882年5月26日付ミルズ地域統治委員会広報〈ミルズ通信〉
【社会】ミルズ皇制度の存続に関する意見調査存続否定派が存続肯定派を上回る事態に
882年5月、我々はミルズ市民一万人を対象に「新政府に皇は必要か」という質問による意識調査を行った
その結果「皇は必要ではない」と答えた市民が全体の8割に及び「皇は必要である」と答えた市民は全体の一割に留まる結果となった
否定派の市民は本紙記者の取材に対し「皇(アダム氏)自体には特に問題はなかったが代替わりによって国家危機に陥る可能性が女皇(メイル氏)の暴走という形で実証された以上皇制度は廃止すべきだろう」と答えた
また別の反対派市民は「そもそも旧皇国が事実上滅亡する事態の発端となった政党会の出現は皇政を求める過激派が内戦を起こしたが故であり同じような事態の原因となるであろう皇の存在はいずれこの地に創立されるであろう新政府にとって障害でしかなく廃止したほうが良いのは明白である」と答えているほか
容認派の市民は「主権喪失の主な原因は政党会の暴走に原因があり立憲君主たる皇は無関係だ
そもそもメイルに関しても保守党会が暴走して悪人にされた可能性が捨てきれない以上一概に「皇廃止」を唱えるのは危険である」と答えている
ある否定派の市民は「自治政府の創立の為には皇をさっさと殺してしまったほうが得だ」と答えたほか
また中立派のある市民は「皇という制度は最早ミルズの鎖となっていると言える制度として存続させる場合においても存続のために解決しなければならない問題が多すぎるのは確かであり仮に存続させるとしても期限付きにせざるを得ないだろう」と答えている
文責:リアス・ジェファーソン(Rias Jefferson)ミルズ地域籍 (※無編集)
【ミルズ市民に聞く!】「斬首するしかない」アダム”皇” 決断の時は近い
「アダム偽皇は今現在も手が及ばないことを隠れ蓑にのうのうと生きている。ただちに斬首せねばならない。」
この取材したミルズ市民は強い口調でアダム皇の処刑の必要性を訴えた。
ミルズ地域統治委員会の体制が発足してからというもの、かつての”皇”、そして現在も駐屯軍による軟禁下にあると噂される”女皇”の処遇は度々話題となる。
しかし統治委員会はこれらの旧体制の象徴と言える存在に明確な答えを出そうとしない。この背景にあるものは何か。
ある統治委員会関係者は「統治委員会として処刑するためにはそれなりの根拠が求められます。ある小説のように、単に『旧体制残滓だから』というだけでは首を切れないのです。」と語る。
現体制発足後、かつての”皇”、そして”女皇”の言動は一切表沙汰になることがなくなった。単に体制から陥落したのみならず、潜伏中がごとき生活を送るために露呈することが無いのだという。
「彼らは新体制に対し要求することはもはや無いと見られています。処刑するための根拠用意の手間と放置した時の弊害を天秤にかけたとき、手間のほうがよほど甚大だというのが現状の雰囲気です。」と関係者。
しかし統治委員会のこの”決定”に関し取材したミルズ市民は憤りを隠さない。
「2人の木偶の坊どもはカリスマ性だけはピカイチだ。この統治委員会体制中の現在を逃してしまえば、もう彼らを止める術はない。将来ミルズに再び独立国が出来ても、アレが政界復帰してしまえばその時点で終わりだ。私は、この地域の未来のために斬首を主張しているのだ。」
我々が多くのミルズ市民を相手に取材するにあたり、時折「統治委員会体制に甘んじる」雰囲気を感じることがある。
しかし今回取材した市民は「独立国」「地域の未来」という単語を用いた。独立志向の市民が旧皇国のシンボルを全否定するとの事実はなかなかに重い。
ところで、市民への取材中、我々は興味深い情報を耳にした。
それは「アダム”皇”は森で『超越修行』をしているらしい」というものだ。
超越とはロシジュアにおける体制の根幹を成す概念であるが、ミルズ地域における超越といえば880年頃に発生した「超越の制御失敗」が原因の一端とも噂される大規模地形破壊が連想される。
この大規模地形破壊はカルセドニー社会主義共和国軍駐屯地域付近の森林中より発生したことが確認されている。
森での「超越修行」を行っているとの噂があるアダム”皇”であるが、取材に対しミルズ地域農林局は「そのような人物の立ち入りは確認されていない。」とし、カルセドニー駐屯軍も「周辺で不審人物の目撃は報告されていない。」とコメントした。
現況が不明ながら生きながらえる”皇”と”女皇”。統治委員会の決断の時は、既に差し迫っているのかも知れない。
文責:赤き五芒星 ヤウズ・セレンギル(Yavuz Serengil)トルキー社会主義共和国籍
【寄稿】ミルズ地域における選挙制度の進展可能性について
ミルズ地域がそもそもFUNの統治下に移行した背景は、ミルズ地域の情勢不安定化のため、旧ミルズ皇国における公正な憲法制定議会選挙(「カルセドニー社会主義連邦共和国による、ミルズ皇国政治安定化支援のための包括的援助条約」において同国に義務付けられていたもの)の実施が不可能となったと判断されたことにある。国連統治領ミルズの成立から15年を経て、地域は比較的安定を取り戻しており、選挙を困難とする理由は取り除かれつつあると言ってよい。統治委員会の下に設置された行政システムは(根本的な決定権を統治委員会が握っていることによる迅速さの遅れを除けば)順調に機能しており、この行政システムの運用を部分的に選挙によって選出されたミルズ人の代表者に委譲することも検討して良いのではないだろうか。
ミルズ地域における民主主義の実現の第一歩として、現時点においては統治委員会を頂点とする完全なトップダウン型の任命となっている各管理職について、下級のものから次第に労働者による選出制とすることを提言する。頂点に統治委員会が存在する構図や、治安維持機能について加烈天3カ国による平和維持部隊が専権的に担っているというミルズ地域統治の根幹に関わる部分の変更は未だ避けられるべきであるが、ミルズ人の雇用が完全に許可されている生活局及び農林局の局長、その他の部局においてもミルズ人の参画する部の部長まではミルズ人を含めた所属労働者による選挙が認められるべきであろう。また、ミルズ地域における民間経済活動も統治委員会の各部局の下部に編入する作業を進め、近い将来にはミルズ地域における個々の組織的経済活動主体ー資本主義国家では企業、カルセドニーにおいては自主管理組織と呼ばれるーは全て統治委員会のいずれかの部局に属し、管理職を労働者によって選出する制度が採用される状態を目指すべきである。
もちろん、これで終わりではない。この状態が成立し、安定的な運用が可能となったならば、現在統治委員会の権限で実行されているあらゆる職務ー外交、自由枠を用いない特別貿易、国防ーについてもミルズ人労働者による直接・間接の選挙を経て選出された労働者の代表者たる管理職によって実施されることになる。その時、これらの職長全体を統括する、ミルズ地域という1つの組織的経済活動主体の全労働者を代表する最上位の管理職が必要になるであろう。これはPresidentと呼ばれるべきであり、新生の独立国家であるミルズの行政府の長として、また国家元首としての地位を有することになるであろう。
文責: クリソプレーズ大学経営学部教授 レルネ・デマントイド(Lkerne Demantoid )カルセドニー社会主義共和国籍