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改憲成る、大統領制復活へ

862年12月21日付〈中央通信〉

 862年12月20日、労連両党の発議した改憲案は国民投票で85%の支持を得て成立した。改憲案の骨子は労働党の主張していた大統領制の復活と連合党の要求する議会における「地方選挙区」の創設であり、労連両党の妥協が図られた形となった。

関連記事2面

改憲後の共和国政治制度

 復活した大統領は共和国の国家元首となる。任期は6年とされるが、初当選の大統領には必ず2期目が保証される特殊な制度が採用された。そのため、任期は事実上12年であり、803年改憲以前やカルセドニー島共和国時代の10年を超え、旧共和国の最初の憲法下で定められた20年に次ぐ最長のものとなる。627年に制定された、20年任期を定める最初の憲法は639年に改正され、この憲法下で初代大統領となったリヨン・ジャスパーは631年から640年までを務めるに過ぎなかった(640年に再選)ため、実質的に10年より長い任期が共和国の大統領に適用されたことは未だかつてなく、実現すれば史上最長となる。一方で、大統領の再選制限は3期18年までと定められた。最初の「保証再選」もこの期数に含めるので、大統領が再選(あるいは、1度退いた後の再当選)できるのは1度のみであり、その場合でも最初の当選時に(事実上)与えられる任期と比べると半分となる。最初の大統領選挙は864年末に実施され、新憲法下の初代大統領(カルセドニー社会主義連邦共和国の下の大統領制であるので、レクハ・アメトリンを初代、ペレネ・モスアゲートを2代として数え、第3代共和国大統領となる)は870年まで1期目、876年まで2期目を務めることになる。
 このきわめて特殊な任期制度は労連両党の折衝の産物であるとされる。労働党は任期の長い強力な大統領制を求め、議会重視の連合党と対立した。当初、労働党は任期10年で2選まで可能な大統領制(803年改憲以前の制度に近い)を求め、連合党は任期5年で3選まで可能な大統領制(カルセドニー連合の大統領制に近い)を提案した。これは、1人の大統領が連続して最大で務められる年数を20年とすべきか15年とすべきかという議論に集約され、中間である18年で合意に達した。しかし、1度の任期が6年というのはあまりに短いとして労働党の納得するところとならず、最終的にこのような形に落ち着いた。
 大統領に認められた権限は広範であり、労働党の要求がほぼ通った形である。但し、各委員会の委員長については、当初は完全に大統領が任命することとされていたが、労働党<国際主義派>の強い反発があったために当該委員会の局長クラス以上の者のみが候補となり、これらの候補の中から大統領が指名する者とされた。外交委員会は局長クラス以上に労働党<孤立主義派>の人物が存在しないため労働党員から指名される限り<国際主義派>から委員長が指名されることになることはほぼ疑いない。
 一方の議会制度については、連合党が大統領制の容認の条件として大規模な地方選挙区の成立を要求した。自主管理連合組織の代表委員を通じた間接選挙制度を採用している委員会選挙区と比べ、地区ごとの住民の直接投票による地方選挙区は連合党の支持基盤として機能する可能性が高く、これの大きさは労連両党の改憲協議で特に時間が割かれた。結論としては、現在の議会600議席に加え、100議席の地方選挙区を設けることで労連両党は合意、100議席は5州に各15議席、クリソプレーズ・クリストバライトの両特別市に10議席、東ジャスパー準州に5議席が割り振られる形となった。この地方選挙区は任期が10年とされ、10年ごとの共和国議会選挙ごとに全ての議席が改選される(委員会議席は任期が20年で、10年ごとに半数の議席が改選されている)。地方選挙区の最初の選挙は大統領選挙と同じく864年に実施されるが、この議員の任期は例外的に6年に短縮され、870年以降は共和国議会選挙と同時に改選されることとなる。

FUN加盟国拡大

 862年1月中旬、フリューゲル国際連合安全保障理事会はロシジュア、サンシャ、ベロガトーヴィチ、メロシラ4ヶ国の加盟申請を承認した。安保理理事国である共和国もこれに対しなんら留保を付すことなく賛成したが、連合党の一部からはこれに対する批判の声が上がっている。すなわち、これらの国々はすべて建国間もない君主国(ロシジュアには存命の君主は存在しないようではあるが)であり、民主主義の実施のための十分な制度が形成されているとは言えない国も少なくない。このような国々のFUNへの加盟に対し、共和国が明確に賛成の意を示したことは「民主主義の拡大という文明国の義務に反する」(ある連合党左派議員)とするものである。ローネ・スティショバイト外交委員長は「FUNの加盟国の拡大は、共和国の支持する国際の正義に関する体制が国際社会に対し広く受け入れられていることの表れであり、国家の内政事項に対する介入を訴えているに等しい一部議員の主張は愚かしい」と切り捨てており、国内世論も(前回選挙での連合党の外交委員会での勢力後退を反映し)この見解が広く支持されているが、連合党のチシヤ・モスアゲート外交委員会安全保障局長は「ライン加盟申請の際には4ヶ国の捉え方によっては内政干渉に等しい要求を(加盟手続きの一時凍結の形で)事実上追認しているにもかかわらず、この問題においては内政不干渉を理由に国内情勢を無視するのはダブルスタンダードだ」などと批判しており、労連両党の論戦が続いている。
 労働党側の本音としては、内政問題云々というより安保理理事国、特に三大国の意見の一致を優先したというところであろうが、これは連合党の急進派などから「レゴリスの顔色を優先する外交姿勢が『国際の正義』であるとはちゃんちゃらおかしい」という批判を受けることにつながっている。

大統領選に向け党内候補調整始まる

 国民による直接投票選挙としては700年のカルセドニー島共和国第9回大統領選挙以来164年ぶりとなる大統領選挙が864年に実施されることになったことを受け、労連両党は早くも党候補の選定を進めている。自主管理連合組織代表委員の間での両党の勢力図は803年改憲以降の半世紀でほぼはっきりしているが、一般市民の支持がどのような構造になっているかは(長年そのような形での支持率が無視されていたため)判然とせず、党内派閥の勢力図をそのまま適用することが難しい情勢である。
 労働党内からは<国際主義派>を率いるローネ・スティショバイト外交委員長の出馬が取り沙汰されているが、「知名度を考慮するとユハル・ツァボライト国連大使の方が支持を集めるのではないか」などの声も上がっている。<孤立主義派>はレンデ・アゲート以来の伝統的支持勢力に期待をかけているが、誰を擁立するかについては意見の一致を見ていない。誰にしても、メディアへの露出が少なく知名度の低い候補が多いことが弱点となる。
 連合党は、820年末に初当選して40年間動力委員長を務めているキウィク・ムトロライト動力委員長が出馬を表明しているが、「知名度に難がある」として、党外部からの候補擁立を進める動きもある。白羽の矢が立っているのはチャド・リーヴズ「南の風」代表で、「南の風」の知名度を選挙で利用するというアイデアだ。「南の風」はもともとガーネット州を押さえていることから独自候補の擁立を検討していたが、冰州連合及びエーラーン教皇国への投資が回収不能になっていることをきっかけとした組織内の政治的混迷により選挙戦を戦うだけの資金力を確保できなくなっており、連合党の推薦を得られるならこれを受ける構えだ。


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