870年12月30日付〈中央通信〉
●労働党 ●連合党
870年12月27日に行われた共和国議会選挙の結果は、初めての委員会選挙区・地方選挙区ダブル選挙であったため開票作業に時間を要したが、29日夜には大勢が判明した。委員会選挙区では労働党が改選300議席の8割を超える242議席を獲得し圧勝、議会選挙で3連勝を果たした。国内世論全体が連合党政権を批判する空気の中、キウィク大統領は「議会多数派を連合党が確保すれば安定した政権運営が可能になる」と主張したが、自主管理連合組織代表委員からは「自身の政策の誤りを議会に擦りつけている」といった趣旨の批判をかえって招き、803年改憲後の二大政党制下で最も大きな差がついての決着となった。キウィク大統領は自らの地位は864年の大統領選挙で民意に認められているとして辞任を否定したが、ここまではっきりと労働党支持の民意が示された状態で次の6年間の任期においてできることは限られており、この結果を受けてキウィク政権は事実上死に体化したととらえられている。
労働党は単独で改憲が可能になる3分の2ラインである467議席をわずかに上回る468議席を獲得、党内からは先の改憲からわずか8年で早くも再度の改憲を目指すべきだとの声が上がり始めた。前回の改憲が労連両党の妥協の産物であったこと、党内の派閥対立を背景に連合党に大統領の座をさらわれたことなどから党内では現在の政治体制に対する不満の声が聞こえていたが、今回の予想をはるかに超えた大勝により再度の改憲議論が幕を開けそうだ。
選挙区 | 労働党 | 連合党 |
委員会選挙区(非改選) | 178 | 122 |
委員会選挙区(改選) | 242(+64) | 58(-64) |
委員会選挙区合計 | 420 | 180 |
ウェストカーネリアン州 | 11(+2) | 4(-2) |
エライ州 | 9(-1) | 6(+1) |
アゲート州 | 8(-1) | 7(+1) |
エラキス州 | 4(±0) | 11(±0) |
ガーネット州 | 4(-1) | 11(±0) |
クリソプレーズ特別市 | 6(+1) | 4(-1) |
クリストバライト特別市 | 2(±0) | 8(±0) |
東ジャスパー準州 | 4(+1) | 1(-1) |
地方選挙区合計 | 48(+1) | 52(-1) |
共和国議会合計 | 468(+65) | (-65) |
「南の風」代表、委員会選挙区を批判
チャド・リーヴズ「南の風」代表は選挙結果が明らかになった直後にアルマンディン島モリオン市で記者会見を開き、現在の共和国議会の選挙制度、特に委員会選挙区が民意を的確に反映させていないと主張した。リーヴズ氏は委員会選挙区のシステムを「SNSの人気投票のようなもの」とし、自主管理連合組織の代表委員による互選という形式を「投票者が社会の中で特定の役割を果たしている人物に偏っている」と批判した。連合党右派の事実上トップであるリーヴズ氏のこの発言は、地方選挙区では微差ながら労働党を上回った連合党が委員会選挙区で大敗したという状況を受け、連合党は803年改憲の際に労働党と形成した選挙制度に対して批判的な立場を取らざるを得ないほど追い込まれていることを示していると言えるだろう。
労働党内からは「労働者であることを選挙制度の根幹に据えている委員会選挙区は、ある程度恣意性による区分けが必須となる地方区分の選挙区制度よりも合理的で、共和国の民主主義のためには委員会選挙区は不可欠である。連合党の主張は負け惜しみに過ぎない」と冷淡な声が上がっており、「南の風」を含む連合党勢力(すなわち、764年にカルセドニーの開国を支持した勢力)が議会での発言力を失いつつある現状に対して「社会主義連邦共和国の議会制度は764年開国以来の壮大な社会実験に過ぎず、レンデ・アゲートの築いた連合時代の社会に収斂していくのがカルセドニーの進むべき道である」とする主張すら現れ始めている。