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第3回大統領・議会選挙実施 他

943年5月29日付

【政治】第3回大統領・議会選挙実施 自由党大敗

<イグナイト・タイムズ>

第2回選挙から12年、第2回議会の中間選挙が行われてから6年が経ち、ダリオ・ヴィドヴィチ大統領代行の元で第3回選挙が行われた。

943年5月に行われたこの選挙は、当初報じられたセニオリス労働組合評議会によるゼネラル・ストライキなどの混乱もなく、平和裏な環境が揃えられた。

選挙戦は事実上の現職として勝利を目指すヴィドヴィチ大統領代行、自由民主党の初戦を飾るアイラ・ベキッチ氏、社会民主党から出馬しセニオリス共産党から推薦をうけるマリオ・バルバリッチ氏、保守党から出馬し「青き八重歯」の推薦を受けヨシップ・ヴラトコヴィチ氏の間で行われた。

セニオリス自由党の分裂後の初となるこの選挙は、往来の左派対中道対右派の三つ巴から四つ巴の構図となり、当初でもヴィドヴィチ大統領代行とベキッチ氏の間でもつれる展開が予想されていた。自由民主党は党内の主義主張の多様性を活かし支持拡大を狙う一方、最大勢力ながらも層に欠くセニオリス自由党は実績を強調し支持固めを狙った。

しかし、中道勢力同士がしのぎを削る間に、当初「人民戦線」などと揶揄された社会民主党左派のバルバリッチ氏が壮絶な追い上げを見せた。彼は「プロシネチキ前政権の継承と発展」を訴え、当初支持流れが懸念された同党右派支持層の引き止めに成功した。さらに、社会民主党が持つ労働組合への独自の影響力を活用した「過激派の穏健化」の訴えにより、労組への危機意識を持った中道派の支持を驚異的な勢いで取り込んだ。

この追い上げにより、大統領には再びの社会民主主義者としてマリオ・バルバリッチ氏が当選。さらに議会では社会民主党が62議席増の84議席、セニオリス共産党が13議席増の15議席となり、左派勢力のみで半数寸前に迫る大躍進を見せた。セニオリス自由党は支持層が吸い上げられた影響を深刻に受け、77議席減の48議席という惨敗に終わった。

ヴィドヴィチ大統領代行は敗戦の弁として「社会民主主義への配慮が足りなかった」と述べた。今回の選挙で社会民主党が得た議席は、第2回議会中間選挙での議席の4倍近くに当たる。また第2回選挙での議席と比較しても倍以上に当たることから、ある自由党幹部は「一旦押し戻したはずの波が倍になって戻ってきた」と評価した。中道派の取り込みというバルバリッチ氏の選挙戦略はまさしく効果てきめんであったと言えよう。

しかし選挙戦が過ぎてもなお、バルバリッチ新大統領の政権運営を巡って中道勢力と左派勢力の駆け引きが続いている。新大統領の選挙陣営に携わった社会民主党、セニオリス共産党は合計99議席に留まり、過半数に僅かに届いていない。これに対し自由党は共産党の除外を条件に議会での協力を申し出ているとされるが、ある社会民主党幹部は「プロシネチキ政権を崩壊させた前科がある」と警戒を崩さない。一部の専門家は、社会民主党が拒否権の覆しの阻止に必要な議席数(67議席)を単独でクリアしていることから「少数与党の弱みを拒否権で補う運営もあり得る」との見方を示しており、党としての議席に変化がなかった自由民主党の関係者は「資本主義の終わりの始まりになるかもしれない」と危機感をつのらせている。

バルバリッチ新大統領は就任会見で「共和国経済を改革し市民生活を立て直すべしとのプロシネチキ政権の意思を受け継ぐ」と改めて”プロシネチキ政権の継承”を強調。そして「競争の敗者に手を差し伸べ、勝者の驕りを断つ在るべき社会を作り上げる」と抱負を語った。第2回選挙後のプロシネチキ政権と異なり、99議席を有する左派勢力は他党の協力を必ずしも必要としない。しかし大統領が拒否権を濫用する事態となれば、議会軽視との誹りは免れない。バルバリッチ政権はまさに共和国の体制の運命を占う期間と言えるだろう。

【政治】”急進的左派政権”へ バルバリッチ政権を読み解く

<新セニオリス通信>

943年5月の第3回選挙において国民がヴィドヴィチ政権に下した審判は厳しかった。当初の世論調査でトップを走っていたヴィドヴィチ候補は、社会民主党の強烈な追い上げにより敗北。彼が敗戦の弁で述べた「社会民主主義への配慮の不足」は937年の第2回議会中間選挙で当時のプロシネチキ大統領を追い落としたことへの後悔すらも滲んでいた。

一方、当選したバルバリッチ新大統領は社会民主党の左派に属し、「強硬な社会主義者」との評が耐えない人物でもあった。彼は「プロシネチキ政権の継承と発展」を掲げるも、右派に属したプロシネチキ氏との政策的距離は無視できないものとの評価が専らであり、反発する声は自由民主党を中心になお根強い。

セニオリス共産党の推薦を受けていた彼であったが、議会において共産党と社会民主党が得た議席は計99議席と僅かに過半数に届かなかった。しかしこれは大統領による拒否権の覆しを封じるためには十分な議席でもあり、”超然内閣”が発足して拒否権濫用による議会の形骸化が起こるのではないかと危惧された。

政界では水面下での交渉が夜通し続き、最終的に共産党、社会民主党、自由党は行政改革で連携するとの政策協定を公表した。この協定では大統領補佐団の人事について「協力する」と盛り込まれ、議会の承認を得ず長官代理ばかりで構成される”超然内閣”はかろうじて回避されることとなった。以下が承認された大統領補佐団の顔ぶれである。

役職名前所属
副大統領ミラ・レコ社会民主党(右派)
外務長官アナ・クラリツ社会民主党(左派)
防衛長官ドナ・メシッチセニオリス自由党留任
法務長官バーバラ・オリーン無所属
財務長官イヴィツァ・ゴトヴィナ無所属
内務長官アンテ・ガレシッチセニオリス自由党横滑り
国土開発長官ブランコ・ゴトヴァツセニオリス共産党
教育科学長官ゴラン・ラニロヴィッチ社会民主党(右派)再任
経済産業長官アンドリア・ヴライサヴリェヴィッチ社会民主党(左派)
資源・エネルギー長官ペトラ・ウーシッチ社会民主党(左派)
運輸衛生長官ペトラ・ペルコビッチセニオリス共産党
農務環境長官ステファン・コヴァチェヴィッチ社会民主党(右派)再任
労働長官イーヴォ・グルバッチ社会民主党(左派)
行政改革長官ドゥブラフカ・マタチッチ無所属留任

最終的にセニオリス共産党、社会民主党、セニオリス自由党の3党で可決された人事であったが、社会民主党左派所属である大統領の思想を色濃く反映した左派色の強い政権となっている。

政策協定を結ぶための自由党への配慮からか、ヴィドヴィチ政権から留任または横滑りとなった長官が3名存在する。
防衛長官のドナ・メシッチ氏はプロシネチキ政権からの続投となる。初の人工衛星打ち上げを実現した実績が買われたと見られ、会見でも「引き続いて防衛力強化と宇宙航空技術の発展に力を注ぐ」と抱負を語った。
内務長官のアンテ・ガレシッチ氏は前政権では教育科学長官を勤めていた。治安行政なども担う内務長官への就任は開放的社会政策を実行するとのアピールが含まれると見られる。
行政改革長官のドゥブラフカ・マタチッチ氏は前政権から同じポストでの活動となるが、第3回選挙の結果を受けて自由党を離党し無所属で活動することを発表した。党派色を薄める狙いがあるものと見られ、これが左派勢力の支持を集め続投が認められるきっかけとなったと言われる。
その他、法務長官のバーバラ・オリーン氏は分裂前のセニオリス自由党にて地方議員を勤めた経験を有し、現在は無所属ながら4人目の自由党系長官という事が出来るだろう。

しかしそれ以外の人事を見れば、極左のセニオリス共産党から2名、社会民主党の左派からも4名とこれまでの政権では考えられないほどの左派色の強い人事であることは疑いようがない。
建国以来から労働長官を勤めていたヴェスナ・リンドヴァル氏の交代は「労働省設置に至っていない」などとしてその手腕を疑問視する声が相次いだためとされている。事実新任のイーヴォ・グルバッチ氏は早速会見で「労働省設置に向け早急に準備をすすめる」と表明し、リンドヴァル前労働長官との違いを明白に示した。
新たに財務長官に就任したイヴィツァ・ゴトヴィナ氏は、共産党系労働組合の連合体である「セニオリス労働組合評議会」の結成に尽力した人物として共産党のみならず社会民主党でも度々持論を展開するなど、左派勢力に無視できない影響力を持つことで知られる。無所属ながらも明白に左派的な財務長官はプロシネチキ政権がその政策実行に大きく苦しむ要因となった”財政規律論”の打破を図ったものと見られる。
専門家はこれらの人事を「当初は左派と言われたプロシネチキ政権が踏み込まなかった次元にも足を踏み入れるという意思表示だ」と分析しており、自由民主党など野党勢力は「急進的左派政権」とこれを称している。

政策協定によって事実上の協力政党となったセニオリス自由党からも若手議員から「社会主義者に加担しただけではないか」などの不満が噴出したが、議会議員団長は「議会政治を守るために可能な限りの努力を行った 防衛、法務、内務の体制にとって重要な箇所は守ることが出来ている」として理解を求めた。
しかし中堅議員からも「その3つを守れても共産主義者の体制入りを許してるんだから加担したのと同じだ」と嘆く声も見られ、自由党は次期選挙への対応の練り直しを迫られそうだ。

6年間を経て2度目の社会民主党政権は、セニオリス共産党との協調を取り急進的な政権として誕生した。しかし資本主義に明確に敵対する極左との連携が危険な行為であることは疑いようがない。バルバリッチ新政権は共和国の資本主義の終わりの始まりとなってしまうのか。政権の一挙手一投足に目が離せない。

【社説比較】資本主義社会における共産主義 連携の是非は如何に

<セニオリス共同国際通信>

ヴィドヴィチ前大統領代行は943年5月の選挙において正式な大統領に就任することを望んだが、中道派支持者の流出により敗北。所属する党も議会で77議席を喪失する大敗を喫することとなった。

新たに誕生したバルバリッチ政権は選挙戦で中道派向けのイメージ戦略を徹底した一方で、セニオリス共産党の推薦を受けるなど極左勢力との連携も行っており、そして政権発足時も議会において社会民主党と共産党が連携することを確認した。

振り返ると、前回の社会民主党政権であるプロシネチキ前大統領は共産党との連携無く選挙戦を制し、その後も議会で共産党との連携話が持ち出されることはなかった。これは前大統領が右派所属であり、共産主義への強い警戒感を有していたためとされるが、今般の連携に至ったことには左派所属である新大統領の意向が強いものと指摘されている。

しかし、共産党とは元来より共和国の現行の資本主義体制の打破を主張しており、体制転換をその党是に置いていることは明白である。新政権の動きは、共和国の資本主義体制が終わることを意味するのだろうか。

労働者ネットワークニュースは新政権の多数派工作について「自由党により前回の社会民主党政権がレームダック化、さらに崩壊させられたとの苦い経験がある」として理解を示した。共産党が資本主義体制にかねてより敵対的である点については「社会民主党は選挙戦において『過激派の穏健化』を掲げていた」と指摘し、その実現のために「当事者を巻き込むことは効果的な手法だ」と擁護。更に過激化の懸念に関しても「セニオリス自由党との政策協定締結によってバランスを取っている」として評価している。

イグナイト・タイムズは「社会民主党の主流は依然右派であり、さらに左派勢力の議席も過半数に届いていない」と指摘。バルバリッチ新大統領が左派所属であることに関しては「自由党による社会民主党政権の打倒運動による一時的な反動」と評価しており、「議会での主流派は依然社会民主党と自由党であり、少なくとも体制転換へのインセンティブがあるようには見えない」と分析している。

一方ヤドラスコ・グループは「共産主義とのダンスは危険な行為だ」と題し、共産党との議会協力を行うバルバリッチ政権について「資本主義に対する重大な破壊行為だ」と一線を踏み越えたとの認識を示した。またバルバリッチ新大統領についても所属する社会民主党が「社会主義体制の実現を志向している」と評価し、今後の展開について「資本主義が死んだ瞬間として歴史に刻まれることだろう」と予想している。

北方セニオリス新聞は共産党との連携に関して「議会多数派は社会民主党と自由党の2党のみで確保できた」と指摘し、「理解不能である」と批判。その上で「あえて共産党と連携するとなれば、それは大統領本人が体制転換を望んでいる場合しか考えられない」とし、バルバリッチ新大統領は「革命活動家であることに疑いの余地はない」として批判している。

新セニオリス新聞は「穏健勢力の強化が必要」と題し、今般のバルバリッチ新大統領の勝利に関して「940年のセニオリス自由党の分裂が招いた」と指摘。その詳細について「セニオリス自由党の内紛は穏健勢力のイメージダウンに繋がった」と説明し、自由民主党及びセニオリス自由党の両党を批判。その上で社会民主主義が支持を集めてる点に関しては「過去の自由党があまりに肥大化し、諸外国では穏健勢力に数えられる筈の社会民主主義が急進勢力扱いされるきっかけを生んでしまった」と指摘し、共和国の体制を維持するため「社会民主党を巻き込んだ政界再編により、中道左派、中道右派の2党による二大政党制を作り出す必要がある」と訴えた。

就任直後から中間選挙実施の声が上がっていたプロシネチキ政権と異なり、議会の拒否権覆しを封じるまでの勢力を確保しているバルバリッチ政権においては中間選挙実施は不透明な色が濃い。しかしバルバリッチ政権が共産主義者を長官に任命したというのは事実であり、そしてこれが共和国の一つの契機となることも疑いはない。これが吉と出るか凶と出るかは、今後の対応に委ねられることとなるだろう。

その他

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