888年7月23日付ミルズ地域統治委員会広報〈ミルズ通信〉
【特集】ミルズ地域統治の今!
866年9月25日に設置されたミルズ地域統治委員会ですが、「どのような仕事をしているか分からない」「ミルズ地域との貿易をどうやって実施すればいいのか」などの疑問がフリューゲルのあちこちから届いています。そこで、今回の特集記事では「ミルズ地域統治委員会がどんな組織で、何をしているのか、貿易に関してはミルズ地域に対してどうアプローチすればいいのか、などを紹介したいと思います。
ミルズ地域統治委員会は、フリューゲル国際連合安全保障理事会第12号決議に基づいて設置されました。安全保障理事会理事国と同じ、現在は6ヶ国の委員がミルズ地域統治委員会に派遣されています。その任務は「ミルズ地域の統治行為」「ミルズ地域の治安維持任務」「ミルズ地域の憲法制定議会選挙の実施を可能とする情勢の構築及び選挙の実施」の3つがこの決議で設定されています。要するに、今は憲法制定議会選挙に向けた準備中であると言うことになります。
ミルズ地域の現在の組織構造は、870年9月下旬の安全保障理事会第13号決議及び871年9月中旬のミルズ地域統治委員会第11号決定でほぼ固まりました。それによれば、現在のミルズ地域統治委員会の下には図1のような組織が形成されています。また、直近の886年9月中旬に採択されたミルズ地域統治委員会第14号決定に基づき、ミルズ地域の法人は基本的にすべてこの組織の中のどこかに所属していることになります。882年5月26日付の本紙で紹介したクリソプレーズ大学経営学部レルネ・デマントイド教授の提唱したような、「ミルズ地域における民間経済活動を統治委員会下の各部局の下部に編入する作業」が進展しているということになります。資本主義者の皆様にもわかりやすい言い方をすれば、ミルズ地域統治委員会はある種の巨大企業に似た組織になった、ということになるでしょう。
さて、図中の各「部局」(平和維持部隊を除く)にグレーとイエローの色分けがあることにお気づきかと思いますが、これはそれぞれの部局について「ミルズ人の雇用を認めているかどうか」を示しています。イエローに塗られている部分については、ミルズ人が雇用されている、ということですね。例えば、農林局はその業務(伐採、植林、森林形成のための陸地造成、等々)をミルズ市民に委託した方が効率が良いと考えられているため、ミルズ人の雇用が認められ、ミルズ市民たちが自らの判断で業務を実施できる、ということになります。一方で、未だ政治経済活動に未熟なミルズ市民に業務を委託することのリスクが高いと判断されている各種業務を担当する部局―例えば検察・裁判機能を包括する司法局―についてはミルズ人の雇用は認められておらず、統治委員会構成国から派遣された職員がその業務を実施している、ということです。
最近、ミルズ地域において大規模な地盤沈下が発生するという事故がありました。これは、農林局のミルズ人職員が陸地の上限面積を適切に認識せずに埋め立てを暴走したために起こった事故です。この件に代表されるように、ミルズ市民への業務委託は未だ高いリスクがあることから、このような組織構造を採用している、ということになりますね。
ところで、貿易局の下にある「自由貿易枠管轄部」がイエローに塗られていることにお気づきかと思います。これは、いわゆる「自由輸出枠」に関する業務はミルズ人に対して委託されていることを示しています。879年7月初旬に採択された統治委員会第13号決定第2項によれば、「自由輸出枠の範囲内の単発貿易申請」は自動的に許可されることになっています。つまり、この「自由輸出枠」の範囲に従った貿易申請は統治委員会構成国が一切関与せずとも、貿易を希望する国とミルズ人職員の間で貿易を実施することができる、ということですね。
自由輸出枠を示した図2をお確認すれば、これは貿易のレートだけではなく、「最低備蓄」も定めていることにお気づきでしょう。ミルズ地域の経済運営を安定的に実施するためにはある程度の物資備蓄が不可欠ですので、これを割り込むような貿易を自動的に許可することはしない、ということになります。一方で、「特殊貿易申請部」に対して申し込みをすれば、この枠にとらわれない形での貿易を実施することもできます。ただし、その場合はミルズ地域統治委員会決定が必要になりますのでご注意ください。新規の定期貿易申請も同様ですね(ちなみに、定期貿易管理部は「現行の定期貿易の実施」のみを管轄しています)。
ミルズ地域統治委員会の組織と業務について、少しずつ理解が深まってきましたでしょうか。これからも、ミルズ地域統治委員会と我々報道局の活動について、ご理解とご協力を頂けましたら幸いであります。
人民のために。
文責:ラハン・トリディマイト(Raqhan Tridymite)報道局長 カルセドニー社会主義共和国籍
【科学】ミルズ地域に高品位銅鉱脈が存在
7月18日、ミルズ地域に高品位の銅鉱脈が存在することが、イヴァン帝大の研究により明らかになった。銅は、その優れた導電性と耐蝕性ゆえに、電気器具の配線や送電ケーブル、領導者の立像等の材料として用いられており、フリューゲル文明を支える重要な金属である。その一方で、開発が進むフリューゲルにおいては、銅鉱の存在地が既に都市化されていることや、現在稼働中の銅鉱山から産出される粗鉱の銅品位が2%附近まで低下しつつあることから、将来的な銅の供給の不安定化が懸念されていた。イヴァングラート帝国大学工学部のチュグーノフ教授は、フリューゲルのフロンティアたるミルズ地域の銅鉱開発に着目、同地域の地中のサンプリング調査を行った。その結果、ミルズ地域の南西部に、銅品位が5%を超える銅鉱脈が存在し、更には微量貴金属の金、銀が比較的多量に含まれていることが明らかになった。チュグーノフ教授は「ミルズ地域資源管理局の奮起によっては、ミルズ地域が銅および貴金属の一大産地となるかもしれない。奇跡の鉱石には、かつてこの一帯を治め、後に凶手に斃れた君主の名を冠したい」と語った。この『アダム鉱』発見の報は、フリューゲル金属学会のナトゥール・マテリアール誌455巻に掲載された。
文責:グリゴリー・アレクセーイェヴィチ・ストーニン(Григорий Алексеевич Стонин)(ガトーヴィチ民主帝国籍、帝国新報科学部)
【社会】地盤沈下 復興の裏で
885年11月初旬(31891期)ミルズ地域で大規模な地盤沈下が発生した。死傷者を出さなかったことは不幸中の幸いであったが、ミルズ地域が独立へ牛の歩みを続ける中で、ミルズ地域統治委員会第9号決定に定められた国土開発計画を逸脱する造成を行い、また掘削妨害団体の活動を放置した事実は重大であった。第14号決定では、民間経済団体を実施するミルズ人により構成される法人について、ミルズ地域統治委員会の下部組織の管理下に置き、また造成等について統治委員会への通知を義務付けたことにより、独立への歩調は蝸牛程度にまで低下した。 ミルズ地域では、ミルズ人事業者が造成した沿岸部地盤の強度不安が拡がり、臨海部の地価が20%以上下落した。ミルズ地域の不動産業者は、復興に伴う地価上昇を期待して、ここぞとばかりに臨海部の土地を買い上げているが、最近ある事態が問題となっている。あるミルズ人男性Mさんは次のように語る。
「ある友人から『ミルズ臨海土地開発』に出資しないかと誘われました。出資金10万Vaを支払い、他の人にミルズ臨海土地開発を紹介すると、出資金の60%が紹介者に入るよというんです。ミルズ経済の活性化、ひいてはミルズ国家の独立にもつながるというので、妻と子供には内緒で出資しました。まだ、1人にしか紹介できていませんが、積極的に勧誘していきたいです。」
しかし、ミルズ地域生活局及び農林局に問い合わせたところ、ともに「ミルズ臨海土地開発なる法人の編入は未確認である」という答えが返ってきた。
このように、ミルズ地域内では、存在しない不動産業者への出資を勧誘する詐欺が拡大している。報道局では、かつてこの土地一帯を治め、後に行方不明となった君主の名を冠して、不動産詐欺『アダム講』への注意喚起を行っている。
文責:ニキータ・ヴラジーミロヴィチ・ムィーシュキン(Никита Владимирович Мышкин)(ガトーヴィチ民主帝国籍、帝国新報社会部)