871年8月18日付ミルズ地域統治委員会広報〈ミルズ通信〉
ミルズ地域報道局発足にあたって
ミルズ地域統治委員会第8号決定に基づき、ミルズ地域報道局が発足しました。我々、ミルズ地域報道局はこれからこの〈ミルズ通信〉を通じてミルズ地域の現状をお伝えしていくことになります。
ミルズ地域報道局は旧ミルズ皇国の国営報道機関であったミルズ通信の機能、組織構成員のかなりの部分を引き継いでおりますが、上部の組織構造は統治委員会に直結する形になったため、かなり変更されています。例えば、旧ミルズ通信は国内情報を扱う「ミルズ通信」と国際情報を扱う「ミルズ通信報道部」に分離しておりましたが、両組織は統合されました。
報道局は出版部、編集部、取材部の3つの部からなり、取材部がミルズ通信の記事にふさわしいニュースの収集を、編集部がそれらのニュースの取捨選択及びミルズ通信の紙面の作成を、出版部が(営業活動を含む)ミルズ通信の発行にかかる業務全般を行います。統治委員会第8号決定においてミルズ人の雇用が認められているのは記事の収集段階においてのみですので、現在出版部及び編集部は統治委員会構成国から派遣された人員のみで構成されており、ミルズ人(旧ミルズ通信のメンバーがほとんど)が参加しているのは取材部のみであります。
これからも新生〈ミルズ通信〉へのご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
人民のために。
文責:ラハン・トリディマイト(Raqhan Tridymite)報道局長 カルセドニー社会主義連邦共和国籍
平和維持部隊、ミルズ地域全土の掌握を宣言
ミルズ地域平和維持部隊カルセドニー派遣部隊司令官ラリト・トリディマイト中将は、ミルズ地域全土を平和維持部隊が掌握したことを宣言した。866年7月に沿岸部に上陸した後、首都近郊への進駐を優先し、北部地方の掌握は遅れていたが、869年末までには北部の農村地域を含めて、ミルズ地域全土が完全に平和維持部隊により掌握されたとしている。今後、平和維持部隊の任務はミルズ地域の治安維持及び有事の初期防衛に移行するものとみられるが、その見通しについてラリト中将は「増派されることになった烈天軍との分業を考えると、カルセドニー軍はミネルヴァ・ドリュアード両州及び北部地方を、レゴリス軍がアルカンシエル州を、ヘルトジブリール軍がトール州を主任務地域として活動することになるのではないか」と述べた。
文責:タレト・アメシスト(Tayret Amethyst) カルセドニー社会主義連邦共和国籍
烈天派遣部隊駐屯を開始、地域開発に期待の声
870年11月上旬、ミルズ地域統治委員会第10号決定を受けてレゴリス帝国及びヘルトジブリール社会主義共和国よりミルズ地域平和維持派遣部隊がミルズ地域の玄関口であるトール港に到着し、各部隊はそれぞれアルカンシエル州北部及びトール州北東部にて駐屯を開始した。烈加天による治安維持活動は円滑に実施されており、その背景にはクラリス連邦での治安維持活動を共に行った経験が生かされていると推測される。派遣当初は各駐屯地周辺に緊張感が漂い、閑散としていたが現在ではミルズシティでは見慣れない飲食店や商店が建ち並び、派遣国文化の浸透が進んでいる。同時にミルズ地域統治委員会第9号決定を受け、各州では苗木の運搬や重機の移動が始まっており地域を挙げた一大事業に住民の期待が寄せられている。
文責:レベッカ・デ・ケンペナール(Rebekka de Kempenaer) ヘルトジブリール社会主義共和国籍
各国のゼネコンがミルズ地域再開発事業の受注に期待
旧ミルズ皇国の長きに渡る政争の末に主権を取り上げられ国連の保護地域となったミルズ地域。それの大規模な再開発を行うために出されたミルズ地域統治委員会第9号決定は世界中のゼネコンを始めとした建設業者に歓迎を以て受け入れられた。第9号決定によると海となっているミルズ地域北部を全て埋め立てた上大規模な植樹を行いフリューゲル史上最大の大規模森林地帯を設けるとされた他、人口保有建物の制限や南部海上での油田開発等が盛り込まれた。再開発のメインとなる埋め立て事業は近年稀にみる大規模な工事であり、これに対する受注期待からマリコンを中心に各国のゼネコンの株価が一時高騰する騒ぎとなった。
本決定が発表されてから各国のゼネコンは早くも受注獲得に向け動き出しているようで、レゴリスではマリコン最大手であるホッコティーフやレゴリス最大の総合建設業者であるバルシュミーデ・ゲーエムベーハーが早くもレゴリス政府に対してミルズ地域再開発の受注獲得に対する協力を働きかけている模様だ。油田開発ではレゴリス最大の石油メジャーであるレグオイルが手を挙げており、セビーリャ地域に於ける油田開発の実績を引っ提げてミルズ地域での油田開発に参画に向けた取り組みを行うというプレスリリースを発表した。
既にミルズ地域の建設業者による再開発の準備が進められているが、本体工事の発注は未だ行われていない。先進国の再開発が一段落し受注減に悩む各国のゼネコンにとってミルズ地域の再開発は福音とも呼べるものであり、今後熾烈な受注合戦が行われるものと見られている。
文責:アルノルト・シュプリンガー(Arnold Springer) レゴリス帝国籍
女皇の処遇に不満を訴える市民がデモ
871年7月27日、国連統治領ミルズの首都機能を引き続き果たしているミルズシティにおいて、メイル女皇の処遇に関し不満を訴える市民によるデモが行われた。デモ隊はラルバ・アイゼンシュタイン旧ミルズ皇国首相の私邸の前に押しかけ、「女皇の処遇は犯した咎に比べ穏健が過ぎる」とし、「女皇は処刑するか、ラス・アノドに島流しにでもすべき」と要求したものの、ラルバ元首相は「もはや私に決定権はなく、女皇の処遇を含めたあらゆるミルズ地域の統治権は安保理が有している」と返答、これを受けてデモ隊は解散した。
デモの終了後、本紙記者はデモ隊の参加者にインタビューを行ったが、あるデモ参加者は「越権で女皇を火あぶりにすれば解決するのに政府は何をしているんだ」、また別の参加者は「事なかれ主義で動かないことは間違いということを政府は認識すべきだ」と述べており、もはやミルズ地域には「政府」に相当する組織は存在しないという事実をミルズ市民は十分に認識していないことが明らかになった。このような根本的なミルズ市民の認識不足を解消するためにも、統治委員会公認の唯一の報道機関たるミルズ通信に求められる役割は大きいと言えるだろう。
文責:リアス・ジェファーソン(Rias Jefferson) ミルズ地域籍
編集:トコノ・クリソプレーズ(Tojkono Chrysoprase) カルセドニー社会主義連邦共和国籍