオブザーバー国から異議なく承諾されたものだという。
新たに発足する労働党ザラフィアンツ政権は、条約機構復帰について議会で改めて承認決議を要求する方針。
共和国の安全保障政策については、過去の精算議論が続く中、未だ不確定事項の一つであるが、条約機構参加による集団安全保障体制への参画が、引き続き維持される見通しとなったことは議論を呼びそうだ。