※本記事は貿箱アンソロジーです
概要
民主主義的選挙とは、国家を構成する国民が自らの自由意志において主権を行使する手段の一つである。
一般的に選挙の結果とは必ずしもその政府の望みの結果通りになるわけではなく、選挙を流動的存在にて例える言葉が複数存在することがまさしくそれを証明していると言えよう。
現実における民主主義的選挙について簡易的な考察を行ったところで、新貿易版箱庭諸国を含める箱庭諸国シリーズにおける国家の民主主義的選挙全体についてもまた考察を行っておく。
箱庭諸国とは基本的に一人のPLが一つの国家を創作し、そして他PLとの間の駆け引きなどを通じ”その国家として”振る舞う、プログラムによる要素を大きく越えた幅広いゲームとなっている。
箱庭諸国における国家の体制は現実と同じく絶対君主制や共和制など多種多様なものが考えられるが、それら全てにおいて原則的に国家・国民の操作権はその国家を創作したPL一人に委ねられており、結果的に国家の民主主義的選挙とはPLの表現技法の一つにとどまっている。
言い換えるのであれば、PLが予期しない行動をその国民が取ることはあり得ないのである。
ところで、一部のPLにおいてはこの選挙について、そのPLの予期(操作)以外の要素を取り入れ国家のRPに反映しようとする試みも存在している。
本記事においてはこうした「PL操作以外の要素を取り入れた民主主義的選挙」(以下、PL外参加型選挙)について考察を行いたい。
実例・考察
(861年3月現在)現存し、外部より確認できるPL外参加型選挙を導入している国家としては、 カルセドニー社会主義連邦共和国、 ガトーヴィチ民主帝国が挙げられる。
これら国家が民主主義的選挙において取り入れる要素はそれぞれ他PL、乱数である。
カルセドニー社会主義連邦共和国における選挙は労働党、連合党の二大政党が参加し、10年ごとに改選が行われる。
選挙においてはTwitterの投票機能が用いられ、複数の分野ごとにニ政党の主張を掲載し他PLにその選択を委ね多数派を問う形を取る。
この形における選挙の特徴として、他PLの望むRPが取り入れられる余地が生まれる事により、当該国家の選挙の重要性が必然的に上昇することが挙げられる。他PLは当該国の選挙結果に一喜一憂、あるいは他PLにより選ばれた選択肢によりPLが描く国家の化学変化を観察することが可能になるのであり、非常にエンターテイメント性に富んだ選挙制度となっている。何もしなければ永久の静寂へと陥る危うさを持つ箱庭諸国に於いて、界隈を盛り上げようとする働きはまさしく界隈自体にとっても利益のあることだといえる。
一方で問題点として、第一にPLの負担が非常に大きい点が存在する。(建前上の存在であるにしろ)一定の任期を持つ議会においては選挙時期も一定の時期に固定される事となり、必然的に当該PLを時間的に拘束することとなる。また他PLに選択肢を掲示するという都合上参加する各政党の主張を列挙する必要性もあり、これら文章を考慮する手間も増加する。
第二に、選挙選択肢のさじ加減が難しい点が存在する。民主主義的選挙のRPとしてあらゆる選択肢においては全て対抗の選択肢を用意する必要があり、この選択肢のさじ加減を誤った場合には操作PLの望まない、または国家RPの戦略的に望ましくない結果を持たらす懸念がある。箱庭諸国における民主主義国家において選挙を他PLに委任するということは必然的に操作権の一部を他PLに委ねるということでもある。エンターテイメント性を持ちながらも、これまでの積み重ねを一度に崩壊させることがないような慎重な選択肢作りが求められる。
ガトーヴィチ民主帝国における選挙は極右から極左まで多種多様な6政党が参加し、20年ごとに改選が行われる。
選挙では乱数により選挙結果が定められ、第一党となった政党が乱数の結果を元に連立交渉を行い政権が発足する。
この形の選挙の特徴として、PLの負担を小さくしながらもRPに流動性を持たせることが出来る点が挙げられる。操作PLが恣意的に数値を定める一般的な選挙と同様にPLの負担は数値の設定のみに限られるのに対し、乱数を用いることにより選挙の結果に一定の予想外性を残しており、時に単なる数値更新に終わるために後回しにしてしまうような選挙においても操作PLを奮起させる効果が期待される。
一方で問題点として、極端な結果によりRPに混乱を生む可能性が大きい点が存在する。創作上民主主義的な一面を強調するために選挙に極端な政党を参加させる場合は多いが、乱数による選挙はこうした政党に極端な数値をもたらし結果的にPLが望まない、あるいは戦略上望ましくない結果を生む可能性も大きく有している。
総論
これらPL型参加選挙の実例から、PL外参加型選挙には操作PL、時には他PLまでものやる気を奮起させ、活発なRPへとつなげる効果が期待されることが伺える。
RPしなければ何も起こらず進まない箱庭諸国において、活発なRPとそのためのモチベーションは非常に重要な要素であり、PL外参加型選挙は新貿易版箱庭諸国での長期的なRPの形の一形態を示すものとして特徴づけられよう。
ともすれば凝り固まってしまうPLの思考に外部より柔軟性を持たせる効果も期待できる。
一方でこうした方式は国家の操作権の一部をPLの外へ委ねる形式を取るものであり、望まないRPや戦略上望ましくないRPが生む可能性を常に有していることが共通して問題となっている。
また他PL参加型においては操作PLの負担が大きくなり、乱数決定型においては想定外の可能性が大きくなりすぎるために、多くのPLが普遍的に行いうるものとはなり難い。
またそもそもの国家の操作権、RPの決定権はその国家を創作し操作するPL自身にあるのであり、PLにより理想や事情は大いに異なる。こうした形式のRPが民主的国家の理想的RPであるなどとは決して論ずることが出来ず、理想的なRPとはその国家を操作するPL自身が考え決定するものであることを合わせて記す。
【妄想】トルキーにおけるPL外参加型選挙とは
以上でPL外参加型選挙に関する考察とさせていただくが、ここからはトルキーにおいてPL型参加型選挙を導入した場合の選挙形態について考察したい。
トルキーにおける選挙は任期5年で解散規定のある人民院、任期10年で5年ごとに半数改選の地方院の二種が存在するが、ここでは内閣編成に直接関与する人民院の選挙について考える。
PL外参加型選挙には現在までに他PL参加型、乱数決定型が示されているが、乱数決定型は機械的に決定してしまう割合が大きすぎ、党勢に大きな差異が生まれているトルキーの多党制の特徴を反映し難い。
したがって他PL型参加型をベースに考える。
任期は5年もしくは解散後となっているが、全ての選挙を網羅することはPL負担的に不可能であることから、他PL参加型の選挙を開催する時期はPLが「政権交代が起こりうる政局的に重要な選挙」と位置づけた場合のみに限る。
選挙について、まず各政党ごとに恣意的に”党勢”なるパラメーターを定める。
ここで留意すべきはこの党勢は選挙後の議席数をそのまま表すものではないが、緑の党だけは「政局に相関無くコンスタントに40前後の議席を獲得する」との設定があることより党勢がそのまま議席数を表すものになることである。
例として847年3月実施の第53回人民院選挙の結果を代入する。
労働党:152
社会民主党:128
緑の党:41
共和人民党:22
公正党:5
共産党:50
次に、選挙の前段階において、論点にしたい問いと選択肢を用意し、各選択肢に党勢を増減させる効果を付与する。
例として以下の問と選択肢を挙げる。
【環境政策】
823年8月の開国以降政府は農業の強化を推し進め、現在では農業貿易による利益も増加し、トルキーの国庫はまれに見る豊潤を見ている。
現状の政策は緑の党より支持されるものであるが、他の選択肢もある。
開発が終了されたと思われるトルキーにおいても、再開発の余地はあるのだ。
A:現状政策の維持(緑+1)
B:林業土地の転換(共和+10 公正+5,緑-1)
C:人口拡大・集約農業の強化(共産+15,緑-5)
このような複数の問いを提示し、期間終了後最も多数派となった選択肢をたどり党勢に変化を加える。この時、乱数値で-6~+6、PLが恣意的に決定する-6~+6の値も加える。例として以下のように変化したとする。
労働党:132(選択-15 乱数-3 PL-2)
社会民主党:153(選択+20 乱数+3 PL+2)
緑の党:42(選択+1)←特殊な計算を行うため乱数値及び恣意的値を省く
共和人民党:29(選択+5 乱数-3 PL+5)
公正党:10(選択+2 乱数+3 PL 0)
共産党:42(選択-10 乱数 0 PL+2)
合計値(緑の党除く):366
最後に全体の議席を、先に緑の党の42議席のみ確定させ、その後合計値に対する割合を元に各政党に分配する。人民院の定数は400であるから、緑の党以外の358議席は割合により分配する。小数点以下の議席はひとまず切り捨て、合計値のつじつま合わせをする際に余った分を恣意的にどこかに混ぜる。今回は無所属議席を省いたが、余分議席は無所属に充てる方法も考えられよう。
最終的な議席数は以下の通りである。
労働党:130(余分+1)
社会民主党:149(余分+1)
緑の党:42
共和人民党:29(余分+1)
公正党:9
共産党:41
この選挙の結果、労働党に変わり社会民主党が第一党に躍り出る。政権の編成はPLが恣意的に行い、社会民主党-緑の党-共和人民党-公正党の非左派連立政権による政権交代や、あるいは社会民主党と労働党による大連立政権も考えられる。決めづらい場合はいくらか案を用意し乱数に委ねるのも良いだろう。
なお、考えるだけでやらん模様